遠藤真美のレビュー一覧
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こんなノンフィクション書籍は好きだ。それを思い出させてくれた一冊。
行動経済学の成り立ちが、その学問を成立させた著者の視点から語られる。
これまでの経済学と異なる「行動経済学」という分野がどのように形作られていったのか、そして、みずから立てた仮説がどれほど現実世界を予測するのに有効かを、著者がさまざまな実験的手法で客観的に調べる様が描かれている。
考え方を変えるきっかけとなったのは、これまで経済学的に考えて意思決定とは無関係だと考えられてきたことだった。
たとえば、NBAの試合のチケットを高額で手に入れた人は、たとえ会場が車で1時間半かかり、さらには当日吹雪であっても、損をしないように試合を見に行こうとするかもしれない。
しかし、経済学者の考える消費者モデルは、そのような非合理的選択はしない。チケットを手に入れるために支払った対価は、試合を見に行くか行かないかという選択に影響を及ぼさないはずなのだ。なぜなら、試合を見に行こうが行くまいが、支払ってしまった対価は増えたり減ったりすることはないからである。
経済理論に基づく予測の精度を高めるため、著者は似たような事例を「おかしな行動リスト」としてまとめ、それはやがて「行動経済学」として世に出る理論の最初の礎となったのであった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2050年には、世界の人口の3分の2が都市で暮らす見通しであり、その4分の1は人口1000万人以上の都市に住むことになる。3分の2は中間層が富裕層、文化生活を送れるようになる。大部分は新興国
人びとの健康をリアルタイムでモニターできるようにもなる。診断は自動化され、一人ひとりの状況に合わせて医療が最適化される。世界人口の3分の2を占める中間所得層が、現在の先進世界で高収入の専門職が受けられるレベルのサービスを受けられるようになる。いまは半年か1年に一度、病院に行って定期検診を受けなければいけないが、その必要もなくなり、テクノロジーが悪いところを見つけてくれる。
スマホのカメラの網膜スキャンで健康状態の変化を検出、その情報を医療機関に送る。保存されているほかのすべてのこと、どれくらい運動しているか、歩く速さはどれくらいかといったことを加えると、行動、変化をすべて把握できる。からだの不調を感じている人なら、携帯電話がそれを診断して、どうするべきか判断する。
大学はビジネスのようになり、ビジネスは大学のようになっていく。学内の研究成果を商業化し成功させることを明確な目標として掲げる、営利目的の大学が成長する。アジアで生まれる。
小売売上高の半分以上オンライン。高級ブランドは繁栄し、格安店はにぎわう。しかし、中間価格帯の店は減っていく
小売りの空間は生活・娯楽の空間になり、倉庫、立体駐車場、ロフト型店舗などの商業空間が住宅に変わる傾向は今後もつづく。
その結果、都市部はいまよりも住みやすくなる。電気自動車が支える。ガソリン車は作られない。
オンラインで仕事をするほうが効率的なときと、対面でのやりとりが不可欠なときの区別もっと大きな家が必要になる。
リモートで働いている人は成果で評価され、労働時間を自分で管理する。雇用から自営25%、製造業からサービス業へのシフト、
繰り返しの定型作業は減り賃金全般の水準や仕事の満足度が上がる。雇用市場が空洞化し、高スキルと低スキルの仕事は増え、中間の仕事はなくなる。旅行代理店、速記、輸送産業。生活と仕事の境目無くなる
AIはデータの分析。採用、マーケティング、サプライチェーン管理。コロナでは、携帯電話を利用して感染者を追跡して拡大を防ぐ、リスク因子を解明する、データベースを解析してワクチンの開発に役立ちそうな分子を見つける
コロナ危機では、見知らぬ人からウイルスをもらうより、知っている人から感染する可能性のほうがはるかに高いことが明らかになった。
気候変動を遅らせて、覆す。
AIを使って犯罪をなくせる。ある人が80%の確率で殺人を犯すとコンピューターが判定したら、その人をどこかに閉じ込める。
だれを友人や恋人にするべきかをAIが決めたり、これからの人生でどのような仕事をしていくか、家計をどう管理するきかをAIに判断させる。保険会社は自動車保険や生命保険の保険料を決める。
監視社会 リベラルと中国。
