【感想・ネタバレ】Genesis この光が落ちないようにのレビュー

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Posted by ブクログ

SF短編アンソロジー

今回が最後のGenesis、以後は紙魚の手帖に移行するそうです
海外作品ばかり読み耽っていた時期に、日本SFを読みたいと創刊号を手に取りました
以来ここで何人もの推し作家様と出会い、珠玉の作品の数々を拝読いたしております
自分の人生の一部であるこのアンソロジーが終了するのは少し寂しい気持ちです
深く感謝申し上げます


『風になるにはまだ』
第13回創元SF短編賞受賞作品

肉体を持たない“情報”として生きている女性が、現実の身体を1日借りるお話です
情報化の女性視点で久しぶりに生身を持った感覚は、まるで自分が体現しているように冴え、没入します
是非皆さま体感なさって下さい
タイトルの意味を知ったとき、切なさが込み上げました…新感覚の近未来SF


『応信せよ尊勝寺』
宇宙の森羅万象、物理ならぬ“佛理”により成り立ち、このエネルギーを超能力者の如く操る五百羅漢たちを描く未来SFスペースオペラ長編の序章
佛(ほとけ)の道に沿った独特な名称やアイテムに、背筋がゾクゾクするような期待感がとまりません(こういうのを待ってた)
長編が楽しみです!


『さよならも言えない』
地球から他星系へ植民し遥かなる時が過ぎ、環境に適した進化を辿った人類を描いた未来SF
外見、思想が大きく隔たった人間の社会を円滑に運営するため導入された“スコア”とは…?
真実を知った主人公のとった行動は、現実社会と重なって見え、やるせない
空木先生の世界観に魅了される作品です


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2022年12月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どの話も設定が面白く、ワクワクしながら読めた。
◆天駆せよ法勝寺
最初から世界観に驚愕させられ、そのままの勢いで最後まで読み切ってしまった。最後、大人が大人であるがため苦渋の選択し、それでも前へ進まないといけないのに対して、主人公の意識が子供から大人へと変わる様子が危うげながらも、頼もしく清々し感じられた。世界観は奇抜だけど、共感できる。
◆家の外なくしてみた
扉や窓の外が家の中と繋がっている設定は四畳半神話大系と似ているかと思ったが、こちらはだいぶポップ。2人の会話が丁寧なのにテンポが良くて読みやすかった。
◆この光が落ちないように
これも世界観がすごい。
「感情は火と同じ。」と、感情の否定に向かい、すべて焼き払い必要なバックパックだけを持ってサクラに会いにいく様子は今までのウトウ博士との思い出も否定しているようで悲しい。この話が一番印象に残っている。
◆星から来た宴
主人公達が受け取ったものは、消えた文明が最後に放った音楽で、老師の「滅びた生物の遺言」という言葉が残る。文明はいつかは滅びるものなのかもしれないけれど、最後の声を受け取る人がいることはせめてもの救いになっていて欲しいと思った。
◆さよならも言えない
これは最後、悲しい。結局、ミドリと少女は真逆の人生を歩む。少女が去った後、今まで幸せで美しかった思い出と、残って冷めてしまったコーヒーの味が重なる。最後、ミドリが猫のブローチを自分でつけることで、自分の中で少女にさよならを言っている気がした。
◆風になるには
最後、ハコの「消えたくないな」という、心の底から無意識にふと漏れたようなセリフにどんな思いがあるのか考えると切なくなる。「死にたくないな」と私たちが思うのとは、違う何か複雑なものがあるのだと思う。
体の貸主と借主の分かりあおうとする気遣いがすれ違ったり、かみ合ったりするところも面白い。ハコの、「あたしの目」をとおして見た物の表現も活き活きしており、目に浮かぶようだった。

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2023年04月30日

Posted by ブクログ

一つ一つが癖のあるSF。
「風になるにはまだ」は、この短編集を読もうと思ったきっかけだった。人の意識をアーカイブ化する技術は新しい哲学を生む土壌だろう。果たしてどこまでが自分なんだろうか?データは欠損しないのか?いつまで持つのか?色々考えると面白い。

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2022年11月19日

Posted by ブクログ

GENESIS(創元日本アンソロジー)シリーズが今回の五集目で最後になるという。いや~、実にもったいない、このシリーズとても気に入っていたのになぁ~。特に、表紙の絵(カシワイ作)が好きで毎回楽しみにしていた。まあ、社の方針だからしょうがないのかもしれないけど。私以外の人にはあまり好評ではなかったのだろうか。売り上げも伸びなかったのかな。

最近、帯の呼び込み文句が派手なものが多く、ちょっとこの傾向を懸念していたのだが、この本も首を傾げた。「日本SFを牽引する注目の書き手による最新作6編」って、ちょっと誇大広告でしょう。この6人のうち3人(宮澤・水見・空木)しか知らない。私も最近のSFを勉強してきたつもりだが、それでも勉強し足りないという事なのだろうか。他の3人は実際に牽引した、しているのだろうか、疑問です。しかも、水見稜なんてだいぶ古い世代だし、最近作品を執筆していたのだろうか。そして、裏の帯を見たら「ベテランから日本SFの未来を担う新鋭まで、6人の作家が集結!」だって。ベテランは水見稜のことだが、他の5人は日本SFの未来を担ってくれるのでしょうか?もし本当だったら今後も頑張って欲しいです。

6作品の中で一番高評価だったのが、空木春宵「さよならも言えない」だ。服飾局という設定が話の中核をなし、服装が物事の価値判断の中心となる設定。少々偏った設定というのがSFや伝奇小説にとっては都合が良い。近未来社会と言ってしまえば何でももっともらしく話を展開できる。つまりアイディアが一つありさえすれば、文章構成力がある作家であれば素晴らしい作品を大量生産できるという訳だ。作家と読者のwin-win関係は長く続くだろう。今後も空木春宵には期待している。

その次、二番目の評価は、水見稜「星から来た宴」。懐メロみたいな作品で、すんなり体の中に染み入っていった。昔だったら、幼稚な作品だなと思っていたかもしれなかったが、久々に読んだタイプの作品でもあるためが新鮮に感じた。逆に、この様な作品は現代の若者、現代のSFファンに受け入れられるのか少々疑問である。Z世代とか令和時代の意見を聞いてみたいものだ。もしかしたらコメントすら出ないのではないか。

三番目の評価は、笹原千波「風になるにはまだ」。さすが第13回創元SF短編賞を受賞されるだけのことはある。体の共有化という設定は目新しいものではないが、共有感覚が妙に生々しい、感覚を表現する言葉のセンスも小気味よいのには将来性を感じる。また作品を出すなら是非読んでみたい。

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2023年05月17日

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