【感想・ネタバレ】保守思想のための39章のレビュー

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Posted by ブクログ

著者の考える保守主義について、原理的な考察をおこなった本です。

著者によれば、保守主義はただ伝統を形式的に墨守するだけの立場とは異なります。保守主義とは、伝統や慣習のうちに、現在の生の活動にとって重要な平衡の基準を見いだそうとする立場でなければなりません。

人間は、現在の状況の中で自由に決断することを迫られています。保守主義は実存主義とともにこのことを認め、しかしそうした決断に際して私たちを支えてくれる良心を伝統の知恵の中に見ようとする点で、単なる決断主義的な実存思想とは区別されることになります。

また、保守主義は正統と異端のせめぎ合いが存在することを認めます。しかも、自分自身が伝統の正統な継承者であるかどうかということに関して、健全な懐疑を忘れることもありません。この点で保守主義は、正当と異端の区別そのものを廃棄し、いっさいの伝統から離れてしまおうとする急進主義とは区別されますが、同時につねに自分自身を疑ってみる謙虚さとユーモアの精神を忘れることはないとされます。

さらに著者は、チェスタトンの「死者の民主主義」という言葉を紹介して、伝統の知恵に基づきながら現在の状況に適切に対応する姿勢が、保守主義のあるべき姿だと述べています。

保守の思想の精髄を哲学的に掘り下げており、単なる状況論を超えた保守主義の魅力が語られています。

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2014年03月01日

Posted by ブクログ

 古いものを好む、という性格が私にはあったりする。
 そういうのもあってなのだろう、こういう本に惹かれたりするのは。
 そしてその性格は今でもあまり変わりようは無い。
 そこで思う事を述べれば、
 表層にあるものに囚われる事無く、
 深層にこだわろうとし、それを見出す事、
 その作業に従事する事、さすれば人は自然に保守化していくのではないかと思う。
 単なる懐古趣味を気取るのが保守ではない...いや保守であったとしてもよいにしても、その場合、保守は信用できる概念であると私は考えない。
 ともかくそうした態度を有していれば、流行・新奇なるものを嫌おうと意識的に努める事はなく、無意識的に流行・新奇なるものを退ける構えが熟成されていくのではないかと私は考える。
 そしてそれは、気づけば歴史・文化・慣習・伝統といったものへの愛着へとなり、むやみやたらに文明に流さない生を確保し、精神の安定へと導くのではないか。
 その橋頭堡を築くための参考になる一冊ではないかと思う。〔平成22(2010)年2月14日〕

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2010年02月14日

Posted by ブクログ

[ 内容 ]
バブル崩壊と冷戦の終焉から十年すぎた。
しかし今なお、経済の立て直しから有事への対処などに至るまで、依然として議論だけが続いている。
しかも、その空疎な対立と不毛な論争の蔭で、学級崩壊、官民を問わない不正行為の続出、各種犯罪の増加など、日常の社会そのものは緩慢な自死の過程をたどりつつある。
そして、資本主義の挫折と帝国主義の再来、それが世界の大状況となっている。
この危機に、私たちはどう臨めばよいのだろうか。
単なる郷愁やかたくなな復古ではなく、美徳と良識にもとづいて公共空間を再建するため保守思想の真髄をさぐる。

[ 目次 ]
地球の危機―帝国主義が蔓延する
情報の空虚―ITが空回りする
「戦後」の完成―アプレゲールの末路
感情の優位―合理の前提はどこにあるのか
葛藤の遍在―感性は錯綜している
平衡の必要―健全な精神は精神の曲芸を要求する
幻覚の不可避―精神のはたらきはすべて仮想である
持続の意義―リアリティの根拠を求めて
成熟の希求―常識という「死者の書」
愛着の必然―手段へのこだわりが生をゆたかにする〔ほか〕

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[ 参考となる書評 ]

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2014年10月30日

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