長尾莉紗のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
アメリカが国際秩序のサポート役を降りた後の世界について、様々な切り口から推論するシリーズ下巻。下巻では、エネルギー、製造業、農業が主な切り口です。
「アメリカが国際秩序の維持管理役(いわゆる”世界の警察”)を降りる→自由貿易体制が崩れる→世界が分断化される」というのが前提となっています。その状況下で、上記の分野がどういう方向へ進むのか、というのが下巻の内容です。
「世界が分断化されるので、この数十年世界が享受してきた”安く・大量に”物が溢れる生活は消え去り、ブロック化された世界各地で完結したサプライチェーンに帰結せざるを得ない→今よりもより不自由で不安定な世界になる」というのが一貫した主張で、その具体例が多く挙げられています。
エネルギー(石油やウランなど)、地下資源(鉄鉱石やレアアースなど)はもともと偏った地域に極端に偏在していますし、農産物も気候や農業に従事できる人口の偏りで、生産地域が偏在しています。自由貿易が阻害されれば、それらの生産地から距離が離れていたり、政治体制の問題で供給不安になれば、今よりも多くの面で制約が出てくるのは当然なので、読み終わっってみて、ちょっと冗長な印象は否定できないかな、という感じでした。。
現在の世界に至る歴史(産業革命や自由貿易体制による変化など)の部分の記述が各章の冒頭にあるのですが、その部分は簡潔に要点が時系列で整理されていて頭の中が整理された気がしました。 -
Posted by ブクログ
上巻に引き続き、今度は石油やその他のエネルギーや金属資源、工業製品、食料(農業)の観点から世界を俯瞰。
産業の発展に欠かせなかった灯りは、まずは鯨油、そして石炭と続き、最終的に石油が使われるようになった。その後、石油は主にガソリン、石油精製品に使われるようになり、電力は天然ガスにシフト。石油は中東、旧ソ連、北米で算出されており、特にカナダのサンドオイル、アメリカのシェールオイルにより、アメリカは石油すらもある程度自給が可能に。また天然ガスもシェールガスと呼ばれる副産物で確保可能。
グリーンテックはそのコストからしばらく本格的な普及は難しく、電気自動車自体が実はその製造段階から多大なCO2を排出し、また電気自体も火力発電などにより生み出されていることから、現時点では環境負荷は高い。またグリーンエネルギーによって代替可能なものはあくまで電力だけであり、石油精製品の代替はまだ見つかっていない。
金属資源は中国がマネーゲームを繰り広げており、一部の金属は中国の手中にあるが、原材料などはある程度原産国が分散しており、対応が可能。
シリコンバレーがあり、農業も盛んなアメリカにおいて、地政学的な死角は少なく、むしろエネルギーと海上軍事力に課題のある中国は地政学的には苦しい状況。 -
Posted by ブクログ
地政学は面白い。歴史であれ政治・経済であれ、その場所の持つ特性からは逃れられないから、地政学を出発点にして考えると見えてくることが多いというのはよくわかる。そういう意味で、これからの世界を地政学の視点を基盤にしてみるとこんな風になり得る、と仮説を立ててみたのがこの本。資源や製造業など、個人的にはざっくりした常識程度の知識しかない私にとっては、それぞれどこでどんな風に、どんなものが作られて、どんな風に輸送されて現代の世界ができ上っているか、というのが理解できるという意味では「社会科の勉強」としてとても面白かった。
半面、グローバリゼーションを推進してきたアメリカ人の視点から“グローバル後”を見ると、こんな景色かという「引き算」もしながら読んだ。全体として、土地と資源があり、人口も確保できているアメリカは、脱グローバルで他国と分断されても大抵大丈夫、というのが著者の出発点にあるように見え、目下たまたまトランプ政権の諸々の騒ぎを見ながら読んでいると、なるほど、アメリカ人はこういう風に考えているのね、と腑に落ちてしまうところがあった。素人なのでまったく「根拠レス」ではあるけれど、それほどアメリカもうまくはいかないのではないか、という疑問符を頭の隅に浮かべながら読み進んだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレグローバル化が終焉し、無秩序の時代がくると、海運の安全は崩れ、グローバルサプライチェーンは寸断される。そのとき 各国はどうなるか?
