西部邁のレビュー一覧

  • パール判決を問い直す 「日本無罪論」の真相

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    東京裁判で唯一被告人全員無罪を主張したパール判事の判決文について2人の思想家が吟味し、対話する。本書は単なる法律論にとどまらず、パール判事の法律観や思想を読み解きつつ、どのように教訓とすべきかというメッセージを提示している。

    まず、そもそもの法律論的な観点から言えば、そもそも東京裁判は事象が行われた後に制定した法で裁く、という意味で無効であるというものである。(読む前の私も含め、知らない人も多いのではないかと思うが)A級、B級、C級戦犯という言葉は、何に対しての罪であるか、という意味であり、序列があるわけではない。それぞれ「a.平和に対する罪、b.(通例の)戦争犯罪、c.人道に対する罪」とな

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    2025年09月14日
  • 保守の遺言

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    思想はもちろんのこと、培われた環境、思考法、引いてくる言説。全く異なる、いや世間的にはむしろ真逆からのアプローチであるにも関わらず、なんと斎藤幸平の「人新世の資本論」とさらに宮台真司と結論をほぼ同じにしている。

    これはいつか訪れるであろうユートピアを夢想するものの共通概念。全く難解なことではない。手の届くところにいる者達との生活を基盤にした共同体もちろんそれは家族でもある、それを守り抜くこと。つまりは愛という結論。

    四半世紀も前の朝まで生テレビの時に展開してい、そして全く中心がブレていない言論の集大成と、終章のモノローグによりその言説すべての真意と活力の奥底が垣間見えた。

    もちろんその主

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    2021年04月16日
  • 保守の真髄 老酔狂で語る文明の紊乱

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    BSフジのプライムニュースに出演していたことから著者を知る。圧倒的な知識量と思考に感銘。自死を選択した方だがもっとテレビで直接話を聞きたかった。

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    2020年07月12日
  • 六〇年安保 センチメンタル・ジャーニー

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    2018年初頭に入水自殺した60年安保世代のセンチメンタルジャーニー。同時代のブント同志諸氏への追悼文。
    一読した印象で強く感じたのは、著者が60年安保闘争に関わったのは東大入学直ぐの教養部時代であり、本郷のブント中心部とのズレがあり、教養部手握の必要性から行動左翼的に運動に関わっている。このあたりは、本郷のブント中心部が前歴に武装共産党時代の精神を引き継ぐものとしての自己確立と趣きを異にしており、それが著者の後年の思想展開(保守派)に繋がっていると考えている。
    更には、自己確立の末の他者を巻き込んでの入水自殺という自己処理の曖昧さに繋がっている。
    しかしながら、著者の人間把握は本書で秀逸なま

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    2018年09月25日
  • 保守の真髄 老酔狂で語る文明の紊乱

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    時代を象徴する長文の遺書。

    読み始めて思いました・・・
    「これは絶筆宣言だよね。それを新書で出すとは・・・」
    否、多くの読み手を考えて(私のような貧乏人も居る)
    敢えて新書版として出されておるのだ・・・等と。
    気合の入り方が違うがな・・・当初より自死を予定していらっしゃいますがな・・・
    手書きがもう出来ない、西部先生の選んだ必然なのやも等と
    市井の末席を汚す阿呆は思うわけです。
    同時に己の阿呆さ加減にも嘆く始末ですよ。
    もうちっと考えが及ばんのかいなと。

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    2018年06月17日
  • 昔、言葉は思想であった 語源からみた現代

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    西部先生はこの本でケリをつけました。

    それは近代という時代を懐疑せず、
    でたらめな妄言を吐き続けてきた知識人に対してです。

    西部先生は、この本で言葉の正当な意味を示し、
    いかに現在使われている知識人の言葉が
    社会に混乱を引き起こしているかを明らかにしています。
    これまで知識人が妄想し設計してきた思考の前提が
    暗に明にぶったぎられているわけです。

    絶対に読まなくちゃいけません。

    僕みたいに、哲学の世界から程遠いような人間が、
    どのように考え状況に応じていくかを考える上でも勉強になるので、
    そういう人たちにも絶対おすすめです。

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    2012年03月18日
  • 14歳からの戦争論

