東野さやかのレビュー一覧
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アイアンマウンテンの奥深く、朽ちかけた少年保護施設に兄弟はいた。
殺伐とした子供社会の中では弱い者は食い荒らされるだけ、兄マイケルは牙を磨き、弟ジュリアンは空想の世界へ逃避した。
時は経ち兄はギャングの凄腕の殺し屋として組織に君臨、弟は養子に貰われた後、一部で熱狂的な支持を受ける絵本作家となった
兄は恋人の妊娠を機に組織からの脱退を申し入れるが受け入れられず、ある時恋人の働くレストランが爆破、銃撃を受け多数の死傷者を出す。
逃亡する最中、組織のボスから弟を殺すと脅迫を受ける。
弟とは20数年会っていない。でも俺にはいつまでも大事な弟なんだ・・・。
上巻より
下巻では
マイケルはジュリアンを養子として引き取った上院議員夫妻の元を訪ねるが、ジュリアンは何らかの理由で精神を病みまともな会話が出来なくなっていた。彼を愛する養母と、冷淡な養父。敷地にある池からは次々に死体が発見される。それはかつて、アイアンマウンテンでジュリアンに酷い心の傷を付けた少年たちの変わり果てた姿だった。この地で一体何が起こっているのか・・・・。
主人公に殺し屋を持って来ているのに、ピカレスクではなくマイケルにきっちり感情移入させる所にジョンハートの手腕を感じた。マイケルはプロの殺し屋で、必要と思った時には躊躇しないし、感情に流される事はない。けれども、恋人へは持った事の無い暖かい家庭を夢想し限りなく優しく、弟は自分が守らなければならいという責任感に溢れている。ある意味都合のよいヒーローと言えるかもしれないけれど、男としては憧れる男性像だと思う。
貧困の中で見捨てられた兄弟。彼らの生きる道は選んだものではなく押し付けられたものだった。どんな罪を犯しても生き延びねばならなかった少年たち。持っていたのはすり減らした心と、いつか満たされるのではないかと渇望する空っぽの愛情の壺だけだった・・・。
とても心に残る話だった。 -
Posted by ブクログ
アイアンマウンテンの奥深く、朽ちかけた少年保護施設に兄弟はいた。
殺伐とした子供社会の中では弱い者は食い荒らされるだけ、兄は牙を磨き、弟は空想の世界へ逃避した。
時は経ち兄はギャングの凄腕の殺し屋として組織に君臨、弟は養子に貰われた後、一部で熱狂的な支持を受ける絵本作家となった。
兄は恋人の妊娠を機に組織からの脱退を申し入れるが受け入れられず、ある時恋人の働くレストランが爆破、銃撃を受け多数の死傷者を出す。
逃亡する最中、組織のボスから弟を殺すと脅迫を受ける。
弟とは20数年会っていない。でも俺にはいつまでも大事な弟なんだ・・・。
ジョンハートさんの4作目。ようやっと入手しました。
まだ上巻なので何とも言えませんが現段階ではラストチャイルドに迫る名作の予感です。
少年達は自分の人生を手に入れようともがいていますが、選びようも無かった少年時代に未だに縛られて先に進めなくなっています。
兄は暴力のエリートとして育てられ組織から抜ける事が出来ない、弟は弱い心を抱えていつか見つかるのではないかと、救いの扉をノックし続けるので有りました。
下巻へ続く -
Posted by ブクログ
妹アリッサの誘拐事件から、父親の失踪、母親の薬物依存、地元名士の母親への執着等で、ジョニー少年は最低辺の生活を強いられる。
そんな中でもジョニーはあきらめる事無く一人で妹を探し続ける。妹さえ見つかれば家庭が元通りになると信じながら・・・。
話はジョニーの視点と、ジョニーの理解者で、母親キャサリンへ淡い恋心を抱いているハント刑事の2つの視点から話が進んでいく。
ジョニーはひたすら自分一人で事件を解決すべく動くが、協力を仰ぐのは唯一親友のジャックだけ。大人に反抗するというよりも、自分だけを頼みにして孤独な戦いをしていきます。
