遠藤真美のレビュー一覧
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貨幣は自然発生的に生まれたものではなく、社会的な技術である。その標準を決めるのは社会であるはずだが、ジョンロックのところで経済学は道を誤った。貨幣経済において銀行の果たしてきた役割は殊更に多く、モラルハザードを防ぐためにどのような規制を作るかなどは大いに議論になってきた。解決策としてナローバンクが挙げられる。だが結局、貨幣の本質を中央銀行や影響力のある人たちが知れば良いのではなく、貨幣経済に暮らす我々が知らなければ意味はないのである。
かつては物々交換で、それをより便利にするために貨幣が作られたと思っていたがそうではなかった。正統派経済学は脇道にそれてしまったとのことだが、貨幣経済の発展と富の社会への分配はもはや一致せず、かつての恐慌のようなことが起きないようにするには銀行といった金融機関の果たす役割は大きいのだと思った。少し難しかった。コロナショックにおいては、金融危機は起きてないように思われる。そのとき貨幣経済にできることは何なのであろうか。 -
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それまでの経済学の概念ではありえない現実を解き明かすために生み出された行動経済学。生みの親である著者が、その挑戦の人生を面白おかしく語られた自伝とも言えるものです。他の経済学者と違いぐうたらと語る著者は、最初に疑問に感じた学会の常識に、あきらめず愚直に挑戦する芯の強さを発揮されます。その信念が、同じようなことをしている仲間を見つけ出し、一つの成果を形作っていくところまでが上巻の内容になっています。ある程度の権威を得たところで、この世界の常識と向き合うことになるのですが、、、というところまで。
人間が行うことなので、シナリオ通りに功利のみ追求する結果にはならない。それは何故なのか。どうすれば分析できるのか。ヒントは心理学なのか。シミュレーションされた人間は「お金」のみに功利的に振舞いますが、「お金」がすべてではない私たちには当てはまらないものがあるということについて気付かされた部分がありました。 -
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現代に生きる私たちは、ソ連の崩壊や北朝鮮の悲惨な経済情勢によって、共産主義は過去の遺物であり、もはや資本主義しか残されていないと思っている。一方で、資本主義が決して完璧なものでないのはリーマンショックを見るまでもなく明らかでもあり、資本主義をどう改良していくのか、という目線に囚われている。
しかし、資本主義の未来とはそのような”改良”レベルで事足りるのか?、というのが本書が突き付ける疑問である。
本書は一般的な資本主義のルールに”No”を突き付け、極めてラディカルな、ただし、”サヨク”が牽引するような夢物語ではなく、一定の理論的実現性を踏まえた姿を描き出す。
たとえば、資本主義と共産主義を分かつ違いの一つは、私有財産を認めるか否かである。資本主義社会に生きる我々は、私有財産という制度を疑うことはまずないだろう。しかしながら、私有財産というルールによる弊害があるのも事実である。例えば、都市開発においては、99%の地権者が同意しても1%の地権者が自らの土地を手放さない(もちろん、その行為はなるべく交渉を長引かせた方が自らの利得が高まるという卑しさによるものであるのは論を待たない)。この点を実感するなら、赤坂のアークヒルズを訪れると良い。アークヒルズの2Fには、北大氏魯山人が黄泉の国から復活して、呪詛を吐きそうなくらい不味い蕎麦屋がある。なぜ、そんな蕎麦屋が存続しているか?それはその店がアークヒルズの地権者であり、土地を手放す代わりにテナントとしての出店権を獲得したからだ。
もちろん、不味い蕎麦屋を憎む私のようなスマートな人間は訪問することはないが、サントリーホールを訪れる貴婦人方は知らずにその店を訪れ、あまりの不味さに天を仰いでこう言うだろう、「逝ってよし」と。
酩酊しているので、前置きが長くなりすぎた。
本書がそうした私有財産という資本主義のベーシックなルールの代わりに提示するのは、"COST(共同所有自己申告税)"というルールである。これは、常に自らが保有する資産の時価を提示し、その時価に対して税が課せられる仕組みである。税金を抑えたいと思えば、その時価を低くすれば良いが、その一方で、その時価で資産を購入したいと思う他者には抗弁できない。このルールはつまり、資産を最も有効的に活用できる人間に、その資産の所有権が譲渡され、結果として資産活用によるベネフィットが最大化される。先の例でいえば、アークヒルズを訪れる貴婦人たちは不味い蕎麦屋で不幸な目に会うことがなくなる。
こうした点で本書は極めてラディカルな資本主義のルールを示す。もちろん、全てがすぐに実現可能なわけではない。それでも、今後の社会を考える一つの思考の”補助線”として、こうしたラディカルな改革案を知ることは、悪くはない。 -
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古代文明以来の経済・金融システムの概要や経緯をうまくまとめており、自由資本主義経済が支配する現代システムの問題点にまで至る内容。 各論も総論も扱って多くの章がテーマごとに連なっていく内容のため読み物としても面白かった。
経済学や金融会社が欠陥だらけである理由が良くわかる。
度重なる金融危機のリスクを内包し、超格差社会となった現代を暗黒時代としており、貨幣思想の変革で金融システム抜本改革が必要との主張である。 解決する方法としてナローバンク構想が挙げられているが、今後の方策に取り入れられていくのか注目したい。
