佐野眞一のレビュー一覧
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新しい土地に行った際には、まず高いところに登る。山がどこにあり、川がどのように流れ、人の暮らしがどこにあるかを俯瞰する。また街に入れば、家の造りや屋根、壁の構造や素材、街路の形成、田畑に植えられているもの、地域住民の服装や表情、その土地の食べ物、夜の街、、様々な土地の風俗を五感で体験する。
これは宮本常一が日本中で実践してきたフィールドワークの実態だ。彼が歩いた足跡を地図に落とせば、日本全体が赤く染まりその距離は地球4周分にもなる。旅する巨人と言われる宮本常一の徹底した現場主義の成果は、『忘れられた日本人』や『民俗学への道』といった著書にまとめられている。
その宮本常一を経済的に支えたのは -
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日本にとってアメリカは「宗主国」、沖縄は「植民地」、この言葉が深く頭に残る。まもなく沖縄戦が終結した6月23日を迎えることもあって読み直した。
本書を読まずとも沖縄が太平洋戦争終結後も基地問題や在日米軍による集団レイプ事件、そしてオスプレイ大学校内への墜落事故など沖縄には真の戦後が訪れていない状況を多くの人が理解している。それと同時に中国の台湾や尖閣諸島、南シナ海への対外強行姿勢を目の当たりにし、日米安保、米国の庇護・抑止力なしに平和の均衡が保たれないリスクも理解している。未だ戦後の訪れない沖縄について、誰も明確な答えは出せないのではないだろうか。
本書はノンフィクション作家である筆者の沖縄戦 -
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ネタバレ著者の被害女性への思い入れがかなり強くノンフィクションというには見方に偏りがあるように思える。偶然に暗合を見たり、幻視幻聴の類が繰り返されたりするのは白ける。けれども取材の範疇を越えて捜査と言っていいような調査の数々は凄い。それだけ執着させる要因がこの事件にはあったということか。自分も著者同様に、昼は大企業勤務者、夜は立ちんぼという二つの顔を持ったこの女性の「心の闇」に関心を抱いたけれども、その奇行の数々を知るにつれこの人は精神を失調していたのではないかとの思いが強くなった。「闇」ではなく「病み」。多感な時期に親を亡くすことも、学業や就職でつまづくことも、同期のライバルに敗れることも人生にはま
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ソフトバンク創業者孫正義氏の評伝。孫氏の親戚や祖先を訪ね、且つ本人にも取材して、孫正義という人物がどういうふうに生まれ、成長したのかについて描いている。
佐野眞一氏のやり方は、取材対象者の先祖を何代か前まで遡って取材していく方法で、批判されて大問題となった『ハシシタ 奴の本性』も同じ手法だ。『あんぽん』でも使われているが、批判の声を聞かない。著者が孫氏を取材の過程で、評価するようになったいき、孫氏も佐野氏を信頼していることが、文中からわかるからかもしれない。
孫正義氏の幼少期の貧しさ、父母やその兄弟、祖父母などに見られる気性の激しさなどは、本当に驚かされた。
佐野眞一氏の筆からも熱量が感じられ -
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ノンフィクション作家の大御所、佐野眞一が書いたソフトバンク
の孫正義の生い立ちや両親のルーツを書いた本。
「週刊ポスト」に連載されていたものに、大幅加筆したもの。
孫さんが佐賀の鳥栖駅前の朝鮮部落で育った事や、その環境の
凄まじさ、幼少期からの天才ぶりなど、読みどころは多い。
ただ佐野眞一さんが孫さんに敵意を持っており、タイトルのあんぽんも孫さんの日本名「安本」を侮蔑した呼び方だったり、無駄に扱き下ろす描写が多い。
というか佐野さんの本は面白いものも多いけれど、いつもちょっとくどかったり人間性にクエスチョンなものも多々あったりなのだが・・・。
「そこそんなに細かく調べなくていいから」 -
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ノンフィクション作家による、月間プレイボーイに連載されていたコラムに一部追加して文庫版化されたもの。取材を基に書かれているため、内容が細切れになっているが、それぞれのテーマについてよく調べられていると思う。沖縄の裏の部分の一端を理解することができる。
著者に政治的な意図はないにしろ、やや狭史眼的な記述があり違和感を感じる点があった。
沖縄経済を裏で支配しているのは軍用地主。p385
過剰なまでの保護政策によって、沖縄が公共投資依存体質になってしまったことも、また厳然たる事実である。p403
東シナ海のノド元に突き刺さった沖縄は、日本にとって依然、絶対に欠かせない軍事防衛上の要衝である反面 -
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「(軍用地)約88%が国有地で占められる本土に対し、沖縄では1/3は個人が所有する私有地で占められている」p63
「(ニーチェ)「この世で男が熱中できるものは二つしかない。遊びと危機である」」p134
「親族同士が助け合う沖縄ユイマール精神は、沖縄人の進取の精神を殺ぎ、ひいては沖縄の発展を阻害する要因ともなっている」p189
「エイサーは最近では観光イベント化したものが多いんですが、私が最初に出会った勝連平敷屋のエイサーは、先祖送りのためにお盆にしか行われない伝統的なエイサーです。練習もものすごく厳しい。沖縄の芸能の一番深いところにあるのが、あのエイサーだと思います」p241
「嘉手納基地から -
- カート
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試し読み
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ネタバレ言わずと知れた有名人、孫正義の生い立ちからいまに至るまでを、本人、家族等に取材し、書き上げたルポ。
孫正義にも、ソフトバンクにも正直あまり興味がなかったのですが、好意的なイメージよりは、胡散臭い、ネガティヴなイメージだったので、ちょっと彼に関する本を読んでみようと思い。
以前、どこかで「おすすめ本」として紹介されていたのもうっすら記憶にあったので、本書を読んでみることにしました。
しょっぱなから、「本当!?」と訝しんでしまうような情報が次々と紹介され、面白くて惹きつけられる反面、読むのにすごくエネルギーを消費したように思います。
孫正義は「在日」であることのコンプレックスを力に変えて、がむし -
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野底土南(ぬかどなん)の名前は竹中労の著作で知った。思えば
竹中労も沖縄に魅了された人だったのだもね。野底は2007年に
亡くなっているのだが、病床とは言え本書ではインタビューが
出来ているのが凄い。
青い空と青い海。日本国内の南国リゾートだけではない面が、
下巻でもてんこ盛り。上巻はアウトロー色が強かったけれど、下巻は
政治や経済、芸能の話を主に扱っている。
日本に駐留している米軍の基地の多くを担っている沖縄。基地
問題をメディアが取り上げる時には、当然のように基地の危険性や
米兵による犯罪などが多くを占める。
だが、基地問題の裏側には軍用地主の存在があることは一切 -
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日本中を旅した民俗学者の宮本常一と、宮本を精神的そして経済的に支えた渋沢敬三のお話し。
宮本常一の著作を読んで以来少し民俗学に興味があった、宮本と渋沢敬三の生い立ちや関係、渋沢栄一の孫である敬三が民俗学を支援した背景、そして名著『忘れられた日本人』の裏話など、綿密な取材を重ねており大変興味深い内容だった。
民俗学というジャンルについては若干理解が曖昧だったが、本作で宮本の行動を知ることにより理解する事が出来た。離島や農村の歴史や風習を調査収集するだけではなく、他のエリアや次の世代に伝える事、そして伝わった情報により少しでも生活が豊かになることが、民俗学本来の役割なのだと思った。
「主流に