キムチョヨプのレビュー一覧

  • 惑星語書店

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    『サボテンを抱く』
    皮膚が過敏になり、物質と接触するだけで激しい痛みを伴う障害を患った元建築家のパヒラと、お手伝いロボットの話。

    『#cyborg_positive』
    機械の眼を持つインフルエンサーリジーが、企業のプロモーションを受けるか迷う話。

    『メロン売りとバイオリン弾き』
    万引き常習犯の子供ふたりが出会ったメロン売りとバイオリン弾きの話。

    『デイジーとおかしな機械』
    同じ空間にいるふたりと音声を文字として表示する機械の話。

    『惑星語書店』
    脳内インプラントの言語変換機能を妨害することで、読む能力がなければ読めないようになっている本を売る書店の店員と、努力して惑星語を習得しようとしている教授の話。

    『願いコレクター』
    願いを形にする人格オブジェクトの話。

    『切ないラブソングはそれぐらいに』
    なぜ周期的にバラードが流行るのか調査するタイムトラベラーの話。

    『とらえられない風景』
    ウェディングフォトグラファーのリッキーが写真撮影できない場所でなんとかして風景をとらえようとする話。

    『沼地の少年』
    高度な集合知性を持つバクテリアが繁殖する沼と、そのバクテリアに吸収されながらも自我を保っている元人間のオーウェンと、死にかけの少年の話。

    『シモンをあとにしながら』
    研究者のソウンと、寄生生物に顔を覆われ仮面のような様相になったシモンの人の話。

    『みんなのココ』
    トラックに轢かれて3年後に目覚めたユナと、当たり前のように存在する地球外生命体ココを愛玩する人間たちの話。

    『汚染区域』
    研究者のラトナと、キノコに皮膚を覆われた人々が住む村の話。

    『外から来た居住者たち』
    寂れたサービスエリアで人を待つ味覚音痴のダヒョンが見つけた、超味覚をもつ店主が経営するレストランの話。

    『最果ての向こうに』
    研究者ヨヌが研究者ラトナに宛てたメッセージ。



    14編のSF短編集。
    感覚の共有と感覚の相違、あたりまえがそうじゃない。常識を軽く揺さぶってくるような微妙な距離感のSF。作り込まれた長編作品より、これぐらいの短編の方が想像の余地があって面白い。

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    2025年07月05日
  • 惑星語書店

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    読んだ。薄かったのでサクッと。全体的には「切ない」という言葉なのだが、「切ない」と言い切ってしまうまで「切ない」わけでもない。ふと胸に宿る寂寞のカケラに気が付かされるような。そのカケラに向き合って過ごすにはあまりに小さすぎるような。でもその存在に気がついたなら明日からの私達は同じではいられない。ケン・リュウの時のようなひりつく苦味と切なさでもなくて、地に足をつけた優しさを感じる。
    また、この著者は自らの世界観を広げて小説書くタイプだ。他の本も繋がっている。「派遣者たち」は読みたいし、他も手を広げたい。
    直接内容の感想ではない所だと、翻訳が日本人では無いということが新鮮。勿論相互の言語に堪能なのであればどこの誰がやっても構わないのだが大抵の場合訳者の欄にはどの言語であっても日本人の名前が載っている場合が多いので。

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    2025年06月28日
  • 地球の果ての温室で

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    ダストという毒物の蔓延時代を生き抜いた人々と、アマラとナオミの姉妹、レイチェルとジスの物語、そしてダストと謎の蔓草モスバナがたどる道。

    滅亡寸前の悲惨な時代から、ようやく復興した地球。あのとき世界を救った、二人と二人の真実とは…。

    コロナを彷彿させる描写ですが、私は最初なかなか読み進められなかった。第一章(100ページ)が終わってから段々と物語は加速しだすんだけどゆっくり語られていくような感じ。第二章のアマラとナオミの話が面白かった。第三章のレイチェルとジスの関係性には興味深かった。

    ダスト終息はテクノロジーと全人類的な協力による勝利と受け止められてきたけど、本当はそれだけではなかった。
    ダストを取り除く効果があるモスバナを各地に植え育てたナオミ、ジス、フリムビレッジにいた人たち、そしてレイチェルのお陰で人類は救われてたいた。

    キム・チョヨプを読むのは「わたしたちが光の速さで進めないなら」から2作目。難しかったけど再生していく姿は清々しくもあって希望がもてた。

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    2025年05月16日
  • 地球の果ての温室で

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    ダストという毒物の蔓延により、動植物が死に絶え、滅亡の危機に立たされた時代を生き抜いた幼い姉妹・アマラとナオミ、そして謎の女性・ジスとレイチェルの物語。
    過酷な状況の中、アマラとナオミが辿り着いたフリムビレッジでの生活は、束の間の平穏と、徐々に追い詰められていくことで破綻していく人間関係が上手く描かれていました。そんな中でも、“明日“を迎える希望を胸に、生き抜こうととする力強さがとても良かった。
    ジスとレイチェルは、キム・チョヨプさんが作品のテーマとしている、分かり合えないものだとしても共生したいという関係性を感じました。
    キム・チョヨプさんの、切なく物悲しい世界の中に、かすかな温かさを感じる眼差しがとても心に沁みる作品でした。

