成田悠輔のレビュー一覧
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4人の天才たちとは,成田悠輔,斎藤幸平,小島武仁,内田舞。それぞれ,外国でも注目されている日本の知性たちです。
このうち,わたしが著作を読んだことのある人は,斎藤幸平さんだけ。
どの方の意見も,説得力に富んでいて,なかなか刺激的でした。
本書の編集者である高橋弘樹氏は,「おわりに」で次のように述べています。
この本はぜひ,ゆるめのBGMのかかったカフェや,ヒーリングミュージックのかかった寝室でゴロゴロしながら,読んでいただければと思います。(本書,207ぺ)
わたしは,テレビが鳴っている様な場所では本は読めないのですが,自宅の炬燵に寝っ転がって,延べ4時間くらいで読み終わりました。そしてそれなりに主張も頭に入りました。編集者の意図が実現されていると言ってもいいでしょう。 -
Posted by ブクログ
政治の何が問題で、何を変えればいいのかを、あくまでもロジカルに論じた本
成田さんは民意に基づく1人1票の投票は、欠陥である。現時点では他の手段よりはマシな程度である。とどこか冷めた立場で話を展開されている。1人1票で平等という前提のもと、信念のある強い1票、マイノリティな人にとっては重要である1票、それらは特に主張のない、なんとなくの1票と同価値であり、数によってかき消される。そんな政治でいいのだろうか?では、どこがどうよくないのか?本当に良くないのか?と、民主主義と政治をとらえ直すことができる本だった。
特に印象的だったのは3点
・現在の民主主義のどこが優れていて、逆にどこに欠陥があるのか、どの点には改善の余地があるのか。順を追って論理的に次々と示されている
→この部分が政治をとらえ直すのに役立つ。正直、こんな視点で政治を見たことがなかった。ただ漠然といけてない程度の認識だった。当たり前だと思っていた部分も検証する姿勢が科学者独特なものであり目から鱗だった。
・膨大なデータによる民意を政治に用いる。1人の政治家や政党はいろんな主張をしている。総合的に1票を選ぶことになるが社会課題は多すぎて、何が何だか分からない。結局はなんとなくで選んでいる。どうせなんとなくなのであれば、膨大なデータを回収し、アルゴリズムにより平均的な民意を創り出してしまう。そして、それらを提供してしまえばいい。
→AIの台頭する時代において、説得力のある説だと思う。少なくとも僕は助かる。AIで選挙を楽にするのである。
・投じる1票に濃淡を付ける。例えば、「選択的夫婦別氏制度」は人によって重要度が違う。この課題が重要な人は、他の論点はさておき、この制度の主張を元に1票の行先を決めたりするケースがある。そうではなく、私はこの部分に強く賛成します、を反映できる政治の仕組みにしてしまう。
→大賛成。無関心という民意が反映されない、声の大きい人の主張が採用される、など運用上のリスクはある。ただ、自分には関係ない論点だと思っている人が、その議論には参加しない権利(どう決まってもいいと無効票を投じる)があってもいいと思う。
正直、難解な科学論文に近い文章が続き、1度読んだだけでは理解の及ばない箇所も多い。政治に不満を言うのは簡単ではあるが、大事な血税の運用を決めるのが政治なので、よりましなものにしようと関わっていくのが正しい姿勢だと思う。時の経過とともに何度か読んで今後の民主主義の歩みを見守る際に共にしたい本である。 -
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資本主義によって、人によって同じモノでも価値が異なる「一物多価化」の時代になっている。そして、お金についても、現実に存在する現金より、株やビットコインなど、ネットワーク上に存在するお金のほうが大きな存在になっているという。
社会は豊かになっている一方で、働く時間が大幅に減ったわけではない。「働かざる者食うべからず」という価値観もいまだに残っているし、何かを成し遂げた人や、外交的で人付き合いが得意な人ほど尊敬されやすい。
そんな中で、著者が示す「AIが信頼をデータとして管理する社会」という考え方は興味深かった。人間の主観やバイアスによる判断が少なくなれば、これまでとは違う経済システムが生まれる可能性があり、理想的な社会の一つの形にも感じた。
一方で、お金には、どんな背景を持つ人でも、対価を払えば同じように商品やサービスを購入できるという側面もある。ある意味では、これは弱者を救済する仕組みでもあると思う。だからこそ、現在のお金が持つこの機能は残しつつ、別の部分を変えていってほしい。
特に、教師や看護師のように忙しく、人と深く関わる仕事をしているにもかかわらず、その負担に見合った経済的な評価を受けにくい人たちが、もっと報われるような仕組みになってほしい。
「どれだけ働くか」を自分で選べる時代が来たらいいなと思った。 -
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資本主義以外の道があることを知ることができて良かった。普段意識することができないから。
