スタンダールのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ展開が早くてメロドラマ的な筋立てなのでスルスル読み進めた。ジュリヤンが人妻の手を握ること一つについても「今日中き手を握れなければ僕の負けだ」とか、
欲望でも恋でもない階級闘争としての不倫をしていて、もうちょっと色恋を楽しめよ、と思うなど。
清純で箱入り娘なレナール夫人が、いざ危機となるとびっくりするほど気転がきいて勇気のある女性に変貌するあたり、ああだこうだと天秤にかけているジュリヤンと対比すると人間的に清々しい。
19世紀初頭のフランスでの、王党派復権が盛んだったこと、ナポレオンの著作や肖像画を読むだけでも立場が危うくなるほど反ナポレオン志向が高まっていたこともこの作品を読むまで意識していなかった。
貴族社会以外ではどうだったのだろう。
それにしても光文社古典新訳文庫の読みやすさ!
登場人物のしおりも助かる。
おかげで挫折した古典をどんどん読めていて感謝しかない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレスタンダールの容貌はよろしくないらしいが、年譜ほどの恋愛をしていれば、赤と黒も容易く書けただろうと思う。恋愛経験の浅い男の妄想話かと思っていたが、実際は自身の恋愛経験と時事、新聞を織り交ぜた著者本人の姿が透けて見える作品だった。主人公ジュリヤンは容貌と記憶力こそ良いが、地頭はそれほどよろしくない片田舎の息子だ。彼なりに努力し神学校に入り、家庭教師など仕事をしていたが、やることなすこと悲劇の主人公気取りで他人に与える迷惑などまるで考えない。むしろ、迷惑をかけている自分に陶酔していた。彼は家庭内暴力の中で育ち、ナポレオンを生きるよすがにしたことで、英雄ナポレオンを崇拝するしか脳のない男に育つ。戦争のない世の中で英雄のような生き方に焦がれる性格になった。ただ彼が人間関係においてみせる自己中心さや他人への無関心は、環境のせいだけではないと思う。彼が時折見せる無責任な行動や感情的な言動は、彼の稚拙な性格の表れだった。要するに、彼は若さゆえに感情的と周りから見られていたが、もともとそちらが本性なのである。理性的で知的な美貌の青年は見せかけで、美しく無垢な町長夫人も移り気な侯爵令嬢も見せかけに騙されて恋していたが、彼は自分だけを一番に思っていたろくでなしである。子供ができたなら父親として責任を取り生きるべきなのに、迷わず死を選ぶのが卑怯者な彼らしい。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ実はもう少しジーナ おばさんとファブリス が露骨な恋愛のご関係になるのかと思いきやそこには至らず わりと精神的な結びつきの恋愛関係みたいなので終わりましたね
そしてどちらかというと牢獄看守の娘さんとしっかりできてしまいまして 最終的に 不倫関係の我が子を我が子として育てたいから死んだことにしちゃおうなんてやってるうちに子供が本当に死んじゃって お母さんも嘆き悲しんで死んじゃって 主人公もそのうち なくなりましたっていう そのたたみかけ はちょっとあの急な展開すぎるのではないかと思いまして 余韻がなかったなあ というところなんですが
まあ ここまでの全体からしていろんな要素が盛り込まれて 大公 とかの 裏切りだったりとか伯爵のちょっとやきもち妬いてるんだけど助けてくれたりとかという人間模様が面白かったので おまけで総合的に4です -
Posted by ブクログ
モーム選の世界十大小説のひとつ。(読むのは、カラマーゾフの兄弟、戦争と平和、ゴリオ爺さん、に続いて四作品目)
発表は、1830年七月革命直後、執筆は七月革命前の王政復古(シャルル十世)の時代。
製材屋の息子(19歳)ジュリヤンが、町長宅の住み込み家庭教師からキャリアをスタートし、神学校勤務を経て、侯爵の秘書に内定するまで、が上巻。
叙述の多くを占めるのが、ジュリヤンとレナール町長夫人(30歳くらい)との間の禁断の恋愛関係。
巻末の「読書ガイド」によれば、史上初のサラリーマンを主人公とする小説、という説もあるらしく、すごろくものを読んでいるような独特の面白さだ。あらすじを全く知らずに読み始めたので下巻が楽しみだ。
思わせぶりなタイトルの意味は、軍服(赤)と僧服(黒)のことだそうで、当時の社会でのしあがるにはこの二つしかない、ということのよう。
貧しい青年が恋愛をも駆使しながらのしあがる、という設定から、往年の青年漫画、柳沢きみおの「青き炎」(1988-1991)をふと思い出した。結末は覚えてないが、自滅だったような。。
それにしても、200年近く前の作品とは思えないくらい読みやすい。
「いま、息をしている言葉で、もういちど古典を」という光文社古典新訳文庫のタグラインの面目躍如といってよいのではないだろうか。
-
Posted by ブクログ
下巻の後半は凄かった。
読んでいて思わず「えーっ!?なんで?嘘やん」って声が出る事、数回。あまりに劇的な展開の為、読む速度が加速した。エンタメ小説では?と思うぐらいだ。
ジュリヤンが、レナール夫人と別れた後、出会ったのが侯爵令嬢マチルダ。サロンの男達を従え、革新的な考えの持ち主。
ジュリヤンとマチルダ、
自尊心の高い者同士の駆け引きが、理解不能である。
うーん、恋なのか…?
