あらすじ
召使の密告で職を追われたジュリヤンは、ラ・モール侯爵の秘書となり令嬢マチルドと強引に結婚し社交界に出入りする。長年の願望であった権力の獲得と高職に一歩近づいたと思われたとたん、レーナル夫人の手紙が舞いこむ……。実在の事件をモデルに、著者自身の思い出、憧憬など数多くの体験と思想を盛りこみ、恋愛心理の鋭い分析を基調とした19世紀フランス文学を代表する名作。
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Posted by ブクログ
第三階級と呼ばれる貧しい家庭で育ちながらも気高い心と強い自尊心、そして熱い情熱を身にひそめたジュリヤンが或る上流階級の夫人との恋愛と、貴族の令嬢との恋愛を展開していくが、主人公や二人のヒロイン、周りの人達の深い心情を描いている点に引き込まれる作品。
実在した事件を基に社会への風刺と、恋愛に陥った人の情熱が熱く語られている。特に夫のために奔走する令嬢の姿が慎ましい。
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深く考えずタイトルで選んだ小説でしたが、読んでいくうちにどんどん引き込まれ、しまいには深く考えさせられる内容でした。特に貴族と平民の描写、自尊心の高い主人公と貴族の女性や婦人との恋愛模様の描写の細かさに感銘を受けました。重要そうに思えるところはあっさり、細かい些細な部分は?重厚に描かれているところも、新鮮に感じました。
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大学生の頃読んだ時より恋愛の駆け引きがよく理解できますた。
昔の小説なのでどうしても中盤だれるが、節々に現れるエクストリームな感情描写にグッとくるor爆笑必至で、面白く読める。
後半ジュリヤンが死に向き合うシーンでは、それまで仮にジュリヤンの野心を他人事のように思っていた読者も自らの生き様とジュリヤンのそれを比べずにはいられないのではなかろうか。
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1830年7月革命ごろのパリと地方都市を舞台にした恋愛小説
よく見聞きするフランス産小説群でも初期のもので
『ボヴァリー夫人』のような自覚的に時代を超えようとするのに対し
色濃く作者の生きる景色に寝ているので
現代世界異境の地では意味の取れないところも多い作品
それでも当時の恋愛を題材に作者から見えている枠を存分にひろげている様が
荒粗しく面白い
普遍な女性像や人間の感情という捉え方でなく
作者の位置と歪みが登場人物を極端に描いていても
達すれば通ずることを感じさせる
Posted by ブクログ
大分時間がかかりましたが、やっと読み終わりました。自尊心がれ異常に膨れ上がった天才肌の美青年ジュリアンが、色恋とその自尊の狭間で命をすり減らし、最終的には自尊心が恋に優り、それゆえに犯した罪の元斬首される話。こんな書き方は全くあらすじではないですが、巻末にある当代の評論家がかいたその批評が、著者スタンダールの執筆意図をしっかりと言い当てています。
フランス革命の前後において、全く変わってしまったフランスの時代的情緒を描いた作品だということです。私個人としてはフランス革命を手放しで称賛することはできない立場ですから、大革命を前後したフランスの時代を描写した本作は、とても大きな印象を私に残しました。
もう一度じっくり読み返してみたいです。人間描写の巧みといいましょうか、それも含めて時代描写の傑作であると思います。
15.07.23 - 15.10.18
Posted by ブクログ
いやあ、知らなかったなあ。
19世紀パリでは、男がいつまでも変わらぬまごころを誓い、深く愛していると相手に思わせれば思わせるほど、相手の女性の心では男を下げることになったんだって。毎朝恋人を失いそうだと思うのでなければ、パリの女性は恋人を愛することが出来なかったんだって。
めんどくさー。よっぽど退屈してたんだね。
小説の後にあった、D・グルフォット・パペラさんという人による、この小説の書評に分かりやすく書いてあったりよ。ところでパペラさんて誰?ええ?フランスではスタンダールという名前のイタリアの住民?
