秋山香乃のレビュー一覧
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一応捕物帖なのでミステリーでもいいような気がしたけど、結局のところ、新撰組の源さんを書きたかったんだろうなってことで<歴史>カテゴリーに。
「歳三往きてまた」も滅茶苦茶よかったけど、これもすごくよかったです。
ステレオな新撰組像と、秋山氏の描く新しい視点とがきれいにまざりあって、新鮮だけどなんか懐かしいそんな群像劇になってます。
でもって、お人よしの源さんがめっちゃ格好いい。
まぁ、どんな媒体でも源さんの立ち位置はこんな感じなんだけど、それに過不足がないところがすごいと思う。
土方のツンデレっぷりも、沖田の無邪気っぷりも、ツボをがっつりおさえてますって感じで、もう「やられました」って平伏したいぐらいだ。
最終話の「源さんの形見」では号泣させていただきました。
不器用にしか、それでも夢を追う生き方しかできなかった、徒花としての彼らの鮮やかさが切ない…。 -
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ネタバレ彰子視点から物語は始まるのだが、一条天皇の心が定子にあるのは彰子の視点から分かるので、恋愛面では彰子の圧倒的敗北と言っていいだろう。
そんな彼女の視点から、いきなり定子の視点に、しかも彰子から見れば過去に話が戻るので、正直誰に感情移入して読めばいいのか最初は大変混乱した。
定子に恋愛面で負けた彰子に同情すればいいのか。
帝と仲睦まじい定子を受け入れればいいのか。
定子視点が長いだけに、彰子を推しているとしんどいやも。
ただ帝の寵愛を受けた定子もただ幸せだった訳ではない。
帝に失望することも多々あり、それでも惹かれ、でも憎みもし……複雑な心境である。
女性作家さんが書かれたからこその機微な気がする。
定子視点に限らず、総じて男性陣の身勝手な、本当に身勝手なあれこれに振り回される女性を描いたという印象。
帝も道長も大概である。
時世的に致し方がないとはいえ、男性陣は総じて何かしらの報いを受けてくれと思うほど自分本位な方たちばかり。
男性で癒しだったのは定子の父の道隆くらいじゃないかと。
後はもう……腹が立って仕方がない。
定子の兄の伊周に至っては論外である。
帝に真の意味では愛されなかった彰子も最終的には逞しくなり、何なら父の道長すら言い負かすほどになったのは、ある意味ざまあな展開だったのかもしれない。
個人的には定子の立場も彰子の立場もごめん被りたいが。
意外だったのは、清少納言と紫式部の性格づけ。
なかなかユニークな設定だったと思う。
あと怨霊が普通にある世界として描かれていたのにも個人的には驚いた。
いや案外あの時代は本当にいたのかもしれないなと思わされた話だった。
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扇谷上杉、北条氏を描いた富樫倫太郎「早雲の軍配者」の後に読んだ作品として最高だった。非常に混沌としていながら、戦国期の甲信越・関東の土台となった"古河公方"に纏わる連作短編アンソロジー。
1.嘉吉の狐:古河公方初代成氏-唯一の生き残りの前半生。足利義政への恨みと関東公方としての覚悟、それとかの有名な嘉吉の変のリンクが自然で良い。
2.清き流れの源へ:大人しい茶々丸というのが新鮮だったが、途中の豹変の過程が不明瞭で違和感。
3.天の定め:北条に抗い続けた晴氏。子への非情さと情の狭間で揺れ動く心情がよく描かれている。
4.宿縁:他と一線を画す荒山氏らしい独特な作品。源義家から描き、さくら一族の特殊能力というSF要素を加え、北条の乗っ取りを描く。
5.螺族の龍:こちらも独特な作品。荒唐無稽さではダントツ。天海和尚や曲直瀬道三を出す発想には感服するがさすがに突飛がすぎる。
6.大禍時:信長抹殺にさくら一族が関わっていたというストーリー自体は突飛だか、義氏の心情によくスポットライトが当たっており良作。気弱・優しい義氏の人間らしさが同情を誘う。
7.凪の世:江戸期・喜連川藩に足利の血脈が繋がっていく締めとなる物語。主役が高坂長内で、ラストがこれで良いのかとうショックが残る。 -
