秋山香乃のレビュー一覧
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扇谷上杉、北条氏を描いた富樫倫太郎「早雲の軍配者」の後に読んだ作品として最高だった。非常に混沌としていながら、戦国期の甲信越・関東の土台となった"古河公方"に纏わる連作短編アンソロジー。
1.嘉吉の狐:古河公方初代成氏-唯一の生き残りの前半生。足利義政への恨みと関東公方としての覚悟、それとかの有名な嘉吉の変のリンクが自然で良い。
2.清き流れの源へ:大人しい茶々丸というのが新鮮だったが、途中の豹変の過程が不明瞭で違和感。
3.天の定め:北条に抗い続けた晴氏。子への非情さと情の狭間で揺れ動く心情がよく描かれている。
4.宿縁:他と一線を画す荒山氏らしい独特な作品。源義家から -
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戦国武将に疎く、氏真って誰?という状態で読みました。
愚将と呼ばれたという帯の言葉に、いろんなイメージを膨らませて読んだので、想像よりも優しく有能な男性として描かれていたのに驚きました。
今川義元を扱った『義元、遼たり』がわりと淡々と物事が進んでいくのに対して、氏真の人生は波瀾万丈でした。
今川の名前を継ぐことへのプレッシャー、のちの家康となる幼馴染、将軍の器としては物足りない自分自身の気質に悩まされる氏真。
冒頭から葛藤を抱える氏真に親近感を抱いた。
生涯にわたって伴侶となる妻との微笑ましいエピソードや、没落しても慕い続ける家臣とのやりとり、そして幼い頃に同じ夢を見て、別の形で追い続けて -
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戦国史を足利一族の視点から描くアンソロジー。
古河公方発足から、喜連川藩誕生までの200年余りが物語の舞台となっています。
室町から戦国にかけて関東一円の戦乱の原因は、鎌倉公方・管領の足利一族のいざこざのせいだと思っています。なんというか、関東だけに限らず、足利は血族の争いが多い気がする。尊氏と直義から始まってることですし。それでも、240年近く幕府として続いたことは珍しいことでしょうね。
時代を下りながらのアンソロジー7話。一つの流れとして、関東公方家に仕えた忍びの「さくら一族」の存在があります。「足利の血脈」というタイトルですが、「さくら一族」伝でもあります。
『嘉吉の狐』『螺旋の龍』 -
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幕末の長岡藩家老河井継之助を妻すがの目線から描いた作品。破天荒で気性の荒い継之助は幕末の動乱の中で長岡藩の将来を憂えていたが、旧習にとらわれた家中の中で何もできない日々に苛立ちをつのらせていた。
どうすれば自分の考えを藩内で形にできるのか、その答えを探るべく、農民出身ながら備前松山藩の要職に取り立てられ、藩政の立て直しを行った山田方谷に師事する。
自分の考えに他者を賛同させるには、人から推されるにはどうすべきかに気づいた継之助は少しずつ藩政の中で実績を残し、藩主牧野 忠恭や家中に認められていく。家老に就任後は借金まみれの長岡藩を立て直し、戊辰戦争に向け軍事の西洋化を進める。迫る新政府軍を前に継 -
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面白かったです。読みやすい。
この小説は、維新後警察に入った、元新撰組斉藤一改め、藤田五郎の、密偵が主人公。だから「密偵」。
本当に、新撰組隊士たち、特に人気どころの幹部たちは、作家さんによって、全く違う描かれ方してますね。
この作家さんは、一貫して、斉藤一を、ぎらぎらした感じのしない、飄々とした人として描くので、そのファンの方が多いみたいですね。
私はぎらぎらした斉藤の方が好きだけど、飄々としてるのに、実は熱い、みたいなこの斉藤さんも好きです。
本筋に関係ないことですが、秋月作品で、斉藤一は、会津の密偵として新撰組に入ったことになっている。試衛館の同志じゃないの?うーん。
永倉新