ジュリヤンはレナール夫人の時と同じく、マチルダを落とす事に意義を感じていそう。マチルダも初めての恋に混乱し、言動が支離滅裂。でも、ラストに彼女が取った驚くべき行動により、ジュリヤンを本当に愛していたのでは?と感じさせられたり、王妃マルグリッタに自己投影しただけかもしれない、とも捉えられ、解釈が分かる。
レナール夫人のその後については、短い文章で書かれているだけなのに、だからこそ余計に悲しみを誘い、彼女の愛は本物だったと確信できた。
正反対の2人の女性から愛されたジュリヤン。激しすぎる人間であるがゆえに、自ら破滅へと向かう事になる。
彼の人生は一体、何だったのだろうか。
製材職人の息子に生まれ、金持ちを蔑み、成り上がろうとする野心にまみれる。一方で、頭脳明晰、美青年、周りの人に恵まれ、貴族社会の中で重宝される運も持つ。もっと上手く立ち回る事ができれば、十分に富と名声を得られただろうに、あまりにも不器用過ぎた。
ジュリヤンの人生にも赤(栄光)と黒(影)がある。
題名の持つ意味を読後にもう一度考えてみるが、
いろいろな捉え方ができそうだ。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ他の本を読むのも間に挟みながら、ようやく、ようやっと読み終わった…。読み切った自分を褒めたい笑。
子どもの時に「漫画で読む名作文学」的な本で読んだことあったが、その時は、ジュリアンの恋愛と出世の物語…というものだと思っていた。
それは物語の軸ではあるものの、小説で読んでみると、風刺画的な当時のフランスの情勢や貴族、市民の文化風俗がリアルに書かれていて、そっちが主題かなと思うほどだった。
上巻でもそうだったけど、そのせいで、ストーリーとして大事なところは簡単に書かれて、それ以外の時代の説明文やジュリアンの内心が長々と…。
この小説の価値は、表面的なストーリー(野心深く出世を目指したジュリアンが、レナール夫人とマチルドと恋愛をしながら、レナール夫人への殺人未遂により死刑を受ける…)というより、当時のフランスの政治や宗教を書き切ったことがすごいことなのだろうか。
それにしても、ジュリアンがレナール夫人を撃つところは、2行くらいだったか。
ジュリアンの死なんて、直接的記載はなかった。
事実の記載があっさりしすぎていて…。
ただ、マチルドがジュリアンの生首にキスするところは、漫画で読んだ強烈なグロテスクな印象よりも、さらっと書かれていて、むしろ爽やかで好感をもった。
キスも、口付けではなく額へのキスだったのね。
さらりと書かれた事実の中では、レナール夫人の最期が一番悲しかったかも。彼女こそ、どんなに苦しんで死んでいったのかと思うと、母として、同性として、悲しい気持ちになったのよ。
ジュリアンの女性に対する思いは、
レナール夫人に対する気持ちは「愛」。
マチルドに対する気持ちは「恋」だったのだろう。
マチルドの気まぐれに振り回されて苦しんで、でも美しい彼女から目が離せない…まさに恋の初期の感情だよね。
ジュリアンが貴族に教えられた通りに振る舞った結果、マチルドに不安や見捨てられる恐怖を感じさせ、マチルドの心を手に入れたところら、ジュリアンってすごく理性的な人なのね…と感心しました。
恋のさなかって、こういうこと言っては逆効果、こういうことやっては逆効果だと理解していても、感情や行動を抑えられない人が多いだろう。貴族からのアドバイスの通りに行動できるジュリアンは、理性的だし、それだけ出世のための行動が身についてしまっていたのか??
