瀬田貞二のレビュー一覧
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ネタバレ再読。
『ナルニア国物語』第7巻にして完結巻。
前巻、ナルニア国誕生からおそらく数千年後、ナルニア国の崩壊を描く。
反キリスト、偽預言者、最後の審判、永遠の楽園と、黙示録的なモチーフが頻出する。
また、ディゴリーの「うちがわは、そとがわより大きいものだ。」という言葉がひとつのキーワードになっているが、「わたしたちの世界でも、むかしあるかたがはいっていたうまやがありましたが、そこは全世界より大きかったのですよ。」というルーシィの返答もまた、キリスト教的な意味付けを示唆している。
これまでに登場した多くの人物が再度現れ、物語は大団円を迎えるが、ピーターたち人の子らに与えられた運命をどう捉えるかは難しい。全体がキリスト教的世界観で貫かれているため、これはハッピーエンドには違いないのだろうけど、手放しで祝福できない感覚も残る。
しかし全体を通して物語の構成にも描写にも読み応えがあり、ひとつの寓話として楽しく読み終えることができた。 -
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ネタバレ再読。
『ナルニア国物語』第6巻。第5巻からさらに数百年前、ナルニア国誕生の有り様が描かれる。
ナルニアの生まれる様子や、銀のりんごを取りに行く場面などは創世記を思わせるし、賛美歌を愛する馬車屋が、以前にアスランに会ったことがあるような気がする、と言うのも、やはりアスランにキリストを重ねているのだろうと思う。
最終章のタイトル(「この話は終わり,ほかの話がすべて始まる」)に表されているように、第1巻『ライオンと魔女』の頃から語られていた伝説の由来であったり、白い魔女の背景であったり、ナルニアの場違いな街灯が生まれた理由であったりと、様々なことが解き明かされる意義深い巻。 -
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ネタバレ再読。
『ナルニア国物語』第4巻。第3巻から70年後のナルニアを舞台に、ユースチス、ジル、泥足にがえもんたちによる、カスピアン王の息子・リリアン王子の救出劇を描く。
アスランからの指令を尽く間違えながらも、悪戦苦闘して先へ進む3人の道行きが面白い。
巻を増すごとに物語の完成度も上がっているように感じる。
‘地上世界は存在せず、ただの夢であり、この世には自分が統べる地下世界しかない’と催眠をかける夜見の国の女王との舌戦が印象的。
泥足にがえもんの切る啖呵、
「よろしいか、あたしらがみな夢を見ているだけで、ああいうものがみな(中略)頭のなかにつくりだされたものにすぎないと、いたしましょう。だとしても、その場合ただあたしにいえることは、心につくりだしたものこそ、じっさいにあるものよりも、はるかに大切なものに思えるということでさ」という台詞は格好良い。またそれは字義通りの意味に留まらず宗教(キリスト教)的な告白にも聞こえる。
同じ長台詞の中の「あたしは、アスランの味方でさ。たとえいまみちびいてくれるアスランという方が存在しなくても、それでもあたしは、アスランを信じますとも。あたしは、ナルニアがどこにもないということになっても、やっぱりナルニア人として生きていくつもりでさ」という言葉もまた同様に、信仰への確信が重ねられているようで興味深い。 -
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ネタバレ大作『指輪物語』へと繋がるファンタジー小説。
ホビット(小人族のひとつ)のビルボ・バギンズが、魔法使いガンダルフに誘い出され、13人のドワーフ(同上)たちとともに、龍から宝を取り戻す旅へ出る物語。
「地面の穴のなかに、ひとりのホビットが住んでいました。穴といっても、ミミズや地虫などがたくさんいる、どぶくさい、じめじめした、きたない穴ではありません。(中略)なにしろ、ホビットの穴なのです。ということは気持ちのいい穴にきまっているのです」―――といった調子で物語は始まる。語りかけるような文体だからか、馴染みがないはずの異世界へ、読者が自然に分け入っていけるように感じる(瀬田貞二の訳文の巧みさもあるのだろうと思う)。巻頭に掲げられた地図をはじめとした寺島竜一の挿絵も、物語によく馴染んでおり、眺めていて楽しい。
主人公のビルボが、50歳ぐらいの分別ある大人であるのがまた面白い。冒険に憧れる血筋を持ちながら、足を踏み出すことのなかったビルボが、(事件に巻き込まれるだけでなく)大活躍を始めるところで上巻は終わる。下巻の展開がとても楽しみ。 -
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ネタバレ”ライオンと魔女”から何世紀も経てナルニアはテルマール人たちに侵略され、物言うけものたちや木の精・水の精たちが追いやられ隠れ住んでいる。
テルマール人がナルニアを治めだしてから王家の血筋をただ一人ひくカスピアン王子は、身内のミラースの策略により追われる身となる。
カスピアンは、ほんの伝説でしかない太古のナルニアの動物や小人たちと人との共存生活にあこがれを持ち、ただ一人の味方である家庭教師から正しいナルニアの歴史を学ぶのである。
今度はピーター、スーザン、エドマンド、ルーシーがカスピアンの角笛に呼ばれてイギリスの汽車を待つホームから、以前とは風景も変わってしまったケアパラベルの城近くに降り立つ。
今回もアスラン(神)はもどかしいほど絶体絶命の危機に現れ、人々を試しそして救う。 -
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ナルニア国ものがたり第5巻。今回はナルニアの世界の少年少女が物語の中心となります。漁師に拾われたシャスタは奴隷に売られそうになった処をもの言う馬ブレーと共に逃げ出しナルニアへと向かう。途中同じくもの言う馬と親元から逃げ出してきた少女アラビスと出逢うのだった。
ブレーもアラビスも気位が高く、シャスタはそんな姿にまごつくのだが、実はシャスタは…という貴種流離譚の流れを汲む物語は王道であるが故に面白いです。自分の生まれを知ってから使命に目覚めるのでなく、使命に目覚めたことが生まれを知ることに繋がるのがいいですね。そして今回もアスランが美味しい処をもっていきますなあ。まあ、そういう存在なのだから当たり前なのですが。 -
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ネタバレナルニア国ものがたりのなかで一番好きな巻。
ナルニアの創造が語られていきますが、そこにわざわいの種をもたらしてしまう、というストーリー。
これは秀逸、と思ったのが「世界と世界の間にある世界」という設定。要するにメタ世界みたいなものでしょうか。それを考えると「メタ世界のメタ世界ってどうなってるの?」と考え出してしまうのですが、それは結局プラトンに対して「イデアのイデアはないのか?」と問いただすようなものだからやめておきましょう。
にしても、ロンドンの街をほろびの国からやってきた魔女が馬車でおおあばれするくだりはなんともいえずコミカルです。 -
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ナルニア国ものがたり第4巻。ナルニアに呼ばれたジルとユースチフは沼人の泥足にがえもんと共に行方知れずの王子を捜しにいくのだった。
一本調子にも思えるが起伏に富んだ物語です。アスランからの忠告をことごとく守れなかったり、ジルとユースチフのコンビがちくはぐしていたり。それでもトントンとお話は進んでいきます。だから二人が真に心通じ合った場面が胸に沁み入ります。
特筆すべきはにがえもんさんのキャラクタでしょう。愛すべき悲観主義者。子どもたちの気持ちを萎えさせることもしばしばなのですが、そんな彼だからこそ最後まで希望を失わなかったのは、お話のもって行き方として素敵ですね。