著者は中国はやばい と 各章で語る。 石油はなくなれば石炭あるし、半導体禁輸されてもファーウェイ復活したし、 中国は大丈夫な気もするのだが・・・・
以下 備忘録
エネルギー:石油・天然ガス アメリカ以外は需要と供給が分断される。供給源がない国は困るだろう。石油が採れる国
コロンビア・ペルー・トリニダードトバコ・ブラジル(資本が必要)・オーストラリア、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、北欧、北アフリカ、ロシア、ペルシャ湾岸 それ以外の国はエネルギー不足への対応が必須
これらの国が石炭を使いだし、温暖化を早めてしまうかもしれない
資源:中国が最大の輸入国、消費国、加工国。ここが没落するとどうなるか?
鉄:中国いなくても問題なし
アルミ:ボーキサイトはあるが、精錬用電力不足の国は困る
銅:中国いなくてもチリとペルーがいる
コバルト:コンゴ次第 充電池の重要材料
リチウム:オーストラリア、チリ、アルゼンチンがいるが 加工の8割は中国
銀:中国以外でも対応可能
金:品質表示の刻印はスイスとアラブ首長国連邦
鉛:リサイクルで可能
モリブデン:装甲車や銃身に使用。中国の支配はない
白金族:南アフリカ、次はロシア
レアアース:精製プロセスは大量廃棄物が残り中国(9割)以外誰もやらない
中国の輸出規制後 バックアップ対応済み
ニッケル:インドネシア、フィリピン、カナダ、オーストラリアで生産
シリコン:高品質石英はノースカロライナ
ウラン:アメリカ 中国はある 日本 フランス 何とかする?
亜鉛:リサイクル可能
製造業:ジャストインタイムが使えない
アジア:少子高齢化と貿易制限で規模の経済が崩壊。中国は世界の工場でありながら現状でも輸入だのみ。中国が没落すると東南アジア・インドが浮上するかも
ヨーロッパ:少子高齢化で内需弱い。原材料はアフリカ等からの輸入に頼る。ドイツ中心のシステムは崩壊し、北欧、フランス中心になる
北米:内需あり、資源在り、安泰。中南米も取り込むか?アルゼンチンが浮上?
農業:貿易制限で最大の打撃。飢餓の再来、モノカルチャーから混合作付への移行
小麦の栽培が衰退したのち復活。食肉は贅沢品に
大型農機:アメリカ・フランス・ブラジルが供給
小型農機:ロシア・ウクライナが困る
窒化肥料:東アジア、中央、サハラ以南のアフリカが困る。中国も?
リン酸肥料:中国、モロッコ、アメリカ、ロシアが供給国
カリ肥料:ヨルダン、イスラエル、ドイツ、ロシア、ベラルーシ、カナダが供給国
食料輸出可能国:安心なのはフランス、アメリカ、カナダ だけ?
食料輸入国 比較的安心: チリ・コロンビア、エクアドル、アイスランド、インドネシア、マレーシア、メキシコ、ノルウェー、ペルー、フィリピン、ポルトガル、シンガポール、イギリス、 &日本?
食糧輸入国 問題あり:
ロシア影響:モンゴル、タジキスタン、トルクメニスタン、キルギス、ウズベキスタン
フランス影響:ベルギー、スイス、モロッコ、チュニジア、アルジェリア、ガボン、コンゴ、チャド
インド影響:バングラディシュ
ナイジェリア影響:赤道ギニア、カメルーン、チャド、二ジュール、ブルキナファソ、ガーナ、トーゴ、ペナン
トルコ影響:アゼルバイジャン、ジョージア、ギリシャ、イラク、イスラエル、レバノン、シリア
アメリカ影響:中南米諸国(キューバ、ベネズエラ、コロンビアも含む)
日本とイギリスは韓国とアイルランドに影響する?