それにしては、ジュリアン突発的にかーっとなってレナール夫人殺しに行ったり、理性とはかけ離れたところもあるんだけどさ…。
マチルドとジュリアンは、生まれた家の格は全然違うけど、人間性は似てる。
ジュリアンもマチルドも、自分が周りからどう見られるか?どう評価されるか?ということを常に考えているんだよね。
レナール夫人のモデルは、著者のスタンダールの母とも言われているらしい。
スタンダールの母は、彼が7歳の時に33歳で亡くなっている。そういえばジュリアン自身の母も登場しなかったな。
ジュリアンがレナール夫人の手紙に激怒したのは、この手紙のせいで輝かしい将来が失われた!という思いもあるだろうけど、レナール夫人から裏切られた!という、絶対的に自分の味方であるはずの人からの裏切りに対する怒りだったのだと思う。 -
Posted by ブクログ
ナポ1敗北。ルイ18復古王政。シャルル10、王党派貴族を優遇。昔の絶対王政・貴族の息苦しい時代に逆戻り▼貧しい若い男ジュリアン。身分は低いが、いつか出世したい。頭はいい。町長の家に家庭教師として雇ってもらい、そこの夫人と不倫。「高貴で美しい女を手に入れた」▼家庭教師を辞めさせられたジュリアンは神学校に入学。そこの神父の紹介でパリの侯爵の秘書になる。侯爵の娘と結婚の流れに。玉の輿成功かと思われたが、町長の夫人(前の愛人)が侯爵に「こいつはひどい男」だと告げ口。「彼は、うわべはいかにも無欲な顔をしながら、か弱い不幸な女を誘惑し、一家の財産を手に入れようとする偽善者です」。結婚の話はなくなる。ジュリアンは夫人に発砲する。ジュリアン逮捕▼裁判。ジュリアン「陪審員の皆さん、あなたたち上流階級は、下層階級で貧困に苦しみながら教育を受けて上流階級の社交界に入り込もうとする若者の気力をくじこうとしている」。毅然とした態度を示すジュリアン。陪審員たちの心象を害し、死刑に。享年23歳▼身分の低い者が身分社会に挑戦して破滅。赤は共和主義/貧しい男、黒は復古王政/貴族。スタンダールStendhal『赤と黒--1830年年代記』1830 ※「スタンダール」はペンネーム、本名マリ=アンリ・ベール
〇ジュリアン・ソレル。男。20歳。貧しい家に生まれる。出自が卑しい。父は材木屋。美貌と才知。ラテン語が読める。野心家。ナポレオンを崇拝。貴族に反感・劣等感。タルテュフ(偽善者)を自称。
●レナール。男。町長。王党派。平民・ジャコバン派が嫌い。
〇レナール夫人。30歳。美人。貞淑・無垢。ジュリアンと不倫。ジュリアンに発砲されるも、一命を取り留める。ジュリアン処刑の3日後に死去。
●ヴァルノ。レナールのライバル。
〇エリザ。レナール家の召使。ジュリアンに恋心。
〇フーケ。ジュリアンの親友。材木商。
〇ピラール神父。神学校の校長。キリスト教異端派。
●ラ・モール。侯爵。パリの貴族。大地主。ジュリアンを秘書として雇う。
〇マチルド。ラ・モール侯爵の娘。美人。プライドが高い。ジュリアンと恋に落ち、ジュリアンの子を身ごもる。
ファブリス。青年。ナポレオンを崇拝し、ワーテルローの戦い(1815)に参加するが、活躍できず負傷。これを反ナポレオンの兄に告発され、逃亡。叔母のコネで、僧侶になる。ある日、ファブリスは旅の劇団の女優に恋。しかしその女には男がおり、争いになってファブリスは男を刺し殺してしまい、パルムの監獄に収監される▼ファブリスは監獄長官の娘クレリヤに恋。パルム公国で新大公が就任すると、ファブリスは罪を免除され、出所、高位聖職者になる。ファブリスはクレリヤ(既婚)と密会を続け、クレリヤとの間に子供ができるが、子供は死んでしまい、クレリヤは不倫の罪に苛まれ死亡、ファブリスも絶望の中、僧院に隠遁するが、まもなく死亡。スタンダールStendhal『パルムの僧院』1839
〇ジーナ。ファブリスの叔母。パルム公国のサンセヴェリナ侯爵夫人。甥のファブリスに愛情。
