22世紀の資本主義 やがてお金は絶滅する

成田悠輔

お金の夢から醒めろ

株価も仮想通貨も過去最高額を更新、生成AIの猛威が眼前に立ち現れ、かつてなく資本主義が加速する時代。お金や市場経済はどこへ向かうのか？

この先数十年から百年かけて起きる経済、社会、世界の変容を大胆に素描。

人の体も心も商品化される超資本主義の行き着く果てに到来する「測れない経済」。そこに出現する「お金が消えてなくなったデータ資本主義」は人類の福音となるか？

現実とも虚構ともつかない未来像を立ち上げる経済学者・成田悠輔の本領発揮！ 貯金と投資なんかで夢見てる場合じゃない。凝り固まった思考を叩き割る社会構想の誕生を目撃せよ。

• カテゴリ: ビジネス・実用
• ジャンル: ビジネス・経済 / 経済
• 出版社: 文藝春秋
• 掲載誌・レーベル: 文春新書
• ページ数: 240ページ
• 電子版発売日: 2025年02月20日
• コンテンツ形式: EPUB
• サイズ(目安): 10MB

[ブクログ · ★★★★★]

資本主義とお金の欠点についてとても解像度高く言語化してくれていた。
自分もお金というものの怪しさ、不確かさを感じつつも、その違和感が何なのか？が理解できていなかったので、とても勉強になった。
この本の中では、経済的観点(評価と分配を同時に担う招き猫アルゴリズム)がメインだったが、これは経済活動のみに関わらず、「測る」という行為全てに及ぶのではないかと感じた。
スポーツにおける能力の高低や、勉強における知識量、記憶力の高低など、人間の心身の能力の数値化と比較がもたらす負の側面を、「比べる」という行為を無くすことで、むしろ行動履歴の蓄積=データの収集→最適化というすっきりとした流れに当てはめている点が、とても新鮮だった。
物量的にも、質的にも豊かになっているにも関わらず、人間の心身が疲弊していく原因は、この比較による劣等感や存在意義のぐらつきにあるのではないかと思う。
だとすると、本書にある通り、「測る」ということが人間の「生きる」という状態と反りが合わないのかもしれない。

[ブクログ · ★★★★★]

成田悠輔氏がとうとうスーパーサイヤ人になってしまったのか、と表紙を見て思い、1人でにツボにハマっていた。この本を読み終え、資本主義が大好きで大嫌いな成田氏が自ら資本主義の象徴であるお金になりきり、そのお金の蒸発を表していたのではないかと、想像した。

成田氏にインスピレーションされてか、されずにかは記憶にないが、私もお金のない価値ある世界を妄想したことがある。だが、それは漠然とした妄想に過ぎなかった。本書では、お金が消えていく過程や現在の世界を回す必要概念に取って代わるものなどが明確に提示され、その上で成田氏の幼少期からの経験を幸福度に結びつけ、彼の妄想の世界を私たちに夢見させてくれた。22世紀の世界を期待しながら、人間の真の価値を求めて生きていきたい。

[ブクログ · ★★★★★]

インターネット・テクノロジーの発達によるデータの蓄積が極限まで進行した資本主義とはなにか？をアクロバットに論じた本。
個人のこれまでの振る舞いや属性のデータを常時参照し、価格が一人ひとりによって常に変わる未来を著者は想像しています。
購買力も単に年収など計測可能なものでは比較ができず、年収など計測可能なものではなく、過ごし方の差異─アートが社会の中心になることや「お金は記憶である」という切り口は非常に目から鱗でした。


これを読んで仕事ができるようにはなりませんが読みやすい本です。

[ブクログ · ★★★★☆]

久しぶりに隣駅の本屋さんに行って見つけた本です、私たちは資本主義の世界に生きていますが、このシステムは続かないと個人的には思っています、そんな私にとってこの本のタイトル「２２世紀の資本主義」は興味を惹きつけられるものでした。

内容は難しいもので理解ができなかった部分もありますが、著者の成田氏はこの本を仕上げるにあたって、かなり多く本を読み込んでいることが分かりました、それらのエキスと成田氏の考えを短い時間で触れることの幸せを感じました。

以下は気になったポイントです。

・国境で仕切られた国土を持つ福祉国家（物理国家）が担ってきた徴税県・財政政策・社会保険の役割が衰える。物理国家は中年の危機に突入し、デジタル時代には、警察・軍事・国境・司法あたりだけを担う夜警国家に退化する、再配分という公共政策内蔵の市場経済を提供するプラットフォーマが、新種の情報国家となる（p２１）

・それぞれの人が何者で何をしてきたかの履歴データが豊かになると、その人が何をどれくらい欲していそうか、データから察することができる。人々の好みを汲み取り、彼らを喜ばせる経済活動や資産配分を直接計算することもできる（p２２）そんな世界で人々を突き動かすのは、もはやお金ではない、交換・仕事・親切のような「やりとり」たちの刻み込まれたデータそのものが大切になる。それぞれの人の過去の来歴データは、他の誰とも違うその人の比べようのない多次元価値を表す徴（しるし）、アート作品のような存在である（p２４）

・財、生産手段、資本の中身が変幻自在に変わっていくと、だんだん捉えどころがなくなっていくこと、そして固まった定義からひたすら逃れ続けること、それこそ資本主義の本性である（p３８）

・今ここでの売上や利益と比べた未来への期待の価格が上がっている、その結果、企業の株価・時価総額を今ここの収益や目の前にある資産の保有額で説明することがどんどん難しくなっている、これは企業活動の過去・現在を正確に記述しようとする会計の「終わり」だという主張さえある（p４９）

