【感想・ネタバレ】ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀のレビュー

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Posted by ブクログ 2020年02月02日

現代に生きる私たちは、ソ連の崩壊や北朝鮮の悲惨な経済情勢によって、共産主義は過去の遺物であり、もはや資本主義しか残されていないと思っている。一方で、資本主義が決して完璧なものでないのはリーマンショックを見るまでもなく明らかでもあり、資本主義をどう改良していくのか、という目線に囚われている。

しかし...続きを読む、資本主義の未来とはそのような”改良”レベルで事足りるのか?、というのが本書が突き付ける疑問である。
本書は一般的な資本主義のルールに”No”を突き付け、極めてラディカルな、ただし、”サヨク”が牽引するような夢物語ではなく、一定の理論的実現性を踏まえた姿を描き出す。

たとえば、資本主義と共産主義を分かつ違いの一つは、私有財産を認めるか否かである。資本主義社会に生きる我々は、私有財産という制度を疑うことはまずないだろう。しかしながら、私有財産というルールによる弊害があるのも事実である。例えば、都市開発においては、99%の地権者が同意しても1%の地権者が自らの土地を手放さない(もちろん、その行為はなるべく交渉を長引かせた方が自らの利得が高まるという卑しさによるものであるのは論を待たない)。この点を実感するなら、赤坂のアークヒルズを訪れると良い。アークヒルズの2Fには、北大氏魯山人が黄泉の国から復活して、呪詛を吐きそうなくらい不味い蕎麦屋がある。なぜ、そんな蕎麦屋が存続しているか?それはその店がアークヒルズの地権者であり、土地を手放す代わりにテナントとしての出店権を獲得したからだ。

もちろん、不味い蕎麦屋を憎む私のようなスマートな人間は訪問することはないが、サントリーホールを訪れる貴婦人方は知らずにその店を訪れ、あまりの不味さに天を仰いでこう言うだろう、「逝ってよし」と。

酩酊しているので、前置きが長くなりすぎた。

本書がそうした私有財産という資本主義のベーシックなルールの代わりに提示するのは、"COST(共同所有自己申告税)"というルールである。これは、常に自らが保有する資産の時価を提示し、その時価に対して税が課せられる仕組みである。税金を抑えたいと思えば、その時価を低くすれば良いが、その一方で、その時価で資産を購入したいと思う他者には抗弁できない。このルールはつまり、資産を最も有効的に活用できる人間に、その資産の所有権が譲渡され、結果として資産活用によるベネフィットが最大化される。先の例でいえば、アークヒルズを訪れる貴婦人たちは不味い蕎麦屋で不幸な目に会うことがなくなる。

こうした点で本書は極めてラディカルな資本主義のルールを示す。もちろん、全てがすぐに実現可能なわけではない。それでも、今後の社会を考える一つの思考の”補助線”として、こうしたラディカルな改革案を知ることは、悪くはない。

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