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    本書における、本質を突いた提言には圧倒されて、読み終わった後、しばらくの間無心。
    日本人の平和ボケに関して、常に言及していた著者が、軍隊において日本人が本質的に抱える欺瞞を鋭く批判。
    国際情勢や、アメリカ自由主義の矛盾、日本国民の卑屈さについて、理論的に解説。
    14歳の時にこんな本があればなと、30を超えて思う。
    西部邁先生は、日本一の知識人であり、日本の良心ともいうべき偉大な思想家だと思いました。
    全ての日本人にオススメです。

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    2012年01月17日
  • 難局の思想

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    外国の方の話は私には少し難しかったけれど、司馬遼太郎については、私が今までに思っていた通りのお話で、溜飲が下がる思いで読みました。この章を読めただけでも この本を読んで良かった!皆さんにもぜひ読んでほしい。

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    2011年12月10日
  • エコノミストの犯罪 「失われた10年」を招いたのは誰か

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    著者の作品は奥が深く、毎回驚かされます。

    現在のエコノミストなどの無責任な発言をあらゆる角度から批判しています。
    著者は組織の重要性についても言及している。
    普通なら組織のことを考えて行動するから、昨今起こっている危機は単なるブームから起こったものである。
    リスクとクライシスは異なる意味を持ち、クライシスは統計では図れないものである。それを統計などで計ろうとしているエコノミストの罪は深い。クライシスなどの不確実性は民の力では対処できない。
    不確実性には官の力が必要であり、公共事業などについても見直すべき時期が来ている。
    社会は利害調整の場などではなく、価値の共同体であり、利潤だけを求める企業

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    2011年09月18日
  • 妻と僕――寓話と化す我らの死

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    夫婦という具体的なものと、思想という抽象的なものを適宜往復して語られている。前著『寓喩としての人生』の夫婦版、と言える(ちなみに副題は「寓話と化す我らの死」)。本を書く人が皆こういう本を書いてくれると、著者や著作の信頼性を判断するための格好の材料になるのだが・・・。どちらかといえば熱心な方の読者のつもりなので、初めて公言された内容にはドキッとした。

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    2011年06月27日
  • 保守の真髄 老酔狂で語る文明の紊乱

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    西部邁という人物と保守という概念を改めて理解したく読んだ。保守とは何かというより過去から現代まで人間がどのように物事を捉え、思想や価値観への意味づけを行って来たかが、とてもその流れを把握しての解説書と行った感じだった。
    長寿を考える時、それは生き方と死に方を考えるということとのメッセージが刺さった。

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    2025年09月28日
  • パール判決を問い直す 「日本無罪論」の真相

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    太平洋戦争における東京裁判で連合国側判事にありながら日本の無罪を主著したインド代表のラダ・ビノード・パール判事。靖国神社に併設されている遊就館にも同博士の顕彰碑が建てられている。極東軍事裁判唯一の国際法専門家で、絶対悪とされた日本の戦争犯罪を無罪と言い切った勇気ある裁判官として、保守派から大きく尊敬される存在だ。書籍も多く出ており、私も幾つか読んだが、その都度パールの言葉に感動した事を覚えている。だがふと、Youtubeの動画なんかを見ていて保守系の大東亜戦争肯定論者にうまく利用されているのではないかと不安に感じたことがある。実際に動画の内容は、日本の戦争は正しかったとしており、アジアの解放の

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    2023年11月19日
  • 保守の真髄 老酔狂で語る文明の紊乱

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    モダンの訳語は近代的ではなく、「模流」である。明治維新後、日本は西欧を模倣し、社会を築いてきた。それが特に戦後さらに社会に表面化し、ここ30年に至ってはマスメンたちが流されるままに社会を変革してきた。理想を求めれば格差や軋轢が生じ、現実主義ばかりでは自由や権理が埋没する。その間には平衡が必要であり、活力、公正、節度、良識の観念をその国家の伝統から導き、その具体化について状況の中で試行錯誤しながら吟味することが要求される。
    私はここ30年程度の状況しか見ていない世代であり、戦後の時代の流れを一部しか実感できてはいない。しかし、リーマンショック後、日本以外では行き過ぎたグローバリズムを抑制する動き

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    2022年06月26日
  • 六〇年安保 センチメンタル・ジャーニー