経済・金融から紐解く歴史解釈として、なぜ欧米が覇権を制したか、なぜ英国で金融革命(産業革命)が起きたかをイメージできるという意味で、帯にダイアモンド級と謳ったのであろうと想像。 -
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マット・リグレーの「繁栄」の冒頭で50万年前のハンドアックスと現代のコードレスマウスの写真を並べていたことを思い出しました。そこで人類の進化は交易を通じて一人じゃ出来ないことを積み重ねて成し遂げられてきたことを語っていました。この本の50のテップス(?)も人と人の交わりを活性化させるモノが多かったような気がします。本書で語られるのはモノそのものじゃなくて、そのモノが作り出した暮らしとか社会システムとかについてです。そして、そのそれぞれはお互いに絡み合いながら、現在に至るイノベーションの歴史を作っていくのです。取り上げられているトピックを備忘的にメモすると、蓄音機、有刺鉄線、セラーフィードバック、グーグル検索、パスポート、ロボット、福祉国家、育児用粉ミルク、冷凍食品、ピル、ビデオゲーム、マーケットリサーチ、空調、デパート、発電機、輸送用コンテナ、バーコード、コールドチェーン、取引できる債務とタリースティック、ビリーブックケース、エレベーター、楔形文字、公開鍵暗号方式、複式簿記、有限責任株式会社、経営コンサルティング、知的財産、コンパイラ、iPhone、ディーゼルエンジン、時計、ハーバー=ボッシュ法、レーダー、電池、プラスティック、銀行、カミソリと替え刃、タックスヘイブン、有鉛ガソリン、農業用抗生物質、モバイル送金、不動産登記、紙、インデックス・ファンド、S字トラップ、紙幣、コンクリート、保険、そして電球。この50のありとあらゆる雑多な事象がいかに経済というものを作り上げてきたのか、経済史というのはイノベーション史であり、人類の生活史なんだな、と感じました。そして、いまグローバルに蔓延するポピュリズムと言われるものはグローバル時代、デジタル時代の「ラッダイト運動」なんだ、と思い知りました。だから、これは過去の話じゃなくて現在進行形の話なんですよね。作者のスパイスもキリリと効いていて気軽な読み物ですが、考えさせることは大。スティーブン・ジョンソンの「世界をつくった6つの革命の物語」の経済版でもあります。
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行動経済学の発展を当事者の立場からたどる。たんなる行動経済学の紹介をする本とは違い、異端視されていた黎明期から、無視できない地位を築くまでの足跡をたどれるようになっている。とくに本書では、「エコン」(経済モデルが想定する合理的な人間像)の牙城と見られていたファイナンスの世界に、多くのボリュームが割かれているのが特徴だ。
自分が行動経済学に惹かれるのは、自分を含む「ヒューマン」がつい犯してしまいがちな罠を、あらかじめ知っておくことが有益だと考えるからだ。本書でも、実利のある知見はいろいろ得られる。たとえば(すくなくとも米国においては)株式投資のプレミアムは大きいということだとか、グロースよりバリューのほうが戦略としては正しいだとか。まぁ、でもそうした「実利」を求めるならもっとコンパクトにまとまったものがある。本書の価値は、ユーモアのある著者の語り口に乗せられつつ、たのしくこの分野の発展を理解できるということになるだろう。 -
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1)経済学科出身だしビジネススクールでも経済学は履修した。けど世の中の出来事を見てると納得いかない。そんな僕に間違いなく必要な本。
2)まだ十分には咀嚼できていない。時間をとって振り返らないと。経済学とファイナンスにはお互いが欠けている?そんなの薄々分かってたけどさ。数式ではなく歴史と思想の流れでそれを読み解く試み。筆者が参画しているThe Institute for New Economic Thinkingって非営利組織も面白そうだ!時間がいくらあっても足りないね。
3)有意義な試みだからこそ、紛らわしい邦題や、無関係のジャレド・ダイアモンドの名前を筆者の名前よりも大きく出すような和風マーケティングは、本書の価値を貶めると思う。断固反対!
4)実は本書を、マニラの定宿の枕元に忘れてきた。けど次の出張のときにきちんとビニールに包んで届けてくれた。そういう意味でも思い出深い本になった。 -
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ジャレドダイアモンド級の「知的衝撃」と、帯にある通り、壮大かつ独創的なストーリーで一気に読みきった。
この本から学んだ今後の課題についての個人的なまとめが以下である。
①貨幣はそれ自体に価値のある商品ではなく、譲渡可能な信用である、という概念を理解すること。経済学の主流である新古典派に対し、もう一度原点に立ち返って貨幣観を見直す時期に来ている。
②貨幣で測るべきものと、そうでないものを分離する必要性(貨幣を尺度とする経済的価値で測る対象は何か?という議論)
→マイケル・サンデルの「それをお金で買いますか?」の議論につながる
③正しくリスクを分担する
貨幣は自由の欲求と安定の欲求を同時に満たすことを可能にする画期的な社会的技術だが、そこには当然リスクがある。個人、社会、国家がそうしたリスクを応分に負うことが必要。
そのために銀行などの構造改革が必要。
どれも一朝一夕に解決する問題ではないが、だからこそしっかりと議論を深めていくべき内容であると感じた。実に読み応えのある良書だった。