人生が保存されて分析できる社会。どこで学んでいる。成績、仕事。あの日の夜にだれと食事に行ってなにを食べたか、電子メール、いつ、どんな理由で病院にかかったか、体暇でどこに行ったか、どんな人と付き合ってきたか、遺伝子上の両親はだれかーー一人のあらゆる情報を瞬時に入手。
減税で監視。
プレイクスルーが起こるとしたら、エネルギーの貯蔵と効率化。太陽光と風力。バッテリー技術に大変革
生物由来の原料でつくる環境にやさしく低コストの代替品にとってかわられているため、プラスチックのレジ袋はなくなっている
製造業で使われる原材料は、金属・プラスチックからバイオ工学を用いた自然由来のものにシフトしていく。建設素材は鉄とコンクリートから木材に変わっていくだろう。
高齢化の中で有権者は民主主義に不満を持つ。民主主義を後退化させる国も出てくる。政策にオンラインで投票する直接民主主義。WHOはコロナのとき弱腰。国際機関は各国政府が都合よいときだけ利用、予算は削る。
環境・社会・企業統治への取組を示すESCスコアを向上。労働者のすべての階層にインセンティブ。グローバル化戦略も変更、生産を海外に移さず、国内に戻すようにする。
クラウドファンディングで資金を集める。上場企業に対する規制が強化、株式を公表しない会社が増える。政府が事業会社の大部分を所有、国有企業と上場企業の境界があいまい。政府系ファンドが成長、経営難に陥った重要な企業を救済。
ドルの価値低下、インフレ、国家通貨の価値低下で債務不履行で世界共通のデジタル通貨ができる
投資、富は新興国へ。
水はなくなる 街の作り方次第。旱魃と洪水
風力太陽光が50パー以上にバッテリーの改善
気温上昇は2100年でピークアウト。2050年には100億人。2045年に日本の1/4ガ75歳以上。生産性が下がりG7で最下位。古い慣習のせいもある
宗教戦争が起きる?
みんな同じアメリカ式の家、服
教育は読み書きの日本中国式、中国台頭で民主主義揺らぎ、日本のように高齢者は家族が支える
コロナ対応ように集団主義。
製品の貿易は減り、国内生産。デザインとマーケティングの貿易、金とノウハウの移動 -
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ノーベル賞獲得者は考えることがやはりすごいなと思った。経済学をこうもわかりやすく、センスの良いユーモアを交えながら楽しみながら学ぶことができた。訳者もすごいと思った。久しぶりに経済ジャンルの読書で良書に出会えた。
人は自分にとって最適な行動をする、常にそうありたいの願っていながら、数時間後には目の前の誘惑に負けて頭の中の計画者が立てた計画を無視して、目の前の効用を獲得してしまう。なるほど、ほぼ毎日心当たりがあるなと感じた。著者が行動経済学における観察・研究を行っていく時間の流れに伴走するかのごとく読めて、楽しかった。後知恵バイアス、限定合理性、保有効果、ハウスマネー効果、確証バイアスなど、理想とかけはなれた思考や行動を取ることは人間らしさであり、経済理論の中でのみ登場する人間(エコン)とはかけ離れているんだな、ということに納得するし、そういった人間性に基づいて、現代でのネット通販やサブスクへの惹きつけが裏付けされているんだなと思った。
組織の目標を遂行するうえで、富や欲求に対する人間くさい行動を前提にしてマネジメントすること、特に組織のマネジメントに関するこのフレーズ「管理職がリスクをとりにいくようにするには、事前に価値を最大化していた意思決定に報いる環境を整える必要がある。事後に損失を出すことになったとしても、管理職が意思決定した時点で入手可能な情報に基づいて評価するということだ」、この実践こそが今、世界に遅れを取った日本の組織人が取るべきことなのでは、と思った。
再読して、また楽しみ、より理解を深めてみたい。 -
Posted by ブクログ
本書は、経済学のさなざまな法則が書かれていて、経済学の発展を説明する。経済学を知らない私にとって、経済学入門書となる。
リチャード・セイラーのテーマは、経済学における「命の価値」である。本書は、時代ごとに、セイラーがどんな課題に取り組んでいたかということが整理されているので、行動経済学の学問の変遷がよくわかっていい。
セイラーは著書『逆襲の行動経済学』において、経済学の前提となっている「人間は常に合理的である」という考え、すなわち標準的な経済学の理論に疑問を投げかけた。
セイラーがダニエル・カーネマンとおよびエイモス・トヴェルスキーの理論に驚愕したのは、その理論が人間の不合理な判断のパターンを体系的に説明し、セイラーの抱えていた疑問を裏付けるものであったからである。
