河邉徹のレビュー一覧
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【読んだきっかけ】
河邉徹さんの小説5作目
【心に残った要素】
タイトル『蛍と月の真ん中で』と、カメラマンを目指す主人公·匠海の撮る写真。
自然の刹那と一瞬の人の心を捉える。
瞬間という儚さに温度を与えてゆく。じんわりする。温かい後味がたまらない。
実在する地名を用いたり、辰野の人たちの細やかな描写があったりする今作は、これまでの作品と同じく人生の苦楽に揺らぐ人の心を描きながら、これまでになかった要素・視覚的な色彩がはっきりと描かれていてフィクション小説なのにドキュメンタリー映画を見ているかのようなリアリティがある。
やりたいことよりも、やっておかしくないもの、たしかに。そうやって取捨選 -
Posted by ブクログ
ミュージシャンが書くミュージシャンの話。
著者のバンドの実話ではなく、(実体験も踏まえているだろうが)フィクションとして描いている。
SNSの時代にあって、急速に人気となっていくバンド。しかし、コロナの流行によりメジャーデビュー目前に翻弄されていく…
同時に二つの世界線が進んでいき、構成が工夫されていて、おもしろかった。
表の世界、裏の世界、効率と非効率、安定と不安定…
様々な対比に共感した。
コロナはもちろん、いろんな当たり前が変わっていく中でも、自分は何を大切にしたいか考えたいなと思った。
エラーコインのように、表も裏も同じひとつの世界だ。
音楽業界の裏側も興味深かった。 -
Posted by ブクログ
WEAVERが好きなので、メンバーの河邉さんが書いた小説と聞いて、ミーハー気分で買ってみました。
結果、そんなの抜きにして面白かった。
というか、ぐさっときました。
コロナの混乱で、今まで以上に、Twitterなどの声が大きく強くなってる気がしてること、
自分が何かを感じたときに、それであってるかなと、いちいち検索してしまうこと、
小説とは違うけどそういった、自分で考えることとか感じることをサボってると思うことがずーーーっと続いてて、なんとなくやりすごしてたけど、それらをちゃんと考えてね、と言われた気分。
元の世界なんてないんですよね。
これが収束したときは、この数年で変わってしまった前と -
Posted by ブクログ
河邉徹さんの小説1作目
【心に残った要素】
眠った時に見る「夢」と人生における「夢」。
どちらも強く願えば叶うものであり、どちらも今が影響するし他人からの影響もある。
現実になるのは難しいかもしれないけど、人の手を借りたり時には人を助けたりしてみんなの「夢」を叶え合えたら素敵です。
【ここが好き!】
喜びだけの人生なんて、それは喜びを知らないのと同義。
なくして大切なことに気づくとか、今がどん底ならここから先は右肩上がりとか、辛い気持ちを知っているから私たちは明るい気分になれる。
河邉徹マジックかなって思う。どの小説も作詞した楽曲もこのことに気づかせてくれて前を向ける。
読んだらセットで聴 -
Posted by ブクログ
【読んだきっかけ】
河邉徹さんの小説4作目
【心に残った要素】
必要としてくれる存在を求め続けて、自分にはこれが必要ってものを探し続けてる。そうやって生きるために生きている。
バンドメンバーがそれぞれ担当楽器や歌を練習していってひとつに合わせるように、社会の一員としてただただ自分の得意なものを活かして好きに生きれたらいいな。周りと比べて気落ちすることだらけだけど所詮その人は別の楽器担当!と割り切れる思考でポジティブにいられたらいいなって。
【ここが好き!】
前作のSFと違いリアル過ぎるほどの展開で、気づくと物語に没頭していました。
YES/NOの選択を強いてくる着信のシーンに痛く共感しま -
Posted by ブクログ
かつてよく聴いた音楽から過去の記憶が鮮やかに蘇ったり、季節や事象から過去に聴いていた音楽が突然脳内再生されたり…。こんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。本書は、こうした「音楽の力」を温かく描く物語です。
著者の河邉徹さんは、バンドWEAVERのドラマーだった(2023年解散)そうで、本作は著者が作詞を担当し、言葉と音楽を紡ぐ世界に身を置いていたからこそ創り得た作品だと感じました。
6章立ての連作短編で、「◯◯ノ オト」という各章題のカタカナ表記から、柔らかく軽やかな印象を受け、少し不思議な関心の惹きつけを感じます。
最初は、中途半端な章の終わりと各章のつながりがよく分から