あらすじ
十四歳の一人息子ジェイコブが同級生の殺人容疑で逮捕された。地区検事補アンディは息子のため奮闘するが、次第に自身の人生も根底からぐらつき……。有力紙誌年間ベストを席巻した傑作ミステリ
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Posted by ブクログ
かつて『ボストン、沈黙の街』を読んで良かった印象があり、ずっと気になっていた一作。
息子ジェイコブの通う学校への通学路途中で、息子の同級生の刺殺体が発見された。
地区検事補のアンディは、利益相反(事件の関係者に近い身として解決への方向性を歪める可能性がある)の可能性を頭から追いやり、犯人逮捕に心血を注ぐ。
頭にちらつくのはジェイコブが手を下した可能性、そして妻にも隠してきた犯罪者の血筋。。。
思いもよらない、わりとがっつり目のリーガルサスペンス。
スコット・トゥローやジョン・グリジャムなんかとも比較され、彼らの最高傑作にも劣らないと評されたとの模様。
いくらなんでもそれは言い過ぎとは思うけれども、久しぶりに無数の「異議あり」が飛び交う本格的な法廷劇を読んだ気がする。
著者は元検事補だったが三作目にして、満を持して出自の色を出してきたとのこと。
この手の法廷劇は、検察側が引き出した強固な証拠を弁護側がするっと弱体化させる巧みさ(逆もしかり)が読みどころだが、途中で挟まれる「異議あり」がほんと曲者。
異議の根拠がよくわからないものが多いし、根拠が示されないまま即座に却下されたり、認められたりするものもあり、その部分についてはうーん、これはいつになっても頭の回転追いつかないなと。
話の主眼は息子を無条件に信じる親心、夫婦間で意識の向かうベクトルのちょっとした差から生じる大きなひずみの悲劇。
「アルゼンチン」の章で緩む緊張感と束の間の家族の絆の修復にぐっとくるものはあったが、そこからの落差には虚しさしか残らない。
『メッセージ・イン・ア・ボトル』の原著者ニコラス・スパークスは愛の物語だと言ったそうだけれど、これは愛は届かないとの不条理を受け止める類のものなのか。
リーガルミステリとしてはそれなりに良い緊迫感だったと思うが、人間ドラマとしては心苦しい一作だった。