奥野克巳のレビュー一覧
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各種テーマに沿って、文化人類学の民族誌を実例として日本人アイデンティティで凝り固まっている固定観念を揺さぶられる内容。提供される事例が興味深く、圧倒され続ける読書体験です。
ジェンダー、死生観、時間など自分がこれが正しい・正常であると考えていることは、相対的な比較において全く異質なものであることが浮き彫りになる。特に、時間というカオスなものを、通過儀礼など区切りをつけることで作為的に連続したものとして捉えている。便宜的にそうしているはずだったのに、産出された「時間」に私たちは縛られ不自由になっている。この感覚は、深層心理に根付いていて、現代人の窮屈さの根源なのかもしれないなと思いめぐらす。
人新世とマルチスピーシーズという思想を引合にだし、人間中心主義であった文化人類学を多種多様な「ともに生きるのに適している」人類以外のものたちとの共存まで視野を広げているという解説。
文化人類学は壮大なテーマへの実践に挑んでいるんだなと感嘆するなぞ。 -
Posted by ブクログ
人類学とは、人間について研究する学問で、国により分類が多少異なるということを冒頭で知ることができます。
イギリスでは、「自然人類学」「先史考古学」「社会人類学」の3つで構成されています。アメリカでは、上記3つに加えて「言語人類学」が加わるそうです。
フランスでは、社会人類学を「民族学」と呼ばれてきたそうです。
この人類学を年代別に重要な役割を果たしてきた人物を紹介すると共に、その書籍から何を導き出してきたのかを知ることができます。
クロード・レヴィ=ストロースさんと、ティム・インゴルドさんの名前は聞いたことがありましたが、ブロニスラフ・マリノフスキさんやフランツ・ボアズさんは存じ上げませんでした。それぞれの学者が残してきた書籍は、参考文献として掲載されています。本書を手に取り人類学に興味を持った人への道案内にもなっています。
最高にかっこいい学問の一つ人類学を学びたくなりました。 -
Posted by ブクログ
白人中心の進歩史観にレヴィストロースらが文化人類学で比較文化論を唱える。白人中心から、文化の相対性を主張し、底から白人中心の発達史観の見直しを迫った。
そして今や、人間中心の考えから人間以外の生物環境へと視野を広げた環境学になっていく。「これからの」というだけある内容であった。
インセントタブー:近親相姦の禁止 他部族との女の交換ー閉ざされる集団は自滅
魚類など 卵たくさん→子孫確率を高めるため
哺乳類 一度の行為で最大化 睾丸が大きくなり、乱交で妊娠確率を高める
二足歩行→視覚→前面(胸 口唇が赤くなる=発情期)
ヒトは通年可能となる 保護者確保のため 一妻多夫制 -
Posted by ブクログ
1961年11月20日、オランダ領ニューギニア沖(当時)でそれは
起きた。オランダ人の人類学者とアメリカ人の青年が乗ったボートの
エンジンに不具合が発生した。
同乗していた現地案内人は助けを求める為に陸地を目指して
泳いで行ってしまった。残されたふたりはボート内で待機して
いたが、アメリカ人青年は案内人の帰還を待ち切れずに空き缶を
浮き輪代わりにして海へ飛び込んだ。
彼の姿が確認されたのはこれが最後であり、後々、衝撃的なニュース
となって世界を駆け巡った。
何故なら、行方不明になったアメリカ人青年は世界の大富豪である
ロックフェラー一族の一員であったからだ。
マイケル・ロックフェラー。父親はニューヨーク知事であり、後に
はアメリカ副大統領となった。その後継者であるマイケルは、所謂
「プリミティブ・アート」に魅せられ、その収集の為に現地を訪れて
いた先での事故だった。
ロックフェラー家の公式発表では海難事故とされているが、この
行方不明事件には長らく不穏な噂が絶えなかった。
マイケルが収集していたのは、ニューギニアの未開の地に暮らす
アスマット族の人々の生活用品だったからだ。
アスマット族は「首狩り族」と言われ、人喰いをすると言われる
人々である。
著者は当時の資料に当たり、現地の言葉を習得し、現地を訪問し、
限られた期間ではあるがアスマット族と生活を共にして、何故、
マイケルは「喰われたのか」を理解しようとする。
アスマット族を理解しようとする著者には好感を持つ。それと同じ
感情を、失踪当時のマイケルは持ち合わせていたのか?が気になる
のだよね。
アスマット族が神聖な儀式に使用していた柱さえ、僅かな対価で
手に入れているのだから。そこに、恵まれた出自から来る「驕り」
があったのではないだろうか。
勿論、それだけがマイケルがアスマット族に殺害された理由には
ならないだろう。マイケルが現地に赴いたタイミングも悪かった。
他部族との戦いがあり、オランダ人宣教師との衝突もあったのだ