●パルム大公。サンセヴェリナに言い寄るがフラれる。ファブリスへの嫉妬から、ファブリスの刑を不当に重くする。牢獄にいるファブリスを助けようとサンセヴェリナはパルム大公を暗殺させる。
※自分の無知の断片を盾にして、現実に抗議するのはよくない。
++++++++++++++++++++
ゴリオ。男。老人。元パスタの製麺職人。安アパートで質素に暮らしている。同じ安アパートに住む貧乏学生ラスティニャック。今は貧しいが、いつか出世して華やかな上流社会の仲間入りをしたい▼ゴリオには金持ちの男と結婚した2人の娘がいる。きらびやかなパリの社交界で生きる娘たち。何かとお金がいる。普段はゴリオに冷たい娘たちだが、金に困ると父ゴリオを訪ねて、おべっかを使い、金をねだる。娘たちを溺愛するゴリオは、娘たちの願いならと、金を工面し続けていた。やがて金が尽き、それを2人の娘に伝える▼ある日、ゴリオが心臓発作で倒れる。死の淵をさ迷うが、娘2人は見舞いにも来ない。ゴリオ「忙しいのだろうか、眠っているのだろうか、あの子たちが来ない。いや、あの子たちが来るわけがない。そんなことはずっと前からわかっていた。ただ信じたくなかったんだ」。ゴリオは涙で両目がいっぱいになる。ゴリオ、息を引き取る▼ゴリオと同じアパートに住む貧乏学生ラスティニャックは、役所にゴリオの死亡届を提出、粗末な棺を格安で手に入れる。ミサはお金がかかるので、司祭に安価な祈りをしてもらうことに。ゴリオは埋葬された。娘たちは来ない。代理の使用人が来ていた。司祭が貰った金額の分だけ、ゴリオに短い祈りを唱え終ると、使用人とともに姿を消した。墓掘り人がゴリオの棺にシャベルで土をかけると、「チップをくれよ」と言ってきた。貧乏学生ラスティニャックはポケットを探ったが、空っぽだった。猛烈な悲しみが込み上げてくる。辺りはすでに暗く、高台からパリを見下ろすと、街の灯がきらきらしている。社交界が息づいている。ぶんぶんうなりをあげるミツバチの巣のような世界。ラスティニャックは叫ぶ「今度はおれが相手だ」。オノレ・ド・バルザックBalzac『ゴリオ爺さん』1834
※メゾン・ヴォケール。ゴリオの住む安アパート。
※悲劇の父親ゴリオ。リア王との比較。
〇ラスティニャック。貧乏学生。安アパートの住人。ゴリオの次女デルフィーヌ(人妻)に恋。
●アナスタジー。ゴリオの長女。夫の所有する宝石を売って、金を自分の愛人に貢いでいる。
●デルフィーヌ。ゴリオの次女。派手好き。浪費家。
〇ヴィクトリーヌ。ラスティニャックに恋。資産家の娘。兄がいる。
●ヴォートラン。悪党。脱獄犯。金がほしい。目的のためには手段を選ばない。ラスティニャックを悪の道に引込もうとする。資産家の娘ヴィクトリーヌの兄を殺し、財産をヴィクトリーヌに相続させ、奪い取ろうと画策するが失敗・逮捕。
アンリエット。伯爵夫人。ある日、舞踏会で若い青年フェリックスに出会い、次第に惹かれていく。しかし、アンリエットは夫と子供がある身、情熱よりも貞節・徳を優先。成就しない恋に思い悩みながら病死する。オノレ・ド・バルザックBalzac『谷間の百合(ゆり)』1835
※うち解けすぎると尊敬を失い、気安くしすぎると馬鹿にされ、むやみに熱意を見せると食い物にされる。
*バルザック。登場人物を別作品で再登場させる手法。
++++++++++++++++++++
