佐野眞一のレビュー一覧

  • 旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三

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    新しい土地に行った際には、まず高いところに登る。山がどこにあり、川がどのように流れ、人の暮らしがどこにあるかを俯瞰する。また街に入れば、家の造りや屋根、壁の構造や素材、街路の形成、田畑に植えられているもの、地域住民の服装や表情、その土地の食べ物、夜の街、、様々な土地の風俗を五感で体験する。

    これは宮本常一が日本中で実践してきたフィールドワークの実態だ。彼が歩いた足跡を地図に落とせば、日本全体が赤く染まりその距離は地球4周分にもなる。旅する巨人と言われる宮本常一の徹底した現場主義の成果は、『忘れられた日本人』や『民俗学への道』といった著書にまとめられている。

    その宮本常一を経済的に支えたのは

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    2023年11月10日
  • 沖縄戦いまだ終わらず

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    日本にとってアメリカは「宗主国」、沖縄は「植民地」、この言葉が深く頭に残る。まもなく沖縄戦が終結した6月23日を迎えることもあって読み直した。
    本書を読まずとも沖縄が太平洋戦争終結後も基地問題や在日米軍による集団レイプ事件、そしてオスプレイ大学校内への墜落事故など沖縄には真の戦後が訪れていない状況を多くの人が理解している。それと同時に中国の台湾や尖閣諸島、南シナ海への対外強行姿勢を目の当たりにし、日米安保、米国の庇護・抑止力なしに平和の均衡が保たれないリスクも理解している。未だ戦後の訪れない沖縄について、誰も明確な答えは出せないのではないだろうか。
    本書はノンフィクション作家である筆者の沖縄戦

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    2023年06月18日
  • あんぽん 孫正義伝

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    偉大な経営者孫正義がどうやって出来上がったか。幼少期の壮絶な貧困体験、差別を受けた経験。もともとあった地頭の良さに環境が作用して覚醒した。
    人間は修羅場を超えると強くなる、図うずうしくないと勝ち上がれないと感じた。

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    2023年01月29日
  • 沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史 上

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    沖縄だれにも書かれたくなかった戦後史
    佐野眞一 集英社

    分厚くて重たい本
    表紙の写真が印象深い

    グローバリストによる傀儡政治が
    最も深く根差し長く続いているのが
    ニホンの本土であり
    更にこのニホン本土が虐げてきたのが
    沖縄であり
    沖縄が差別搾取してるのが
    奄美大島であるという
    第二次世界大戦では
    天皇の盾とされ尻尾とされてきたのが
    沖縄なのである
    読み込むほどに重たくなる内容に
    あっとうさr

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    2023年01月18日
  • 東電OL殺人事件

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    ネタバレ

    著者の被害女性への思い入れがかなり強くノンフィクションというには見方に偏りがあるように思える。偶然に暗合を見たり、幻視幻聴の類が繰り返されたりするのは白ける。けれども取材の範疇を越えて捜査と言っていいような調査の数々は凄い。それだけ執着させる要因がこの事件にはあったということか。自分も著者同様に、昼は大企業勤務者、夜は立ちんぼという二つの顔を持ったこの女性の「心の闇」に関心を抱いたけれども、その奇行の数々を知るにつれこの人は精神を失調していたのではないかとの思いが強くなった。「闇」ではなく「病み」。多感な時期に親を亡くすことも、学業や就職でつまづくことも、同期のライバルに敗れることも人生にはま

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    2024年07月22日
  • 東電OL殺人事件

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    氏の著作に触れるのは初めてだから、追悼ってのもちょっと違うかもしれないけど、今のタイミングで読んでみたもの。☆はやっぱりプラス一つで。”東電OL”って言葉のインパクトが強いけど、実際には”殺人事件”の方がメインテーマ。故人の生い立ちなどにもっと紙面が割かれるのかと思ったけど、むしろ法廷場面が多くを占める。そのおかげもあり、展開がスリリングで、面白く読み続けられる。

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    2022年10月12日
  • あんぽん 孫正義伝