食料飢餓国:アフガニスタン、キューバ、北朝鮮、イラン、ベネズエラ、イエメン、シリア、リビア、ジンバブエ、ホンジュラス、グアテマラ、ラオス、トルクメニスタン、イラク、スーダン、南スーダン、二ジュール、マリ、そして中国??
飼料用:トウモロコシが減り大豆が増える
米:リン肥料と水の供給が問題 -
Posted by ブクログ
軍隊こそトップダウンの典型であったはずなのに、それだけでは勝てなくなった。だから戦い方を変えるのだ。
これだけでも時代が大きく変わったと言わざるを得ない。
軍隊の場合の大目的は、最小の犠牲で戦争に勝つこと。
トップダウンの作戦だけでは、この目的が達成できなくなっているのだ。
確実に現場での戦闘が複雑化しており、遠く離れた本部からの指示だけでは限界なのだ。
トップの間違った指示で犠牲になるのはいつも現場だ。
だからこそ現場も慎重になる。
戦争に負けてしまうのであれば、戦略・戦術を変えていくしかない。
それは本部であれ、現場であれ思いは同じ事だ
実際にはどうすればよいか。
本書では、今までのトップダウン方式だけでなく、ネットワーク型組織を重ね合わせたハイブリッド版を提唱している。
これはこれで当然だ。
完全に現場だけに権限委譲を計るのではなく、今までの組織を維持したまま横連携を図れということだ。
もちろん言葉で語るのは簡単だが、実際にどうやってそれを実現するのか。
それが一番難しいのだ。
これらハイブリッドを実現するための仕組みを構築していった事例の数々を本書では紹介している。
会社でもこれら取り組みはそれなりにやっていて、分かりやすい所で言えば、定例の全員集会での情報共有や、メンバーに対し他部署の兼任辞令を出すなどだ。
これら一つ一つもその方法論であるが、実際にはなかなか機能しないのが現実だ。
どうしても自分自身の保身が先に立ってしまい、組織としての大目的を優先しなくなってしまう。
最近は「心理的安全性」の言葉も一般化したが、ここでのベースもこの心理的安全性が担保されることが前提である。
お互いの信頼関係は心理的安全性あればこそであるが、その状態が確約されなければ、誰が自分を犠牲にしてまで越境するだろうか。
そしてさらに必要なのは大目的だ。
軍隊では分かりやすいが、会社で言えばミッション・ビジョンだろうか。
結局勝たなければ意味がないのだから、全員で協力していくしかない。
そして仲間を信頼するしかない。例え隣の部署であっても。
縦割り組織では、部門間の意地の張り合いで一体誰と戦っているのか分からなくなる時があった。
まずはその状態を解消しなければならない。
組織間の権力闘争は本当にくだらない。
トップの保身も本当にくらだらない。
全員が自己を捨てて、チームのために、勝負に勝つために戦うという気持ちにならなければいけない。
これが実は本当に難しい。
しかし勝つためには絶対に必要なことなのだ。
そのことをまずは全員と共有することから始めるしかないのである。
(2022/6/25) -
Posted by ブクログ
読むのに時間がかかった。
バイデン大統領が昔妻子を亡くしていたことは知っていたが、さらに息子さんまで病で亡くしていたとは。
副大統領という立場で、ウクライナ問題(当時からあった!)やイラク問題など常に緊張と決断を迫られる任務をこなしながら、膠芽腫と闘う息子や家族を支え、さらに期待される大統領選挙への出馬を検討するなんて、時間と体力と頭脳がいくらあっても足りない。
公職に就いていなければ息子や家族を優先したり、悲しみに浸ったりできるだろうに。それを思うとずしりと気持ちが重くなった。
バイデン家に限らず、アメリカでは家族が何よりも大事だという価値観なのかな。
ボーの闘病に両親や妻、子供はもちろん兄弟や従兄弟、叔父叔母などもかかわっていた。
弔辞を読んだのも父バイデン大統領、弟、妹、オバマ元大統領。
それぞれが家族みんなとボーの愛情あふれるつながりについて語っていたのが印象的だった。
日本の家族とは違う、バイデン家の結束と、それを公にする文化の違いが心に残った。