エマ。貧しい農家の娘。贅沢な暮らしや情熱的な恋に憧れている。エマはシャルル・ボヴァリーというさえない開業医の男と出会い、結婚・出産。しかし、シャルルは平凡な男。結婚生活は退屈。憂鬱な日々。刺激がほしい。恋愛小説のような恋がしたい。他人が作った物語やイメージを自分の人生として生きようとするエマ▼ある日、将来有望そうなレオンという男子学生に出会い、惹かれていく。が、レオンは勉学のため、パリへと引っ越してしまう。しばらくすると、エマはロドルフという女好きの金持ち男に出会い、肉体関係をもつ。エマは男に「一緒に駆け落ちしてほしい」と言うが、断られてしまい、男からフラれてしまう。ある日、エマはオペラを見に行くと、偶然、昔好きだった男子学生レオンに再会。エマは夫や娘をほったらかして、レオンと頻繁に会うようになる。さらに、贅沢品や高価な服を買うために借金を重ね、ついに首が回らなくなる。何をやっても満たされない。わたしは不幸な女。絶望の中、エマはヒ素を飲んで自殺▼エマの死後、夫シャルルは妻にロドルフという男がいたことを知り、呆気にとられ立ち尽くす。ある日、町でばったり妻の不倫相手ロドルフに会ったシャルル。シャルルの顔は紅潮し、小鼻は素早くひくつき、唇は震え、暗い激怒をたたえながらロドルフをにらむ。が、やがてシャルルの顔は陰気で無気力な表情を見せ、ロドルフに言う。「あなたを恨んではいません」。シャルルは、エマを心底愛していた。彼女はもういない。ある日、シャルルの娘がシャルルを夕食に呼びに行くと、シャルルが地面に倒れている。息をしていない。その手には、エマの遺髪が握られていた。ギュスターヴ・フロベールFlaubert『ボヴァリー夫人』1857
・最高の口づけが唇に残すものは、さらなる逸楽を求める叶わぬ欲望。
・偶像に触れてはならない。金箔がはげて手に残る。
フレデリック・モロー。青年。人妻マリー・アルヌーに一目惚れ。求愛するも失敗し、夢破れる。ギュスターヴ・フロベールFlaubert『感情教育』1869
このくだらない世の中で、笑いほど真面目なものはない。フロベール
++++++++++++++++++++
レベッカ・シャープ。通称ベッキー。女。身分が低く、貧しい。才知。色んな男に言い寄り、肉体関係をもち、社交界でのし上がっていく。が、最終的にすべてを失い破滅。サッカレー Thackeray『虚栄の市きょえいのいち』
*世界は鏡。しかめ面をすれば、それはこちらをにらみつける。笑いかければ、こちらに笑いかけてくる▼成功は滅多になく、ゆっくりと訪れる。破滅はたやすく、あっという間に訪れる。
上機嫌は社交界に着ていける一級品のドレスである。サッカレー『洋服仕立てと化粧について』
難しいのは信仰のために死ぬことではない。信仰に従って生きることだ。サッカレー『ヘンリ・エズモンド』
笑い方を知らない人は尊大で自負心が強い。サッカレー
++++++++++++++++++++
※救貧法改正(1834, イギリス)。それまで行われていた現金や食料の支給(院外救済)は大幅に制限され、生活に困窮した人は救貧院(workhouse)に収容された。労働・厳格な生活・最低限の食事。
オリヴァー・ツイスト。少年。ある上流階級の男が不倫してできた子。母は出産後に死亡。孤児。9歳。地方の孤児院でいじめられている。ある日、孤児院を逃げ出し、ロンドンへ。優しい紳士ブラウンローに出会い、引き取られ、幸せに暮らす。チャールズ・ディケンズDickens『オリヴァー・ツイスト』1838
●フェイギン。ロンドンの泥棒。おっさん。貧しい少年たちを集めて窃盗団を組織。オリヴァーを誘拐し、悪の道に引込む。狡猾。猜疑心。シャイロック(『ベニスの商人』)と同じユダヤ人。絞首刑に。
●アートフル・ドジャー。少年。スリの天才。フェイギンの窃盗団の一員。
●サイクス。プロの強盗。おっさん。フェイギンの仲間。いつも犬(ブルズアイ)をつれている。裏切ったナンシーを撲殺し、警察に追われている途中に事故死。
〇ナンシー。サイクスの女。娼婦。フェイギンの下で働く。良心の人。オリヴァー誘拐に加担したことを悔やみ、紳士ブラウンローにフェイギンやサイクスの悪事を密告。それを知ったサイクスにより「裏切り者」として棍棒で殴り殺される。
※背表紙や表紙のほうがはるかに優れている。そんな本がある。
