キムチョヨプのレビュー一覧
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ダストという毒物の蔓延時代を生き抜いた人々と、アマラとナオミの姉妹、レイチェルとジスの物語、そしてダストと謎の蔓草モスバナがたどる道。
滅亡寸前の悲惨な時代から、ようやく復興した地球。あのとき世界を救った、二人と二人の真実とは…。
コロナを彷彿させる描写ですが、私は最初なかなか読み進められなかった。第一章(100ページ)が終わってから段々と物語は加速しだすんだけどゆっくり語られていくような感じ。第二章のアマラとナオミの話が面白かった。第三章のレイチェルとジスの関係性には興味深かった。
ダスト終息はテクノロジーと全人類的な協力による勝利と受け止められてきたけど、本当はそれだけではなかった。
ダストを取り除く効果があるモスバナを各地に植え育てたナオミ、ジス、フリムビレッジにいた人たち、そしてレイチェルのお陰で人類は救われてたいた。
キム・チョヨプを読むのは「わたしたちが光の速さで進めないなら」から2作目。難しかったけど再生していく姿は清々しくもあって希望がもてた。 -
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ダストという毒物の蔓延により、動植物が死に絶え、滅亡の危機に立たされた時代を生き抜いた幼い姉妹・アマラとナオミ、そして謎の女性・ジスとレイチェルの物語。
過酷な状況の中、アマラとナオミが辿り着いたフリムビレッジでの生活は、束の間の平穏と、徐々に追い詰められていくことで破綻していく人間関係が上手く描かれていました。そんな中でも、“明日“を迎える希望を胸に、生き抜こうととする力強さがとても良かった。
ジスとレイチェルは、キム・チョヨプさんが作品のテーマとしている、分かり合えないものだとしても共生したいという関係性を感じました。
キム・チョヨプさんの、切なく物悲しい世界の中に、かすかな温かさを感じる眼差しがとても心に沁みる作品でした。 -
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ネタバレこれは、著者あとがきのことばで言うと、「とうてい愛せそうにない世界を前にしながらも、最後にはそれを建てなおそうと決心する人々」の存在を発掘していく物語だ。世界の中心を占める利己主義から逃れて生きることは困難だ。しかし、その外で生きようとする共同体も存在する。共同体では、連帯、利他主義が人々の間で大きく働いているものの、意外なことに、その根底では、片方によって調整された"女"同士の愛憎が存在し、また外からは敵が迫る。共同体は内外から必然的に崩壊していくが、「場所を移す」ことで世界は救われる。って感じかな。
全体としておもしろいけれど、第三章で論証が長いところは退屈だった。 -
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とつぜん繁殖した雑草の秘密をめぐってほどかれてゆく世界の歴史と、そこに生きた女性たちの物語。
どこか懐かしくて柔らかい、ロマンチックなSF物語。この世界はどうしようもなくても、もう立て直せないと思っても、それでも守る価値のあるものは存在する。世界がどんな形に変わろうともそれでも愛はそこにあるのだと、穏やかな文体が静かな力で描き出す。
出てくるモチーフひとつひとつがとても魅力的で知的好奇心をくすぐられるのと同時に、儚くも美しい光景が頭の中に広がっていく。
そして登場人物も。かつての機械整備士と植物学者がたどり着いた夢の果ては決して哀しいものではなかったのだと信じたい。
前作が好きだったので今作も購入。変わらずノスタルジーとロマンチックが溶け合った、静かに染み入る物語だった。 -
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巷に繁茂し出した雑草の謎を追ううちに、ひとりの植物学者はかつて滅びかけた世界の真実と、その時代を潜り抜けた女性たちの半生を知っていく。
途方もない災厄の中で醜く争う人類たちと、その中でも親愛を失わず、未来への希望も捨てきれずに生きる人々をやわらかく繊細に描き出し、やがて一人の科学者と整備士の深い絆を思い知ることになる。複雑な事情の絡んだ彼女たちのあいだにあった真実が明かされる終盤は、抒情的で切なく、とても素敵でした。
そして世界の危機に瀕した人々が、生きることに汲々としてわだかまりもあった彼らが、実は共通の行動を起こして未来を作っていた。そんな、どこか理想的だけれど、こんな善性を信じてみたいと思わせる真実に作者のやさしい視線を感じました。
ディストピアSFに区分される物語なのでしょうが、破滅や諍いだけでなく、その中で生きる人々の、愚かしくもいとおしい姿を繊細に描いた作品だと思いました。
すごく良かったです。 -
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デビュー作でもある前作の短編集から一気に大ファンになった作家さん。
待ちに待った新刊でウキウキしてあらすじを見るとどうやら今回は長編とのこと。
それもあってか前作よりも展開はゆったりとした流れ。
それでも中盤から終盤にかけて過去と現在が交差し運命が紐解かれていく様は圧巻だった。
終末という救いようのない世界を描きながら、まるで陽だまりの中に包まれるような安堵感を覚えるのは、やはり作者の優しい眼差し故なのかな。
前作から共通する、好奇心が揺さぶられるSF設定の楽しさと「あなたを知りたい」という人間的な願いの尊さが、引き続き素晴らしかった。
早くも次作が待ち遠しい。 -
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ネタバレ本格的なSF物を見るのは初めてだったので、正しい楽しめ方を出来たのか分からないが、それぞれにしんみりとするものがあって感傷に浸っていた。
この作品は、
・巡礼者たちはなぜ帰らない
・スペクトラム
・共生仮説
・わたしたちが光の速さで進めないのなら
・感情の物性
・館内紛失
・わたしのスペースヒーローについて
という7つの短編集だ。
全体を通して、「愛」をテーマにしているように感じた、暖かいハートフルSFのように感じる。
地球で見つけた愛、巡礼者の帰らない理由。
未確認生物との交流、言葉が通じなくても確かに芽生えた愛。
赤ちゃんの健全な成長を結果的に支えている共生者。
百年以上、コールドスリープで家族のことを思い続けた愛。
マイナスの感情を何故わざわざ摂取するのか。感情の物性については、私は面白かった。
館内紛失、私も家族との仲が良くないが情があるので何となくのめり込んだ。
最後の作品は、私だったらどういう選択をするのだろうか、と考えていた。深海で暮らしてみたいような気もする。
感傷に浸るような、考えさせられる作品が多かった。私が未熟なゆえのこの評価だが、私がもっとSFに詳しくなってまた再読をした時に評価は上がりそうだ。別の作品も読んでみたい。 -
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自動翻訳機の普及により多くの銀河の異なる言語の障壁が消失し、他言語の習得が必要なくなった宇宙。辺境宇宙の言語で書かれた(自動翻訳が排除される仕掛けになっている)「読むことのできない」本だけを売る書店を描いた表題作ほか13作をおさめた短編集。
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「わたしたちが光の速さで進めないなら」がとても良かったキムチョヨプさんの短編集です。掌編が多くて少しピリッとした、星新一を思わせるお話もあったのですが、表題作がやはり印象的でした。自動翻訳やAIが普及して「自分でものを考えない、学習しない」ことがスタンダードになっているのはすでに始まっていることかもしれない。そんな世の中で、もっと進んだ宇宙で「自ら学ぶこと」の大切さを柔らかく、でもシニカルにSFで描くなんて、すごくスマートだな、と思いました。
いくつかそうした少し世の中を皮肉った作品もあって楽しかったです。