阿部謹也のレビュー一覧

  • ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界

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    ネタバレ

    読んでてすっごい楽しい本だった
    誰でも聞いたことがある「ハーメルンの笛吹き男」という寓話に見られる、130人の子供が失踪したということは事実である、ということを述べた上で、この伝説の原体験を明らかにすることを試みる
    その上、この体験が今ある伝説の形にどのような経過をたどって転化したのか、〈笛吹き男〉伝説の研究史をも鮮やかに描き出す

    伝説の実情を解明するためにただ単に民俗学的なアプローチをするのでなく、事件を探る上で当時のハーメルン社会はどのようなものだったのか、子供とはどういう存在だったのか、子供たちを連れ去った「笛吹き男」とはどのように扱われていたのか、の三つの論点に分けて研究を進めていく

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    2025年11月11日
  • ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界

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    巻末の石牟礼道子の解説「泉のような明晰」も含めて、読んだ後胸がいっぱいになる歴史書。ハーメルンの笛吹き男の伝説の解明だけでなく「学者」も伝説の型(パターン)作りに多かれ少なかれ加担しているということ、それを持ってして民衆を中心にすえた歴史学を追究するために必要なのは知に驕らない謙虚な心構えであることなど、力強い言葉が綴られている。

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    2024年02月11日
  • ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界

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    阿部謹也氏が1988年に刊行した歴史学書。

    私が大学入学とすぐに教授に薦められた本の中の一冊。

    グリム童話「ハーメルンと笛吹き男」は実は13世紀に実際に起こった出来事である。という歴史に興味がなくても惹きつけられる例を基に、中世ヨーロッパの社会を解き明かしていく作品。

    歴史学をこれから学ぶ大学生や、これまで歴史学に興味がなかった社会人などにオススメ。

    作者と一緒にまるで謎解きをしながら歴史を解明していくような爽快感が魅力な作品です。

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    2023年08月28日
  • ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界

    購入済み

    読みやすい

    ハーメルンの笛吹き男という御伽話を立体的な解釈で、当時の背景を生々しく書き出している。記録や世相から分析して検証していく流れは、まるで推理小説のようであった。

    #タメになる

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    2023年05月28日
  • ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界

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    歴史とともに物語を読むことで、今の自分では考えられない状況も、そよときならそうなるだろうと思わせられる。歴史とセットで物事を知ることの重要性を学ぶ。

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    2023年04月02日
  • 物語 ドイツの歴史 ドイツ的とは何か

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    阿部謹也のドイツ通史。個人の誕生などの中世史が程よく書かれていて面白い。
    思った以上にドイツの中世末から近世の生活が悲惨で、ビスマルク後にその鬱憤が発出したのかと思う。
    ドイツ精神とは、狭められた外の世界を断念し、内なる世界に没頭したということか。そこからは哲学や音楽などの知的世界もあるし、賤民差別などの身分の厳重化もあるのか。
    その点では江戸時代の日本との共通点があるのかもしれない。

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    2022年04月20日
  • ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界

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    ハーメルンの笛吹男の伝説というか、おとぎ話というか、この伝説がどうして生まれたのか、1284年6月26日にドイツのハーメルンで130人の子どもが失踪したという出来事が、歴史的事実であると確認した上で、渉猟した文献を丹念に紐解き、慎重に歩みを進めながら、ヨーロッパ中世における民衆の暮らしを浮かび上がらせるもの。知的好奇心を掻き立てる極めて興味深い一冊でした。

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    2021年02月21日
  • 「世間」とは何か

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    昔から日本人は世間を意識しながら生きている。
    そして、多くの人はその世間というものが思い通りにならず、悩むことも多い。
    日本から世間という感覚が無くなる、という可能性はほぼなさそう。
    世間から逃げたり、全く離れるということも難しい。世間を馬鹿にしても仕方がない。
    大切なのは、自分がその中でどのようなスタンス・立ち位置を取るのか、ということを考えること。

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    2020年08月18日
  • ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界

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    迫害、差別、そして、格差社会。
    そんな時代背景が、この物語として語り継がれてきた核になっている。
    いや、大半の物語がそうか?

    どの国や地域にも、伝説として残っている話がある。
    事実が問題だと深堀りすることも当然必要だろうけど、真意という意味では、史実がどうだとかはあまり関係も意味もない気がする。

    そこに共通して感じるものは、何なのか?
    大切なものと、どう向き合っていくのか。
    一人一人に何かを芽生えさせる物語が大事ですね。


    地政学とキリスト教。

    ヨーロッパの歴史を知ろうとすると、この事象を通してでないと見えてこない事もある。

    ハーメルンという街も、深い部分でそれが繋がっている気がした

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    2020年07月03日
  • ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界

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    グリム童話の「ハーメルンの笛吹き男」。ドイツのハーメルンの町に現れた男が笛の音でねずみを駆除してやるのだが、町は彼に報酬を支払わない。怒った男は笛の音で町の子どもたちを連れ去ってしまうというお話。ちょっと怖いが教訓も含んでいる、よくできた有名な童話だ。

    一方、中世ドイツの地方都市の文献を研究していた著者は1284年のハーメルンで130人の子どもたちが行方不明になっていた事実を知る。つながった童話と事実。なぜ子どもたちは消えたのか、笛吹き男は実在したのか、著者の歴史探求がはじまる。