エベニーザ・スクルージ。老人。金貸し。ケチ。貧乏人に1ペニーも寄付したくない。口癖Bah! Humbug!(ばかばかしい)」。クリスマス前夜、精霊が現れて、スクルージの過去、現在、未来を見せる。愛よりも金を優先して最愛の人を失った過去。貧しいながらも生きる人々の姿(現在)。自らの悲惨な未来。スクルージは改心する。チャールズ・ディケンズDickens『クリスマス・キャロル』1843
※ロンドンの下町
〇ジェイコブ・マーレイ。昔、スクルージが一緒に会社を経営していた男。7年前に死亡。(鎖につながれた)亡霊としてスクルージの前に現れる。
〇ボブ・クラチット。スクルージの会社の事務員。薄給で働いている。
※映画「ミッキーのクリスマス・キャロル」(1983)
デイヴィッド。男。色々な経験をして、作家として成功するまでの話。母が再婚(しかもやな男と)、大好きな母が死亡、学校で体罰を受ける、待遇の悪いバイト、旅の途中で身ぐるみを剥がれる、結婚した妻が早世。チャールズ・ディケンズDickens『デイヴィッド・コパフィールド』1849
テレーズ・ドファルジュ。パリで酒場を経営する中年の女。小さい頃、姉を貴族に殺され、貴族に深い恨みを持っている。やがて、フランス革命が始まり、民衆による貴族階級への集団リンチ("報復")が始まった。テレーズの姉を殺した貴族を叔父にもつチャールズ・ダーニーは、外国(英)に移住("逃亡")したとして逮捕・裁判にかけられた。テレーズは法廷でダーニーの叔父が農民の娘を誘拐して強姦した証拠をつきつける。判決の結果、ダーニーは翌日の午後にギロチン処刑されることに。テレーズはさらに、ダーニーの妻ルーシーとその幼い娘も殺そうと画策し始める▼それを聞きつけたシドニー・カートン(ルーシーに片想いする酒浸りの英の弁護士)は、ルーシーにすぐに仏から英へ逃げるよう伝える。さらにカートンはダーニーが収容されている独房に行き、ダーニーを独房から逃がすと、身代わりとしてダーニーになりすます。ギロチンで処刑される直前、カートンはつぶやく「ルーシーとその夫が人生の旅を終え、土のベッドで並んで横たわる姿が見える。これから行くところは素晴らしい安らぎの地だ」。チャールズ・ディケンズDickens『二都物語』1859
※旧体制を壊してのし上がった新たな抑圧者たちは、報復の刑具(ギロチン)で滅び去るだろう。
家族愛の中に祖国愛が芽生える。ディケンズ『骨董品』
++++++++++++++++++++
ラインハルト・ヴェルナー。男。大好きだった幼馴染の娘エリザベートが、別の男と結婚してしまう。エリザベートは2度断ったが、母から結婚を強くすすめられ、仕方なく結婚したらしい。ラインハルトは、エリザベート夫婦から新居の家に招待される。そこで、過ぎ去った幼い日々の思い出を詩にする。湖のほとりを2人で歩いたこと。テオドール・シュトルム『みずうみ』1849 ※ドイツ
*誌的リアリズム
*トマス・マンのトニオ・クレーガーに影響を与える
マーク・トウェインTwain『トム・ソーヤの冒険』1876
〇トム・ソーヤ。少年。やんちゃ。好奇心旺盛、知恵と勇気。母を亡くし、叔母のポリーと暮らしている。
〇ハックルベリー・フィン。少年。浮浪児。ボロボロの服。自由奔放。大人は「ハックと一緒に遊ぶな」と言う。
〇ベッキー。トムが好き。おさげ髪。
〇マフ・ポッター。老人。酔っ払い。殺人の罪を擦り付けられる。
●インジャン・ジョー。夜の墓場で人を殺し、ポッターに罪をなすりつける。悪事をはたらき、大金を洞窟に隠している。耳が聞こえない。
ハックルベリー・フィン。浮浪児。才知。良心。同情心。黒人奴隷ジムと共に、自由を求めてミシシッピ川をいかだで北上、カナダを目指す。黒人奴隷を助けるのは罪になるが、ジムとの友情を優先。ジムマーク・トウェインTwain『ハックルベリー・フィンの冒険』1885
