キムチョヨプのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
巷に繁茂し出した雑草の謎を追ううちに、ひとりの植物学者はかつて滅びかけた世界の真実と、その時代を潜り抜けた女性たちの半生を知っていく。
途方もない災厄の中で醜く争う人類たちと、その中でも親愛を失わず、未来への希望も捨てきれずに生きる人々をやわらかく繊細に描き出し、やがて一人の科学者と整備士の深い絆を思い知ることになる。複雑な事情の絡んだ彼女たちのあいだにあった真実が明かされる終盤は、抒情的で切なく、とても素敵でした。
そして世界の危機に瀕した人々が、生きることに汲々としてわだかまりもあった彼らが、実は共通の行動を起こして未来を作っていた。そんな、どこか理想的だけれど、こんな善性を信じてみた -
Posted by ブクログ
デビュー作でもある前作の短編集から一気に大ファンになった作家さん。
待ちに待った新刊でウキウキしてあらすじを見るとどうやら今回は長編とのこと。
それもあってか前作よりも展開はゆったりとした流れ。
それでも中盤から終盤にかけて過去と現在が交差し運命が紐解かれていく様は圧巻だった。
終末という救いようのない世界を描きながら、まるで陽だまりの中に包まれるような安堵感を覚えるのは、やはり作者の優しい眼差し故なのかな。
前作から共通する、好奇心が揺さぶられるSF設定の楽しさと「あなたを知りたい」という人間的な願いの尊さが、引き続き素晴らしかった。
早くも次作が待ち遠しい。 -
Posted by ブクログ
以下、障害への違った視点を教わった。
・障害を治療矯正できなかったものとネガティブにとらえるのではない。
・健常者に近づかせるためのリハではなく、補聴器より表字サービスとか、自分で生きやすい方法を選べるといいんじゃない?
・でも高価な車椅子とか使ってたら、白い目で見られる。非障害者の価値観のなかで生きるジレンマ。
・非障害がつくるもの、思い描くユニバーサルデザインなどゴールを決められて、ユーザー側にいるだけでなく、自分で決めたい。
・障害をオープンにする方が生きやすいと思ってたけど、それが関係性や仕事上の支障になる可能性もある
・障害者は技術を使って、健常者に近づく努力をし、喜ぶ人でないとなら -
Posted by ブクログ
著者の短編集である「この世界からは出ていくけれど」、「わたしたちが光の速さで進めないなら」がとても面白くて、長編も読んでみたいと思い手に取った。
私はキムチョヨプさんの描く文章や世界観、人の心の温かさや愛情深さがとても好きなので、この本も総じて好きだし、好きな作家さんだと思った。
物語は3人の視点で描かれており、3つの物語が繋がって一つのストーリーになっている。それぞれ短編を読んでいるようでもあり、とても読みやすく一気に読める。
ナオミとアマラ、ジスとレイチェルのお話は、特に面白くて引き込まれた。著者は温かくて切なくてどこか悲しい人の感情を書くのが上手だと思う。
あと、著者あとがきの中