奥野克巳のレビュー一覧
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所有の概念がなくなると、不安がだいぶ減りますね。
普段使っている船が壊れた時は、壊れたんだなとおもうだけで、悲しみはしないでしょう。
独占欲は生まれつき持っているが、それを削ぐことを幼い時期からしつけとして行う。限られた人にお金や物を独占させない為に、プナン社会は工夫しているのかな。
ありがとうが無い民族は、プナン以外に、シベリアの狩猟民にも無い。その理由は、みんなであらゆるものをシェアするのが当たり前なので、何かをわけあたえて、その返礼をする仕組みがない。
ありがとうは、農耕を始めてからの言葉。
熱帯のジャングルでは目の前が緑で覆われるので、目の前のことに集中しやすい。逆に、サバンナのような開けている場所では、動物などが遠くから近づいて来ることが視覚的にわかるので、時間感覚が築かれやすくなる。空間と時間感覚には繋がりがある。
大きなイノシシをとっても、小さいものしかとれなかったと言う。狩猟民社会で大きな獲物を取ってきた人が褒め称えられて階層ができてしまうことを防ぐためか? -
Posted by ブクログ
150ページほどの短い文章ながら、読めば思索が深まる体験を得られる、そんな素晴らしい本に出会いました。
本書は、ティム・インゴルドの研究領域である「人類学」を改めて問うてみた内容となっています。
インゴルドの本は、アート・芸術・建築関係から邦訳された経緯がありますが、本書はそれらとはまた違った学問について語られています。
では、人類学とはなんなのか?そして、インゴルドのいう人類学とはどんなものなのか?
第一のポイントは、他者を真剣に受け取ること、です。そのことが本書の第一章で語られています。今までの人類学は、他者を研究の対象とすることでした。フィールドワークにおいてもそれはあり、観察する側と観察される側という線引きで、いわゆる先住民を「対象」にしてきたそうです。
でも、インゴルド人類学のポイントは、他者を対象化して観察するのではなく、他者とともに研究するそうです。このやり方を「参与観察」と呼ぶとインゴルドは語っています。
これは、例えば医療の現場などにおいても言えることだと私は思います。治療する側と治療される側というふうに、病気をもった人を「対象」にすることと近いと思ったからです。でも、そこに本当のケアはあるのでしょうか。
それはともかく、最初に私が書いたように、思索が深まる体験としては、「知識と知恵」の考察や、「知るとある」の考察や「類似と差異」の考察が、本書を読むことによってダイレクトにインゴルドの思索を流し込めるので面白い体験でした。
また、近代西洋人は空想上の生きものであった、という内容の指摘はスリリングかつドキドキしながら読み進めました。こちらも非常に面白い考察でした。
インゴルドの学究人生を辿る半自伝的な内容でもある書で、人類学の史歴や学会界隈の激震と分派などまで綴られています。
読み終えて、私は、人類学のほうが、哲学よりも哲学的で面白そうだなという感じがいまはしています。
向き不向きもあるでしょうけれど、哲学や人文科学に興味のある方や、思索を深めたい方は読まれることをオススメいたします。 -
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奥野先生を前から知っていて、面白そうな内容でもあったので読んでみた
サクッと軽めで読みやすい、後半は特に下ネタ多めでゆるく読める
まさかのポインティも登場
「幸せ」という抽象的な概念がないからこそ「幸せである」って、めちゃくちゃ納得できる
パスカルの「人間は幸福を知った時点で不幸」的な話にも似てて、興味深く読めた
あと勝手に仏教的な考え方にも通ずるなと思ったりして、自分の価値観に近しい部分も多くて、点と点がつながっていく感覚もあり
なんで「ありがとう」がないのか、幸せという概念がないのか、みたいなところまで踏み込んだ内容だったらより楽しめたかも、教授というのが先行してしまってたけどアカデミックな感じでは全然なく読み応えに物足りなさはあった
現代の人間には完全にその価値観になることは無理かもしれないけど、「あれしなきゃ幸せになれない」みたいなしがらみから解放させて、案外こんなもんでも十分かも、って思える訓練を早くからしとくことが、生きやすさに繋がるとは思う -
Posted by ブクログ
幸せってなんだろう?お金をたくさん持っていること?結婚して家族をつくること?権力を持って人の上に立つこと?
多分今挙げたものは全部正解だし、全部間違っている。つまり、これが幸せ!と決まったものはなにもないのだ。
だけど、多くの人は自分、ないしは世間一般がイメージする幸せのかたちを追い求め、他人と比較して一喜一憂する。端から見ると自分で自分の幸せがなんなのかわかっていない滑稽な人に思えてまったく幸せそうじゃない。
でもこの本を読めば、幸せってなんなんだろうと悩んでいることがバカバカしくなることは間違いない。
私自身は特に目的もなく、会社の同僚に「おもしろかったから読んでみて!」と薦められて読んだだけなのだが、お金やモノに満たされた生活イコール幸せ、というわけではないということがよく理解できた。
ただ、本の中の言葉でこれだけは間違いないと思えることが一つある。それは「不幸な人は下ネタを言わない」。バカみたいな論理だけど結構真理を突いているような気がするので、これからは会社でもバンバン下ネタを使っていこうと思う。 -
Posted by ブクログ
学ぶとは何なのか、貧富の格差や権力の集中はどうして起こるのか、心の病はどうして起きるのか、人の死にどう向き合うべきなのか、人と自然はどう関わるべきなのか.何とも捉えどころのない質問に、ある程度的確な答えを提示する内容の本だ.現代社会でよく見られる問題ばかりだが、著者は狩猟民族のプナンやその他の原始民族へのフィールドワークから答えを導き出そうと思索している.学びという概念がない、ありがとうという言葉がない、権力者が存在しない、死を忘却して関知しない、人間と自然を別のものと捉えない.これらの状況が存在することは本書を読むまで気がつかなかったが、人類の祖先に近い生活を未だに営んでいる狩猟民族にその原点があることは、考えさせられることだと感じた.
