宮崎真紀のレビュー一覧
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「毒見師イレーナ」の続編。
ヒロインがカッコいいのです。
特にどこにも似ていない異世界だけど、大雑把に言えば中世ヨーロッパ風でしょうか。
幼い頃にさらわれてイクシアの施設で育ったイレーナは、自分がどこから来たのかという記憶もなかった。
1作目で、牢獄につながれていたのが最高司令官の毒見役としてなら生きられることになり、さらに訓練を受け、仲間を見つけ、恋人まで…という怒涛の展開。
最後にはまた殺人犯となってしまうのだが…
革命が起きたイクシアでは魔法が禁じられ、能力者は生きられない。
対立する隣国シティアの生まれだと判明したイレーナは、母国に送り届けられる。
生き延びるためだったが、これでイクシアの防衛長官であるヴァレクとは遠く離れてしまうことに。
北国のイクシアとは違い、南米大陸を思わせる自然豊かな土地で、家族は密林の樹上で生活している部族だった。
両親はあたたかく迎えるが、兄は警戒心を示す。
長く故郷を離れていたイレーナは、スパイではないかと疑われるのだった。
学校で魔法を学び、力を制御する訓練が始まる。
癖のある人ばかりの中にいても、イレーナは魔力が強いことが判明するが…
ファンタジー世界で前とは違う国なので、何がどう展開するか全くわからない。
魔法を学ぶ試練だけでもけっこう読みどころだが、それだけじゃない大変さが降りかかり、もうハラハラドキドキ!
愛馬のキキが賢くて可愛い。
イレーナが潜在能力を開花させてい様子が鮮烈です。
そして、どんな難関も越えちゃう溺愛恋人のヴァレク…何者?!
生き生きとしたキャラとスピーディな展開に引き込まれます。 -
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アイルランドの羊農家の四季と暮らし。著者はアメリカ人女性で、農業大学を卒業後、農業と農業以外の多様な職業を経験した後、アイルランド系の母方の祖父の親族所有の農場で羊農家となる。
四季の移り変わりや気候に影響される日常の仕事、羊の繁殖や出産手助けなどの仕事の他に、農家らしい食生活、近辺の様子、近所の人や身内のこと、最初は農場だけではやっていけず仕事を掛け持ちしていたこと、農場で働く女性の地位が低いことなども織り込まれて書かれている。羊と猫以外に犬もいるし、鶏や馬、のちには羊のガードのためにアルパカも飼い始める。何かあった時には近隣の農家同士助け合いもする。自然と動物と共に働くことは大変だが、最も自然体に近い生き方のような気がしてしまう。そのこと自体に癒しがあると思うのは農業、酪農を知らない人間の過大な期待だろうか。
この農場に猫がいるのはネズミ対策のためでもあるが、猫は仕事を手伝ってくれるわけではない。気ままに遊びに行ったり寝ていたり。作業をしている人間の近くにずっといて、人間のやることを興味深く見ていることもある。ボデイシャスもそういう猫だったのだろう。猫は人間ほど長く生きることはないと知っていても、基本的に一人で農場生活を送っている著者にとって、共に暮らす猫の死はさぞかしショックだっただろう。最後は私も泣かずにはいられなかった。 -
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私が面白いと思う人が面白いと言った本は私にも面白い、という法則の通り、面白かった。離れ離れになった息子の死と孫の存在を知り、名前も居場所もわからない孫に会いにいくため、愛用の青い自転車に乗って見知らぬ土地へ出かけるマルおばあちゃん。旅の途中で出会った人との会話やおばあちゃんの独り言などが、ジーンと沁みる。読み書きはできないけれど、朝日の美しさを知っている。ネットで検索することもできないけれど、どこへいけば良いかを知っている。お金儲けはできないけれど、一口のスープや清水の美味しさを知っている。人生で大切なこと、本当のことについて、共感の嵐。
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アイルランドの農場で暮らす、羊飼い猫の春夏秋冬の物語。
