佐野眞一のレビュー一覧
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戦中戦後に国全体で負わなければいけなかった負担を、沖縄に押し付けてしまった。だから本土の人間として沖縄に謝りに行く、という姿勢で進歩的文化人などによって語られてきた沖縄。本土=加害者、沖縄=被害者。多くの日本人も、この認識をもとに沖縄を捉えてきた。でもすでに戦後70年。戦後沖縄がたどってきた長い歩みを、いまでもこの凝り固まった歴史認識をもとに見ても、本当の沖縄は見えてこないのではないか。
といった問題提起から書かれた本。
悪漢小説のように悪い奴、図太い奴がたくさんでてきる。法になんて従ってられない。生きるか死ぬか、体を張って生きている。被害者というイメージだと弱弱しい、枯れた花みた -
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先に読んだ宮本の自伝「民俗学の旅」や、佐野眞一の「渋沢家三代」と重複する部分も多かったが、2人と関係した研究者も登場し、当時の歴史やつながりも見えてくる。
宮本は明治40年に山口県の周防大島で生まれた。尋常小学校を卒業後は村に残って百姓をしていたが、叔父にすすめられて大阪に出ることになった。島を出る時に父親が伝えた十か条には、汽車に乗ったら窓から外を見ること、人の服装などに注意して見ること、新しく訪ねたところは高いところに登って見ること、時間があったら歩いてみることなど、その後の常一の活動の基盤となったと想像できる内容が盛り込まれている。大阪では、逓信講習所でモールス信号を学び、卒業後は高麗 -
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資本主義の父と民俗学のパトロンの生涯をまとめて読めるのはお手軽と思ったが、あとがきにも書かれている通り、敬三の民俗学へのパトロネージュについてはほとんど触れられておらず、『旅する巨人』を読めとのこと。そりゃそうだ、とは思ったが、渋沢家の生い立ちから没落への歴史を学ぶことができたのはよかった。
栄一は1940年に血洗島の中ノ家に生まれた。現深谷市のこの地は中山道と利根川にも近い交通の要衝で、家はそのメリットを生かした藍玉生産で富をなした。藍の栽培に必要な干鰯は、九十九里から利根川で運ばれた。栄一も14歳になると、単身で藍葉の仕入れに出ている。21歳で江戸に遊学に出て、学問や剣術の修行をする一方 -
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東日本大震災の原発事故で、東電の体質についてクローズアップされたことをきっかけに、東電に興味を持って読み始めたのだが、とんでもない本だったようだ。
そもそも、この事件について全く予備知識がなかったため、渡辺泰子のような女性が存在していたことに驚いた。事実は小説より奇なり、とはいうけれど。。もう亡くなってしまったので、今更彼女を助けてあげることはできないが、彼女のように心のバランスを壊してしまう前に、周りは気が付いてあげられなかったのだろうか。。。
佐野さんの緻密な調査には頭が上がらない。小説のような読み口でとても強烈な魅力を持つルポルタージュだった。 -
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興味をそそられるタイトルに表紙の写真。しかも佐野眞一著となれば読まないわけにはいかないでしょう。
しかし、読み始めはちときつかった。
だって沖縄ヤクザの抗争なんてまったく興味がわかないんだもの。しかも読み始めたのはハワイの空の下。リゾートしながら読む題材ではないわね。能天気な観光客の知らない裏社会にはドロドロの世界もあるんだということはわかったけど。
ただヤクザもんの中で「海燕ジョーの奇跡」のモデルとなった日島稔の話はおもしろかった。組の汚名をはらすため、相手のかしらの首をとった日島は15年の刑期を終えてカタギの仕事についている。おとうさんが行方知れずのフィリピン人という出自や、成績は抜群 -
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ネタバレ被害者のWさんは幸せな家庭で育ち、慶応大学経済学部を卒業後、一流企業に総合職(エコノミスト)として勤めながらも、毎晩仕事帰りに渋谷に立ち寄り、4人もの客をとって売春をしていたという。週末も風俗店に勤務し、その後渋谷で呼び込みをしていたそうだ。
彼女は渋谷区円山町、井の頭線神泉駅から目と鼻の先にある、さびれた木造アパートで殺害され、10日後に発見された。隣に住む不法滞在のネパール人が逮捕され、一度は無罪判決が下されたものの、逆転有罪となり、無期懲役で服役している。この木造アパートは今でも存在し、住んでいる人もいて、ネットで写真が見られる。円山町にも興味を持ったので、行ってみたいと思った(明るい時 -
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在日三世として貧困から身を起こした孫正義とそのバックグラウンドを描いたノンフィクション。孫正義の生い立ち、家族、これまで歩んで来た道が描かれ、興味深く読んだ。
孫正義がたった一代でSoftBankをNTT、KDDIと肩を並べる通信キャリアに成長させた事は驚異である。方や官の天下りによる後ろ盾で通信キャリアの頂点に君臨していたNTTやKDDIも陰りを見せている。完全なる民のSoftBank、いや、孫正義の戦略、経営思想の勝利であろう。
孫正義は在日という事で、Twitterなどでは酷い攻撃を受けているが、孫正義の飄々とした返しが面白い。常に世界に目を向けている孫正義と島国根性の塊の輩の人間の -
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石原慎太郎の実像に迫るノンフィクション作品です。
汽船会社で人びとの記憶に残る伝説を残した慎太郎の父・潔の生き様から、慎太郎・裕次郎兄弟の活躍、そして都知事になった石原を追い込んだ新銀行東京問題までを、緻密に追いかけています。
「私の関心は、……石原慎太郎という男それ自体の存在もさることながら、彼に向けられた大衆のまなざしの偏光にあったというべきかもしれない」と書かれているように、慎太郎を通して、彼にまなざしを向ける戦後大衆の無意識にまで、著者の考察は届いています。
石原慎太郎について語ることが同時に、賛否いずれにせよ石原を批評する大衆について語ることだというのは真実だと思います。しかし -
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知られざる事
この事件が起きた当時、興味本位の、中には被害者を傷つけるような事を報じる雑誌や新聞があり、辟易した記憶がある。
この本は、そのような事は無く、何故このような事件が起きたのかを事実を丁寧に調べて解き明かそうとしている。
しかし、それでも疑問が残っている。
これは被害者が持っていた闇があまりにも深かったためかもしれない。
全てが明らかになってはいないが、この事件に関わる人や事実にはどのようなものが有ったのかを知りたければ、この本を勧められると思う。 -
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東日本大震災と福島原発事故から見えて来る日本の政治の本質に迫るルポルタージュ。
筆者はまえがきで、福島原発事故から三年近く経過した現在の政局から風化しつつある負の遺産と悲惨な記憶を憂いていると共に他のノンフィクション作品を批判している。このまえがきからすると、筆者が語りたいのは東日本大震災よりも、福島原発事故なのだろう。
あれだけ騒いでいた原発事故も三年近くになると選挙戦の材料に使われ、まだ事故は収束の兆しも無いのに東京オリンピック誘致に浮かれる日本は一体どうなっているのか。
第一部は東日本大震災の一週間後の被災地の取材記録。取材記録といっても、筆者が被災地の旧知を訪ねるという私的な色が