【感想・ネタバレ】行動経済学の逆襲のレビュー

あらすじ

“ぐうたら”学者がいざなう、行動経済学誕生の波乱に満ちた舞台裏。伝統的な経済学の大前提に真っ向から挑んだ行動経済学。そのパイオニアが、自らの研究者人生を振り返りつつ、“異端の学問”が支持を集めるようになった過程をユーモアたっぷりに描く。行動経済学は、学界の権威たちから繰り返し糾弾されながらも、どのように反撃して強くなっていったのか? これからどう発展し、世界を変えていけるのか? “ナッジ”の提唱者がすべてを書き尽くした渾身の力作。

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Posted by ブクログ

改めて行動経済学を学び直しておりますが、非常に私にとってはためになる本でした。

人間の選択に無意識に影響を与えている要因(SIF)については、興味深く、常に合理的な選択はわれわれはできないと改めて感じております。
この本には、言及されておりませんがその部分をAIに任せたいなと感じた次第です。

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2025年11月09日

Posted by ブクログ

経済学の知識のアップデートに取り組んでますが、これはかなり面白かった。

リチャード・セイラーは、カーネマンらに続く行動経済学第2世代というべき人で、ノーベル賞を受賞、ナッジなどの概念の提唱者ということで、有名。

この本も10年違く前に出ているのだが、今更ながら、読んでみた。これまで行動経済学関係で読んだ本の中ではベストかな?

基本、彼の学者人生の物語に沿って、彼が研究したテーマなどが紹介されていくわけだが、これが個人史にとどまらず、行動経済学史にほとんどなっているのがすごい。

さまざまな面白いエピソードと一緒に紹介される議論もわかりやすい。日本語タイトルの「逆襲」はちょっと変だが、行動経済学の歴史は従来の新古典派経済学との論争史でもあって、最初、棒うちの刑に処されていたのが、徐々にその主張が受け入れらていくところとあっているかな?

改めて、行動経済学の歴史を辿って思うのは、これはとても真っ当なものだなということ。つまり、行動主義は、20世紀後半の社会科学の本流と言えるもので、それを経済学に取り入れようという話し。なんで、そんなことになったかというと経済学がなまじ抽象的な数学、微分方程式などで厳密に形式化する演繹的なスタイルで科学性を生み出すことに成功したものだから、まずは観察から始まる帰納法的な方法論が批判の対象になったということ。

社会科学では行動主義的な方法論自体が、批判の対象になって久しいわけだが、この半世紀くらいの経済学は数学的な世界から行動主義的な科学への転換を試みていたということなんですね。

大雑把にいうとそんな話しだが、その議論のプロセスが面白い。

ちなみに、著者は本の初めの方で経済人仮説なしでも経済学の大部分は問題なくやれるし、実際の研究の多くは統計学は使っていても経済人的な最大化の原理を使っているわけではないという議論があって、なるほどと思った。そういえば、ケインズ経済学は経済人を前提としていないし、マクロ経済学も統計的なデータ間の関係性を考えるものだから、経済人仮説はいらないよなと納得した。

ところが、本の最後の方で、セイラーは、これから行動経済学が発展してほしい分野として、一番にマクロ経済学をあげていて驚いた。どうも、私がマクロ経済学を勉強していた40年以上前から事情が変わったらしい。つまり、以前、マクロ経済学のミクロ的な基礎づけという話題があったのは記憶にあるが、その議論が進展して、現在のマクロ経済学は新古典派的なミクロ経済学で基礎付けられているらしい。ミクロ経済学の領域が行動経済学に置き換わっていく中で、マクロ経済の方が今や経済人仮説の牙城になっているのかな???

なんとも面白い現象だ。こうなるとマクロ経済学も学ぶ必要が出てきた。

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2025年07月24日

Posted by ブクログ

新しい学問分野(伝統的な経済学の大前提に真っ向から挑む「行動経済学」)が、学会の権威たちから「棒打ち刑」を受けながらも、影響力を高めていった過程が、自らの研究者人生を振り返りながら、詳細に書かれています。

最近読んだ 「最後通牒ゲームの謎」で「エコン」という言葉を知り、参照文献にあげられていたこの本を手に取りました。
しかし、「エコン」の定義から書かれているかと思ったら、そうではなく、経済学の世界では「ホモエコノミカス」という経済合理性に基づき行動する人間は、今更定義をおさらいするまでもなく周知のもののようで、「ホモエコノミカス」では長ったらしいので、著者は「エコン」と呼んでいるとだけ書かれていました。
そして、私たちは「エコン」でなく、「ヒューマン」だと。