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    2025年04月04日
  • 地球の果ての温室で

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    SFストーリーで、人の温かさを感じられる一作
    読みやすく、理解しやすいが
    専門的な話もあり、未来のものも出てきておもしろい

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    2025年01月25日
  • サイボーグになる テクノロジーと障害,わたしたちの不完全さについて

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    それぞれ車椅子、補聴器を使っている著者2人が、障害とテクノロジーについて書いている。
    「サイボーグ」が憧れ的に持つ機械と生体の融合に対して現実の器具と体の間に起こるコンフリクトや、健常と同じやり方で障害を克服すべきという社会的圧力への批判など。
    治療と増強の話おもしろかった。
    事故に遭ったあと夢の中の自分が車椅子に乗るようになった人の話を思い出す。
    書き口が冷静で誠実で素直で、自分の価値観を転換されながらも読んでいて心地よかった。

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    2025年01月12日
  • 地球の果ての温室で

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    SFのいいところを凝縮した、素晴らしい作品でした。著者のキム・チョヨプさんは、作家ともう一つ物理学者という側面も持っているので、作品の
    中にも化学用語とかがよく文章に投影されています。未来の世界を舞台に、ダストという毒物が蔓延された世界で、人々は外に出られない状況で、ドームシティーを創り出し密閉された世界で生きている。そんな蔓延された外の世界に、憧れを抱き、生きれる場所を探す姉妹がいた。
    森の奥にダストに対応できる環境があると、植物の持つ再生と破壊が鮮やかな目線で描かれています。

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    2024年12月21日
  • 地球の果ての温室で

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    ネタバレ

    これは、著者あとがきのことばで言うと、「とうてい愛せそうにない世界を前にしながらも、最後にはそれを建てなおそうと決心する人々」の存在を発掘していく物語だ。世界の中心を占める利己主義から逃れて生きることは困難だ。しかし、その外で生きようとする共同体も存在する。共同体では、連帯、利他主義が人々の間で大きく働いているものの、意外なことに、その根底では、片方によって調整された"女"同士の愛憎が存在し、また外からは敵が迫る。共同体は内外から必然的に崩壊していくが、「場所を移す」ことで世界は救われる。って感じかな。
    全体としておもしろいけれど、第三章で論証が長いところは退屈だった。

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    2024年11月22日
  • サイボーグになる テクノロジーと障害,わたしたちの不完全さについて

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    障害当事者のアイデンティティとテクノロジーについて。自分にない視点で面白かった。特に技術楽観主義(いつか科学技術が障害を完全に根絶する)は現場の課題に向き合っていないうえ、実現する見込みもないという批判はもっともだと思った。

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    2024年07月21日
  • 地球の果ての温室で

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    この地球は植物のもの……人間その他の動物は植物に依存して生きている。

    SFしかもディストピア小説で、人類自らの過ちから地球上の生物滅亡の危機という設定にも関わらず、健気でひたむきな主人公たちのようすが、素直に心に響く。

    過去と現在を交互に描いているが、混乱もなくすんなり頭に入っていき、没頭してしまった。

    ただ……
    ほぼ、女性しか登場しない。なぜ?意図的?
    もう一つ、
    舞台はほぼ、韓国、マレーシア、エチオピア。
    これもなにか……。

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    2024年03月14日
  • 地球の果ての温室で

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    23/10/07 静かに朽ちてゆく、去ってゆくものと、それを抱えて生きていくことを、熱量最低限で書いてくれる作家。好み。

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    2023年10月07日
  • 地球の果ての温室で

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    とつぜん繁殖した雑草の秘密をめぐってほどかれてゆく世界の歴史と、そこに生きた女性たちの物語。
    どこか懐かしくて柔らかい、ロマンチックなSF物語。この世界はどうしようもなくても、もう立て直せないと思っても、それでも守る価値のあるものは存在する。世界がどんな形に変わろうともそれでも愛はそこにあるのだと、穏やかな文体が静かな力で描き出す。
    出てくるモチーフひとつひとつがとても魅力的で知的好奇心をくすぐられるのと同時に、儚くも美しい光景が頭の中に広がっていく。
    そして登場人物も。かつての機械整備士と植物学者がたどり着いた夢の果ては決して哀しいものではなかったのだと信じたい。

    前作が好きだったので今作も購入。変わらずノスタルジーとロマンチックが溶け合った、静かに染み入る物語だった。

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    2023年05月17日
  • 地球の果ての温室で

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    巷に繁茂し出した雑草の謎を追ううちに、ひとりの植物学者はかつて滅びかけた世界の真実と、その時代を潜り抜けた女性たちの半生を知っていく。

    途方もない災厄の中で醜く争う人類たちと、その中でも親愛を失わず、未来への希望も捨てきれずに生きる人々をやわらかく繊細に描き出し、やがて一人の科学者と整備士の深い絆を思い知ることになる。複雑な事情の絡んだ彼女たちのあいだにあった真実が明かされる終盤は、抒情的で切なく、とても素敵でした。

