東野さやかのレビュー一覧
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セブンイレブンの店番をしていたルイーズは、強盗に入ってきた男の「素敵な声」と「緑の瞳」に惹かれて、気づけばレジの現金を渡しながら自分の電話番号を伝えていた。そしてあろうことか、数日後、その男から電話がかかってきたのだ。「やあ、こないだの夜、きみが勤めている店に強盗に入った者だけど、えっと、あのときの会話が頭から離れなくてさ、いま、話せる?」
恋に落ちる理由は、打算でも分析でもなく、ただ「この人だ」と思ったから。ルイーズの行動はときに無鉄砲に見えるが、その勇気の裏には、本質をとらえる直感力、逃げ出してきた故郷のママの教え、そして最強の愛嬌がある。見たもの感じたことすべてを「生きる知恵」に変えていけるのがルイーズという人。
対するデルは、寡黙でぶっきらぼう。紛れもなく犯罪者であるが、強盗の理由は「コミュニティ・カレッジの授業料を払うため」で、三音節以上の言葉を愛するというインテリ志向な一面を持つ。理知的に考えようとするけれど、綿密な(はずの)計画がうまくいかずにルイーズの咄嗟のひらめきに助けられることもしばしば。そんな彼も、ルイーズにとっては揺るがない「安心」の存在になっていく。
出会いの時点ではお互いのことを何も知らなかった二人が、疑ったり迷ったり、絶望しかかったりしながらも、少しずつ確かに愛を深めていく物語に心をつかまれた。
一人称「あたし」で綴られるルイーズの語りは、まるで海外ドラマの主人公みたいにチャーミング。脇役のちょっとした台詞に笑える一方、シリアスな展開では胸の塞がる思いもした。読み終わった今は、二人の道のりすべてが愛おしい。めそめそジメジメした逃避行でもなく、自暴自棄で退廃的なギャング生活でもなく、二人で一歩ずつ選んで決めながら進んできた人生の物語だったと思う。
こんなふうに「人生、どうにかなる」って思わせてくれる二人が好きだ。いや、ほんとは全然どうにもなってないのかもしれないけど、それでも「一緒なら」って思わせてくれる。 -
Posted by ブクログ
日常色々曇り空な状況の中、微妙な距離感のある実家に帰省しなければならなくなった主人公が、鬱々しながら実家に向かう道中で事件に巻き込まれる…のだけれど、もし彼女のメンタルが安定していたら(なおかつお金があったら)トラブルを避けられたのではないかと思ってしまう。
事件に巻き込まれたのはあくまでも不幸な偶然なのだけれど、私って不幸!って思いながら生きてると、本当に不幸になっちゃう言霊的なものってあるような気がするので、不運を呼びやすいっていうか、トラブルに見舞われやすいような。
まぁトラブル回避してたらそもそも事件が起きないのですが。
暴力沙汰には無縁で生きてきたであろう女子大生が血なまぐさい争いの最前線に立たされ、しかも外は豪雪で身動き取れず救援も望めない。
そんな四面楚歌の状態では山のような難局に陥るのは当然で、普通の人に過ぎない主人公がどうやって敵に打ち勝つのか、きっと読者は主人公と一緒にハラハラしながら結末へと向かっていくのが正解なんだとおもうんだけれども、残念ながら自分は主人公のどん臭さにイライラして手に握ったのは汗ではなく拳でした。
状況が一向に好転しない→ちょっとだけ好転したと思ったらまたピンチ→更なるピンチ→またちょっとだけ前進→ピンチで後退…的な展開が延々続くので、フラストレーション溜まるたまる。途中すっ飛ばして結末読んでしまおうかと思ったくらい。読書中何度「いい加減にしてー!」って本を壁ドンしそうになったことか。
結末が知りた過ぎて一気読みしてしまったので、まんまと作者の思い通りになってしまった気がします。
めちゃめちゃ物語に没入したので、面白かったと言うより、めっちゃ疲れたー(←褒めてる) -
Posted by ブクログ
30年前に息子を亡くした水族館の清掃員・トーヴァ、脱走癖のある天才ミズダコマーセラス、親に捨てられたダメ男・キャメロン、の心温まるお話。
途中までは、まあまあかなと思っていたら半分読んだあたりからやめられなくなりました。2日かけて読むつもりが、8時間で一気読みです。
マーセラスの脱走シーンが手に取るように想像できます。特にマーセラスVSキャメロンの格闘のところではププッと笑いました。