疑問を持った点について、セイラーは従来の標準的な経済学(新古典派経済学)が仮定する「ホモ・エコノミクス(経済人)」という概念に疑念を抱いていた。
ホモ・エコノミクスは、完全な情報に基づき、一貫した選好に従い、常に自己の利益を最大化するために合理的に行動するとされる。しかし、セイラーは現実の人間が貯蓄を怠る、目先の利益に飛びつく、不合理な買い物をするなど、この前提から逸脱した行動を頻繁にとることに気づいていた。セイラーは、実際に観察される人間の行動と経済学の理論との間に大きなギャップがあると認識していたのである。
カーネマンの理論への驚きについては、プロスペクト理論(展望理論)がもたらした影響が大きい。 カーネマンとトヴェルスキーは、「損失回避」(人は、利益から得られる喜びよりも、同額の損失から感じる痛み(不快感)を強く感じる)や「参照点依存性」(人は、利益や損失の絶対的な金額ではなく、ある基準点つまり参照点からの変化によって、結果を評価する)、「確率加重関数 (人は、客観的な確率をそのまま受け入れるのではなく、主観的に歪めて評価する傾向がある)といった心理学的洞察に基づき、人間が不確実性のもとでどのように判断をするのを数理モデルとして記述した点において、新たな局面を切り開いた。
プロスペクト理論は、金融市場、マーケティング、公共政策など、様々な分野で人間の行動を予測し、より良い意思決定を促すための「ナッジ」の設計に活用されている。さらに、この理論は、セイラーが日常的に観察してきた人間の「不合理な」判断傾向を単なるエラーとして片付けるのではなく、予測可能な系統的エラーとして明確に説明し、セイラーの抱えていた経済学の前提への疑問を裏付けるものとなった。
つまり、セイラーにとってカーネマンの理論は、「合理的でない人間の行動」を経済学に取り込むための強力なツールおよび理論的基盤を提供し、セイラーの長年の疑問に答えるものとなった。そして、セイラーは、人間がどのように行動するか正確に記述する経済モデルを構築しようと考えた。
セイラーは、カーネマンらの心理学的知見を従来の 経済学の枠組みに本格的に取り込み、現実世界への応用を推進した。
心理学の洞察を「ホモ・エコノミクス」の仮定を修正する形で経済学の理論に組み込み、行動ファイナンスなど新たな分野の発展に寄与した。
キャス・サンスティーンとの共著を通じて、人々の意思決定をそっと後押しする「ナッジ」の概念を提唱し、政策や企業経営への応用を一気に普及させた。
ナッジは、個人の選択の自由を奪わないことを前提とし、その行動が本人や社会にとって望ましい方向へ向かうように誘導するものである。セイラーらは、この考え方を「リバタリアン・パターナリズム(自由主義的温情主義)」と呼んでいる。
罰則や義務付けによって行動を強制することなく、最終的な選択はあくまで個人に委ねられる。人々がお金を、その出所や使い道によって無意識に異なる「勘定」に分類し、「こころの会計」として不合理な消費行動を引き起こす現象を明らかにした。
ナッジ理論の身近な具体例
1. デフォルト(初期設定)の利用
人は、特にこだわりがない場合、手間を避けて初期設定のまま選択する傾向がある(現状維持バイアス)。
事例:企業の退職金制度において、「自動的に加入する(オプトアウト)」をデフォルトに設定し、加入したくない者だけが手続きを行う仕組みにすれば、加入率が大幅に向上し、人々の貯蓄を促進する。
2. 環境の構造化(選択アーキテクチャ)
目立つように配置したり、簡単に選べるようにしたりするなど、環境を工夫することによって無意識の判断に働きかける。
事例:スキポール空港の男性用トイレの小便器の底に「ハエの絵」を描いたところ、清掃費用が大きく削減された。男性は無意識に「狙う」対象ができ、清掃が楽になるという望ましい行動を自然に選ぶ。
事例:階段の段差に「ここまで登ると〇〇キロカロリー消費」と表示し、運動不足の解消を促す。
3. 社会規範の利用
人は、「周囲の人々が何をしているか」に影響を受ける。社会の一般的な行動を提示することによって、それに従うよう促す。
事例:「あなたの地域では、90%の住民が節電している」というメッセージを電気の請求書に記載することで、残りの10%の住民に対しても節電を促す。
ナッジ理論は、公衆衛生の向上や貯蓄促進、環境保護などの公共政策やマーケティング、組織運営など、多岐にわたる分野で活用されている。