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    ソフトバンク創業者孫正義氏の評伝。孫氏の親戚や祖先を訪ね、且つ本人にも取材して、孫正義という人物がどういうふうに生まれ、成長したのかについて描いている。
    佐野眞一氏のやり方は、取材対象者の先祖を何代か前まで遡って取材していく方法で、批判されて大問題となった『ハシシタ 奴の本性』も同じ手法だ。『あんぽん』でも使われているが、批判の声を聞かない。著者が孫氏を取材の過程で、評価するようになったいき、孫氏も佐野氏を信頼していることが、文中からわかるからかもしれない。
    孫正義氏の幼少期の貧しさ、父母やその兄弟、祖父母などに見られる気性の激しさなどは、本当に驚かされた。
    佐野眞一氏の筆からも熱量が感じられ

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    2022年06月12日
  • 旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三

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    先日、金融庁元長官の遠藤さんが、講義の中で紹介された宮本常一の父の言葉に触発され、この本を、手に取りました。大正2年4月(1913年ですから、今から1世紀以上の昔)、山口県の離島だった(周防大橋が架かったのは1976年)、周防大島から旅立つ14歳の常一が書き留めた父善十郎の言葉。 汽車に乗ったら窓から外をよく見よ、から始まる10か条。これからさきは子が親に孝行する時代ではない、親が子が孝行する時代だ、そうでないと、世の中は良くならない等、なんとも素晴らしいものがあります。☆4つであります。

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    2022年05月01日
  • あんぽん 孫正義伝

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    凄まじい執念で描かれた孫正義伝。
    「人間を背中や内臓から描く」と言ってのける、この佐野という筆者にこそ興味をそそられた。

    日系三世の血と骨の物語はきっと事実。
    人間は面白い。素晴らしい。

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    2021年11月09日
  • あんぽん 孫正義伝

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    おもしろかった。
    黒澤映画の「羅生門」のような話で、語るヒトによって、同じ内容がこうも違うのか...ということを痛感させられた。
    個人的には、中国韓国日本は、どこかでつながっていて、いろいろな諸問題は、磁石の+と+のようなものだと思っている。

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    2021年02月19日
  • あんぽん 孫正義伝

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    ノンフィクション作家の大御所、佐野眞一が書いたソフトバンク
    の孫正義の生い立ちや両親のルーツを書いた本。

    「週刊ポスト」に連載されていたものに、大幅加筆したもの。

    孫さんが佐賀の鳥栖駅前の朝鮮部落で育った事や、その環境の
    凄まじさ、幼少期からの天才ぶりなど、読みどころは多い。

    ただ佐野眞一さんが孫さんに敵意を持っており、タイトルのあんぽんも孫さんの日本名「安本」を侮蔑した呼び方だったり、無駄に扱き下ろす描写が多い。

    というか佐野さんの本は面白いものも多いけれど、いつもちょっとくどかったり人間性にクエスチョンなものも多々あったりなのだが・・・。

    「そこそんなに細かく調べなくていいから」

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    2020年12月26日
  • 渋沢家三代

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    渋沢栄一、敬三はよく見るが、篤二についてこれだけ書かれている読み物はなかなかないのでは。面白くて飽きずに読んでしまった。3代を追うことで幕末から戦後までの社会を外観できてしまうのもよかった。
    星1つないのは単に歴史の本を読み慣れた自分の好みで、セリフがあるとその出典や史料を確かめたくなってしまうということだけなので。もちろんこういう本なら無くてもいいと思ってますが、あくまで個人的に。

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    2019年05月31日
  • 沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史 上

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    ノンフィクション作家による、月間プレイボーイに連載されていたコラムに一部追加して文庫版化されたもの。取材を基に書かれているため、内容が細切れになっているが、それぞれのテーマについてよく調べられていると思う。沖縄の裏の部分の一端を理解することができる。
    著者に政治的な意図はないにしろ、やや狭史眼的な記述があり違和感を感じる点があった。

    沖縄経済を裏で支配しているのは軍用地主。p385
    過剰なまでの保護政策によって、沖縄が公共投資依存体質になってしまったことも、また厳然たる事実である。p403
    東シナ海のノド元に突き刺さった沖縄は、日本にとって依然、絶対に欠かせない軍事防衛上の要衝である反面

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    2018年10月30日
  • 沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史 下