キャメロンのダメっぷりには中二病か、と突っ込みたくなるけど、憎めないキャラクター。2人+1匹の愛情ある距離感が素敵です。
読んでいて、おおっ!と嬉しくなったり、気を付けて!と言いたくなったり、イーサンのTシャツの件では、やっちゃったよ…と思ったり、と、完全に物語の世界に入り込みました。
マーセラスの寿命が1460日と書かれているので、ある程度は先が読める内容だけれど、なんだか良かった。とっても良かった。 -
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アメリカの作家「ジョン・ハート」の長篇ミステリ作品『ラスト・チャイルド〈上〉〈下〉(原題:The Last Child)』を読みました。
『川は静かに流れ』に続き、「ジョン・ハート」の作品です。
-----story-------------
早川書房創立65周年&ハヤカワ文庫40周年記念作品。
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞&英国推理作家協会賞最優秀賞スリラー賞受賞。
〈上〉
少年「ジョニー」の人生はある事件を境に一変した。
優しい両親と瓜二つのふたごの妹「アリッサ」と平穏に暮らす幸福の日々が、妹の誘拐によって突如失われたのだ。
その後まもなく父が謎の失踪を遂げ、母は薬物に溺れるように……。
少年の家族は完全に崩壊した。
だが彼はくじけない。ただひたすら家族の再生を信じ、親友と共に妹の行方を探し続ける。
〈下〉
「あの子を見つけた」大怪我を負った男は「ジョニー」に告げた。
「やつが戻ってくる。逃げろ」少年は全速力で駆けた。
男の正体は分からない。
だがきっと妹を発見したのだ。
「アリッサ」は生きているのだ。
「ジョニー」はそう確信する。
一方、刑事「ハント」は事件への関与が疑われる巨体の脱獄囚を追っていた。
この巨人の周辺からは、数々の死体が……。
ミステリ界の新帝王が放つ傑作長篇。
-----------------------
2009年(平成21年)に発表された「ジョン・ハート」の第3作で、同年の英国推理作家協会賞(イアン・フレミング・スチール・ダガー賞)や翌年のアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀長篇賞を受賞した作品です。
13歳の少年「ジョニー・メリモン」は、犯罪歴のある近隣の住人たちを日々監視していた… 彼は、一年前に誘拐された双子の妹「アリッサ」の行方を探しているのだ、、、
美しい少女だった「アリッサ」は何者かに連れ去られたが、警察はいまだ何の手がかりも発見できずにいた… 「ジョニー」の父親も、「アリッサ」が誘拐されてまもなく謎の失踪を遂げていた。
母「キャサリン」は、土地の有力者「ホロウェイ」の愛人になり薬物に溺れ薬漬けの毎日を送っており、「ジョニー」の家族は完全に崩壊していた… 「ジョニー」は学校を頻繁にさぼり、友だちの「ジャック」の手を借りつつ昼夜を問わない危険な調査にのめり込んだ… ただひたすら、妹の無事と家族の再生を願って――。
「キャサリン」に好意を抱き、「ジョニー」を気遣う刑事の「ハント」は、事件への関与が疑われる巨体の脱獄囚「リーヴァイ・フリーマントル」を追っていたが、この巨人の周辺からは、数々の死体が……。
面白かった! 久しぶりの感動作です… ひとつの事件ではなく、異なる複数の事件が絡んだ意外な真相が待ち受けているミステリとしても愉しめ、崩壊した家族を再生させようとする少年の成長を描いたヒューマンドラマとしても愉しめる作品でした、、、
誘拐された妹を果敢に探しながら、愛する母親を愛人と薬から取り返そうと、懸命に行動する「ジョニー」に気持ちをシンクロしながら読みました… 少年モノには弱いんですよねー
決してハッピーエンドではなく、主人公の「ジョニー」にも、刑事の「ハント」にも、過酷な現実が突き付けられる結末でしたが… それでも、救済や赦しが得られ、未来への灯を感じさせられ、家族の再生を期待できる深い余韻の残るエンディング、一度は友情が決裂した「ジョニー」と「ジャック」が仲直りする清々しい展開も良かった、、、