伝統的経済学のモデルは、みなエコンであることを前提にしている。
しかし、ヒューマンは、全く合理的でない。
同じ金額でも場合によりお得感・ぼったくり感を感じたり、既に払ったコスト(サンクコスト)にとらわれたり、お金をラベリングして、予定していた消費(ラベル通りの消費)と違う内容での消費では躊躇の度合いが違ったり。同額を得ると失うでは、失うことの方が耐えがたい。(メンタル・アカウンティング)
また、今と後の消費には、全く違う価値づけをしている。
(セルフコントロール)、、、朝三暮四の猿と同じ。
例えマグカップのごときものでも、一度手にしたら自分のもので、人に渡したくない。(インスタント保有効果)
これらアノマリー(エコンはしないと思われているが、現実のヒューマンにはよく見られる行動)を集め、また、経済学者から、最も合理的と思われていた「市場仮説」に抗っていく。
そして、行動経済学の次なる段階として、デフォルト設定変更等を用いて、意思決定をナッジ(誘導)していく。

研究内容が興味深いのはもちろんのこと、読みながら研究環境について感じたことも多々あり。
「大学院生」が研究や論文の執筆に大きな役割を果たしていることに驚きました。(日本でも、そうなのかな?)
また、筆者は、ノーベル経済学賞を2017年に行動経済学者として初めて受賞した、とのこと。
登場する経済学者も、ゾロゾロとノーベル経済学賞受賞者らしくて、そのハイレベルな環境にびっくり。
ネットで調べてみると、ノーベル経済学賞というのは、正確にはノーベル財団が認めている賞ではなく、また、現時点で89人の受賞者のうち圧倒的多数は米国出身で、非欧米の受賞者は1人しかいないらしい、とも知り、経済学ってそういう分野だったんだー、と感慨。
ともあれ、著者が自分の研究と取り巻く世界を存分に楽しんでいることはよく伝わってきました。
しあわせなヒューマン、ですね。

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2022年02月20日

Posted by ブクログ

セイラー氏も行動経済学も知らなかったが、読み進めるにつれすっかりファンになってしまった。
とりあげられているエピソードが秀逸なものばかり、誰かと飲みながら議論したくなる。
難解な内容もあり、なかなか頭に入ってこない部分も多いが、秋の夜長をじっくり楽しめた。
合理的に行動できない我々"ヒューマン"は、これからも誤りを繰り返すんだろうな。手近なとこでは、ユニコーンブームの終焉かな。

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2019年10月27日

Posted by ブクログ

きっかけは、仕事先の部長の「ナッジを見てうまく使いたい」という言葉に、「ナッジ??」となって、検索して手に取ってみた。

「ナッジ(小突く)」という言葉の生みの親である、リチャード・セイラー氏がこの本の著者。本の構成は、セイラー氏の提唱する行動経済学が、それまでの経済学派からの攻撃を受けながらも実証を元に認知されていく過程が、いくつものストーリーで展開されていく。ページ数で行くと約500ページあり、章立てで行くと33章あるので… お腹いっぱいになる。

この本を読む個人的な動機が、次回部長にあった時に、ナッジの意味を理解しつつ、提案をすると言う事だったが… この本で言われている例は、「駐車違反の紙をワイパーに挟むとこではなく、窓に貼り付ける行為」や、「貯蓄を促す仕掛けに、デフォルト方式を採用すること」や、「納税を促す時の文言」、「屋根の断熱材の施工に、屋根裏部屋の掃除を組み合わせる」など… 実施にあたっては、実証実験が必要そうだしデータを取って検証と。

この本では、ナッジだけじゃ無くて、サンクコストの話や、ゲーム理論の話、株式市場の反応への疑問、一物一価の嘘、市場の足し算引き算の話、NFLのドラフトなど、切り出して読んでも面白い話がたくさんある。読んで確実に理解できるほどの頭が無いのが痛い所である…

この本の対象読者は、30,40代のサラリーマンかな?もう少し若くして読めば、その後の人生で良いことあるかも知れないし、意外と政治とかに興味を持つようになったりするかも。

もう少し、この筆者が書いた別の本を読んで理解を深めたいと思った。

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2018年12月22日

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2017年ノーベル経済学賞受賞者、リチャード・セイラーの自伝的行動経済学解説。心理学者リチャード・カーネマン、エイモス・トヴェルスキーとの出会いから、最新の行動経済学の成果まで、著者自身が切り開いてきた行動経済学約40年の歴史を辿る。