・はじめに
第1部 春 第2部 夏 第3部 秋 第4部 冬
・そのあと ・謝辞 ・羊飼い、語る
冒頭口絵はボディシャス中心の写真8ページ
アイルランドの農場での生活と、羊飼いさん、仲間たち、そして
春夏秋冬の情景を表紙の凛々しい猫、ボディシャスが語る物語です。
ブラックシープ農場の自然の移ろいの中、ボディシャスは
生き生きと動き、働いています。そう“大胆不敵”な名前の通り。
日々の仕事は朝のパトロール、卵係の卵を確認し、羊たちを監視、
ネズミ狩りし、羊飼いさんの手助けをします。
花咲き乱れる春は、子羊の世話、イラクサ探しにウサギ狩り。
暑いけど木陰が涼しい夏には、農場見学の客を案内(日本からも!)。
渡り鳥が去る秋には、土壌の性質を調べ、厩堆肥の監視、
シチュー作りの手伝い、フライパンや皿をキレイにする。
冬になる前の重労働に勤しむ羊飼いさんを気遣い、時には看病も。
そして厳しい冬の寒さ、羊たちの出産を見守る。
合間に挟まれるのは、農場での月毎の仕事。
仲間の猫、犬、鶏、羊、馬、アルパカたちの事。
羊飼いさんの生い立ちから、農場経営に関わるまでの、紆余曲折。
ボディランゲージの習得、農業世界での性差別、
SNSでの人との繋がり等々も語られています。
農場暮らしの適性はあっても、弛まぬ努力と経験が大切。
それを語るボディシャスの自伝であると同時に、
代筆する羊飼いさん自身の自伝でもあります。
厳しい現実と自然、しかしどちらも豊かに結びつかせ、
逞しく生きていく彼らの姿が、清々しく感じられました。
そして最後の“羊飼い、語る”は、溢れんばかりの想いに、涙。 -
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スペイン、1980年、弁護士マリアは警官セサルが情報屋を暴行した時間で警官を刑務所送りにし、売れっ子弁護士へ。しかしセサルは娘を拉致されていた。大物政治家が裏にいて、暗躍している。マリアはセサルに話を聞きにいくと・・・1941年、フランコ政権下、ファランヘ党幹部の妻イサベラ・モラは息子を連れて夫から逃げようとする。しかし・・・40年を経て、暴れ出す謀略、怨念とは・・・
ううむ。こういう話は大好物だ。ラスト近辺でややもたつくので全体としてやや長いけれど、それ以外は完璧に面白い。
イサベラはなぜ夫から逃げようとするのか、その結果どうなったか。それがどういう怨念を生んだのか。40年後、誰がどうなったのか。大物政治家は何を隠そうとしているのか。壮大な大河ドラマとなっている。スペイン近現代史とか重厚長大な物語がお好きな人には強くオススメしておきたい。ものすごくややこしいので、自分用のメモとして、下にネタバレあり。
※以下ネタバレ
イサベラは精神的に問題のある次男アンドレス(夫に施設に入れられそう)を連れて逃げようとした。夫の部下のブブリオは、マリアの父ガブリエルにに殺害を命じる。偽の目撃者として脅迫されたレカセンスが偽証し、無実のマルセロ(セサルの父は)処刑される。イサベラの夫ギリェルモは次男アンドレスは施設に入れ、母を愛し自分を批判する長男フェルナンドは戦争に送る・・・
ブブリオは出世して大物政治家になる。セサルはブブリオの悪事の証拠を握るが、娘を拉致されてしまう。その件で近づいてきた情報屋を痛めつけ刑務所に行くが、ブブリオ側から、娘の命が大事なら悪事の情報を出すなと脅される。というような話。以下省略 -
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スペイン現代史にさほど詳しいわけではない。ヘミングウェイや逢坂剛の作品を齧った以外、あまり勉強していないのが実情である。それゆえ、スペインの作家がスペインの現代史を題材に書き上げたネイティブなこの作品には惹かれるものがある。しかも、フランコ没後、独裁制から民主化に移行したこの国にとっては大転換となるこの時期である。本作は、平和というものの産みの苦しみの中で様々な陰謀とそれに絡め取られていった人々の重厚、かつ壮大なノワールとも言える力作なのである。