ただ、ハントの存在が無ければ決してジョニーも先へは進めない、このタフで心優しい正義漢は、自分の立場も顧みずにひたすらジョニー、キャサリンの為に息の詰まるような人間関係を掻き分けて突進していく。何も信じられないこの話の中で唯一の光といってもいい存在で、病み切ったアメリカの中でこうありたいと思う理想の男像のような気がする。けれどアメリカ人に知り合いいないので、心の中のアメリカーナに聞いてみました。
内容的には是非読んで確認して貰いたいけれども、この小説はとにかく面白いです。間延びする瞬間が全くなく、ひたすら目が離せない状態で最後まで進みます。途中妹失踪の真相の部分など集中しすぎて変な声が出てしまい家族から不審がられました。
優秀なバイプレイヤーの黒人の大男も神託を授ける堂々たる役割を果たし、話に神秘性を与えるための重要存在として登場します。
盛り沢山の話でありながら印象的にはとてもわかりやすく感情移入して読めます。訳がいいのかもしれませんが、登場人物の行動がとても人間的です。
最後のジョニーとジャックの友情に一番胸をえぐられました。なんでえぐられたかって?それは読んで確認すること!お兄さんとの約束だ! -
Posted by ブクログ
ネタバレ前作で驚天動地のラストを提示したが故に、次で「何を魅せる?」のか
が非常に心配された続編を文庫にて。
・・・いやぁ、見事。本当に見事としか言いようの無いすばらしい展開。
文庫を手に取るとそのボリュームにかなりびっくりするのだが、
とにかく先が気になってしょうがない。約2日で完読したのだが、余韻が
全く消えない。
ドラマ化を前提に考えるのなら、シーズン2はバッチリ、という感じか?
(しかし、シーズン1が前作1冊を前提にしてるかどうかは知らない^^;)
翻訳モノでここまで夢中になったのは、クライトンのジュラシック・パ
ークシリーズ以来。このシリーズは三部作らしいが、もうすぐにでも次
が読みたい!もちろんドラマも超楽しみ。原作先読みの僕でもハッキリ
そう言えます、うん。 -
Posted by ブクログ
何の予備知識無しに読んだが、非常に面白かった。アイダホ州ウェイワード・パインズという片田舎の町の川沿いで全身傷付いた状態で意識を回復したシークレット・サービス特別捜査官・イーサン・バーク。変わった雰囲気のミステリーと思いながら読み進むと300ページ過ぎから予想もしない驚愕の展開が…まさか、そう来るとは思わなかった。
リチャード・マシスンの『地球最後の男』のような、著者あとがきと解説に記述されているようにディビッド・リンチのカルト映画『ツイン・ピークス』のような趣きを持つ傑作。
解説によると本書は三部作の第一作で、第二作目は既に刊行されており、この夏には第三作が刊行予定とのこと。また、アメリカのFOXテレビでドラマ化が決定しているようだ。第二作、第三作の翻訳が待ち遠しい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ自然豊かな田舎町に閉じ込められた男の話。不運な展開に翻弄されつつ、驚異的なバイタリティで脱出を試みる。ジャンル的には、SF、ホラー、ミステリー、冒険、家族愛などいろんな要素があった。
町の風景描写や追っ手と戦う場面の迫力は情景が目に見えるようで、まるでハリウッド映画を観ているようだった。狂った大富豪の酔狂でできた町なのかと思いきや、後半、壮大な町の秘密が明らかになってくる。驚くべきSF的展開にページを繰る手が早くなり、本の分厚さも気にならず読み終わってしまった。文句なく面白いです。
洋の東西を問わず、大風呂敷を広げたストーリーは得てしてエンディングが物足りない感じに終わりがち。でも、この本は綺麗な大円団が決まっていた気がする。その辺も映画的だと思ったゆえんかな。 -
Posted by ブクログ
