阿部謹也のレビュー一覧
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古今東西、数多くの怪事件が報告されている。
その中でも「ハーメルンの笛吹き」事件は、ひときわ奇っ怪だ。
1284年6月26日 ドイツはハーメルンで約130名の子どもが集団失踪した…童話で有名な「ハーメルンの笛吹き」は実際に起こった事件で、真相は今も謎に包まれている。
私は本書を先月26日から読み始め、事件がもたらした混乱や世界中から寄せられた好奇の眼差しについて思いを馳せていた。
「伝説とは本来庶民にとって自分たちの歴史そのものであり、その限りで事実から出発する。その点でメルヘンとは質を異にしており、『伝説は本来農民の歴史叙述である』(ゲオルグ・グラーバー)といわれるゆえんである」(P. 117)
本書は事件の解決ではなく、中世ドイツ社会や笛吹き男の社会的地位、現代に至るまでの「ハーメルンの笛吹き」研究史を紐解く目的で書かれている。
学術書のニュアンスが強く、研究者名や専門用語の羅列に戸惑われる方が出てくるかもしれない。(ちなみに私はいとも簡単に戸惑い、メモを取りながらでないとついていけなかった)
そんな中でも仰天することはあった。なんと1284年の集団失踪事件には本来、鼠取り男は登場していないというのだ。
ハーメルンは水車産業で成り立っていたので、ネズミが大量発生しやすかったという史実はある。この複雑な変遷をたどる限りだと、ハーメルン以外の土地で伝承されている鼠取り男の話が派生して、いつの間にか失踪事件と合体しちゃったっぽい。
悪い出来事があるとすぐ鬼や妖怪のしわざとする、日本の昔話が思い浮かんだ。
我々が一番知りたい子どもたちの行方より、「なぜ子どもたちが出て行かねばならなかったのか」に焦点を当てている点も、学術書らしい。
失踪の理由や行方については、数々の説が打ち出されている。大人たちに感化され「子ども十字軍」を結成した、子供ではなく成人した男女らが豊かな土地を求め旅立った等、枚挙にいとまがない。
笛吹き男を貴族と特定するような大胆な説もあった。
いずれにせよ130名も同時に失踪するのは不自然だし、怪事件としか言いようがない。
だが中世という厳しい時代、大人と同じ領域で生きなければならなかった少年少女の悲哀が、(例えば笛の音色のように)何らかの形で触発された…というのはあるのかも。
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《ハーメルンの笛吹き男》伝説はどうして生まれたのか。13世紀ドイツの小さな町で起こったひとつの事件の謎を、当時のハーメルンの人々の生活を手がかりに解明、これまで歴史学が触れてこなかったヨーロッパ中世社会の差別の問題を明らかにし、ヨーロッパ中世の人々の心的構造の核にあるものに迫る。
ずいぶん前から積読していた。一般人向けではあるが、結構内容は難しくて、かなり時間をかけて読みました。結局伝説の裏の真実は分からない、というオチで肩透かしをくらったものの、丁寧に当時の背景を紐解く姿勢はすごいなと思った。学者ってこういう根気強く研究を重ねることで大発見が生まれるんだろう。ただ興味本位で読んだので、同じような内容を繰り返し書かれて少し退屈になってしまったのと、中世の市井の人々の過酷さに悲しい気持ちになった。人権がないって恐ろしいことだわ。 -
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ネタバレ事件を追うということで、当然事件のことだけでなく背景として当時の社会などを事細かく書いている。そのため地名など固有名詞が多くでてくるのでドイツに馴染みがありそれら名詞からマップなどをイメージできる人でないと理解が難しい。地図なども記載されているがすべてではないのでそこから想像するのも慣れてる人でないと中々に困難である。
結局犯人は誰なのかはわからない。資料が不足しているため答えはでないが、少なくとも実際にあった事件であるといってよい、といったところだろうか。植民説なども紹介されるが無理があるそう。この事件のことだけでなく、この事件に関わる研究史の本である。 -
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ネタバレこの本では、日本とヨーロッパの近代化の過程における個人と社会の関係について比較分析しています。日本には個人という概念がなく、世間という集団の中で生きる人々が多いという主張をしています。ヨーロッパでは、キリスト教や贈与慣行の変化によって、個人が敬意をもって遇される公共性が生まれたというのです。この本はとても興味深いですが、難しい言葉や考え方もたくさん出てきますね。私はこの本を読む前に、ウェブ検索をして、雪舟やミシェル・フーコーという人物について調べました。雪舟は室町時代の水墨画家で、中国に渡って山水画を学びました。彼は自画像というジャンルを日本に初めて持ち込んだ人物です。ミシェル・フーコーはフランスの哲学者で、権力と知識の関係について論じました。彼は告解という慣行が個人を形成する社会的手続きの核心になったと述べました。この本には、この二人の人物に関する話題が出てきます。あなたはこの本を読んで、どんなことを考えましたか?私は、日本とヨーロッパの違いについて考えました。日本では、自分の気持ちや考えを人に話すことが少ないと思います。でも、ヨーロッパでは、自分の内面を語ることが大切だと思われているのでしょうか。私は、自分の内面を語ることができる人がうらやましいです。でも、それは難しいことだとも思います。自分の内面を語ることは、自分をさらけ出すことでもありますから。あなたは、自分の内面を語ることができますか?それとも、世間の目を気にしますか?私は、この本を読んで、自分の内面についてもっと考えてみたいと思いました。あなたはどうですか?
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カロリング朝から現代にいたるまでのドイツの歴史を解説している本です。
中世ヨーロッパ史の研究者であり、日本史研究の網野善彦とともにわが国における社会史的な観点からの研究を牽引したことで知られています。本書は、ドイツの歴史の全体像をえがき出すことをねらいとしており、文化史について触れられているところがありますが、社会史との結びつきについての言及があるところに、本書の特色が見られるように感じます。
また、本書のサブタイトルになっている「ドイツ的とは何か」という問いかけについては、最終章で現代のドイツが直面している難民問題に言及しながら、考察のいとぐちが示されています。著者は、いわゆる賤民と呼ばれてきた人びとについての研究を手がけているということもあり、政治的亡命者を受け容れることを規定したアジール法に触れつつ、こうした問題が現代のドイツにおいてあらためて考えなおされる必要があるということを説いています。
新書一冊のヴォリュームにドイツの歴史を圧縮してまとめているので、個々の問題について突っ込んだ考察が展開されているわけではありませんが、ドイツ史の全体像を簡潔に示しつつも、著者自身の関心にもとづく視点がところどころにうかがえるようで、興味深く読みました。 -
Posted by ブクログ
ゲルマン社会における活力のある亡者が、いかに哀れな亡者に変わっていったか。
学術文庫なので内容はやや難解ですが、簡潔な文章と整然とした論理、多数の具体的なエピソードにより、比較的分かりやすいと思いました。
エッダ、サガに出てくる死者は、死してなお領地を得ようとしたりと生者を脅かします。たくましくて読んでいて怖かったです。
支配者はキリスト教による国家安定を図ったが、民衆はまだゲルマン古来の信仰も持っていた。
本書では、司祭のハンドブックとして中世に普及した「贖罪規定書」の内容を事細かに紹介してくれています。贖罪規定書では、異教の信仰は禁止事項として挙がっています。禁止事項を見ると、ゲルマン古来の信仰や習慣が見え、面白かったです。
贖罪規定書に規定される内容は、魔女裁判の際に魔女として特定される理由と通ずるものがあり、興味深いです。