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    センチメンタルジャーニーとはうまい表題を付けたもんだ。
    西部氏の20前後がよくわかる。
    それに比べて同年代の時の我を見ると、全く自分がない池に浮かぶ落ち葉のように浮遊しているだけだった。
    これをよく理解してから連合赤軍やあさま山荘事件の一連の出来事を見ていかなないと、点での理解で線や面の理解ができなと思う。
    自裁されずの、もっと過去を語ってほしかったと思う。
    西部氏をテレビに出して自由にしゃべらしたデレクターに御礼を言いたい。
    それに引き換え最近のテレビは本当につまらない

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    2021年12月24日
  • 保守の遺言

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    2018年1月21日に多摩川で入水自殺した西部邁の遺言です。あとがきに2018年1月15日とあるので、自殺の6日前に完成したことになります。本書では、我々がおかれている状況、現代社会、そこに生きる人々、日本の核武装論、憲法改正など、ありのままの言葉で論じられています。目新しいさではなく、過去の発言を、死に際してまとめた感じになっています。個々の内容については、今までの著作に詳しく論じたから、そちらをきちんと読めということでしょう。本書にあっては、あとがきが一番伝えたかったことなのかもしれません。

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    2018年04月26日
  • 保守の真髄 老酔狂で語る文明の紊乱

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    日本保守思想界の重鎮。最期の著作となった。Tokyo MX系列の言論番組は大学時代に観ていた唯一少ない番組だ。

    「バランスとは、矛盾せる両方向への姿勢をそれぞれ最高度に保ちつつ、その間に生じる緊張を巧みに乗り越えていくということにほかならない。ここで「巧み」というのは両者を総合する言葉と行為を新たに作り出していくという意味で、過去への創造力と未来への創造力とを結びつけようとする努力のことを指す。」

    世の中白か黒かではなく、常に柔軟に判断して、グレーを作り出す或いは認める姿勢が非常に大事であるというのは非常に共感できる考えだ。

    先日自殺したという話を聞き、本書にて彼の「自裁死」への思想を知

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    2018年02月12日
  • 保守の真髄 老酔狂で語る文明の紊乱

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    私自身、『大衆への反逆』を読んだ学生時代以来、『ソシオ・エコノミクス』など西部邁さんの著作に親しんできた。 テレビによく登場するようになってからは少し遠ざかったが、明晰で力強い語り口ははっきりと印象に残っている。

    社会科学、なかでも経済学を通して社会を見つめてきたわけだが、なんとでも立論できる社会科学の怪しげで「チャチな」モデル設計には一貫して否定的な態度をとってきた。 また、テクノロジーの進展がそもそも人間に何をもたらすのか、それはロボット化でありサイボーグ化であることへの警鐘も鳴らし続けてきた。 つまりは怪しげな言説がまかり通り、そして人間が衰退していく現代大衆社会の行きつく先を悲観をも

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    2018年02月11日
  • 保守思想のための39章

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    著者の考える保守主義について、原理的な考察をおこなった本です。

    著者によれば、保守主義はただ伝統を形式的に墨守するだけの立場とは異なります。保守主義とは、伝統や慣習のうちに、現在の生の活動にとって重要な平衡の基準を見いだそうとする立場でなければなりません。

    人間は、現在の状況の中で自由に決断することを迫られています。保守主義は実存主義とともにこのことを認め、しかしそうした決断に際して私たちを支えてくれる良心を伝統の知恵の中に見ようとする点で、単なる決断主義的な実存思想とは区別されることになります。

    また、保守主義は正統と異端のせめぎ合いが存在することを認めます。しかも、自分自身が伝統の正

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    2014年03月01日
  • もはや、これまで 経綸酔狂問答

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    黒鉄ヒロシ氏と西部邁氏という異色の
    二人の座談集的な本。
    内容が、二人の掛け合いのようで、
    非常に面白いと思います。
    ただ、やはり西部氏の含蓄は非常に
    高尚でときどき難しいところもありますが
    総じて面白い本だと思います。

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    2013年12月24日
  • 学問

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    チェスタートンなどの人物から「自由」や「権利」など日常生活で目にすることが多い言葉など全119項目について、西部邁氏が1項目2~3頁ほどで解説をしてくれている。とくに「自由」や「権利」など、概念を言語で論理的に説明することが難しく感じる言葉についての説明は、大変勉強になる。

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    2013年04月19日