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    「(軍用地)約88%が国有地で占められる本土に対し、沖縄では1/3は個人が所有する私有地で占められている」p63
    「(ニーチェ)「この世で男が熱中できるものは二つしかない。遊びと危機である」」p134
    「親族同士が助け合う沖縄ユイマール精神は、沖縄人の進取の精神を殺ぎ、ひいては沖縄の発展を阻害する要因ともなっている」p189
    「エイサーは最近では観光イベント化したものが多いんですが、私が最初に出会った勝連平敷屋のエイサーは、先祖送りのためにお盆にしか行われない伝統的なエイサーです。練習もものすごく厳しい。沖縄の芸能の一番深いところにあるのが、あのエイサーだと思います」p241
    「嘉手納基地から

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    2018年10月30日
  • だれが「本」を殺すのか

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    情報の消化と消費の違い、本とは知性と等価なものか、知識と等価なものか、媒体がそれが保持する内容と独立して媒体自身の自立した意味を持つのか?本好きなものとしてまた考えさせられる。

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    2018年10月24日
  • あんぽん 孫正義伝

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    ネタバレ

    言わずと知れた有名人、孫正義の生い立ちからいまに至るまでを、本人、家族等に取材し、書き上げたルポ。
    孫正義にも、ソフトバンクにも正直あまり興味がなかったのですが、好意的なイメージよりは、胡散臭い、ネガティヴなイメージだったので、ちょっと彼に関する本を読んでみようと思い。
    以前、どこかで「おすすめ本」として紹介されていたのもうっすら記憶にあったので、本書を読んでみることにしました。

    しょっぱなから、「本当!?」と訝しんでしまうような情報が次々と紹介され、面白くて惹きつけられる反面、読むのにすごくエネルギーを消費したように思います。
    孫正義は「在日」であることのコンプレックスを力に変えて、がむし

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    2018年02月10日
  • 東電OL殺人事件

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    この事件は自分の女性という生き物についての興味を抱くきっかけとなった事件です。

    今までドラマの世界でしかなかったような二面性を持った女性が本当に存在していたことに衝撃を受けました。

    本では新聞や一般のテレビでは報道されていないことについても、筆者の丁寧な取材による浮かび上がった事実と筆者の推測を知ることができる。

    読めば読むほど、この事件の被害者である一人のエリート女性の人物像をさらに知りたくなってしまう。

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    2017年08月19日
  • 沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史 下

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    野底土南(ぬかどなん)の名前は竹中労の著作で知った。思えば
    竹中労も沖縄に魅了された人だったのだもね。野底は2007年に
    亡くなっているのだが、病床とは言え本書ではインタビューが
    出来ているのが凄い。

    青い空と青い海。日本国内の南国リゾートだけではない面が、
    下巻でもてんこ盛り。上巻はアウトロー色が強かったけれど、下巻は
    政治や経済、芸能の話を主に扱っている。

    日本に駐留している米軍の基地の多くを担っている沖縄。基地
    問題をメディアが取り上げる時には、当然のように基地の危険性や
    米兵による犯罪などが多くを占める。

    だが、基地問題の裏側には軍用地主の存在があることは一切

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    2017年04月16日
  • 東電OL殺人事件

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    東電OL殺人事件は知ってはいたが、詳しく掘り下げみたいと思ってた事件。
    今回読んでみて、やはり闇は深いんだなと再確認した。ただの殺人事件ではないと。
    この本から読み取れるのは2つ。日本の司法制度の酷さと、殺された被害者の異常性。特に被害者の病み方はすべて理解できないところに闇の深さを改めて感じた。

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    2017年01月29日
  • 旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三

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    日本中を旅した民俗学者の宮本常一と、宮本を精神的そして経済的に支えた渋沢敬三のお話し。

    宮本常一の著作を読んで以来少し民俗学に興味があった、宮本と渋沢敬三の生い立ちや関係、渋沢栄一の孫である敬三が民俗学を支援した背景、そして名著『忘れられた日本人』の裏話など、綿密な取材を重ねており大変興味深い内容だった。

    民俗学というジャンルについては若干理解が曖昧だったが、本作で宮本の行動を知ることにより理解する事が出来た。離島や農村の歴史や風習を調査収集するだけではなく、他のエリアや次の世代に伝える事、そして伝わった情報により少しでも生活が豊かになることが、民俗学本来の役割なのだと思った。

    「主流に

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    2016年08月14日