空木春宵のレビュー一覧
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5人の人気作家が贈る、5つの脱出をテーマにしたミステリアンソロジー。
脱出をテーマにしたアンソロジーです。閉ざされた空間から脱出する、というテーマは同一でも、閉じ込められた屋上から脱出する学園ものから、魔女として処刑される前に繋がれた等から脱出する、だったり、記憶喪失の主人公が謎の研究所の出口を目指したりと、ミステリだけでなくファンタジーやホラー要素のある話まで、幅広い意味での脱出を扱い、バリエーション豊かな作品が収録されています。
阿津川さんの『屋上からの脱出』は学校に閉じ込められた生徒が抜け出す方法を探す話。一番スタンダードに脱出がテーマ、という感じがします。期待通りに面白い。
織守さんの『名とりの森』と空木さんの『罪喰の巫女』がホラー味が強く、『名とりの森』は少年たちの冒険を描いた神隠しのような話。『罪喰の巫女』は美しくも悍ましい巫女を祀る神社の話。こちらは少しグロテスクですが、怪しく幻想的な雰囲気が個人的には好きです。
斜線堂さんの『鳥の密室』も、痛々しい描写など多いですが、ロマンシス? シスターフッド? の要素も感じる魔女狩りの話。こちらも好きでした。
最後の井上さんの『サマリア人の血潮』は、謎の研究所からの脱出。記憶喪失の主人公がだんだんと記憶を取り戻し、謎が明らかになっていく過程が、ゲームのようでワクワクします。 -
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ネタバレ【収録作品】
「屋上からの脱出」 阿津川 辰海
「名とりの森」 織守 きょうや
「鳥の密室」 斜線堂 有紀
「罪喰の巫女」 空木 春宵
「サマリア人の血潮」 井上 真偽
「屋上からの脱出」中学の天文部仲間の結婚披露宴。招かれた一ノ瀬は、十年前の合宿のときに、ここにいる6人が屋上に閉じ込められた事件を思い出す。
「名とりの森」小学生のタネチンは友だちのノキに名とりの森に誘われる。そこは立ち入り禁止で、夏至から十日の間に入ると、帰ってこられなくなるという言い伝えのある場所だった。
「鳥の密室」魔女狩りの狂気。監禁されていた「魔女」が塔から消え失せる。
「罪喰の巫女」罪人の罪を喰らうという巫女の噂。ミステリというよりホラー。
「サマリア人の血潮」研究所内での逃走劇。何が起きているのかがなかなかわからない仕掛けになっている。 -
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短編集。
私の思い描いていた「脱出」より、より広義な意味での脱出がテーマだったかな…。
阿津川辰海さんの屋上に閉じ込められて…というのが最も私の思う脱出に近かったんだけれども、途中何だか策略が読めて、冷めてしまった感がある。
もっとこう、皆が脱出に向けて一丸となってという話が読みたい。
織守きょうやさんの森から出られなくなる話は好み。なぜか名前を思い出せなくなってしまうという設定と、真相は分からないがなぜ森が人を離してくれなかったのかその理由を面白く感じた。
私にとって森は神秘的だが恐ろしい場所でもあるので、森に囚われるという話は結構ドンピシャだった。 -
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想像していたミステリーとは違ったけど、ジャンルが幅広くて、自分では絶対に選ばないジャンルを読むことができたので良かった。
阿津川辰海「屋上からの脱出」★★★★★
学園ものミステリー。
自分の好きなミステリーで、やっぱり阿津川さんは面白かった。
学校の真冬の屋上に閉じ込められるスリルもあり、最後の1行まで楽しめる。さすが阿津川さん。
織守きょうや「名とりの森」★★★★★
ジャンルはホラーなのかな?
没入感が高く、ゾッとするセリフが上手い。何度も驚いた。普段読まないジャンルだけどすごく面白かった。
斜線堂有紀「鳥の密室」★★☆☆☆
魔女狩りの拷問の様子が辛かった。
人が身体的に苦しんでいる様子を読むと苦痛に感じるので、自分には合わなかった。
拷問以外のストーリーは良かった。
空木春宵「罪喰の巫女」☆☆☆☆☆
文体が苦手で難しくて頭に内容が全く入ってこなくて、途中で諦めることは滅多にしないんだけど、どうしても無理でした。ごめんなさい。
井上真偽「サマリア人の血潮」★★☆☆☆
ゾンビものが苦手なのもあるし、主導権を全て握られて勝手に進んでいく感じが合わなかった。
記憶喪失が断片的に戻っていって真相が徐々にわかっていく所は面白かった。 -
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GENESIS(創元日本アンソロジー)シリーズが今回の五集目で最後になるという。いや~、実にもったいない、このシリーズとても気に入っていたのになぁ~。特に、表紙の絵(カシワイ作)が好きで毎回楽しみにしていた。まあ、社の方針だからしょうがないのかもしれないけど。私以外の人にはあまり好評ではなかったのだろうか。売り上げも伸びなかったのかな。
最近、帯の呼び込み文句が派手なものが多く、ちょっとこの傾向を懸念していたのだが、この本も首を傾げた。「日本SFを牽引する注目の書き手による最新作6編」って、ちょっと誇大広告でしょう。この6人のうち3人(宮澤・水見・空木)しか知らない。私も最近のSFを勉強してきたつもりだが、それでも勉強し足りないという事なのだろうか。他の3人は実際に牽引した、しているのだろうか、疑問です。しかも、水見稜なんてだいぶ古い世代だし、最近作品を執筆していたのだろうか。そして、裏の帯を見たら「ベテランから日本SFの未来を担う新鋭まで、6人の作家が集結!」だって。ベテランは水見稜のことだが、他の5人は日本SFの未来を担ってくれるのでしょうか?もし本当だったら今後も頑張って欲しいです。
6作品の中で一番高評価だったのが、空木春宵「さよならも言えない」だ。服飾局という設定が話の中核をなし、服装が物事の価値判断の中心となる設定。少々偏った設定というのがSFや伝奇小説にとっては都合が良い。近未来社会と言ってしまえば何でももっともらしく話を展開できる。つまりアイディアが一つありさえすれば、文章構成力がある作家であれば素晴らしい作品を大量生産できるという訳だ。作家と読者のwin-win関係は長く続くだろう。今後も空木春宵には期待している。
その次、二番目の評価は、水見稜「星から来た宴」。懐メロみたいな作品で、すんなり体の中に染み入っていった。昔だったら、幼稚な作品だなと思っていたかもしれなかったが、久々に読んだタイプの作品でもあるためが新鮮に感じた。逆に、この様な作品は現代の若者、現代のSFファンに受け入れられるのか少々疑問である。Z世代とか令和時代の意見を聞いてみたいものだ。もしかしたらコメントすら出ないのではないか。
三番目の評価は、笹原千波「風になるにはまだ」。さすが第13回創元SF短編賞を受賞されるだけのことはある。体の共有化という設定は目新しいものではないが、共有感覚が妙に生々しい、感覚を表現する言葉のセンスも小気味よいのには将来性を感じる。また作品を出すなら是非読んでみたい。