奥野克巳のレビュー一覧
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文化人類学の基本的な様態から、筆者の体験談まで本書に入っていて、読みやすく、学問のイメージをするには丁度良いくらいの内容だった。
人間に優等も劣等もなく、ただ生きてきた形跡と築かれた様式があるだけ。
それをフラットに観察するには、奢りを捨ててその人たちとともに暮らし、まさにその人たちに馴染むことが肝要だ。
帰ってきたあとに、元の自分と比較し、人間のあり方を考察していく。
自分以外の誰かの「誰か」は、思った以上に狭いもので、世界は自分の想定を超える文化圏で生きている人たちがいて、それを生理的に受け入れられないことも多々あるが、それはそれとして認める以外にないし、そのような態度が倫理としてあるべ -
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ネタバレタイトルにひかれて読んだ本。狩猟民族プナンの人々の生活や価値観、生き方から生を考える本。プナンの人たちの当たり前は、日本で暮らす私たちにとってどれも非日常で、世界共通の当たり前なんて本当に1つもないんだなと思う。
プナンの人たちは目の前の「今」と、みんなで生きることを大切にしているんだなと読んでいて感じた。それは人間的というより、生物学的なヒトの生き方の色合いが強い気がしてすごく興味深かった。生物学的に自然なのはプナンの生き方なのかも。と思うと、今の私たちの日々の生活は本当はすごく無理があって、みんなで一生懸命無理して成り立たせているものなんじゃないか。だからそこについていけない人がいたり、 -
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【暴虐なる神秘】ニューギニアの熱帯で美術品の収集に務めていたロックフェラー家の御曹司・マイケル。原始的な美に惹かれた彼を最終的に待ち受けていたものは、突然の死と、現地人に「喰われてしまう」という衝撃的な最期であった。1961年に起きた実際の事件を取材するとともに、その裏に横たわる文化人類学的な深淵を覗き込んだ作品です。。著者は、「ナショナル・ジオグラフィック・トラベラー」の編集者でもあるカール・ホフマン。訳者は、小説作品の翻訳も手がける古屋美登里。原題は、『Savage Harvest: A Tale of Cannibals, Colonialism and Michael Rockefel
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150ページほどの短い文章ながら、読めば思索が深まる体験を得られる、そんな素晴らしい本に出会いました。
本書は、ティム・インゴルドの研究領域である「人類学」を改めて問うてみた内容となっています。
インゴルドの本は、アート・芸術・建築関係から邦訳された経緯がありますが、本書はそれらとはまた違った学問について語られています。
では、人類学とはなんなのか?そして、インゴルドのいう人類学とはどんなものなのか?
第一のポイントは、他者を真剣に受け取ること、です。そのことが本書の第一章で語られています。今までの人類学は、他者を研究の対象とすることでした。フィールドワークにおいてもそれはあり -
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奥野先生を前から知っていて、面白そうな内容でもあったので読んでみた
サクッと軽めで読みやすい、後半は特に下ネタ多めでゆるく読める
まさかのポインティも登場
「幸せ」という抽象的な概念がないからこそ「幸せである」って、めちゃくちゃ納得できる
パスカルの「人間は幸福を知った時点で不幸」的な話にも似てて、興味深く読めた
あと勝手に仏教的な考え方にも通ずるなと思ったりして、自分の価値観に近しい部分も多くて、点と点がつながっていく感覚もあり
なんで「ありがとう」がないのか、幸せという概念がないのか、みたいなところまで踏み込んだ内容だったらより楽しめたかも、教授というのが先行してしまってたけどアカデミ -
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幸せってなんだろう?お金をたくさん持っていること?結婚して家族をつくること?権力を持って人の上に立つこと?
多分今挙げたものは全部正解だし、全部間違っている。つまり、これが幸せ!と決まったものはなにもないのだ。
だけど、多くの人は自分、ないしは世間一般がイメージする幸せのかたちを追い求め、他人と比較して一喜一憂する。端から見ると自分で自分の幸せがなんなのかわかっていない滑稽な人に思えてまったく幸せそうじゃない。
でもこの本を読めば、幸せってなんなんだろうと悩んでいることがバカバカしくなることは間違いない。
私自身は特に目的もなく、会社の同僚に「おもしろかったから読んでみて!」と薦められて読 -
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学ぶとは何なのか、貧富の格差や権力の集中はどうして起こるのか、心の病はどうして起きるのか、人の死にどう向き合うべきなのか、人と自然はどう関わるべきなのか.何とも捉えどころのない質問に、ある程度的確な答えを提示する内容の本だ.現代社会でよく見られる問題ばかりだが、著者は狩猟民族のプナンやその他の原始民族へのフィールドワークから答えを導き出そうと思索している.学びという概念がない、ありがとうという言葉がない、権力者が存在しない、死を忘却して関知しない、人間と自然を別のものと捉えない.これらの状況が存在することは本書を読むまで気がつかなかったが、人類の祖先に近い生活を未だに営んでいる狩猟民族にその原
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人類学に学生時代ふんわりとしか触れてこなかった身からすると、とても読みやすく、面白かった!ちくまプリマー新書、やはり良い。
単純に「同じ地球上でこんなにも異なる文化が育まれているんだ」という驚きと、「いま自分が抱えているモヤモヤはこの社会に特有の文化的葛藤なのか」という気づきとそこから抜け出すきっかけを授けてくれる、そんな側面を持つ学問が人類学なんだなあと勉強になった。
当たり前を疑う、前提を見つめ直す、という行為は、当たり前や前提が異なる「なにか」をヒントにすると少し難易度が下がるというか、やりやすくなる。そのためにも、未知のものを知る、触れてみる、できるなら体験する、ということは重要なんだ -
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自分の置かれた環境をメタ認知する為の引き出しを増やしたいと思い読書。
様々な風習を持った人々の営みも面白く読んだが、一番印象に残ったのは「私達」や「人権」という概念の捉え方が場所・時代により異なる事だった。
私を拡張して私達と呼ぶ時、普段私たちは家族・村・地域・国など人を中心に捉えているが、そこにある動植物なども含めて考える事もできる。
人新世という、人が環境を変えてしまう時代において持続可能性を考えるには動植物、環境まで拡張して私達の事を考えるパラダイムが必要だと思った。
また、地域によっては川など自然物に人権を認め、その権利侵害に当たる開発を差し止める例もあるという。マイノリティな -
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人類学の基本視点を通じて「生」を捉え直す旅へと誘う。
マリノフスキーは社会や文化を「生の全体」として捉え人間の行動がいかに相互に結びついているかを明らかにした。
ストロースは表面の多様性の背後に潜む「生の構造」を探り普遍的な秩序を解き明かした。
ボアズは多様な文化の中に「生のあり方」を見出しそれぞれの独自性を尊重した。
そしてインゴルドは固定されたものではなく常に変化し続ける「生の流転」に注目した。
これらの視点を通じ奥野は私たちに問いかける――「生」とは何か。その問いに向き合うことで、人間の本質や社会の在り方に新たな視点を得られるだろう。
外部という言葉が使われいる。知らない街に降り立つこと