Posted by ブクログ
恋愛と社会階級のふたつの側面からそれぞれに注目しながら読むと楽しめるかもしれません。なんなら2回読むのもありでしょう。
筆者は「恋愛論」なんて本も書いている方であるため、解説等にもあるように恋愛を分析した描写はかなりひきつけられます。
社会階級に関しては、主人公がよく喋るためにそこまで理解し難いものでもなく、対立構造は難なく読みとけます。当時の雰囲気が伝わってくるため、世界観に入り込みやすいと思います。
私は上下巻で1ヶ月ほど時間をかけて読みました。
個人的にですが、もっと一気に読み進めればまた違った感想になったのかなと思います。
またいつか読みたいものです…。
Posted by ブクログ
フランス文学は恋愛、心理、自己嫌悪、嫉妬等生々しい感情がストレートに表れると感じた。共和主義と自由主義との階級対立という背景が掴めないと分かりにくい。レーナル婦人、ジュリヤンソレル、アマンダ、マチルダ嬢、クロワズノフ伯爵、舞踏会、自殺等人間の心理的描写がよく分かった。
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読書会のプレゼント企画でいただいた一冊。学生時代以来、約20年ぶりの再読になる。物語の大半はフランスの貴族階級における恋の駆け引きの描写に費やされる。ただそれも興味深いシーンが多くて、引き込まれるものがあった。ラストはあっけない印象が残るも、それが返ってよかったように思う。末尾にある訳者解説から、モデルとなる実際の事件があることがわかるけれども、それを知らなくとも十分楽しめる。
Posted by ブクログ
前編のレーナル夫人との関係のあとに、
後編ではマルチド・ド・ラ・モールとつきあいだすが、
マルチドとの関係がようやくうまくいきそうな調子になってきたところに、
別のルートから、レーナル夫人の手紙が二人を危機におとし、
激昂した主人公ジュリアンはレーナル夫人をピストルで撃ってしまう。
ジュリアンは捕まったが、レーナル夫人は死なず、
逆にジュリアンと仲を深めていくー・・
最後に、綺麗に終わりたかったのか、死ぬ描写がないのはちょっと驚いた。
ラ・モール嬢を誘惑するために、わざとつれなくするという恋愛論が、当時は新鮮だったとか。
Posted by ブクログ
上巻までの流れで我が身を滅ぼしそうな雰囲気を存分に出していた主人公のジュリアン。やはりというかなんというか、予想通りに転落人生を送ることになります。こういう悲劇的な展開はフランス文学としてはある種のお家芸という印象です。
序盤から終盤まで、とにかく一貫して各登場人物が自分の気持ちを語り尽くすというフランス文学王道の展開で、一度に読み進めるのは結構キツいです。それぞれが命を懸けてぶつけてくる想いを受け止めるには、読み手側にもそれなりの心構えが必要です。
主人公はジュリアンなのですが、この作品はジュリアンを取り巻く二人の女性、ラモール嬢とレーナル夫人の心の揺らぎとジュリアンを巡る確執なくしては成立しません。その意味で、三人の主人公が舞台を転換させながら進む戯曲であるとも言えるでしょう。
各登場人物がなぜ、このような行動を取るのか?なぜ、このような発言をするのか?なぜ、このような愛憎入り混じる人間関係になってしまうのか?
このあたりは、21世紀の日本に生きる身としては理解しがたい部分があります。この作品を読んで、即「傑作だ」という感想も持てません。ただ、ナポレオンが生きた時代のフランスでは、こうした人生観を持ち、愛と恨みとの間で揺れながら生きた人たちがいたのだ、ということを知ることができるという意味で、この小説は今の時代に独特の存在感をもって生き残っているのだと思います。
読みやすいとは言いませんが、当時の愛憎を知るための教養として、読んでみるのもいいかもしれません。
Posted by ブクログ
レーナル夫人との不貞関係は限界を迎え
ジュリヤン・ソレルもいよいよ身体ひとつで社会の荒波に飛び込んでいく
神学校をドロップアウトして侯爵家の秘書になり
社交界デビューを果たした彼は
貴族社会の、とりすまして陰険な暗黙のしきたりにも順応していった
ジュリヤンは頑張っていた
父親のように導きをくれる人々との出会いがあり
自由主義者たちとのつながりが生まれ
さんざん虐待された実の父親にも孝行をくれてやった
最後はナポレオン同様の軍人になり、ますます躍進する人生だった
しかし
昔の女の嫉妬?が、彼の足を引っ張った
すべてはジュリヤンの、世界に対する憎しみから始まった
生きることに不満を抱えていた女たちにとって
ジュリヤンの存在は希望の扉を開く鍵に見えていたのだと思う
その扉とは、結局のところギロチンにほかならなかったが