すべての人間が合理的に、自分の利益を最大化するように行動するという前提を置く主流派経済学では現実の世の中で人間が実際に取る行動を説明できないことに気づいた著者は、心理学の手法を応用した実験を積み重ね、その結果を根拠に理論を組み立てる行動経済学という新分野を確立した。
行動経済学の主張は主流派経済学の主張と相容れない部分が多く、長い間異端とされた。しかし、少しずつ賛同者も増えてきて、いまでは経済学のひとつの大きな分野として認められるまでになった。

わかりやすく、専門でなくても直感的に理解しやすい実験内容を豊富に取り上げながら、「実際の人間はどう行動するのか」と解き明かそうとする行動経済学の進化と、行動経済学が明らかにする結果をなかなか受け入れようとしない主流派経済学者との闘いは、著者のユーモアたっぷりの話の進め方もあって非常におもしろい。

それにしても、著者のリチャード・セイラーという人は、この人自身がとてもおもしろい人に違いない。やっぱり、ノーベル賞を取るような人物は、その実績だけでなく、その人自身の人柄も凡人とは違うという感じがするなあ。

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2018年05月12日

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2017年にノーベル経済学賞を受賞した、著者による行動経済学を追い求める一代記です。エコンという常に合理的な判断を下すという前提の経済学ではなく、ヒューマンには失敗が付随するとして、より現実的な経済学を追い求めた著者の実体験を著しています。具体的な実験を重ねて、人の経済的行動を緻密に調べ上げた結果がよく分かり、個人的にはとても興味深い一冊でした。

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2018年03月29日

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伝統的なミクロ経済学では、完全合理性、最適化、均衡が前提条件で演繹的な理論。数学や物理のような体系的な科学のように見えて、何か胡散臭い。一方、行動経済学は、その前提条件に疑いを持ち、ランダム比較実験や自然実験でまさに今のデータから結果検証しようとする。その対比、論争がすごく面白い。

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2017年11月28日

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ノーベル経済学賞を受賞した著者だが、ぐうたらな人間と自身を称しておられる。謙虚!
行動経済学ってなんじゃらほい、と読み始めたが、我々の生活に密接した学問であるのだな。とてもわかりやすくおもしろかった。

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2017年10月17日

Posted by ブクログ

従来の経済学は最強の社会科学らしいのだが,偽なる前提から始まる論理体型体系なので,何を言っても真なので,およそ科学とは言えない。このとんでもない経済学をまともな学問にしようとしている流れの一つが行動経済学。とんでもなく間違っている従来の経済学の理論の馬鹿さ加減が分かる。こんな人たちが政策に口出ししていいのだろうか?
マクロ行動経済学というのが必要なのだが,これはなかなか難しいらしい。

原題は MISBEHAVING The Making of Behavioral Economics なのだが,なぜ「逆襲」になるのか意味不明。編集者?訳者?どっちがこんな日本語タイトルにしたの?

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2017年10月18日

Posted by ブクログ

ノーベル賞獲得者は考えることがやはりすごいなと思った。経済学をこうもわかりやすく、センスの良いユーモアを交えながら楽しみながら学ぶことができた。訳者もすごいと思った。久しぶりに経済ジャンルの読書で良書に出会えた。
人は自分にとって最適な行動をする、常にそうありたいの願っていながら、数時間後には目の前の誘惑に負けて頭の中の計画者が立てた計画を無視して、目の前の効用を獲得してしまう。なるほど、ほぼ毎日心当たりがあるなと感じた。著者が行動経済学における観察・研究を行っていく時間の流れに伴走するかのごとく読めて、楽しかった。後知恵バイアス、限定合理性、保有効果、ハウスマネー効果、確証バイアスなど、理想とかけはなれた思考や行動を取ることは人間らしさであり、経済理論の中でのみ登場する人間(エコン)とはかけ離れているんだな、ということに納得するし、そういった人間性に基づいて、現代でのネット通販やサブスクへの惹きつけが裏付けされているんだなと思った。
組織の目標を遂行するうえで、富や欲求に対する人間くさい行動を前提にしてマネジメントすること、特に組織のマネジメントに関するこのフレーズ「管理職がリスクをとりにいくようにするには、事前に価値を最大化していた意思決定に報いる環境を整える必要がある。事後に損失を出すことになったとしても、管理職が意思決定した時点で入手可能な情報に基づいて評価するということだ」、この実践こそが今、世界に遅れを取った日本の組織人が取るべきことなのでは、と思った。
再読して、また楽しみ、より理解を深めてみたい。