    そして世界の危機に瀕した人々が、生きることに汲々としてわだかまりもあった彼らが、実は共通の行動を起こして未来を作っていた。そんな、どこか理想的だけれど、こんな善性を信じてみたいと思わせる真実に作者のやさしい視線を感じました。

    ディストピアSFに区分される物語なのでしょうが、破滅や諍いだけでなく、その中で生きる人々の、愚かしくもいとおしい姿を繊細に描いた作品だと思いました。

    すごく良かったです。

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    2023年05月08日
  • 地球の果ての温室で

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    やはり独特の情緒とやわらかさのあるSFを書かれる、好きな作家さんだなぁと感じる。今回は植物を通したシスターフッド年代記になっているのだが、とくにレイチェルとジスの言葉で定義できないような関係の描き方が、せつなくロマンティックで心に残った。

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    2023年04月05日
  • 地球の果ての温室で

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    デビュー作でもある前作の短編集から一気に大ファンになった作家さん。
    待ちに待った新刊でウキウキしてあらすじを見るとどうやら今回は長編とのこと。
    それもあってか前作よりも展開はゆったりとした流れ。
    それでも中盤から終盤にかけて過去と現在が交差し運命が紐解かれていく様は圧巻だった。
    終末という救いようのない世界を描きながら、まるで陽だまりの中に包まれるような安堵感を覚えるのは、やはり作者の優しい眼差し故なのかな。

    前作から共通する、好奇心が揺さぶられるSF設定の楽しさと「あなたを知りたい」という人間的な願いの尊さが、引き続き素晴らしかった。
    早くも次作が待ち遠しい。

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    2023年04月03日
  • 地球の果ての温室で

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    短編集「わたしたちが光の速さで進めないなら」が印象的だった、韓国の新鋭SF作家さんの長編作。品のある文体というか、静かで丁寧な文章は読んでてとても心地よい。途中それだけに短編集では感じなかった会話や描写が冗長に感じる場面もなくはなかったが、構成がしっかりしているので着実に読み進めることができた。ちょっとあの日本で有名なアニメの設定を連想させなくはないが、そこは気にせず読むのがよいでしょう。

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    2023年03月21日
  • わたしたちが光の速さで進めないなら

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    なんだろう、この既視感。
    この本を読んでいる間、どこか懐かしく感じていたものにようやく気づいた。

    新井素子氏の『そして星へ行く船』シリーズ、
    星新一のショートショート。

    80年代のSF小説全盛期にあった小説の雰囲気に似ていて初めて読むけど懐かしいという不思議な体験をした。

    短編に繋がりはなく、それぞれ独立した物語。
    一話一話の設定や世界観も良かった。

    宇宙のどこかにある星物語が人間の孤独を想起させるのか、語り口なのか人物像なのか、登場人物がやたら出てこないからなのか、温かく居心地の良い静かな宇宙の群像劇を味わえた。

    表紙も80年代のSFラノベ風でかわいい。

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    2026年10月21日
  • 派遣者たち

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    他者理解と共生がテーマのSF。前半は忍耐で読んでいたけど、後半は展開が多くて楽しく読めた。作者の世界観が好きだけど、長編より短編の方が楽しめるかもと思った。

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    2026年10月20日
  • わたしたちが光の速さで進めないなら

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    ネタバレ

    本格的なSF物を見るのは初めてだったので、正しい楽しめ方を出来たのか分からないが、それぞれにしんみりとするものがあって感傷に浸っていた。

    この作品は、
    ・巡礼者たちはなぜ帰らない
    ・スペクトラム
    ・共生仮説
    ・わたしたちが光の速さで進めないのなら
    ・感情の物性
    ・館内紛失
    ・わたしのスペースヒーローについて
    という7つの短編集だ。

    全体を通して、「愛」をテーマにしているように感じた、暖かいハートフルSFのように感じる。
    地球で見つけた愛、巡礼者の帰らない理由。
    未確認生物との交流、言葉が通じなくても確かに芽生えた愛。
    赤ちゃんの健全な成長を結果的に支えている共生者。
    百年以上、コールドスリープで家族のことを思い続けた愛。
    マイナスの感情を何故わざわざ摂取するのか。感情の物性については、私は面白かった。
    館内紛失、私も家族との仲が良くないが情があるので何となくのめり込んだ。
    最後の作品は、私だったらどういう選択をするのだろうか、と考えていた。深海で暮らしてみたいような気もする。

    感傷に浸るような、考えさせられる作品が多かった。私が未熟なゆえのこの評価だが、私がもっとSFに詳しくなってまた再読をした時に評価は上がりそうだ。別の作品も読んでみたい。

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    2026年09月14日
  • この世界からは出ていくけれど

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    「切ない」がベースのSF。作者の言う”感覚バブル”の閉じた世界を生きる私たちが、互いに触れ合おう、想いを伝えようする時に、生まれる感情や裏腹な行動を描いた作品。均一性が求められる息苦しい世界(社会)で、外部の存在と関わることで、異質な存在として生きていい、生きていくしかない姿に共感を覚えた。

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    2026年09月09日