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戦国武将に疎く、氏真って誰?という状態で読みました。
愚将と呼ばれたという帯の言葉に、いろんなイメージを膨らませて読んだので、想像よりも優しく有能な男性として描かれていたのに驚きました。
今川義元を扱った『義元、遼たり』がわりと淡々と物事が進んでいくのに対して、氏真の人生は波瀾万丈でした。
今川の名前を継ぐことへのプレッシャー、のちの家康となる幼馴染、将軍の器としては物足りない自分自身の気質に悩まされる氏真。
冒頭から葛藤を抱える氏真に親近感を抱いた。
生涯にわたって伴侶となる妻との微笑ましいエピソードや、没落しても慕い続ける家臣とのやりとり、そして幼い頃に同じ夢を見て、別の形で追い続けてきた家康との友情など、この時代にあって人と人との繋がりを感じさせるエピソードが多く、だからこそ戦乱の世の人命の軽さが際立つことも多かった。
とにかく氏真の人物像に惹かれることが多かった。
自分自身を「うつけ」と呼び、自分を慕う妻子や家臣のために強くあろうとしなくてはと言い聞かせて戦う姿に心打たれた。
文化人として名を上げた人だそうなので、感受性が強く、自分自身のことを深く内省していたのかも…。といろいろ想像を巡らせた。
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戦国史を足利一族の視点から描くアンソロジー。
古河公方発足から、喜連川藩誕生までの200年余りが物語の舞台となっています。
室町から戦国にかけて関東一円の戦乱の原因は、鎌倉公方・管領の足利一族のいざこざのせいだと思っています。なんというか、関東だけに限らず、足利は血族の争いが多い気がする。尊氏と直義から始まってることですし。それでも、240年近く幕府として続いたことは珍しいことでしょうね。
時代を下りながらのアンソロジー7話。一つの流れとして、関東公方家に仕えた忍びの「さくら一族」の存在があります。「足利の血脈」というタイトルですが、「さくら一族」伝でもあります。
『嘉吉の狐』『螺旋の龍』『大禍時』の3話では、足利義教、義輝、織田信長の暗殺に関わったと配役。特に『螺旋の龍』は伝奇色が強くて好きです。
足利一族。特に関東の公方と管領の関わりは、いま一つ把握ができていません。
公方も管領も多いのですよ。そして、それぞれの陣営が頼りにする長尾も北条も関東豪族も、多い!しかも、長い間争うから、代替わりしていて家系図の把握が大変!なまじ、権威はあるだけに、誰がどこの養子になったり、実質管領職は誰々で、とかごっちゃになるんですよ。
それを把握しながら、読む進めるのは楽しいのだけど大変。大変だけど楽しい。
このアンソロジーの「さくら一族」のように、物語に一つの幹があると理解がしやすくていいです。
歴史小説楽しむには、まだまだ精進が必要です。 -
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幕末の長岡藩家老河井継之助を妻すがの目線から描いた作品。破天荒で気性の荒い継之助は幕末の動乱の中で長岡藩の将来を憂えていたが、旧習にとらわれた家中の中で何もできない日々に苛立ちをつのらせていた。
どうすれば自分の考えを藩内で形にできるのか、その答えを探るべく、農民出身ながら備前松山藩の要職に取り立てられ、藩政の立て直しを行った山田方谷に師事する。
自分の考えに他者を賛同させるには、人から推されるにはどうすべきかに気づいた継之助は少しずつ藩政の中で実績を残し、藩主牧野 忠恭や家中に認められていく。家老に就任後は借金まみれの長岡藩を立て直し、戊辰戦争に向け軍事の西洋化を進める。迫る新政府軍を前に継之助の戦いが始まる。
他と異なる意見を持つと白い目で見られらり、煙たがられることが会社内でもあるが、その中でいかに自分の意見を通すか、自分に心酔させるかという点は現代にも通じるところがある。今まで新政府に反対し戊辰戦争で戦死した人という程度の知識しかなかったが、継之助の生き様には芯の通った意思があり、小藩ながら物事の道理、正しさを表現するべく戦う姿に魅力を感じた。