そして、「ジョニー」と「リーヴァイ・フリーマントル」との出会い、「メリモン家」と「フリーマントル家」の先々代の関係等、奇蹟的・運命的な出会いも巧く織り込んでありましたね… リアルな部分と神がかり的なファンタジックな部分のバランスが絶妙だったのも印象的でした。
700ページを超えるボリュームには感じられないくらい集中して一気に読みました… 今年イチバンの作品かな。 -
Posted by ブクログ
アメリカの作家「ジョン・ハート」の長篇ミステリ作品『ラスト・チャイルド〈上〉〈下〉(原題:The Last Child)』を読みました。
『川は静かに流れ』に続き、「ジョン・ハート」の作品です。
-----story-------------
早川書房創立65周年&ハヤカワ文庫40周年記念作品。
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞&英国推理作家協会賞最優秀賞スリラー賞受賞。
〈上〉
少年「ジョニー」の人生はある事件を境に一変した。
優しい両親と瓜二つのふたごの妹「アリッサ」と平穏に暮らす幸福の日々が、妹の誘拐によって突如失われたのだ。
その後まもなく父が謎の失踪を遂げ、母は薬物に溺れるように……。
少年の家族は完全に崩壊した。
だが彼はくじけない。ただひたすら家族の再生を信じ、親友と共に妹の行方を探し続ける。
〈下〉
「あの子を見つけた」大怪我を負った男は「ジョニー」に告げた。
「やつが戻ってくる。逃げろ」少年は全速力で駆けた。
男の正体は分からない。
だがきっと妹を発見したのだ。
「アリッサ」は生きているのだ。
「ジョニー」はそう確信する。
一方、刑事「ハント」は事件への関与が疑われる巨体の脱獄囚を追っていた。
この巨人の周辺からは、数々の死体が……。
ミステリ界の新帝王が放つ傑作長篇。
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2009年(平成21年)に発表された「ジョン・ハート」の第3作で、同年の英国推理作家協会賞(イアン・フレミング・スチール・ダガー賞)や翌年のアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀長篇賞を受賞した作品です。
13歳の少年「ジョニー・メリモン」は、犯罪歴のある近隣の住人たちを日々監視していた… 彼は、一年前に誘拐された双子の妹「アリッサ」の行方を探しているのだ、、、
美しい少女だった「アリッサ」は何者かに連れ去られたが、警察はいまだ何の手がかりも発見できずにいた… 「ジョニー」の父親も、「アリッサ」が誘拐されてまもなく謎の失踪を遂げていた。
母「キャサリン」は、土地の有力者「ホロウェイ」の愛人になり薬物に溺れ薬漬けの毎日を送っており、「ジョニー」の家族は完全に崩壊していた… 「ジョニー」は学校を頻繁にさぼり、友だちの「ジャック」の手を借りつつ昼夜を問わない危険な調査にのめり込んだ… ただひたすら、妹の無事と家族の再生を願って――。
「キャサリン」に好意を抱き、「ジョニー」を気遣う刑事の「ハント」は、事件への関与が疑われる巨体の脱獄囚「リーヴァイ・フリーマントル」を追っていたが、この巨人の周辺からは、数々の死体が……。
面白かった! 久しぶりの感動作です… ひとつの事件ではなく、異なる複数の事件が絡んだ意外な真相が待ち受けているミステリとしても愉しめ、崩壊した家族を再生させようとする少年の成長を描いたヒューマンドラマとしても愉しめる作品でした、、、
誘拐された妹を果敢に探しながら、愛する母親を愛人と薬から取り返そうと、懸命に行動する「ジョニー」に気持ちをシンクロしながら読みました… 少年モノには弱いんですよねー
決してハッピーエンドではなく、主人公の「ジョニー」にも、刑事の「ハント」にも、過酷な現実が突き付けられる結末でしたが… それでも、救済や赦しが得られ、未来への灯を感じさせられ、家族の再生を期待できる深い余韻の残るエンディング、一度は友情が決裂した「ジョニー」と「ジャック」が仲直りする清々しい展開も良かった、、、
そして、「ジョニー」と「リーヴァイ・フリーマントル」との出会い、「メリモン家」と「フリーマントル家」の先々代の関係等、奇蹟的・運命的な出会いも巧く織り込んでありましたね… リアルな部分と神がかり的なファンタジックな部分のバランスが絶妙だったのも印象的でした。