一方でこれは、アカデミックの話、データ上の話がベースになっている点は注意しないといけない。実際にビジネスの世界に関わっている私たちからしたらどうだろうか。何がどうなると今の資本主義は変わっていくのだろうかというと、そう簡単には変わらないと思う。世の中のほぼ全ての人に変えたいという意識が無いし、比較的権力のある資本主義の勝者は資本があるからゆえ資本主義を変える動機が無いからだ。
そんな中で、資本主義だけじゃない概念が存在する、資本主義が全てではないと指摘されたことにこの本の価値があると思う。
成田氏が「よくわからないことをする」というのは重要だと思った。既存の価値尺度に囚われない生き方をすることによって、自分自身が価値ある生き方ができるからだ。 -
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新しい示唆をいただき、楽観的な希望を感じさせてくれた
まず前提として、現在の民主主義政治が旧来のものであり劣化しているという認識を持つことから、今後の将来の民主主義の在り方についていろいろと気づくことができる、示唆を与えてくれるような本だった。
また、建前上本当は政治に興味があるふりをせず、最初から最後まで本音ベースで語られている点も好感が持てた。
成田氏が提示する、民主主義に対する3つの選択肢、「向き合うこと」「逃走すること」「新しい民主主義を作ること」だが、なぜ3つの選択肢を出しているか考えると、これは、正解がどれか一つにあるわけではないからだと思う。また、この3つの選択肢をいいとこどりしたところに将来の落としどころがあるような気がする。既に情報の民主化が進んでいる。「政治ーメディアー国民」という20世紀型の民主主義の形ではなく、現在は既にインターネットを通して新しい民主主義への変化を感じさせるものになっているし、そのような変化になって20年以上経つ。
新しい「落としどころ」は誰かが肩ひじ張って革命を起こすとかそういったことではなく、なりゆきで落とし込まれていくんだろうなという楽観的な視点も持った。 -
Posted by ブクログ
著者は、様々なメディアに出演しては、独特の語り口と鋭い視点で、視聴者の注目を集めている経済学者だ。
著者は本書内で、「稼ぐより踊れ」と力説している。
この一文だけでは意味が不明だ。
一体何が言いたいのか。
まずは人々のお金に対する幻想を解きたいというのが、著者の思いだ。
お金の「悪夢」から目覚め、新しい世界の景色を眺めてほしい、ということだと思う。
私たちは、毎日当たり前のようにお金と一緒に暮らしている。
お金が無ければ、朝のコーヒーを飲むことも、電車に乗ることも、お気に入りの洋服を買うことも、推し活に身を捧げることすらもできない。
我々のすべての行動が、お金に支配されていると言っても過言ではない。
現代社会で、お金がない生活など想像もできない。
一方で、お金こそが社会を動かすエネルギーになっているのも事実である。
そこでふと立ち止まって考えてみる。
「お金」とは、一体何なのか?
財布の中にある紙幣や硬貨。
スマホの画面に表示されている、デジタルな数字。
これらは、物理的な実態を超えた「何か」であるのは間違いないのだが、我々はその本質を、本当の意味で正しく理解しているだろうか。
一般的に言われているのは、「みんながお金の存在を信じているから、そこに価値が生まれている」ということだ。
ただの紙切れや金属の塊に価値はない。
そこにみんなが「これはお金なのだ」という共通の認識があるから、お金としての存在が認められる。
本当に不思議であるが、人間以外の動物で、お金のようなものを使っている生物は存在しない。
「お金」とは、人類だけが共有している、壮大な「夢」のようなものだ。
これはハラリ氏の「サピエンス全史」で語られた「虚構」の話とも重なる。
宗教や国家、そしてお金。これらすべて、人間が頭の中で作り出した想像の産物である。
「虚構」という妄想が、何億人という見知らぬ人間同士を協調させ、巨大な文明を築き上げた。
これが人類の歴史なのである。
そしてわずか2〜300年前に生まれた「資本主義」という仕組みが、「お金」の物語を一気に加速させている。
我々は資本主義に翻弄され、まさに踊らされている。
すべてが商品化され、すべてに値段をつけられる世界。
これは人間自身も例外ではなく、労働力として商品化され、それに値段がつけられている。
我々の時間や才能、そして心情までもが市場で取引されるという異常事態だ。
日本で消費されるタコのほとんどがアフリカから輸入され、日用品や家電のほとんどが中国などで製造され、システム開発はインドに発注していたりする。
当然、石油などのエネルギーは、中東地域に依存している。
地産地消、自給自足は聞こえはいいが、現実的にアカの他人の力を借りないと、現代の我々は日々を生きることすらできない状態になってしまっている。
資本は自己増殖を続け、すでに地球全体を完全に飲み込んでしまった。
私たちは、この巨大な資本主義というシステムの中で生きるしか、選択肢が無くなっている。
個々の生命力という意味では、確実に劣化している。
我々現代人は、このシステムが完全に止まった瞬間に、1ヶ月と生き延びることができないだろう。
だからこそ、著者は説いている。