Posted by ブクログ
ピカレスク青春恋愛成り上がり社会派小説。
盛りだくさんで、古典とされているが読みやすく、抑圧された時代背景も鑑みて読めば深みも感じられる。
さすが世界の十大小説。
Posted by ブクログ
「ー」
名誉を重んじたジュリアン。名誉なんてくだらないと考える人もいるかもしれない。しかし、彼にとっては名誉を得、守ることこそが大事なのであった。
ジュリアンを好きになることで自分が他よりも高貴であると考えたマチルド。ジュリアンのために奔走する姿をあえて他人に見せつけることで、自分が英雄的であると表現した。
ジュリアンの犯した罪は、レーナル夫人に対して銃を撃ったことだ。しかし、裁判にかけられている本当の罪は、卑しい階級から抜け出し社交界に出られるまでに出世したことだ。故に、死刑。
彼は穏やかにギロチンへ向かった。
名誉ある生き方をせねば、と深く感動した。自分の名誉を傷つけられて場合には、なんとしてでも挽回しなければならない、と。
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なにしろ、中身のしっかりした小説であったと言えるだろう。
時代や立場を反映した人々の内面描写が素晴らしくて、その瞬間の風俗、思想をつまびらかにするものであると同時に、それゆえに、掛け値無しの心の入った恋愛小説にもなっている。
小説的な作られたドラマの妙というよりはむしろ小説よりも奇たりえる現実の面白さ、時代の空気によって当然引き起こされるような天然のドラマの興奮、と言ったものが味わえる。良かった。
Posted by ブクログ
ちょい昔の欧米文学の翻訳にありがちな読みにくさあり。めげずに読めばなかなか。特に下巻の中盤あたりから面白くなる。名作として残り続ける理由をわたしは感じた。
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後半が急展開でグイグイ読ませられたけど、終わり方があっけなかったかな。
裁判のシーンはカラマーゾフの兄弟を思い出した。
ジュリアンの野心描写は良かったけど、恋愛描写も強かったせいで、あまりしたたかな人間には見えなかった。
Posted by ブクログ
学生の頃に『パルムの僧院』を読んで以来。
(友人から「退屈だったけど読んでみる?」と言われて借りたけど、退屈だった)
退屈ではないけど、主人公達にはやや共感しにくかった。実話が元との由。
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スタンダール(1783-1842)
この作品では19世紀前半から中頃が舞台らしい。ナポレオンも下級貴族から自分の才覚で皇帝まで成り上がったが、ジュリアンも恋愛を手段として階級上昇を狙うという感じ。本当、自分が惚れた女性のことは生涯大好きなんだなぁと。恋多きイメージのフランス人男性が意外とちゃんと一途だった。
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キショいほどの記憶力を発揮するジュリヤンは貴族のオッサンにその能力を買われ、パリにくる。仕事上、とあるサロンに通うようになるのだが、メッチャ美人の超ド級ツンデレ侯爵令嬢が居た!
前半はその心理的攻防を克明かつ執拗に描いていく。
確かに恋愛小説と言えるが、ハーレクイン的な甘く感傷を揺さぶられることはほぼない。描き方はクールかつドライである。間違っても湖上の妖精だとか、そういった類いのモノは出現しない。
幕切れは新約聖書に出てくるサロメや、現代で言うならば School daysを想起させる。なかなかエグい展開となるが、これも愛の成せるわざである。
レーナル夫人は旦那に始末されたのでは?と予想している。
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国語便覧に載るような有名な小説なので、読んでおこうと思い手にとった。平たく言うと材木屋のせがれのジュリヤン・ソレルが貴族社会で成り上がろうとして、挫折する話である。読み終わってから知ったが、実話に着想を得ているという。
赤は軍服、黒は僧服を表している(諸説あり)。本当は副題に「1830年代記」と付されているらしいが、新潮文庫版にはなかった。原書は1830年刊行なので、「1830年記では」という疑問が頭をよぎった。
文学史的には主観的リアリズム小説の先駆であり、心理小説、社会小説の傑作とされている。バルザックと比較されることも多いようだが、文学史に明るくないのでよくわからない。王政復古時代の雰囲気をよく描き出しているという定評もある。