    本書では、中世ヨーロッパの社会や生活、宗教、差別などを説明し、笛吹き男のような旅芸人やネズミ捕りの職人が実在し

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    2020年03月18日
  • ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界

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    面白かった
    歴史が時代の突出した部分や特異点ばかりを探していくのに対し、ここではそんな「表舞台」とされたものの裏にある、時代の変化に右往左往するしかない一般庶民、その反動として時に自暴自棄に極端に走ってしまう一般庶民の歴史が紡がれている。
    事件が少ない故にあまりに長い、あまりに長い中世の一般庶民。場合によってはドイツでは19世紀まではそういうものが残っていたということで。
    こういうのを読むと、キルヒャーの見え方も随分と変わってくる。
    また、商業の復活などのルネサンスへの萌芽も見えてくる。
    12世紀ルネサンスというものとは程遠い世界だが、中世後半にあって教会と諸侯の権力バランスの変化もあり激動の

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    2020年02月05日
  • 「世間」とは何か

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    20年来の積読、というか見当たらなかったので、買い直しました。内容はすっかり忘れてるが読んだ覚えある『ハーメルンの笛吹き男』はあったのですが。本書では、いまでも日本人を支配している「世間」がいかに生まれて発展してきたか、文学作品などを中心に追っています。読み終えての最初の感想は、取り上げられている人物はいずれも「世間」との距離感を意識しており、やはり世間を対象化して観察するには隠者にならないといけないのでしょうかね、という事。かといって、その取り上げ方も決して欧米の個人主義礼賛ではなく、そこは相対化しながら各人物の受け止め方を中心に、しかも文学作品を通して描いているのが解釈のオープンさを感じて

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    2018年09月13日
  • 「世間」とは何か

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    日本社会の特有概念である「世間」について、日本の古典や文学作品から読み解いている。教養として読むのもおすすめ。特に最近読んだ『我輩は猫である』の解釈は面白かった。兼好『徒然草』井原西鶴『好色一代男』を読みたいリストに追加。

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    2014年10月29日
  • 近代化と世間 私が見たヨーロッパと日本

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    まさに「碩学の新書」であるが、阿部謹也をこの本から読むべきではないと思われる。
    彼の「世間」へのアプローチはまさに碩学そのもであり、それを辿らなくては理解の奥行きを広げることもできず本質に迫ることは到底ありえない。

    死期が迫っていたこともあり本書での経験に根差した現状批判は珍しく熱く激しいものであり、遺言のアジテーションのようでもある。

    平易にようでいて事の本質に辿りつけない…「世間」とは一体何なのであろうか?
    面白くとも難しい…主客分離の迷宮に踏み込む楽しさを味わおう。

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    2012年08月10日
  • 「世間」とは何か

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    「世間」を学術的な検討の俎上に挙げたという意味で名著。まえがきは読み応えがあるが、本論はやや羅列的で退屈ではある。

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    2010年10月30日
  • 中世賤民の宇宙 ──ヨーロッパ原点への旅

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    中世の人々と我々とでは、宇宙観(この世界に対する理解)が全く違うことが分かり、非常に興味深く読んだ。この本では主に、空間・時間・死・大宇宙と小宇宙について、取り上げられている。学ぶことが非常に多い本だが、それでも、機械で均質に切り取った時間や物理的な基準をもとに測った空間の中で生きている身には、当時の人々の考え方が分からないことが多々あった。理解できなくても、こういう違いがあったと知ること自体が重要ということだろうか。

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    2010年10月25日
  • 近代化と世間 私が見たヨーロッパと日本

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    「世間とは何か?」の安部謹也の、死ぬ寸前まで書いていた遺作です。彼は、結局行動としての「世間」への対し方は書かなかったように思う。というのも、彼の「行動」は世間に対抗するというよりも大学人の立場でいたのだから、そうしたとしてもひどくはがゆかったに違いない。公演などで出会う人には実践派がいて感心してはいたのだが。
     この本で重要なところは、同じ近代化を西欧に習って成し遂げた日本の場合と見習った相手「西欧」とのそのプロセスの徹底比較であろう。日本はまるまる西欧の近代化を受け入れたわけではなかった。西欧の「それ」が日本に合わない場合や「欠点」などは切り捨てた。その切り捨てられた部分が日本の奇習である

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    2010年04月14日
  • 「世間」とは何か

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    歴史的に、個人として生きようとしてきた人たちは皆隠者である、というのが、日本における「社会」のありようを象徴しているのではないか。西洋におけるsocietyとは違って。そして、どんなに隠者として生きようとしても、他者と関わる(子供ができるとか)ととたんに隠者としては生活できなくなる、という。。確かに。。

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    2010年02月16日
  • ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界

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    歴史の真相が徐々に明らかにされていく様。
    ゾクゾクした。
    最初はそれほど多くなかったであろう資料を集めて読み解き、真実を追求していく学者魂に敬服した。

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    2025年10月05日
  • ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界

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    ハーメルンの笛吹き男の伝説がどのような経緯を辿って生まれていったのかということを、歴史的な文書を渉猟しながら、何より当時の庶民の生活はいかなるものであったかという実態を踏まえつつ考察されている。
    およそ研究というものはかくあるべしというお手本のような書である。

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    2025年06月29日