あらすじ
舞台は東ヨーロッパの紅葉に染まった谷間にある不妊症に効くとされる小さなリゾート温泉保養地。亡命を決意したヤクブは、友人らに永遠の別れを告げるべく、ここにやってくる。ふとした成り行きから薬の小壜に混入された毒薬……物語が動き出す。医師、若い女、高名なトランペット奏者と美貌の妻、アメリカ人湯治客――幾組もの男女がすれ違いもつれ合い交錯する。愛、欲望、裏切り、個々の選択が引き起こす予測不可能な結果……。めくるめく円舞とともに演じる五幕のヴォードヴィルは「小説の魔術師」クンデラの初期の傑作!
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Posted by ブクログ
本人がフランス語で書いた小説である。結末は簡単に推測できるので、推理的な面はない。訳者があとがきで記載しているのは、クンデラは小説にユーモアを入れたかったという。そこで、チェコのユーモアを読み取るためには良い素材であろう。
Posted by ブクログ
テンポよく読めるけれども、テーマはそこまで軽くない。トランペット奏者は話のきっかけなのであってどんどん存在感がなくなっていく。亡命を計画しているヤクブが主人公に近いのか、ラスコリニコフと自分の比較をする部分は面白かった。にしても医者スクレタ、グロテスクすぎる。
Posted by ブクログ
軽やかに踊ることで別れを告げる相手は一夜限りを共にする相手なのか、それとも二度とその地を踏まぬと決意した祖国に対してなのか?クンデラにしては比較的オーソドックスな形式で描かれた5章‐5日間の協奏曲。ダンスのパートナーが次々と入れ替わるように、対比的な会話が次々と交差し、愛という観念は決して留まることなくその印象を変えていく。そして嫉妬や後悔、情念といった感情を精緻に明晰に切り取ってしまうクンデラならではのその筆力が、普遍的な恋愛物語を悲劇と困難に直面した歴史のメタファーとして成立させているのだろう。