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人類学に学生時代ふんわりとしか触れてこなかった身からすると、とても読みやすく、面白かった!ちくまプリマー新書、やはり良い。
単純に「同じ地球上でこんなにも異なる文化が育まれているんだ」という驚きと、「いま自分が抱えているモヤモヤはこの社会に特有の文化的葛藤なのか」という気づきとそこから抜け出すきっかけを授けてくれる、そんな側面を持つ学問が人類学なんだなあと勉強になった。
当たり前を疑う、前提を見つめ直す、という行為は、当たり前や前提が異なる「なにか」をヒントにすると少し難易度が下がるというか、やりやすくなる。そのためにも、未知のものを知る、触れてみる、できるなら体験する、ということは重要なんだなー。きっと。
•サカナやトリにとっては、「自然」は抗うべき対象ではなく、一体化するものです。他方で、船や飛行機にとって「自然」環境は、克服すべき問題なのです。
•知識は私たちの心を安定させ、不安を振り払ってくれる。知恵はぐらつかせ、不安にする。知識は武装し、統制する。知恵は武装解除し、降参する。
•学ぶとは「知識」を身に付けるだけでなく、「知恵」を重んじることであり、「知識」に「知恵」を調和させることです。
大切にしていきたい言葉も沢山あった! -
Posted by ブクログ
自分の置かれた環境をメタ認知する為の引き出しを増やしたいと思い読書。
様々な風習を持った人々の営みも面白く読んだが、一番印象に残ったのは「私達」や「人権」という概念の捉え方が場所・時代により異なる事だった。
私を拡張して私達と呼ぶ時、普段私たちは家族・村・地域・国など人を中心に捉えているが、そこにある動植物なども含めて考える事もできる。
人新世という、人が環境を変えてしまう時代において持続可能性を考えるには動植物、環境まで拡張して私達の事を考えるパラダイムが必要だと思った。
また、地域によっては川など自然物に人権を認め、その権利侵害に当たる開発を差し止める例もあるという。マイノリティな考え方と思うものの、自然そのものの権利を認めるという行為自体は八百万の神を祀る日本人にとって親和性は高い考え方であり、そういう考え方もいいなと感じた。 -
Posted by ブクログ
【学校について】
人から教わるという発想がなく、人がやっているのを見て学ぶ社会がある。
彼らは学校を必要と感じていなくて、授業に参加してもずっと座っているだけだと感じるし、宿題を忘れたら怒られ、いじめに遭うこともあり、次第に学校に行かなくなるが、困らない。
この話は大人になった今、すごく納得できる。
どれだけ英語の文法を勉強しても、ネイティブスピーカーと話すことに不慣れで抵抗があると使い物にならないし、逆に文法はめちゃくちゃでも話すことに慣れていて、意思疎通ができている人が周りにいて、「学校の勉強って何だったんだろう…」と思うことが多い。
社会に出て求められるのは、知識ではなく考え実践する力なのに、(少なくとも私が経験した日本の)学校教育は、勉強の進め方までも事細かに指示されて、「先生に従う=いい子」という感じ。
大勢の子どもが一度に学ぶにはある程度しくみを画一化することが必要だけど、それが主体性を奪っているのかなと思う。
座学には限度があって、体験、実践することが大きな学びに繋がると思ってはいるものの、学校に行かないことは大ごとな環境に生きているから、実際にそう感じて「学校に行かない」を実践できる人たちを少し羨ましく思った。
【心の病】
全体的に、フィールドワーク先の人たちは「個」を意識していない。(それに加えて常に集団で生活していることで悩みを抱えることもなさそう)
逆に、今の世の中では良くも悪くも「個」を大切にしていて、大家族も少なく1人の時間が多い人が増えていたり、多様性が認められるようになってきたことで「自分らしさ」も求められるようになり、それがストレスに繋がっているのではと感じた。
【自然と人間】
自然と人間は切り離されていて、人が自然を支配するような感覚は、紀元前のギリシア哲学にまで遡る。
動物実験をしたり食べたりすることに対して「かわいそう」と感じる感覚を、人間に近い動物から広げていこうという考え(哺乳類→鳥→虫みたいに)はなるほどと思った。
普段から、人間は他の動物のことを考えずに利己的だと思ったり、地球環境の保護を積極的に行う動きがあるものの、そもそも自然界に人間がいなければ生態系は保たれていたのでは?1番要らない生き物って人間だよな…と思いながら生きているので、このテーマに関する世の中に存在する意見を知ることができてよかった。
〈全体を通して〉
「そもそも」について考えることはできても、世の中のしくみや価値観が出来上がっている中で、それを実践することはとても難しい。
ただ、世の中を変えることは難しくても、ふとした時にこの本で知った価値観を思い出して、今の自分の置かれた状況を客観視して、少しでも楽に生きられたらと思う。
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