阿部謹也のレビュー一覧

  • 「教養」とは何か

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    学生時代に読んだ本の読み返し。

    「教養がある」というと、一般的には「知識が豊富である」とか「ロジカルである」というイメージがある。マズローの欲求階層でいう「自己実現欲求」を充足させるための要素の1でもあると言えるだろう。

    しかし筆者は「自分が社会の中でどのような位置にあり、社会のためになにができるかを知っている状態、あるいはそれを知ろうと努力している状況」を「教養がある」と定義している。また「「世間」の中で「世間」を変えてゆく位置にたち、何らかの制度や権威によることなく、自らの生き方を通じて周囲の人に自然に働きかけてゆくことができる人」が「教養のある人」とし、「「世間」の中では個人一人の完

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    2018年06月10日
  • 対談 中世の再発見

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    メモ:
    日本の宴会の無礼講という考え方は、西洋では公的には失われている→キリスト教による社会統制が働いている
    また、忘年会というのは一年間で元に戻るという日本人の時間意識を表している行事で、西洋ではそういうものはない→キリスト教は終末論

    これらは、西洋で11世紀にキリスト教による意識の大転換が起こったことと無縁ではなく、これまで歴史学のものさしにされがちだった西洋の風習は、実は世界的に見れば特殊なあり方なのかもしれない

    メモ2(p221)
    "ヨーロッパがなぜ11世紀以降大きな変化を示したかというと、互酬の関係のなかで、お返しは天国でする、つまり死骸の救済というかたちでそれをいった

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    2017年05月07日
  • 西洋中世の罪と罰 亡霊の社会史

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    西洋中世の罪と罰

    キリスト教以前の亡霊とキリスト教以後の亡霊のありかたについて書かれている。前半は筆者の専門分野でもあるアイスランドサガに見られる亡霊観からキリスト教以前の世界を読み解く。サガでは死者は生者と戦争したりするなど、死者はとても生き生きとしていることがアイスランドサガの様々な物語から説明される。当時の人々にとって死後の世界について考えることがあまりなく、生を全うすることが主題であったようだ。だからこそ、生前に共同体に認められなかったものの恨みは大きく、彼らが死後に生者を襲うようになる。このような死者観は、キリスト教導入後に、生者に救いを求める哀れなものに変わる。キリスト教徒は、自

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    2017年05月08日
  • 「世間」とは何か

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    世間とはよく聞く言葉であれど世の中とか、社会とかといった言葉とはニュアンスが違い『自分が関わっている比較的小さな人間関係の環』と説く。
    夏目漱石の『坊ちゃん』、吉田兼好の『徒然草』等を時代背景と共に参照しながらの解説が面白い。いずれもまだ読んだ事はないけど…。

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    2015年10月28日
  • 中世賤民の宇宙 ──ヨーロッパ原点への旅

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    ネタバレ

    20140704~0730 久々の阿部謹也節に圧倒。大宇宙と小宇宙の狭間から取り残された”賤民”の存在。中世欧州が、贈与で成り立つ社会から、次第に貨幣社会へと変貌するさま、相続に絡む教会や市の役割などは、のちの相続税や法整備にも関わるのではないかと、経済学に携わる身としては興味深かった。最終章の”音”に対する日欧の感性の違いなんかはもう少し詳しく知りたいなー。

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    2014年07月30日
  • 「世間」とは何か

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    わずらわしいと感じる人とのつながりの中に世間があり、個人よりも強い世間。その世間に嫌気が差した先人たちから、世間の姿を捉えてみようとする本。

    今の日本もそうだけど、欧米の個人の人間関係があってこその社会と、個人を押し殺して優先する世間は全く違うというのは納得した。
    昔も今も世間が嫌いな人はいるんだね。自分の心を代弁してくれてるのかと思った。私は隠居するほどの勇気はないけど。

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    2012年07月07日
  • 物語 ドイツの歴史 ドイツ的とは何か

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    ドイツの歴史を通じてEU の中の国民感情の変化、中世にあったアジールという庇護権、多くの音楽家を産んだドイツ的なものとは何かという3つの視点で書かれたドイツ史。音楽に焦点を絞ったドイツ史も執筆するつもりだったらしいが書かれることなく亡くなられたらしく非常に残念。神聖ローマ帝国という高い理念と領邦国家の分立による国民国家形成の遅れと市民の政治参加への挫折が深い内省的な芸術や哲学を生み出す土壌になったようだ。

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    2012年05月03日
  • 西洋中世の罪と罰 亡霊の社会史

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    キリスト教が浸透する以前のヨーロッパ社会の亡霊とキリスト教が普及したヨーロッパ社会の亡霊を比較すると、前者の乱暴で粗野な亡霊と地獄を前におののく哀れな亡霊との際立った違いがある。その違いが、1215年以降、キリスト教徒年1回が必ず行うことになった告解の浸透が背景にあるとしている。個人が司祭の前で罪を告白し、司祭から贖罪を命じられる告解は、それ以前の共同体的な古代異教の世界にいた人々には大きなインパクトを与えたことは容易に想像できる。キリスト教会が戦った古代ヨーロッパの迷信的世界は、告解の手引きである「贖罪規定書」に記述されている数々の迷信、悪魔、魔女からうかがえる。共同体のキリスト教以前の亡霊

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    2012年05月02日
  • 対談 中世の再発見

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    ネタバレ

    網野善彦、阿部謹也という日本史、西洋史の中世史を代表する研究家による対談集。

    二人とも対談を生き生きと行っているのが伝わる。
    「石を投げる」ことにここまで意味を見いだして、議論できるとは。

    中世史を研究するならば、ぜひ読んでおきたい。

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    2012年04月30日
  • 「世間」とは何か

