柳田『日本の祭』は実は既に持っている本に入っていたので、改めて買う必要はなく、単に間違ったのである。しかし、ほとんど覚えていないこれをこうして読み返してみた体験は得難いものだった。
たぶんこの書は柳田国男の代表作の一つと言ってよいだろう。比較的体系的に、日本の民俗的な祭について書かれており、いつもよ
...続きを読むり散漫さが少ないし、読みやすく、民俗学入門書としてもわりといいのではないだろうか。
一カ所印象的だったのは、近頃の日本人は正月の意味もわからずに「おめでとう」とばかり言っている、と柳田がぼやいているくだり。そういえば正月もまた神事であったかもしれない。しかし世は移ろうものであり、民俗的事象も、日本が西洋文化を浴びるように受け入れ、めざましく「発展」を遂げた現在から言うと、「神事」が完全に忘却されてしまっているとしても、それをただ受け入れるしかないのではないかと思う。
ぜんたいに柳田国男には啓蒙的スタンスがいつもあって、日本の伝統的「民俗」の痕跡について、もっと日本人はみんな学ばなければならない、としつこく言っている。ほとんど一人で「日本民俗学」を創始したような人だから、そういう感情を持っていても仕方がないというか、共感的に理解することもできるのだが、さすがに21世紀の現在の時点からは冷めた目で見つめざるを得ない。
それはそれとして、やはり日本の民俗事象の「起源」をさぐってみるのは知的冒険として、実に楽しいことは確かなのだが。