から。
カニバリズムはタブーである。よく、「人喰い」をテーマにした
書籍などに書かれていることだが、それさえも文明に頼って生きる
世界の人々の風習・文化の軽視なのではないかと思う。
とか書くと「人の命をなんだと思っているんだ」と怒る人もいるの
だろうな。
「未開の部族」と呼ぶことさえ、文明世界の驕りだと思ってしまう
のだよね。
本書はそんなことまで考えさせてくれる良書である。 -
Posted by ブクログ
文化人類学の基本的な様態から、筆者の体験談まで本書に入っていて、読みやすく、学問のイメージをするには丁度良いくらいの内容だった。
人間に優等も劣等もなく、ただ生きてきた形跡と築かれた様式があるだけ。
それをフラットに観察するには、奢りを捨ててその人たちとともに暮らし、まさにその人たちに馴染むことが肝要だ。
帰ってきたあとに、元の自分と比較し、人間のあり方を考察していく。
自分以外の誰かの「誰か」は、思った以上に狭いもので、世界は自分の想定を超える文化圏で生きている人たちがいて、それを生理的に受け入れられないことも多々あるが、それはそれとして認める以外にないし、そのような態度が倫理としてあるべきなのかなと、思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルにひかれて読んだ本。狩猟民族プナンの人々の生活や価値観、生き方から生を考える本。プナンの人たちの当たり前は、日本で暮らす私たちにとってどれも非日常で、世界共通の当たり前なんて本当に1つもないんだなと思う。
プナンの人たちは目の前の「今」と、みんなで生きることを大切にしているんだなと読んでいて感じた。それは人間的というより、生物学的なヒトの生き方の色合いが強い気がしてすごく興味深かった。生物学的に自然なのはプナンの生き方なのかも。と思うと、今の私たちの日々の生活は本当はすごく無理があって、みんなで一生懸命無理して成り立たせているものなんじゃないか。だからそこについていけない人がいたり、色んな場面で歪みや辛さが出てくるのかも。
どっちが正しいということはないけど、今の私たちの生活は人間が意図的に作り上げてきた文化や価値観の積み重ねの上に出来ていて、自然界から見たらそれが不自然である可能性は大いにあるよね、と思ったのでした。
ごめんなさいもありがとうも「言わない」んじゃなく、「いらない」のがプナンの人たちの文化。面白かった。 -
Posted by ブクログ
【暴虐なる神秘】ニューギニアの熱帯で美術品の収集に務めていたロックフェラー家の御曹司・マイケル。原始的な美に惹かれた彼を最終的に待ち受けていたものは、突然の死と、現地人に「喰われてしまう」という衝撃的な最期であった。1961年に起きた実際の事件を取材するとともに、その裏に横たわる文化人類学的な深淵を覗き込んだ作品です。。著者は、「ナショナル・ジオグラフィック・トラベラー」の編集者でもあるカール・ホフマン。訳者は、小説作品の翻訳も手がける古屋美登里。原題は、『Savage Harvest: A Tale of Cannibals, Colonialism and Michael Rockefeller's Tragic Quest for Primitive Art』。
タイトルから「トンデモ本」を想像する方も多いかと思うのですが、実際は卓越したノンフィクション作品であると同時に、フィールドワークに基づく一級の文化人類学的な作品でもあるという類稀なる一冊。「え、この話はそっちに行くの?」という展開の連続に驚かされると同時に、その先に行き着いた光景に文字通り息を呑む読書体験を味わうことができるかと思います。
〜ウィム・ファン・デ・ワールとマイケル・ロックフェラーのような人々は、アスマット文化を探し、集め、写真に撮り、アスマットと共に旅をし、村の深部まで行くことができた。互いの世界と、実際には見えない世界の次元の違いを知らないままで。〜
ラストは全身から思わず力が抜けるほどの衝撃でした☆5つ -
Posted by ブクログ
文化人類学専攻の友達にお勧めしてもらった先生の本。
「熱帯のジャングルでは目の前が緑で覆われるので、目の前のことに集中しやすくなると考えたからです。
人が未来をどのくらい見られるかは、過去をどのくらい遡って見ているかに関係しているのではないかと思っています。」
など、価値観の背景に自然環境を見出すところがとても面白かった。
30センチ前の画面に釘付けな日々を過ごす私たちは少しずつ、目の前のことしか見えなくなっていくのかもしれない。
だけどそれが良くないとも言い切れなくて、もしかすると、プナンの人々のような生き方に近づく方法なのかもしれない。
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