700ページを超えるボリュームには感じられないくらい集中して一気に読みました… 今年イチバンの作品かな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「夏の霜」ブレイク・クラウチ
人工知能モノ。最初は世界観が飲み込めなかったが、ゲームだとわかり、そこからは新しい人工知能の誕生にワクワクした。主人公が女性でレズビアンなのがイマドキ。でも子育てや夫婦?仲がうまくいかないところは普遍的。
主人公と一緒になってマックスに騙された。ブライアンを殺すところはゲームと一緒だったな。
“喉の奥に金属の味がする。”の絶望感が良かった。
AIに愛された人類はAIのようにされてしまうのか。
「エマージェンシー・スキン」N・K・ジェミシン
宇宙人モノ。はるか昔に分化した地球人類だが。
温度差がシュールで笑ってしまう。一大隠密プロジェクトのはずが、地球の人には筒抜けで、任務に気負っていた主人公がだんだん馬鹿らしくなっていく気持ちに同調できた。
与えられた環境と支配の声に疑問を持たずに言いなりになるなということなんだろうな。
「方舟」ベロニカ・ロス
終末モノとして、最後に残った人間の動向が面白い。植物学者。新種のランの発見。それまでの会話と父と母の記憶で、残るのではなく旅立とうと決心したのが良かったな。希望が生まれた瞬間。
「目的地に到着しました」エイモア・トールズ
デザイナーズベイビーモノ。
家族単位での個人のモノとして考えてたら国家が軍事的に介入していたというオチというか、設定。
自分が子供に望むように国家が国民に望んでいる。
IFを3つ見られたのが面白かったし、成長段階を分けていたのも面白かった。奥さんはこれから過渡期で変化前、自分は変化後。変化によってどうなるかわからない不安定さも良かった。
「最後の会話」ポール・トレンブイ
クローン人間像モノ。アンが、アンのホームビデオは何回も見たが最後は数回しか見てないということは、そこまで成長出来たものも数が少ないのかな、と考えた。記憶を引き継いでも、彼は彼であるが自分自身ではないという感覚が面白いな。
でもアンが必死になってクローンを作り出すのはわかってしまう。
「乱数ジェネレーター」アンディ・ウィアー
量子コンピューターモノ。
面白かった。カジノに限定しての攻防と最後の駆け引き。短いながらも緩急あって面白かった。さすが。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ久々ジョン・ハートの新作がよーやく回ってきた。
質量ともに読み応えバッチリ!軽く読み流す小説ではないけど、それなりに時間をかけてじっくり読む読書は最高の至福、その贅沢な時間を与えてくれる作品って意外と少なく、安定して供給してくれる作家はさらに少ない。
ジョンハートは貴重なその一人だということ。
主人公ギビーが少年から大人に変わる儀式の飛び込みシーンとその兄ジェイソンが刑務所から出所するシーンから物語は始まる。2人の兄ロバートはベトナム戦争で戦死、その影響で母はギビーを異常なまでの過保護に扱い、反抗的なジェイソンは毛嫌いされる。そんな家族にバランスを取ろうと苦心する父。
ギビーの青春譜が描かれていくのかと思いきや、ジェイソンに関わる不審な動きが徐々に物語に入り込み、刑務所にひそかに暮らす悪の大御所、変態シリアルキラー弁護士、出世欲にくらむ警察官などが絡み、ベトナム戦争終焉当時の病み混乱したアメリカの病みの部分を照らし出す。
それでも、さすがはジョンハート、少々残虐なシーンやこんなのも書くんか?と驚きのアクションシーンも経つつ、物語の落としどころは少年が大人になりゆく成長譚と家族愛の物語。涙を流して感動するような荒っぽさではなく、ジワジワシミジミ効いてくる感動が良い。
色々感動的な場面はあるが、ジェイソンの名前を聞いて即座に敬礼を返す兵士のシーン、主人公の親友の母が晩御飯を一緒に食べるよう促すシーン、最後あの岸壁から高飛び込むを決めるシーン(飛ぶはまさかの)は良かった。
次の翻訳が待ちきれない!ジョンハート、最高である。 -
Posted by ブクログ
1972年。舞台はノース・カロライナ。ヴェトナム帰還兵とその一家の物語。作者のジョン・ハートは1965年生まれだから、本書の背景の時代は、実は作家7歳の幼年期ということになる。翻って、読者のぼくはこの年、16歳。反戦のフォークソング、悲劇的で衝撃的なアメリカン・ニュー・シネマのショッキングなエンディングに、もろに曝されて育ったあの多感な時代。
