キムチョヨプのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ『この世界からは出ていくけれど』に次いで著者を読んだのは2冊目かな。
この本がデビュー作なので、順番としては逆転してしまったけど、テーマを考えると『この世界からは出ていくけれど』から読むのもそんなに間違ってなかったのかな、とか思ったり。
『この世界からは出ていくけれど』は、他者との間にあるどうしようもない断絶を(どちらかと言えば)悲劇的に書かれていることが多かった印象。
対して『わたしたちが光の速さで進めないなら』は、この理解できない他者がそれでも「愛すべき誰か」であった、という部分に善性が感じられて非常に良い。
時が変わっても場所が変わっても、何かを愛する人間性というものは共通しているはず -
Posted by ブクログ
SFだとか、ホラーだとかにどこかずっと偏見があったように思う。読者をびっくりさせることで読ませようとする感じが、インパクトのあるサムネで再生数を稼ごうとするYouTuberのように思えていたのかもしれない。それすらも偏見なのかもしれないが。
著者のSF作家としての生き残りをかけた奮闘記のようなものだと思って読み始めた本書だが、最初の数ページでそのイメージは覆された。非人間に真摯な向き合うこと、それがSFというジャンルと合わさったときに、面白かったで終わらない、とてつもないエンタメが生まれるのかもしれない。
「SFは人間中心主義という長きにわたる天動説を覆すものなのかもしれない」これはもしかし -
Posted by ブクログ
前作『わたしたちが光の速さで進めないなら』が大変良かったのでこちらも。旅立つ者と、見送る者の7つの短編集。
広大な宇宙にある無数の星々、多様な外見、テクノロジー、死生観、多数派と少数派…それぞれの理解と無理解。家族であれ恋人であれ友人であれ、お互い譲らない(譲れない)一線があり、愛していても理解、許容できないこともある。
互いに分かり合えなくても相手を愛すること、相手を思いやることはできる。
どの話も良いのだけど個人的なお気に入りは「キャビン方程式」
文字を追いながら静かに揺さぶられるような感覚。繊細な翻訳も素晴らしい。
寂しさの中に一滴の優しさがふわりと溶け込んだような読後感の一冊。 -
Posted by ブクログ
だいすきなSF作家キム・チョヨプさんのお仕事エッセイ。独特の抒情性とやわらかな筆致から、文系で感性派の方かと勝手に思っていたら、バリバリの理系(化学科卒)でとてつもない勉強家だった!
とにかく「ここまで手の内をさらしていいの!?」というほど、ことこまかに創作の過程を明かしてくれている。アイデアの泉などないから、とにかく自分の外にある材料を集め、世界を拡張する、と。
影響を受けた本についても、作法書や現行韓国SFまで挙げていて、すごくまじめで正直な方だなぁとますます好きになった。最初はオンラインギルドやボードゲームサークルの仲間と書き始めた、というサブカル文脈もすごくいい。 -
Posted by ブクログ
とても新鮮な読後感だった。ここには、まだ知らなかった価値観と日常が描かれている。
全部で十四の短編が収録されているが、それらは大きく二つのカテゴリに分けられていた。
『互いに触れないよう気を付けながら』と銘打ったものが八つ。『ほかの生き方もあることを』と冠されたものが六つである。
最初のカテゴリにはさまざまな存在同士のコミュニケーションが描かれていた。人とロボットの時もあるし、隣の次元の人間同士の場合もある。
表題の「惑星語書店」はすべての言語が翻訳できるモジュールが当たり前に使われている宇宙の話。そこでは人々は別の星の言葉を何の苦労もなく読めるし、話せるし、理解できる。ただ一軒、翻訳モジュ -
Posted by ブクログ
本屋に並ぶ背表紙にこのタイトルを見つけたとき、すぐにキム・チョヨプさんの作品だとわかった。棚から抜取りレジに向かう。タイトルの勝利だ。
今回の作品は差別的に分断された集団同士でも、個人の単位で向き合えば、わかりあえる、愛することができると言えば大きく括りすぎだろうか。
建付けはSFだが、描かれているのは人の心だ。星間ロケットが飛ぼうが、脳の外に記憶装置を持とうが、他の惑星で亜種に進化していようが、寿命ある生物である限り、切なさはなくならない。社会を形成する動物である限り他者を想う心はなくならないと信じたい。本作品を読めばそれが良くわかる。対立する集団同士でも、身近で会話をすれば信じあ -
Posted by ブクログ
韓国人著者のSFを読むと独特な気分になる。その世界の中に入り込むような没入感がありつつも、描かれる世界とは距離を少し置くような感じ。世界観には引き込まれるが、その中の当事者になる事はない。幽霊みたいにプカプカしている。この感じが好きだ。
これまで読んできたものは短編が多く、世界を移ろうさすらいの幽霊感があったが、こちらは長編。ひとつの世界に長く留まる地縛霊の気分になった。
読んでいてヒントや手がかりは散りばめられているのに、この本が提示する謎が解けない。幽霊でも分からないことがあるんだな。
ありそうでなさそうでありそうな世界の傍観者、として楽しむことが出来た