高度経済成長期の日本の労働観を描いた一冊であり、当時の働き方が垣間見える点は非常に興味深かった。稲盛氏の仕事に対する情熱や誠実な姿勢には学ぶべき点も多く、当時の「モノづくり」への誇りや達成感に裏打ちされた力強さを感じた。
一方で、そうした働き方を現代社会にそのまま適用するのは非常に危険だとも感じる。物が不足し、新しいものを生み出す余地に満ちた時代だからこそ可能だった“熱量”であり、現在の成熟社会においてはむしろ働く人を疲弊させかねない価値観だと思う。稲盛氏は、「お客様のために、何が何でもやり抜く」という職人気質や奉仕精神にあって素晴らしいと思いますが、資本主義の現場で発揮されると、たとえば「下請け業者の言い値をそのまま受け入れ、徹底的にコストダウンする」といった価格競争に自ら身を投じている姿勢や、「百メートル走のつもりでフルマラソンを走る」といった過剰な自己犠牲を美徳とする考え方に発展させる事になりかねないと思い、私はアレルギーを感じました。
彼の言葉や哲学は、現代においては「参考にとどめるべき歴史の一部」として読みとどめました。
以下、印象に残った言葉たち。
۲働くことの意義が、ここにあります。
日々、一生懸命に働くことには、私たちの心を鍛え、人間性を高めてくれる、素晴らしい作用がある。
۲働くことが「人をつくる」
「よく生きる」ためには、「よく働くこと」がもっとも大切なことです。
それは、心を高め、人格を磨いてくれる「修行」であると言っても過言ではありません。
۲愚直に、真面目に、地道に、誠実に
۲人事を尽くし、後はもう神に祈り、天命を待つしか方法はないと言えるほど、すべての力を出し切ったのか。自分の身体が空っぽになるくらい、製品に自分の「思い」を込め、誰にも負けない努力を重ねたのか。
۲いつも「百メートル競走のつもりで走れ」
→ 会社経営とは、四十二・一九五キロの長丁場を走り続けるマラソンレースのようなものではないだろうか。そうすれば、これまでマラソンなどしたことのない素人集団のわれわれは、その長丁場のレースに遅れて参加した素人ランナーのようなものだ。それでもレースに参加するのであれば、私は百メートル競走のつもりで走りたい。
۲もうダメだというときが仕事のはじまり
۲今日一日を精一杯努力しよう。
今日一日を懸命に働けば明日が必ず見えてくる。
今月を精一杯がんばろう。今月を精一杯がんばれば来月が見えてくる。
今年一年を充実させよう。今年を充実させれば来年が見えてくる。
そのように、瞬間瞬間を充実させ、小さな一山ごとに越えていく。その小さな達成感を逮織と積み重ね、果てしなく継続していく。それこそが一見、迂意に見えるもの
۲順境ならよし、逆境ならなおよし
۲この程度の要求に応えられないようでは、会社も自分もしょせん二流、三流止まりだろう。だから、なんとしても負けまい、このせっかく与えていただいたチャンスに真正面から立ち向かっていこうと考えていたのです。
ですから、松下さんの言い値をそのまま受け入れ、どうやったらその値段で採算が取れるか必死に考え、徹底的にコストダウンに努めました
۲いかなるときでも「やり直し」は絶対にきかないと考え、日ごろから「有意注意」を心がけ、一つのミスも許さない、そんな「完璧主義」を貫いてこそ、仕事の上達があり、人間的な成長もあるのです。
۲楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する
۲人生・仕事の結果=考え方✕熱意✕能力
追伸
働くことに意欲的になりはじめた時や、自分の実力に驕るような事あれば読み返したい。