多くの登場人物が現れる。また多くの過去の複数時点を語る物語でもある。複雑に絡み合った人間たちの愛憎模様と、彼らの離合集散が生み出す化学反応は、時に繊細、時に大胆であり、一見わかりにくく読み辛いとの印象を与えるかもしれないが、実際には緊迫の一ページ一ページに気持ちが集中してゆくうちに、いつの間にか一気読みさせられている自分に気づく。
目を覆うばかりの暴力描写は、趣向と言うより、むしろ作家の目から自国の歴史を振り返って見て獲得したリアリズムだろう。民主化してなお、実際に起こった一部軍人たちによる革命未遂事件を題材に、そこに至るスペイン史のうねりの中で、個人たちが彼らの熱情や復讐、欲望と非情と、善悪入り乱れる争闘を繰り広げる展開が続く。よって、登場人物は多いのだが、語り口の巧さが混乱を避けたストーリー理解に導いてくれるので、安心して頂いてよいだろう。
そして、一人一人の登場人物の個性の強さも、本作の読みやすさに繋がっている。女性弁護士マリアと彼女の父、元夫。囚人で元刑事のセサルと彼の父。セサルの元同僚のマルチャン。異常者で残酷な殺人者のラモネダ。戦中に暗殺されたイサベラ。その夫であり秘密警察所属のロレンソ。そして残された二人の兄弟(兄はドイツ義勇隊としてロシア戦線へ。弟は精神を病み施設へ)。一族の秘書であり戦略家でもあるプブリオ。さらに、事件に巻き込まれ、運命に揉まれ、生死を分かってゆく彼らの周囲の人々。どの人物も複雑だが有機的に関わり合い、縦糸と横糸となって分厚いタペストリーを紡いでゆく物語の素材となってゆく。
1981年2月23日の革命未遂事件は「23-F事件」と呼ばれているらしい。Fは二月を表わす。日本の二・二六事件は戦争の始動を暗示するものであったが、スペインの23-F事件は最早戦争は終わったのだと改めて象徴されるような事件であった。しかしその裏での駆け引きも含め暗黒史的闘争があっただろうことは、この作品を通して十分に伺い知ることができる。
物語の時制は、現在がこの23-F事件の前後である1981年。しかし、物語はファシズム台頭する1940年代に始まり、戦争を利用しつつ弾圧や独裁化に向けて、国家的野望が不穏分子を国中にばら撒いた時代に移行する。イサベルの暗殺が起こり、一家が離散し、殺人者や目撃者が仕立て上げられ、世界が秘密というベールに被われて、現在の平和という表皮に隠蔽されてゆく時代に。
それらのすべてを暴き葬るかのように、著者ビクトル・デル・アルボルのペンは、この世で最も強い武器となる。各新人賞を獲り、この後もロシア戦線収容所の真実を暴き出す作品等、骨太の創作を続けているらしい。何よりもカタルーニャ自治州警察に20年間在籍していた現場実績を持つ作家という視点を持つことにも注目したい。
最後に本書の原題は"La Tristeza Del Samurai"(サムライの悲しみ)である。作中に重要な道具として存在する日本刀の名である。日本人は、この作品には一人も登場しないが、人間の魂を込めた精神性のシンボルとしてこの日本刀が非常に印象的に使われている点に、是非ご注目頂きたい。バルセロナやピレネーなどスペインの国土の美しさともども、過酷な生と死の物語に、より深みを与えていることがわかると思う。 -
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ネタバレ原題は「ブロンズの庭」。この意味は後半になると分かる。邦題の方がミステリーらしい。
長い小説だが、先が読めず、少しずつ手掛かりが明らかになっていくので、まったく飽きることがない。最後の200ページはほとんど一気読みした。
ブエノスアイレスの中心部から、密林の奥地へと辿り着く地理的、場面的なコントラストや、事件発生から解決まで10年近くかかるという時間的なコントラストが物語に広がりを与えている。
主要な登場人物にも容赦なく悲惨な結末を辿らせる。妻のリラ。探偵のドベルディ。ドベルディはよいキャラクターだっただけにとても惜しく感じるが、その死も無駄にならず、事件の解決への重要な手掛かりを与えることになる。
そういえば、キャラクターの性格付けもとてもよくできていて、物語に深みを与えている。主人公のファビアンは比較的無特徴。人の良いドベルディ。不安定なリラ。刑事のブランコ。