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

 本書は、経済学のさなざまな法則が書かれていて、経済学の発展を説明する。経済学を知らない私にとって、経済学入門書となる。
 リチャード・セイラーのテーマは、経済学における「命の価値」である。本書は、時代ごとに、セイラーがどんな課題に取り組んでいたかということが整理されているので、行動経済学の学問の変遷がよくわかっていい。  
 セイラーは著書『逆襲の行動経済学』において、経済学の前提となっている「人間は常に合理的である」という考え、すなわち標準的な経済学の理論に疑問を投げかけた。

 セイラーがダニエル・カーネマンとおよびエイモス・トヴェルスキーの理論に驚愕したのは、その理論が人間の不合理な判断のパターンを体系的に説明し、セイラーの抱えていた疑問を裏付けるものであったからである。

 疑問を持った点について、セイラーは従来の標準的な経済学(新古典派経済学)が仮定する「ホモ・エコノミクス(経済人)」という概念に疑念を抱いていた。
 ホモ・エコノミクスは、完全な情報に基づき、一貫した選好に従い、常に自己の利益を最大化するために合理的に行動するとされる。しかし、セイラーは現実の人間が貯蓄を怠る、目先の利益に飛びつく、不合理な買い物をするなど、この前提から逸脱した行動を頻繁にとることに気づいていた。セイラーは、実際に観察される人間の行動と経済学の理論との間に大きなギャップがあると認識していたのである。

 カーネマンの理論への驚きについては、プロスペクト理論(展望理論)がもたらした影響が大きい。 カーネマンとトヴェルスキーは、「損失回避」(人は、利益から得られる喜びよりも、同額の損失から感じる痛み(不快感)を強く感じる)や「参照点依存性」(人は、利益や損失の絶対的な金額ではなく、ある基準点つまり参照点からの変化によって、結果を評価する)、「確率加重関数 (人は、客観的な確率をそのまま受け入れるのではなく、主観的に歪めて評価する傾向がある)といった心理学的洞察に基づき、人間が不確実性のもとでどのように判断をするのを数理モデルとして記述した点において、新たな局面を切り開いた。

 プロスペクト理論は、金融市場、マーケティング、公共政策など、様々な分野で人間の行動を予測し、より良い意思決定を促すための「ナッジ」の設計に活用されている。さらに、この理論は、セイラーが日常的に観察してきた人間の「不合理な」判断傾向を単なるエラーとして片付けるのではなく、予測可能な系統的エラーとして明確に説明し、セイラーの抱えていた経済学の前提への疑問を裏付けるものとなった。

 つまり、セイラーにとってカーネマンの理論は、「合理的でない人間の行動」を経済学に取り込むための強力なツールおよび理論的基盤を提供し、セイラーの長年の疑問に答えるものとなった。そして、セイラーは、人間がどのように行動するか正確に記述する経済モデルを構築しようと考えた。

 セイラーは、カーネマンらの心理学的知見を従来の 経済学の枠組みに本格的に取り込み、現実世界への応用を推進した。
 心理学の洞察を「ホモ・エコノミクス」の仮定を修正する形で経済学の理論に組み込み、行動ファイナンスなど新たな分野の発展に寄与した。

 キャス・サンスティーンとの共著を通じて、人々の意思決定をそっと後押しする「ナッジ」の概念を提唱し、政策や企業経営への応用を一気に普及させた。
 ナッジは、個人の選択の自由を奪わないことを前提とし、その行動が本人や社会にとって望ましい方向へ向かうように誘導するものである。セイラーらは、この考え方を「リバタリアン・パターナリズム(自由主義的温情主義)」と呼んでいる。

 罰則や義務付けによって行動を強制することなく、最終的な選択はあくまで個人に委ねられる。人々がお金を、その出所や使い道によって無意識に異なる「勘定」に分類し、「こころの会計」として不合理な消費行動を引き起こす現象を明らかにした。

ナッジ理論の身近な具体例
1. デフォルト(初期設定)の利用
 人は、特にこだわりがない場合、手間を避けて初期設定のまま選択する傾向がある(現状維持バイアス)。
 事例:企業の退職金制度において、「自動的に加入する(オプトアウト)」をデフォルトに設定し、加入したくない者だけが手続きを行う仕組みにすれば、加入率が大幅に向上し、人々の貯蓄を促進する。