この資本主義という「悪夢」から、そろそろ目覚める必要があるのではないか。
これは、現代の資本主義システムを捨てて、自給自足社会に先祖帰りしようという話ではない。
テクノロジーのすさまじい進化が、現代の資本主義システムを変えられる可能性が出てきたからだ。
これは識者だからこその視点だと思った。
かつて、富の象徴は土地や金(ゴールド)であった。
これがやがて紙幣になり、今やデジタルのビット(情報)になってしまっている。
我々が行っている、買い物、移動、SNS投稿など、その一挙一動がデータとして蓄積され、価値を生んでいる。
つまり現代では、すでにお金に換算されるものが、全て「データ」に置き換わっているということなのだ。
我々のあらゆる行動は計測され、アルゴリズムによって最適化される。
この時に中間媒体としての「お金」は、価値を失う可能性が高い。
高度なマッチングシステムが機能すれば、欲しい人と与える人が直接繋がれる訳で、中間の作業が益々省略されていく。
この中間の作業こそ、お金が介在する意味であったはずであるが、その必要性が薄れている。
それではこれからの社会は、「何を価値として」人類は妄想するのだろうか。
みんながお金の存在を信じているから、お金に価値があった。
その信じるものが変化していけば、当然社会システムは大きく変化していく。
未来がどうなるかは、正直想像がつかないが、相対的にお金の価値が変わっていきそうなのは推測できる。
お金に限らず、数値化ができるものはすべてデータとして扱われ、その瞬間に巨大システムのアルゴリズムの中で処理可能な材料になっていく。
当然、AIが効率的な判断を担うのが当たり前になる。
そんな時に人間は、「データにならないもの」にどう目を向けるかが重要になる。
データになった瞬間に、アルゴリズムに飲み込まれる。
そうではなく、データにできないものは何か。
そこをきちんと見極め、人間たちが未来に向けて「非データ」を大切に守っていく。
こんな姿勢が必要なのかもしれない。
データにしにくいものは様々あるはずだが、思いつくところ言えば、「愛情」「信頼」「美意識」「心地よさ」「美味しさ」「文化」などであろうか。
これらを数値で測ってもよいが、数字の結果と、実感値とは異なる場合が多いだろう。
感覚的なところが実は人間にとって一番大切なのかもしれない。
効率やスピードだけを追い求めるのではなく、もっと手触り感のある豊かさを大事にする。
ようやくそういう考え方に至ったといえる。
社会が本当の意味で、成熟しつつあるということか。
私たちは、自分たちの社会での役割を再定義しなければならない。
「稼ぐより踊れ」
目先のお金に一喜一憂するのではなく、今この瞬間を精一杯楽しみ、自分なりの価値を創造していくことが重要だ。
そんな主体的な生き方こそが、不確実な未来を生き抜くために必要な心持ちだと感じた。
我々が、お金という夢から覚めた時に、どんな世界が待っているのか。
変化を楽しみながら、新しい時代を生き抜いていきたいと思う。
(2025/11/14金) -
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「民主主義は単なるデータ変換」「政治家はネコやゴキブリになる」ー。荒唐無稽に見えるパワーワードたち。だが、膨大なデータと因果推論に裏打ちされた、妙な説得力がある。
「敵・味方」「民度」といった西洋二元論的な尺度を棄却し、人類をいったん生体反応の塊に還元する。意思決定はアルゴリズムという「無意識」にぶん投げてしまう。
人間はただ存在し、ご機嫌でいればいい。
これまでの民主主義を根こそぎちゃぶ台返しした先には、ある種究極の社会主義的風景が広がっている……かもしれない。
「何もしない、活躍しないし稼がないし生産しないし人の役にも立たない、誰にも尊敬されない、だけど幸せでご機嫌というのが理想」 (成田氏のXより引用) -
Posted by ブクログ
「AIが政治を動かす? そんなのSFでしょ」――そう思ってページをめくった瞬間、常識が静かに崩れていく。
成田悠輔『22世紀の民主主義』は、政治の未来を再設計する試みだ。
本書の核心はタイトル通り――選挙はアルゴリズムに、政治家はネコになる。
冗談のようでいて、冷徹に現実的だ。人間が担ってきた政治の意思決定を、アルゴリズムが補助し、偶然性を制度的に取り込む。政治家はいい感じのキャラ(ネコ)の役割を担う。そこには「民主主義を終わらせる」意図ではなく、「民主主義を再起動させる」構想がある。
反対意見は多い。
──アルゴリズムはバイアスを固定化する。
──誰がその仕組みを監視するのか。
──価値の多様性を一つの数式にできるのか。
それらを理解したうえで、成田さんは“人間中心の政治”そのものを問い直す。
設計の民主化、透明性、確率的ゆらぎ――語られているのは、AI支配ではなく「開かれた再配分の新しい形」だ。
印象的なのは、語り口の軽さ。
ニヒリズムのようで、どこか温かい。上から教えるのではなく、「世界のルールを一緒に書き換えよう」と誘うような筆致だ。
読後には、政治や社会を“信じる”よりも、“設計し直す”視点が芽生える。
この本は未来を語るというより、すでに始まっている変化を見える化した一冊でした。