リラの叔母が実はすべてを分かっていたということに、後で気づいてぞっとする。ファビアンが叔母を罵る場面は、一つのクライマックスだろう。
娘が見つかったところで簡単にハッピーエンドで終わらないところもよい。10年近い時間の溝はそう簡単には埋まらない。それでも、微かな希望を感じさせて物語は終わる。
個人的には一人称でこの物語が書かれたらどうなるのか興味がある。
ときどき挿入される犯人の日記は、読者を楽しませるための小手先の演出である。これは最後に読めばいい。ドベルディの元刑事宅への潜入場面や、娘が密林で暮らす様子などは、当然事後に知ることになる。映画的なエンターテイメント性は薄れるのかもしれないが、ファビアンとともに歩む先の見えない旅を楽しめるのではないかと思う。 -
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今はなきパソコン通信<NIFTY Serve>で冒険小説フォーラムを活発に運営していた頃、冒険小説は長ければ長いほど面白い、というような見方を持つ練達の読者が沢山いた。長いのがいい、分厚いのがいい、量は質を凌駕する、なんていう見方は、冒険小説を語る上で決して珍しくない意見だった。スリルやサスペンスに溢れる描写は、微細に描き、リアリティを持った描写で自然の脅威や戦闘の過酷さを露にしたものはやはり喜ばれた。あっさり読みやすい冒険小説なんてないんだ、というくらいの勢いで。
されその意味では当時求められていた類の冒険小説に近い味わいの大長編ミステリがここに出てきたなというのが、本書に関する第一の感想である。しかも冒険小説では頻繁に扱われた舞台ですらある南米のミステリ。欧米人が書いた南米舞台の物語ではなく、正真正銘南米はアルゼンチン発の長編小説なのである。
主題は娘の失踪。犯人はもちろん巻末に至るまでなかなかわからない。事件の発生から、その後の行方不明のままの人生の中で父親が選択する道は、娘の捜索以外にないという過酷な日々であり年月である。失踪事件を扱う小説はあまたあれど、これほど執拗に失踪した娘を探し求め、徐々に手がかりを得て、真実に辿り着く物語には出会ったことがない。ブエノスアイレスの都会の闇がもたらす足元からの不安定感は、さまざまに予測される事件への疑惑に満ちた主人公の内心を照らす心象風景であるかにも見える。その辺りを、書きなぐるではなく緻密にじっくりと書き込んでくれた結果が本書の分厚さに繋がったのである。冒険小説読者にとっては垂涎の作品だ。
次第に南米の密林に向けて川を遡行してゆく主人公の辿る<闇の奥>への旅は、『地獄の黙示録』を彷彿とさせる現代の伝奇であり、辿り着いた先に見えてくる容赦ない真実にはこれまた様々な想いを生み出す痛く切なく苦しくしかし劇的なドラマが込められている。物語としての完成度が凄まじく、意外性も蓋然性もどちらも兼ね備えた大人の文学としてこの作家が邦訳されたのは喜ばしい。
主人公は、この後、失踪人探しの探偵としての第二作目を生きることになるようである。衝撃的な第一作をどのように超えてゆくことができるのか、これからが楽しみである。 -
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ネタバレ父を早くに失い、引き継いだ会社と家族を守るためだけに生きてきた男と、天涯孤独でやっと自分の店を持つという夢を叶えたヒロインが出会ったその時―。
ヒロインは赤ちゃんの頃に両親を失い、叔母に育てられました。「親のいないペットに幸せな養子先を見つけて、家族を与えてあげる」ペットショップは彼女の夢であり希望でした。しかし、経営難のため、彼女は店を手放さなければならなくなります。そんなとき、若き融資家のミッチが現れ、ミッチが融資してくれることになります。二人は出会ったその瞬間から、惹かれ合うのですが、、、
ヒロインの逆境にもめげずに立ち向かい夢を叶えようとする姿が印象的で好感度が強い。
一方、ミッチの仕事のために彼女から離れようとする理性と、それでも彼女に惹かれてしまう情熱の間で葛藤する姿も魅力的でした。
全体的に美しい文章や表現が多く(これは訳者の方の力もあるでしょうが)、思わず何度も繰り返して読み直したほど印象的な情景描写シーンが随所に見られました。