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    日本人特有の「世間」を考察した本。
    歌、仏教、漱石、藤村などから様々な時代の「世間」を捉えている文章は面白い。
    色々あって大学のゼミで読んだ本だったけれど、文芸思潮や社会学をかじるのには良いかも。

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    2011年07月26日
  • 「教養」とは何か

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    教養を扱った本を読むのは久しぶり。

    しかし予想に反し、教養についての記述は全体の半分ほど。
    多くは日本が持つ特殊な「世間」という社会構造について。

    西洋の「近代的個人」や中世アイスランドの「世間」によく似た特徴などを紹介している。
    結局、教養って何だったんだろ。

    しかし、色々なことが載ってて面白かった。
    難易度は、内田樹の難しい本くらい。
    なんとか読める程度。

    有名な本らしいし、そこまで重くないので、とりあえず読んでみることオススメ。
    1日あれば読める。

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    2011年07月19日
  • 「世間」とは何か

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     昔からあるようでなかった、日本特有の人間関係「世間」について考察した本。

     近代西洋の自由で平等な「個人」を前提とする「社会」が普遍的で抽象的なのに対し、日本独特の「世間」は具体的、その外にいる者に対し排他的、長幼の序・互酬の原理が根付いている、情理や感性と関係が深い、無情、世知辛い、ままならないものと捉えられていた、といった特徴を持っている。

     そんな「世間」の共通項は万葉の時代から続いているとされる。そして、第一章以降で、日本の奈良~平安時代、鎌倉時代、江戸時代、明治時代において、「世間」がどう捉えられていたかが述べられている。

     良い意味で情緒的、悪い意味で閉鎖的な「ムラ的」であ

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    2011年06月06日
  • 物語 ドイツの歴史 ドイツ的とは何か

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    ネタバレ

    ドイツに旅行に行くためにお勉強。この本は思想・文化的背景からの歴史アプローチが多く、ただの歴史本ではないため興味深い内容となっている。

    今回は、なぜドイツで魔女狩りやナチスの台頭が起こったのか、ということが大きな命題だった。
    魔女狩りについては…
    ドイツは森が多く、日本と同じようにそこには神々が宿っていると信じられていた。キリスト教の支配下になっても、他の地域より土着の宗教が長く生活の中に取り入れられていたのだろう。それ故、どの地域よりも強力な方法で人々のキリスト教化と土着宗教の弾圧が行なわれたのだと思った。

    ナチスについては…
    ドイツは地理的にヨーロッパの真ん中に位置しているため常に他国

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    2011年04月30日
  • 中世の星の下で

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    中世ヨーロッパの人々の暮らしを情感溢れる筆致で描く前段は、いわば究極の異文化体験といった趣。
    中世ヨーロッパの世界は現代の我々から見れば剣と魔法のファンタジー世界そのものだが、考えてみれば当たり前の話で、世界を秩序づける説明の体系が、現代とは全く異なっていたということ。

    後段は中世を離れ、歴史学とは何かが論じられるが、中でも、自由な市民が結成した、諸”協会”についての考察が印象に残った。
    ”協会”は中世の兄弟会やギルドの系譜に連なるということだから、このような”結社”はヨーロッパの市民にとっては由緒正しく、また自明のものだったのだろう。
    だとすると、日本国憲法においてはやや唐突に感じられるが

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    2011年01月15日
  • 「世間」とは何か

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    日本人特有の人付き合い、世間について、兼好、親鸞、西鶴、漱石、荷風らの著作から、その時代においての世間という言葉の概念の変遷を考察している。

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    2011年01月14日
  • 近代化と世間 私が見たヨーロッパと日本

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    [ 内容 ]
    二〇〇六年秋に急逝した歴史家が遺した研究と思索にもとづく、日本人に向けてのメッセージ。
    専門の西洋中世史の研究を超えて、日本史、日本現代社会論にいたるまで、幅広い分野で健筆をふるってきた著者による、文字通り「最後の」書き下ろし。
    自らの五十年に及ぶ研究をもとに、古今東西を縦横に論じる。

    [ 目次 ]
    第1章 西欧社会の特性
    第2章 日本の「世間」
    第3章 歴史意識の東西
    終章 ヨーロッパと日本

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    2010年07月04日
  • 「世間」とは何か

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    世間というのは「社会」とは違う。
    世間は日本独自のコミュニティだ。
    という見解を解説している本。
    世間の目なんてどうでもよくなれますよ。

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    2009年11月29日
  • 「教養」とは何か

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    『「世間」とは何か』の続編。
    日本人が教養を大事にする世代を広範囲に持っていたから、経済発展することができたのか。
    そうすると将来の日本は危うい。

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    2009年10月04日
  • ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界

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    《ハーメルンの笛吹き男》伝説はどうして生まれたのか。13世紀ドイツの小さな町で起こったひとつの事件の謎を、当時のハーメルンの人々の生活を手がかりに解明、これまで歴史学が触れてこなかったヨーロッパ中世社会の差別の問題を明らかにし、ヨーロッパ中世の人々の心的構造の核にあるものに迫る。
    ずいぶん前から積読していた。一般人向けではあるが、結構内容は難しくて、かなり時間をかけて読みました。結局伝説の裏の真実は分からない、というオチで肩透かしをくらったものの、丁寧に当時の背景を紐解く姿勢はすごいなと思った。学者ってこういう根気強く研究を重ねることで大発見が生まれるんだろう。ただ興味本位で読んだので、同じよ

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    2025年08月02日
  • ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界

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    名前はよく耳にする「笛吹き男」、おとぎ話の中だけの存在だと思っていたが。いろいろな説があって驚いた。

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    2025年07月28日