2. 環境の構造化(選択アーキテクチャ)
 目立つように配置したり、簡単に選べるようにしたりするなど、環境を工夫することによって無意識の判断に働きかける。
 事例:スキポール空港の男性用トイレの小便器の底に「ハエの絵」を描いたところ、清掃費用が大きく削減された。男性は無意識に「狙う」対象ができ、清掃が楽になるという望ましい行動を自然に選ぶ。
 事例:階段の段差に「ここまで登ると〇〇キロカロリー消費」と表示し、運動不足の解消を促す。

3. 社会規範の利用
 人は、「周囲の人々が何をしているか」に影響を受ける。社会の一般的な行動を提示することによって、それに従うよう促す。
 事例:「あなたの地域では、90%の住民が節電している」というメッセージを電気の請求書に記載することで、残りの10%の住民に対しても節電を促す。

 ナッジ理論は、公衆衛生の向上や貯蓄促進、環境保護などの公共政策やマーケティング、組織運営など、多岐にわたる分野で活用されている。
 とにかく、便器にハエの絵を描くと、そこにめざしてシッコをかけるので、便器を洗うのにいいというのが、行動経済学から作られたという話は、とても面白い。

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2025年10月23日

Posted by ブクログ

行動経済学の本は分厚くても面白く読めるのが良い。この分野の本は割と読んでるので、新しく感銘を受けたとかは特になかったけど、あーそうだった、というのはあるので、定期的に触れていないと忘れるから、また読もう。

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2022年08月11日

Posted by ブクログ

先ごろ、ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラーによる書。行動経済学の発展を、自身の研究半生を振り返る形でまとめられている。誰と会い、どこから着想を得、どう行動したか、研究者の人生が垣間見える。500ページ近い大著だが、ちょいちょい笑わせてくれ、読みやすい。これで2800円はお得。

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2017年10月14日

Posted by ブクログ

行動経済学の発展を当事者の立場からたどる。たんなる行動経済学の紹介をする本とは違い、異端視されていた黎明期から、無視できない地位を築くまでの足跡をたどれるようになっている。とくに本書では、「エコン」(経済モデルが想定する合理的な人間像)の牙城と見られていたファイナンスの世界に、多くのボリュームが割かれているのが特徴だ。
自分が行動経済学に惹かれるのは、自分を含む「ヒューマン」がつい犯してしまいがちな罠を、あらかじめ知っておくことが有益だと考えるからだ。本書でも、実利のある知見はいろいろ得られる。たとえば(すくなくとも米国においては)株式投資のプレミアムは大きいということだとか、グロースよりバリューのほうが戦略としては正しいだとか。まぁ、でもそうした「実利」を求めるならもっとコンパクトにまとまったものがある。本書の価値は、ユーモアのある著者の語り口に乗せられつつ、たのしくこの分野の発展を理解できるということになるだろう。

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2017年01月28日

Posted by ブクログ

久しぶりに行動経済学の本を読んだ。満足。
第20章は組織論と個人(インデックス)投資家へ特にオススメ。
バリュー投資家には第23章がオススメ。

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2016年10月02日

Posted by ブクログ

身の回りの合理主義に嫌気がさしているものにとっての救いの書。
キーワードは「ナッジ」。二度と忘れぬ言葉になる。

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2020年09月21日

Posted by ブクログ

なんとか読み終わりましたが、ちゃんと理解できるかは疑問な感じの斜め読み。
行動経済学に至る時系列的な書かれ方になっていたけど、僕としてはもっと要点というか、法則というか、まとまった系統立てたものとして読みたかった。
たぶん、そんな本もあるんでしょうけど。

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2018年02月25日

Posted by ブクログ

 ノーベル経済学賞を受賞した作者による受賞内容に関する一般者向けの本で、自分の研究履歴を振り返りつつ、行動経済学の進展を説明している。この分野へ入る切掛けは、やはりカーネマンとトベルスキーである。
 作者は経済学者なので心理学より経済学に重心を置いてきたが、経済学の重鎮からは冷たく辛く当たられたようだ。アメリカにおいてもだ。
 21世紀になってようやく少しずつ理解者も増え、「ナッジ」を出版してから諸外国でも政治に活用し始め、”行動科学”として認知されている。
 経済よりも心理学として効用が先に実用化されたというのは、作者にとってはカーネマン/トベルスキーを超えられなかったという気持ちがあったのではないだろうか。素人門外漢の勝手な憶測だけど。

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2018年01月08日

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