あらすじ
十四歳の一人息子ジェイコブが同級生の殺人容疑で逮捕された。地区検事補アンディは息子のため奮闘するが、次第に自身の人生も根底からぐらつき……。有力紙誌年間ベストを席巻した傑作ミステリ
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Posted by ブクログ
うーん、これぞイヤミス!全然スッキリしない!ジェイコブも嫌だけど親父が一番嫌だ。守るってこういうことか?ローリーのしたことも人としては許せないけど、親としてはまだ共感できる。ミステリーの面白さは堪能しましたが、後味が悪すぎるー。
Posted by ブクログ
2003年、『ボストン、沈黙の街』。2007年、『ボストン・シャドウ』。そして2012年、本作。元地区検事補であるランディの本は10年間でたったの3作である。いずれも邦訳され、いずれも好評を期してきた作家であるが、法律家でありながら、そのことを匂わせる作家ではなかったランディのこれまでの二作は、純粋なミステリであり、警察小説であった。と同時に家族の愛情や葛藤を題材にしたヒューマンな小説であったように思う。
本書は、ようやく作家の本来の職業であった法律家の側面を前面に出したリーガル・サスペンスである。しかし携帯やジャンルがどうあれ、この作家が、家族小説、さらに煎じ詰めて言うならば父と息子の物語であるところに徹底してこだわった作品作りに終始してきたことにいい加減ぼくも気づかざるを得なくなった。
本作は息子であるジェイコブにかかった疑いを晴らすことに全力を尽くしたいが、事件からは血縁者であるゆえに遠ざけられてしまった元主席検事の命懸けのあがきを描いたものである。なぜか、権力に飢えた後輩検察官に主人公が取られている尋問調書で物語はスタートする。主たる物語の後に、この尋問がなされていることは明らかになるものの、どのような結末を迎えるものかは、当然ながらわからない。ただその異質な尋問調書によって、物語がどの方向に向かうのか、いろいろ想像の翼を羽ばたかせることはできる。ウイリアム・ランディの作品には丁寧な書きっぷりと、地道ながらも独特な作家の才というものを感じるので、忘れがたい印象を持っているのだが、この伏線の張り方などは、実に印象的である。
ある少年が公園で殺害されたことから、物語は始まり、やがて捜査の手が息子に伸びてゆく。寡黙で何を考えているかわからない息子に、妻は動揺するが、父である自分は息子を信じて譲らない。自らの疑いとともに信念を育みつつも、未来への不安に怯え、孤立して破壊されてゆく生活そのものに打ちのめされる。妻の変化は激しく、夫婦間には極度な隔たりが生まれてゆく。ミステリというよりも事件がもたらした家族の物語としての色が強いが、犯罪そのものは一家の住む街で、毒々しい存在感を示し続ける。
最初から疑いを持っていた前科持ちの小児性愛者の存在が気になる中、主人公の検事補にも実は秘密がある。彼はいわゆる殺人者の家系に生まれた突然変異的な法律家であったのだ。祖父や曽祖父が殺人者であり、父が今獄中にいるという環境の中で、殺人者の血の遺伝を疑う妻と、否定する自分との間の心理的葛藤が凄まじい。本作品の骨格を成すのがこの殺人遺伝子というテーマなのだが、遺伝子科学と、父が息子に向ける全面的信頼という情感の部分との、痛いまでの葛藤が全編をよぎる、重厚な一作である。
ヒューマンでありながら容赦ない展開と、暗い予感、その向こうに見えてくるのは、光か影か、最後の最後のツイストぶりが見事に決まるところ、ランディという作家の健在ぶりに呻きたくなる一冊であった。
Posted by ブクログ
かつて『ボストン、沈黙の街』を読んで良かった印象があり、ずっと気になっていた一作。
息子ジェイコブの通う学校への通学路途中で、息子の同級生の刺殺体が発見された。
地区検事補のアンディは、利益相反(事件の関係者に近い身として解決への方向性を歪める可能性がある)の可能性を頭から追いやり、犯人逮捕に心血を注ぐ。
頭にちらつくのはジェイコブが手を下した可能性、そして妻にも隠してきた犯罪者の血筋。。。
思いもよらない、わりとがっつり目のリーガルサスペンス。
スコット・トゥローやジョン・グリジャムなんかとも比較され、彼らの最高傑作にも劣らないと評されたとの模様。
いくらなんでもそれは言い過ぎとは思うけれども、久しぶりに無数の「異議あり」が飛び交う本格的な法廷劇を読んだ気がする。
著者は元検事補だったが三作目にして、満を持して出自の色を出してきたとのこと。
この手の法廷劇は、検察側が引き出した強固な証拠を弁護側がするっと弱体化させる巧みさ(逆もしかり)が読みどころだが、途中で挟まれる「異議あり」がほんと曲者。
異議の根拠がよくわからないものが多いし、根拠が示されないまま即座に却下されたり、認められたりするものもあり、その部分についてはうーん、これはいつになっても頭の回転追いつかないなと。
話の主眼は息子を無条件に信じる親心、夫婦間で意識の向かうベクトルのちょっとした差から生じる大きなひずみの悲劇。
「アルゼンチン」の章で緩む緊張感と束の間の家族の絆の修復にぐっとくるものはあったが、そこからの落差には虚しさしか残らない。
『メッセージ・イン・ア・ボトル』の原著者ニコラス・スパークスは愛の物語だと言ったそうだけれど、これは愛は届かないとの不条理を受け止める類のものなのか。
リーガルミステリとしてはそれなりに良い緊迫感だったと思うが、人間ドラマとしては心苦しい一作だった。
Posted by ブクログ
マサチューセッツ州の地区検事補アンディ・バーバーの日常はある日少年が公園で何者かに殺された事件によって一変する。被害者の同級生だった、彼の十四歳の息子ジェイコブが、犯人と疑われて逮捕されたのだ。息子は無罪だ。アンディはジェイコブを救うために闘うものの、一家は徐々に孤立し、疲弊していく。さらに、アンディがそれまでずっと隠しとおしてきたある暗い過去が、裁判に影を落としはじめる―倫理と愛情のはざまを鋭く突く、巧みな語りと臨場感あふれる描写で全米の絶賛を浴びた傑作サスペンス登場。
著者の作品を読むのは三作目。正統派リーガル・サスペンスなのだが、見事にやられました。お勧めです。
Posted by ブクログ
結末にきてなにもかも腑に落ちた。ジェイコブに関する描写が少ないのはやっぱり主人公が目をそむけているわけで、「信じる」と言い切り続ける心情が哀れ。いつごろからことの真相に気がついていたんだろう、その辺がちゃんと読めてないんだけど、読み返す気が起こらないんだな、これが。子をもつ親としては。