ジュリヤン・ソレルはラスコーリニコフと並んで有名な主人公だと思う。どちらも象徴的なキャラクターである。人によって占める位置は違っても、誰の脳にもジュリヤンやラスコーリニコフらしき何かがもともと住み着いていると思っている。
『赤と黒』を読むと、自分の心中にぼんやりと渦巻くだけだった反抗心や自負心にジュリヤンと名前が付けられ、はっきりとした形を作る。「こちとら家のローンや年金問題で汲々としているというのに、代々資産家の連中は金が生んだ金で十分生活ができ、生活費の算段に頭を悩ますことがないのだからな!能力も性格もよくなるというものだ!やりきれんわい!」と騒ぎ出す。反社会性の強いラスコーリニコフと違って、ジュリヤンはルサンチマンを溜め込んで身を亡ぼすこともない地に足の着いた野心家である。彼を脳内に招けば、嫉妬や見栄に駆られて、自らの価値を下げるような真似もしなくなる気がする。
それをもって人におすすめできるかといえば、そうでもないけど、私は読んでよかったと思った。
Posted by ブクログ
ナポレオン失脚後の復古王政時代のフランスを、下層階級の生まれでありナポレオン信者である主人公ジュリアンの視点から鮮明に描いた作品。
正直、多少なりともこの時代のフランスについて知識を持っていないと何が何やらさっぱりだと思われる。
実際読んでいていまいち背景が掴めない部分もあったので、ざっくりとだが勉強し直したりもした。
言ってしまえば、田舎から都会へと立身出世を夢見て上京した野心溢れる青年が、将来の成功と眼前の色恋に揺れ人生を狂わされていく物語。
個人的に恋愛要素はあまり必要としていないのでいささか強く感じられたが、当時の貴族や聖職者、ブルジョワジーや労働者などの思想や価値観などがありありと描かれていて、後の七月革命へと続く暗雲とした雰囲気が常に感じられる良い作品だった。
Posted by ブクログ
上巻に続き「どうやってこの話に収拾つけるんだろう」と読んでて気が気じゃなかった。
最後ジュリヤンが地下牢でレナール夫人と再会し死を運命と受け入れる場面、そこに至る心理描写は圧巻。マチルドがジュリヤンの首を持って弔う場面が好き。マチルドはレディだけど、もののふでもある。
Posted by ブクログ
スタンダール『赤と黒』新潮文庫
『赤と黒』は、イエズス会と亡命貴族が作り上げた社会に対する痛烈な諷刺の書である。
(解説より)
ヘッセの『車輪の下』やバルザックの『ゴリオ爺さん』、ナポレオンに傾倒しているところは『罪と罰』のラスコーリニコフを思い出しました。
Posted by ブクログ
フランスの歴史などの予備知識はないのですが、大学の先生がおすすめしていたので読みました。
社会風刺的な描写についてはほぼ理解できていないのですが、ジュリヤンの何より名誉を重んじる生き方はいいなと思いました。
先生がおすすめしてたのはそういう点なのかな…?
Posted by ブクログ
解説を読んでイエズス会や亡命貴族連中への風刺として書かれたものだと理解しましたが、個人的な実感としては、社会風刺よりも恋愛小説のような印象が強いと思いました。
レーナル夫人とマチルド、対極に位置する二人の女性に求愛するジュリヤンの描写は、自然の恋と頭脳による駆け引きの恋を鮮明に対置させており、ここにこの時代のフランスに充満した空気を読み取ることができました。
実在の事件をモデルにして描いたスタンダールの写実的な人間・社会描写は当代のフランスを知る意味で非常に有意義なものでした。
Posted by ブクログ
うーん、当時のフランスの社会や文化を知らないせいなのか、よく分からないところが多かったです。
主人公の性格も、印象がコロコロ変わってつかみきれなかったし、大していい男に思えなかったなぁ。
レーナル夫人も、もうちょっとしっかりしてくれないとイライラする。
パリの社交界へ出て、マチルドとの情熱的な恋からラストにかけてはまぁまぁ読めました。
けど、全体的に冗長で、心理小説の傑作といわれるほど心理描写が巧いとも思えなかった。
政治的なことや時代的なことがよく分かってなかったからでしょうかね。
Posted by ブクログ
下巻に入るとにわかに政治性を帯びてくる。19世紀の王政復古下のフランスにて、権力者が革命の影に怯え自己保身に走る様を批判的に描き出すことでスタンダールの愛憎入り混じった故国に対する思いが透けて見える。そしてまた、ジュリアンの織り成す恋愛劇もまた政治性を帯びてきているように見えるのは気のせいではないだろう。恋愛は決して僕と君だけの世界で完結する様なものではなく、時に不条理で、時に無数のひしめき合う三人称の存在によって脅かされる。ここでは恋愛劇が、時代の風潮と政治性のメタファーとして見事に機能しているのだ。