ミラン・クンデラのレビュー一覧
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ミラン・クンデラの初の長編作品である本作。冒頭、故郷の街に降り立ったルドヴィークの目的も過去もまったく見せずに始まるこの物語は、語り手を替え時代を行き来しながら展開し、少しずつ彼と彼に関わる人々の背景や生き様を明らかにしていく。まずこの構成に引き込まれて、一気に読んだ。
1949年、前年の二月事件によりソ連型共産主義政権が樹立したばかりのチェコスロバキアで、党を支持する学生の一人として時流に乗りながらも、ごく普通の若者らしく恋に懊悩していたルドヴィーク。彼が離れた場所で過ごす恋人の楽しそうな様子をやっかんで書き送ったほんの「冗談」のつもりの葉書が、党、そして大学から彼を追放するに至る運命の転換 -
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男と女の物語は地球上どこにもあるけれど、文学上の創作上の高尚とも思える比喩が普遍になって、やっぱり卑近に戻ってきたという感想だ。
「永劫回帰」などと、のっけから難しいと思わせるのが文学で、トマーシュがドンファンで、恋人となったテレザがかわいそう、と同情するのが普通でわかりやすいのか?
このふたりのお国がチェコだから運命の歯車が狂ってきた?
チェコ、遠い国の運命は北朝鮮の拉致事件が明るみに出てしまった今の日本でものすごくよくわかるということ。
あれかこれか、あのときああすればこうならない。
と、思っているひとが多いかもしれない。
運命?
なにがどうなって、こうなって -
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ネタバレ作中で、作者はエピソード(エピゾード)のとるにたらなさを語っている。だけれど、本作で伝えられているのはそのエピソードの威力にほかならない。私たちの存在を支え、他者に印象を与え、思い出させるのはエピソードであって、私たち個人そのものではない。
キャラクターの魅力でいうと、ファザコン極めたアニェスの高潔さが好きだし、ヒステリックで自己愛が過ぎる(でも、自分に自信がない)ローラの身勝手さには苛々する。ポールの空しい若さ崇拝や半分意識的な無神経さにも。
でも、最後にアニェスの仕草でポールをつなぎ止めるローラや、その仕草を嬉しがるポールには、スカッとするような可哀相になるような、不思議な気持ちがした -
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・ミラン・クンデラ「冗談」(岩波 文庫)は 「作家自らが全面的に手直しした決定版を定本とした新訳。」であるといふ。これは販売用のコピーなのだらうが、ごく素直に読めば、クンデラのチェコ語原典版からの翻訳と解せる。ところがさうではないのである。訳者解説中にかうある、「〈プラハの春〉も〈ビロード革命〉ももはや遠い過去になった二一世紀の現在、もっぱら一個の古典的文学作品として読まれることを願う岩波文庫のこの新訳は、原著者の強い要望に沿って、八五年のフランス語決定訳を収めた二〇一一 年刊行、フランソワ・リカール監修のプレイヤード版を定本としている。」(525頁)だから決定版で旧訳とは違ふのだといふわけで
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人々がまるで戦場で死ぬように車で死んでいるけれど、しかし現代人の誇りである自動車を禁止するわけにもゆくまい。惨事のかなりのパーセンテージは、無謀な運転手の酩酊に責任を帰するべきだけど、しかしフランスの遠い昔からの栄光である葡萄酒を禁止するわけにはゆくまい。公共の場所での酩酊の一部はビールによるものだけれど、しかしビールも禁止するわけにはゆくまい、というのは市場の自由に関する国際条約の違反になるだろうから。
↑この皮肉めいた冷静な言い回しがとてもいい。
自我の単一性を開発するには二つの方法がある、足し算的方法と引き算的方法である。
嘘をつくな、真実を言え、はある人間が他の人間を対等とみな -
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ネタバレ【概要・粗筋】
「私」がプールサイドで友人を待っているときに見かけた初老夫人の魅力的な仕草から生まれた主人公アニュス。彼女の愛と悲しみと戦いの人生を描く物語(粗筋を書けるほど理解できていない・・・)。
【感想】
非常に難解な小説。断片的に理解はできるものの、一読しただけでは大まかにも把握はできなかった。それでも、語りの巧妙さから600ページものの長さを感じないほどどんどん読み進めてしまうほど不思議な魅力を持っている。
この小説の主要人物はアニュスを中心とするその家族たちなのだが、そこにゲーテやヘミングウェイ、実在の人物なのか架空の人物なのかわからないアヴェナリウス教授、ルーベンス -
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『チ。』の魚豊先生の生涯ベストの本とのことで(更新された?)手に取ってみました。
哲学系かな?と思ったら、ストーリーが展開されて掴めるような掴めないような、不思議な読書感。
ハッとするような、書き留めておきたいような核心を突く部分があったり、気が抜けない面白さがありました。多分本質は掴めてない気がする…。
知ってるか知らないか、の
オイディプースの話興味深かった。
いいなと思ったところ↓
P112
「人がまだ若いうちは、人生の曲はまだ出だしの数小節のところなので、それを一緒に書き、(トマーシュとサビナが山高幅のモチーフを交換したように)そのモチーフを交換できるが、もう年がいってから出 -
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ネタバレプラハの春に参加していた作者が、(おそらく)自身の経験を元に、その時代の中で愛し合う男女を描いたクンデラの代表的な小説。トマーシュとテレザの深いけど苦しい愛、トマーシュとサビナの良好で軽い愛、フランツとサビナの始まりと破局、他にもトマーシュと元妻、息子等、人間関係が多岐に渡って描かれている。
特にトマーシュとテレザの愛は多面的に描かれていて読み応えがあった。本当に愛しているけど、トマーシュは女漁りをやめられないし、テレザもそれは分かっている。読んでるこっちは「そんな男やめなー?」て思うけど…
一人ひとりの人間の精神の深さ、意外性が緻密に描かれているところは好きなんだけど、比喩が多いしそれが私の