だからこそ、というだけではないにせよ、この物語の時代背景を記憶に蘇らせながら、そこを通り抜けたアメリカの青春群像を生き生きと、現代に読み返し、想い出してゆくという読書行為は、何とも心にうずくものを抱えているような、妙に懐かしくも心の痛む、不安と緊張に満ちたものであった。
本書の主人公であるギビー(18歳)もまた、多感この上ない青年である。殺人課刑事の父の息子である彼のもとに、戦死した兄ロバートの双子の弟・ジェイソンが帰郷した。戦地で29人殺したという伝説を携えて。収容所での不審な収容期を終えて。
ジェイソンが帰還後、現地民虐殺の疑いで放り込まれていた州立刑務所には、一方でXという途方もない怪物がいて、事実上刑務所を支配しているという構図である。劇画的誇張が過ぎるようにも見受けられるが、刑務所幹部たち含め、彼の走狗である猟奇殺人者リースともども、物語の現代を横軸として綴る緊張が張り巡らされる。
ノースカロライナの田舎町に起こる凄惨な女性殺人事件と帰還兵、反社会組織のバイカー集団、血に飢えた殺人者と、彼を刑務所から操るX。そうした幾重にも絡み合った暴力の嵐が、青年ギビーの家族や周囲に吹き荒れる。まさしく凄まじいまでに。
読者だけが知らされる危険この上ない状況の中、巻き込まれ翻弄されるギビーの青春とと、その家族たち。兄、警察官である父、以上とも言える母、恋人、親友。一見、平和に見えていた家族やその周囲の人々を、ヴェトナムから持ち込まれた暴力の風が巻き込んでゆく。
ヴェトナムに起こった村民虐殺事件の真相を背景に、徐々に見えてくる構図、散乱した事実への落とし前の付け方が、なんともスリリングな読みどころである。この作家は骨太でしかも確かな書き手との印象がやはり強い。七作目の長編ということであるが、これだけで食べて行けるアメリカの出版環境に改めて驚かされる。じっくりゆっくり作品を作ることが許される環境なのだ。それこそがこうした力のこもった大作を生み出せる要因であるように思う。
何とも頼もしい作家による、確かな傑作であり、家族小説であり、青年の成長小説でもある。アメリカでしか成し得ないプロットでも、本書は良く成功しているように思う。 -
Posted by ブクログ
ずっと待ってた著者の新作。四年?五年?ぶり。待ってた甲斐があったすごく好みな作品。1972年のヴェトナム戦争時のアメリカ。家族の形が壊れた一家の物語。親と子、兄と弟。犯罪者として刑務所にいる兄と善良な弟。警察官の父。離れていく兄と近づこうとする弟。この二人の関係性とそれぞれを思う感情がいい。孤独、不安、恐怖を感じながらも兄を追うこと。自分の世界から遠ざけようとする兄。そこに隠されているもの、隠されている弟への思い。壊れている家族でもどこかで繋がっているように見えるこういう作品が大好きで本当に面白い。何度も読み返すことになりそうなくらいたくさん感情を揺さぶられた。
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Posted by ブクログ
ネタバレ話題の「パエリア」を読んでみた。
いやオモロかったが、ハラハラドキドキしっぱなしで心臓に悪いことこの上なし。そのハラハラ感も、主人公の行動がフラグ立ててるのから、想像の横から攻めてくるのから、そやろけどそこまでやらんでも…から、次々に繰り出してくるもんやから、原題予定だった「NoRest」そのもの。
前半は、腹芸のジワジワで心拍あがって、後半は絶望的な戦いを挑む主人公らにドキドキで心拍あがって、少ない登場人物、狭い行動範囲、短い時間という制約の中で、よーこんだけ詰め込んだなぁ…と感心。
ラストあたりでは、「もうエエて、もうエエ加減助けてあげてよ」と少々食傷気味になるまで、執拗な展開を仕掛けてくるんだが、読み終わるとそれもまた良かったなぁと思える。
作者はスティーブン・キングを意識しているようだが、思い出すのは、そういや「クージョ」が本作に緊迫感だったかなぁ。
初期キング作、特にサスペンス系が好きな人にはマッチする作風だと思う。
映像化されると、ちょっとひいてしまいそうなシーンもあるので映画は観に行かないだろうなぁ。