あらすじ
召使の密告で職を追われたジュリヤンは、ラ・モール侯爵の秘書となり令嬢マチルドと強引に結婚し社交界に出入りする。長年の願望であった権力の獲得と高職に一歩近づいたと思われたとたん、レーナル夫人の手紙が舞いこむ……。実在の事件をモデルに、著者自身の思い出、憧憬など数多くの体験と思想を盛りこみ、恋愛心理の鋭い分析を基調とした19世紀フランス文学を代表する名作。
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Posted by ブクログ
第三階級と呼ばれる貧しい家庭で育ちながらも気高い心と強い自尊心、そして熱い情熱を身にひそめたジュリヤンが或る上流階級の夫人との恋愛と、貴族の令嬢との恋愛を展開していくが、主人公や二人のヒロイン、周りの人達の深い心情を描いている点に引き込まれる作品。
実在した事件を基に社会への風刺と、恋愛に陥った人の情熱が熱く語られている。特に夫のために奔走する令嬢の姿が慎ましい。
Posted by ブクログ
恋愛と社会階級のふたつの側面からそれぞれに注目しながら読むと楽しめるかもしれません。なんなら2回読むのもありでしょう。
筆者は「恋愛論」なんて本も書いている方であるため、解説等にもあるように恋愛を分析した描写はかなりひきつけられます。
社会階級に関しては、主人公がよく喋るためにそこまで理解し難いものでもなく、対立構造は難なく読みとけます。当時の雰囲気が伝わってくるため、世界観に入り込みやすいと思います。
私は上下巻で1ヶ月ほど時間をかけて読みました。
個人的にですが、もっと一気に読み進めればまた違った感想になったのかなと思います。
またいつか読みたいものです…。
Posted by ブクログ
上巻までの流れで我が身を滅ぼしそうな雰囲気を存分に出していた主人公のジュリアン。やはりというかなんというか、予想通りに転落人生を送ることになります。こういう悲劇的な展開はフランス文学としてはある種のお家芸という印象です。
序盤から終盤まで、とにかく一貫して各登場人物が自分の気持ちを語り尽くすというフランス文学王道の展開で、一度に読み進めるのは結構キツいです。それぞれが命を懸けてぶつけてくる想いを受け止めるには、読み手側にもそれなりの心構えが必要です。
主人公はジュリアンなのですが、この作品はジュリアンを取り巻く二人の女性、ラモール嬢とレーナル夫人の心の揺らぎとジュリアンを巡る確執なくしては成立しません。その意味で、三人の主人公が舞台を転換させながら進む戯曲であるとも言えるでしょう。
各登場人物がなぜ、このような行動を取るのか?なぜ、このような発言をするのか?なぜ、このような愛憎入り混じる人間関係になってしまうのか?
このあたりは、21世紀の日本に生きる身としては理解しがたい部分があります。この作品を読んで、即「傑作だ」という感想も持てません。ただ、ナポレオンが生きた時代のフランスでは、こうした人生観を持ち、愛と恨みとの間で揺れながら生きた人たちがいたのだ、ということを知ることができるという意味で、この小説は今の時代に独特の存在感をもって生き残っているのだと思います。
読みやすいとは言いませんが、当時の愛憎を知るための教養として、読んでみるのもいいかもしれません。
Posted by ブクログ
「ー」
名誉を重んじたジュリアン。名誉なんてくだらないと考える人もいるかもしれない。しかし、彼にとっては名誉を得、守ることこそが大事なのであった。
ジュリアンを好きになることで自分が他よりも高貴であると考えたマチルド。ジュリアンのために奔走する姿をあえて他人に見せつけることで、自分が英雄的であると表現した。
ジュリアンの犯した罪は、レーナル夫人に対して銃を撃ったことだ。しかし、裁判にかけられている本当の罪は、卑しい階級から抜け出し社交界に出られるまでに出世したことだ。故に、死刑。
彼は穏やかにギロチンへ向かった。
名誉ある生き方をせねば、と深く感動した。自分の名誉を傷つけられて場合には、なんとしてでも挽回しなければならない、と。
Posted by ブクログ
キショいほどの記憶力を発揮するジュリヤンは貴族のオッサンにその能力を買われ、パリにくる。仕事上、とあるサロンに通うようになるのだが、メッチャ美人の超ド級ツンデレ侯爵令嬢が居た!
前半はその心理的攻防を克明かつ執拗に描いていく。
確かに恋愛小説と言えるが、ハーレクイン的な甘く感傷を揺さぶられることはほぼない。描き方はクールかつドライである。間違っても湖上の妖精だとか、そういった類いのモノは出現しない。
幕切れは新約聖書に出てくるサロメや、現代で言うならば School daysを想起させる。なかなかエグい展開となるが、これも愛の成せるわざである。
レーナル夫人は旦那に始末されたのでは?と予想している。