阿部謹也のレビュー一覧
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西洋中世の罪と罰
キリスト教以前の亡霊とキリスト教以後の亡霊のありかたについて書かれている。前半は筆者の専門分野でもあるアイスランドサガに見られる亡霊観からキリスト教以前の世界を読み解く。サガでは死者は生者と戦争したりするなど、死者はとても生き生きとしていることがアイスランドサガの様々な物語から説明される。当時の人々にとって死後の世界について考えることがあまりなく、生を全うすることが主題であったようだ。だからこそ、生前に共同体に認められなかったものの恨みは大きく、彼らが死後に生者を襲うようになる。このような死者観は、キリスト教導入後に、生者に救いを求める哀れなものに変わる。キリスト教徒は、自 -
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キリスト教が浸透する以前のヨーロッパ社会の亡霊とキリスト教が普及したヨーロッパ社会の亡霊を比較すると、前者の乱暴で粗野な亡霊と地獄を前におののく哀れな亡霊との際立った違いがある。その違いが、1215年以降、キリスト教徒年1回が必ず行うことになった告解の浸透が背景にあるとしている。個人が司祭の前で罪を告白し、司祭から贖罪を命じられる告解は、それ以前の共同体的な古代異教の世界にいた人々には大きなインパクトを与えたことは容易に想像できる。キリスト教会が戦った古代ヨーロッパの迷信的世界は、告解の手引きである「贖罪規定書」に記述されている数々の迷信、悪魔、魔女からうかがえる。共同体のキリスト教以前の亡霊
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ネタバレ昔からあるようでなかった、日本特有の人間関係「世間」について考察した本。
近代西洋の自由で平等な「個人」を前提とする「社会」が普遍的で抽象的なのに対し、日本独特の「世間」は具体的、その外にいる者に対し排他的、長幼の序・互酬の原理が根付いている、情理や感性と関係が深い、無情、世知辛い、ままならないものと捉えられていた、といった特徴を持っている。
そんな「世間」の共通項は万葉の時代から続いているとされる。そして、第一章以降で、日本の奈良~平安時代、鎌倉時代、江戸時代、明治時代において、「世間」がどう捉えられていたかが述べられている。
良い意味で情緒的、悪い意味で閉鎖的な「ムラ的」であ -
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ネタバレドイツに旅行に行くためにお勉強。この本は思想・文化的背景からの歴史アプローチが多く、ただの歴史本ではないため興味深い内容となっている。
今回は、なぜドイツで魔女狩りやナチスの台頭が起こったのか、ということが大きな命題だった。
魔女狩りについては…
ドイツは森が多く、日本と同じようにそこには神々が宿っていると信じられていた。キリスト教の支配下になっても、他の地域より土着の宗教が長く生活の中に取り入れられていたのだろう。それ故、どの地域よりも強力な方法で人々のキリスト教化と土着宗教の弾圧が行なわれたのだと思った。
ナチスについては…
ドイツは地理的にヨーロッパの真ん中に位置しているため常に他国 -
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[ 内容 ]
二〇〇六年秋に急逝した歴史家が遺した研究と思索にもとづく、日本人に向けてのメッセージ。
専門の西洋中世史の研究を超えて、日本史、日本現代社会論にいたるまで、幅広い分野で健筆をふるってきた著者による、文字通り「最後の」書き下ろし。
自らの五十年に及ぶ研究をもとに、古今東西を縦横に論じる。
[ 目次 ]
第1章 西欧社会の特性
第2章 日本の「世間」
第3章 歴史意識の東西
終章 ヨーロッパと日本
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆ -
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ネタバレこの本では、日本とヨーロッパの近代化の過程における個人と社会の関係について比較分析しています。日本には個人という概念がなく、世間という集団の中で生きる人々が多いという主張をしています。ヨーロッパでは、キリスト教や贈与慣行の変化によって、個人が敬意をもって遇される公共性が生まれたというのです。この本はとても興味深いですが、難しい言葉や考え方もたくさん出てきますね。私はこの本を読む前に、ウェブ検索をして、雪舟やミシェル・フーコーという人物について調べました。雪舟は室町時代の水墨画家で、中国に渡って山水画を学びました。彼は自画像というジャンルを日本に初めて持ち込んだ人物です。ミシェル・フーコーはフラ
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カロリング朝から現代にいたるまでのドイツの歴史を解説している本です。
中世ヨーロッパ史の研究者であり、日本史研究の網野善彦とともにわが国における社会史的な観点からの研究を牽引したことで知られています。本書は、ドイツの歴史の全体像をえがき出すことをねらいとしており、文化史について触れられているところがありますが、社会史との結びつきについての言及があるところに、本書の特色が見られるように感じます。
また、本書のサブタイトルになっている「ドイツ的とは何か」という問いかけについては、最終章で現代のドイツが直面している難民問題に言及しながら、考察のいとぐちが示されています。著者は、いわゆる賤民と呼ば