・時間✖️意味による価値の分類、いつ価値が生まれるかという時間軸（現在・未来）と、価値の中身（意味・便益）（p６０、６５）左下の「現在x便益」から右上の「未来x意味」の領域へと市場価格の重心が移行する、これは左下の代表である「お金の価値」が下がっていくということ（p１１６）

・情報、物事、心身、デジタルデータできるものは全てデジタルデータ化されていく、そして続くのが「I o T＝物のインターネット」化した物のデジタル化だろう、スマートデバイスから家具家電、建物、都市まで、ウェブに繋がれたデジタル世界にデジタルツイン（電子双子）として複写され、計算機網に操作されるハードな物もすでに半分データである、本番は最後、あらゆる事のデータ化が起きる、これは中国をはじめ一部の監視社会で起きている（p６９）

・１８世紀に起きた第一次産業革命、１９世紀後半からの第二次産業革命、７０年代初頭からの第三次革命（計算機が単純頭脳作業を自動化）においては、平均年間成長率は0,46-1,89%であったが、ウエブが浸透した200−2014年では、その頃のような変容を作り出せていない、産業革命と呼ぶには程遠い（p９２）

・「経済活動の実態」と「経済活動の記録」のズレ（差）が「お金の役割」であった、太古は、石や粘土の台帳が経済・取引のほとんどを記録、現在は、決済・取引の多くがデジタルデータとして記録されている（p１０９）台帳に記された債権・債務関係がまずあり、それを精算するための副産物として「お金」が使われたことになる、匿名化・単純化、持ち運びできるようになった台帳が「お金」とも言える（p１１２）

・柔軟な一物多価の価格設定をうまく行えば、より多くを払ってもいい人には、多く払ってもらい、事業者は収益を改善できる、さらに消費者の満足度も改善できる場合がある、うまく作られた「一物多価」は、売り手・書い手の両方を満たせることになる（p１２４）

・古代の国家の興隆とともに穀物経済や農業経済が発展したのは、穀物が課税の基礎として強固だったとの説がある（p１３７）課税の最大の基礎になるのは、穀物・国境・紙幣でない、人々のIDとデータである、それを握るのは、これまでの古い国家ではなく、デジタル情報空間に芽生えつつ情報国家になる、古い物理国家から資本主義が離婚し、新しい情報国家と再婚する（p１３８）

2025年4月14日読破
2025年4月14日作成

[ブクログ · ★★★★☆]

youtube 「令和の虎」に出演していた作者の主張が面白かったので、しっかり深掘りしてみたいと読んでみた。
個人的にいつもお金の悩みがつきまとう人生なので、本当にこうなればいいのにという、期待と希望。でも自分が生きている内に実現されるかな。「22世紀の民主主義」も読んでみたい。

[ブクログ · ★★★★☆]

本社で示される社会像は一見奇抜にも見えるが、根拠や仮説を読むと腑に落ちる部分も多かった。
「市場の重点が便益より意味に移動している」や「実態と記録の乖離が小さくなることで、粗い一次情報としてのお金の価値が低下する」というマクロ視点での仮説は、斬新だし納得感もあり、その帰結として「お金の消滅した社会」も確かにあり得るのかもしれない。

もちろん疑問点もたくさんある。
一番は、そもそもこの社会の方が、今より人類は幸せなのかという疑問。お金の不安からは解放されているかもしれないが、招き猫が示す範囲に行動が制限されるようにも感じる。またお金はなくなっているのかもしれないが、各人が社会に何かしら貢献して、その行動履歴に基づいて選択肢が変わってくるとすれば、どうしても貢献の度合いや質といった尺度が発生するようにも感じる。そもそも、各人が自由に行動して、社会に必要な需要が満たされるのかといった疑問も湧く。

ただ、マクロ視点でのおおまか方向性ということであれば、ある程度納得感があった。

[ブクログ · ★★★★☆]

この本を読んだら現在の世界、社会がじれったく感じられた
はやくこの本に書かれているような社会になればいいなと思った
それは、前からお金のない世界はどのようにしたら成り立つのか？と思っていたからだ。
主に人間社会はお金という一元的な価値でもって交換している、それが簡単でスムーズだからだ
お金はいままでその人間が何をしてきたか、どのように貢献してきたかという価値を集めたものだ
たしかにお金がないとその人間のことは分からないのでものやサービスを交換するのに大変な労力がかかるだろう、
だからお金がある
一方で、人間は賢くないのでお金でやり取りしているという指摘は新鮮であった
人間の本質や人生の楽しみはお金には無い
たしかにお金が好きなんじゃなくて
人生を楽しむことが大事だ
稼ぐより舞え、その通り
従来の競争的、縦軸方向の価値から横にユニークに広がる生き方をしていきたい
成田さんの話はわかりやすくて生身の人間が思っているリアルな感想のようなもを上手に言語化されている、難しい哲学よりよっぽど心に刺さるのでは無いだろうか？
これからも注目していきたい

[ブクログ · ★★★★☆]

SFのようだった。そんな世界が来たらいいのにと思った。成田さんの考えを100％理解できたとは思えないが、できるだけ凡人にもわかるように書いてくれようとしていると感じた。、

[ブクログ · ★★★★☆]

おもしろく読めました。
現在の資本主義の中でもがいてる自分を俯瞰して見れた気がします。今ある世界が全てではないような感覚になれました。

[ブクログ · ★★★★☆]

思考実験としては面白いし、おそらく本書の中の予言のいくつかは実現するだろう。
新しい世界を、自分は見る事ができるのかな？
新しい世界を知る事は、幸せなのかな？