とにかく、便器にハエの絵を描くと、そこにめざしてシッコをかけるので、便器を洗うのにいいというのが、行動経済学から作られたという話は、とても面白い。 -
Posted by ブクログ
人間の意思決定には バイアスがある
「選択アーキテクト(選択の設計者)」:人々が意思決定する文脈を整理して示す責任を負う
医師も書式やウェブサイトを作る人もセールス担当者も親も選択アーキテクト。
中立的な設計などない あらゆることが重要な影響を与える。
計画の錯誤:必要な時間を過度に楽観的に見積もる
現状維持バイアス:惰性。人はいくつもの理由から、現状維持するかデフォルト(選択する人が何もしなかったら選ぶ選択肢)の選択肢に従う強い傾向
(例 スマホはデフォルト設定のまま)
「アンカリング」 アンカー(自分が知っていることなど)を出発点として 影響を受け、調整して考える
「リアクタンス」 指示されると反発して逆の行動をとること
「楽観と自信過剰」
自分は「平均以上」だとみな思う
将来を楽観視
「損失回避的」失う惨めさは、得る喜びの2倍
「現状維持バイアス」
ナッジする
カーブの手前で白線の間隔を狭くする⇒走行速度が上がっている不安感から減速する
「ホットな状態とコールドな状態」
興奮がおよぼす影響を過小評価するので セルフコントロール問題は起きないと考えて コミットメント戦略(事前に誘惑を取り除くなど)を取らない
「メンタルアカウンティング(心の会計)」
ずっと貯めてきたお金を使うより、思いがけない収入のあった時の方が散財する
「自信ヒューリスティック」人は自信たっぷりに話す人を正しいと思いがち
「社会的影響」他の人に同調する
「私は私のことをいちばん知っている」という勘違い
「刺激反応適合性」受け取る信号(刺激)と望ましい行動が一致していて欲しいと人は考える。
信号と行動が一致していないと、反応が鈍くなり失敗してしまう。
例: ストループテスト (色と色名の不一致はエラー率が上がる 自動システムが熟慮システムに勝つ)
「利潤はまとめるより、ばらした方がお得に感じる」
「仕事はしなければならないことでできているが、遊びはしなくてもよいことでできている」(トウェイン)
人は賞金が当たる確率を高く見積もる
現金をもらうより無料のものに引きつけられる
無料のものは「罪悪感のない喜び」
スラッジ(選択アーキテクチャーの中で、選択する当人の利益を得にくくなるような摩擦や障害)
例; 20ページの書類を書かないと学資援助を受けられない
定期購読の解約手続きを難しくする
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Posted by ブクログ
2024/01/23
25年後の世界ってどんな風になっているのだろう、と思い。
目新しいことはほとんど何もなく、そりゃあ今こうなんだから当然その予想になるでしょうな、っていう内容が大変多かった。
でもよく考えたら、今ある状況の延長に2050年があるのだから、今我々が持っている情報からかけ離れた突拍子もない未来が提示されるわけが無い。
突拍子もない未来が訪れる可能性はゼロではないが、それよりも現状から地続きの未来が待っている可能性の方が限りなく高い。そういう観点で読むと、日本は今も2050年も平和な国であり続けるし、閉鎖的な国であり続ける。
後は、未来予測としていちばんわかりやすい情報は人口動態だという認識を持った。今存在する人は25年後も大部分は存在するし、出生率もいきなり増えたり減ったりはしないし、人間の寿命も(医療が行き届けば)頭打ちになる。 -
Posted by ブクログ
経済学は科学であり、アートである。
道徳に深く根ざしていて、厚生、ウェルビーイングを研究する。悲惨や窮乏に憤る人々によって推進されてきた。世界をより良くすることを目指しているそうだ。
現実に役立っている例がいくつも挙げられる。例えばマッチング理論とマーケットデザインは実際の公共政策に使われている。行動経済学の知見はより良い選択や行動に役立つ。コモンズの悲劇を避ける制度的条件も分かってきている。
経済学から導かれる幸せになる戦略が3つある。(1)適応できそうにないことに時間とお金を使う。安楽よりも快楽に、モノよりもコトを優先する。(2)期待と願望が上がりすぎないようにする。(3)むやみに自分を他人と比べない。
経済学の哲学の本だが、経済学の解説本でもある。
インセンティブ、選好,限界効用、限界効果、ゲーム理論、ナッシュ均衡、パレート最適など、一度は聞いたことがあるけど理解してなかった用語や概念が簡潔に説明されていて、お得だった。