それは穏やかで平安に満ちた夏の風景だった。夢のように美しく、日曜日のようにもの寂しくひっそりとしていた。マーク・トウェインTwain『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』1889
++++++++++++++++++++
※写実主義(リアリズム)文学。日常生活。普通の市民。心理描写。社会を客観的に観察。道徳的・心理的な葛藤。 -
Posted by ブクログ
下巻に至って、いよいよファブリスとクレリアの純愛か、叔母のサンセヴェリーナ公爵夫人の盲愛・偏愛によるファブリスの不幸か、となります。
貴族ファブリスは恋のつまらないさや当てで、旅芸人の男を殺してしまい、当時(17~18世紀)のイタリア公国は「お手打ち」はおとがめなしなのだが、専制君子の大公の虫の居所によって、ファルネーゼ塔という監獄にいれられてしまったのでした。
美魔女とでもいうのでしょうか、宮廷の男性という男性を惹きつけてやまない貴族の娘のジーナ叔母(サンセヴェリーナ公爵夫人)は政治的手腕も長けていて、おまけにモスカ伯爵というもっと辣腕の大臣を巻き込み、監獄からファブリスを助け出すというが良かれと、あらゆる手を尽くすのです。
でもそれは「いらんこと」でした。獄舎の監視将軍の純真で魅力的な娘クレリアにひとめぼれ、浮気なファブリスも「これぞ真なる恋」と開眼。
しかし、叔母もクレリアも愛するファブリスのために他者と結婚するという、スタンダール・ワールドの流れ、手に汗握る展開が続き、大団円で終わります。
と、さもあっさりと書きましたが、恋の駆け引き、宮廷政治の陰謀やら、当時の小公国専制政治のあらましなど、読むのに苦戦したところもありました。
昔読んだ中央公論社「世界の文学」の『パルムの僧院』がわかりにくかった記憶があったので、この新潮文庫改版はわかりやすくなっているのかな、と思っていましたが、何のことはない同じ大岡昇平氏訳だったのでした。つまり、この文庫の初版を見ると、昭和26年(1946年)に訳されているのですね。道理で監獄の塔の高さが尺や寸で表されていますもん、感覚わかりませんけどね。でも、さすがスタンダール研究者の作家の珠玉の翻訳には違いない、とは思います。 -
Posted by ブクログ
主人公のファブリス・ヴァルセラ・デル・ドンゴは北イタリア・パルム公国、デル・ドンゴ侯爵の二男にして、出生の秘密あり。
時はナポレオンの遠征時代、フランス軍はミラノに入城、疲労困憊している軍中尉ロベールはデル・ドンゴ侯爵夫人の館に宿泊したというところから始まる。
ミラノの郊外コモ湖のほとりグリアンタのデル・ドンゴ侯爵城で、ファブリスは16歳になった。吝嗇な侯爵の父親に冷たくされるのは事情があるからで、ずばりフランスはスタンダールだね。
ともかく夢見がちな少年はナポレオンが再び遠征したと聞くと、イタリアの生家をとび出してワーテルローへはせ参じるのである。戦いの場で世間知らずのおぼっちゃん、どうなる?
優しいばかりの母デル・ドンゴ侯爵夫人、盲愛の叔母(父の妹)に囲まれて、ファブリスは幸福の追求=冒険談と恋愛遍歴。とどのつまり、やんちゃをやってはしりぬぐいをしてもらい「可愛がられる人生」をゆく。
叔母ジーナ(アンジェリーナ=コルネリア=イゾダ・ヴァルセラ・デル・ドンゴ・サンセヴェリーナ公爵夫人)の愛がすごい。だって、そのために金持ちのサンセヴェリーナ公爵と形式的結婚(?)、パルム公国の大臣モスカ伯爵を恋人にしてファブリスを助けるのだよ。
また当時のイタリアロンバルジア公国、パルム公国の貴族の生態やら、地勢的事情を書き連ねたストーリーは、ロマンチックに尽きるけれど、ヨーロッパは地続きなんだなあと今さら思わされた。
ま、そんな風に上巻は終わる。