古谷実のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この作品はこの巻で完結したが、振り返ってみると、序盤からの展開とは裏腹に、中盤以降は1話完結的なエピソードを積み重ねるという展開になっていた。主人公が高校を卒業し社会人になるまでを描いてはあるが、主人公がメインでは無いというか。エピソードごとに出てくる人々によって世の中における嫌悪感を抱きがちな部分を描き、主人公にはまっとうさを与えてある、という点は最後まで変わらなかった。「シガテラ」というタイトルの意味どおり、主人公は作者の描く「毒」を引き立たせる為の触媒だったというか。とはいっても、主人公周りのエピソードは作者のギャグやポジティヴな面を披露する役割も担っていたので、中和されて言うほど毒は感
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Posted by ブクログ
私見だが、この巻で作品自体のカラーがある程度決まったと思う。この作者のキャリアから推測していた陰鬱で現実に即した観念的なものの見方を提示するという方向性ではなく、作者から観たリアリティのようなものを提示している。その世界観において、現実に起こりうるモラルに反した行為や現象を描くと言う点では以前と変わらないが、以前のようにネガティブな描き方をされず、あくまで日常レベルの温度で表現される。病的な感情は日常においてなんら目新しいことではなくそれを抱えるのは当然という表現だ。そして、今までの作品ならある程度アピールしていた葛藤をほとんど描かない。その点で、作者の提示する世界観は前作より一歩前へ踏み出し
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Posted by ブクログ
今回熾烈な体験をする元いじめっ子である谷脇は、自分のした事のリスクも踏まえた上でのシビアな世界観を持ち、それゆえに当然のように殺人を犯し、自分の日常へ戻る。身を守るためだ。谷脇への復讐を考えた主人公の友人である高井にせよ、追い詰められた上での選択であり、そのシビアさは谷脇の持つ世界観に同調する。いじめというのは、いじめている側がいじめられる側に自分の世界観を刷り込む行為でもあるわけで、高井は自分の身を守るために、谷脇のシビアな価値観に視線を合わせ異物として排除しようとした結果、今回の悲劇は起こる。ただ、主人公だけは一貫して幸福で、彼のユルい楽観主義な世界観と彼を取り巻く環境、そして現実的な谷脇