ジョン・ハートの『ラスト・チャイルド』での第一印象は、ずばり、読みやすい、面白いの二点であった。『アイアン・ハウス』を手に取って、読み始めたら止まらないそのページターナーぶりに、改めてそのときの感触を思い出した。三年弱ほどこの作家の本を手にとっていなかったのだということに、改めて気づく。
この物語の主人公は、殺し屋である。しかも引退しようとしている殺し屋である。しかも組織専属の殺し屋。彼を拾ってくれた親父さんの逝去、彼の愛した女性に子供ができたこと、これにてやばい殺し屋稼業から引退。まあ、わからないではない話である。しかし親父さんの実の息子、ひねて、出来の悪い息子である。実の息子以上に親父さんが組織を任せたがっていた殺し屋の存在が疎ましい。妬み、嫉みでいっぱいの息子は、若き殺し屋の門出を許さぬばかりか、親父さんという鎖から放たれて一気呵成に殺し屋への憎悪を爆発させるのだ。
街角が轟音をあげて炸裂するシーンにて、活劇はスタートする。殺し屋は愛する女性を救い出し、炎と血と消炎を置き去りにしながら逃げる。まるで激画の世界のように胸のすくアクション。完全なる力の備わった銃撃の美学。ジョン・ハートの他の作品を読んでいる人々はまずこの過激で大胆なストーリー展開と、冒険要素の連続に驚き呆れるに違いない。
しかしそれだけなら凡百のアクション小説に終わりかねないところ、ジョン・ハートはさらなる仕掛けを用意して、作品世界に暗い奥行を与えてくれる。それは殺し屋の弟の存在である。弟は、兄とともにアイアン・ハウスという奇妙で曰くありげな施設に育ち、そこで過酷な暴力に苛まれ精神を病んでしまった。兄は弟を守るが、守り切れない。そこに現れたのが、里子を求めて訪ねてくる美貌の女性である。
彼女は、兄を求めるが、兄は弟を彼女の救いの掌の上に差し出すのだ。そんな過去を背負った殺し屋は、弟の周囲で連続殺人が起こっていることを知る。精神をやんだ弟が、シリアル・キラーとして失踪したのではないか? そんな状況が彼を捉え、なおかつ殺し屋の兄は追われ続け、愛する人を守らねばならない。これぞ四面楚歌の出口なし。
あまりのスピーディな展開と派手なアクションの末、抱えてきた過去の暗闇の深みに見えるゴシック世界のサイコ風味、劇画的との謗りを受けかけないほどサービス精神に富んだノンストップ娯楽小説世界がここに確実にあることを請け合おう。これがジョン・ハートという作家の入口とは言えないまでも、この作家のエンターテイナーぶりに酔って頂きたい掛け値なしの一篇である。 -
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ジョン・ハートの『ラスト・チャイルド』での第一印象は、ずばり、読みやすい、面白いの二点であった。『アイアン・ハウス』を手に取って、読み始めたら止まらないそのページターナーぶりに、改めてそのときの感触を思い出した。三年弱ほどこの作家の本を手にとっていなかったのだということに、改めて気づく。
この物語の主人公は、殺し屋である。しかも引退しようとしている殺し屋である。しかも組織専属の殺し屋。彼を拾ってくれた親父さんの逝去、彼の愛した女性に子供ができたこと、これにてやばい殺し屋稼業から引退。まあ、わからないではない話である。しかし親父さんの実の息子、ひねて、出来の悪い息子である。実の息子以上に親父さんが組織を任せたがっていた殺し屋の存在が疎ましい。妬み、嫉みでいっぱいの息子は、若き殺し屋の門出を許さぬばかりか、親父さんという鎖から放たれて一気呵成に殺し屋への憎悪を爆発させるのだ。
街角が轟音をあげて炸裂するシーンにて、活劇はスタートする。殺し屋は愛する女性を救い出し、炎と血と消炎を置き去りにしながら逃げる。まるで激画の世界のように胸のすくアクション。完全なる力の備わった銃撃の美学。ジョン・ハートの他の作品を読んでいる人々はまずこの過激で大胆なストーリー展開と、冒険要素の連続に驚き呆れるに違いない。
しかしそれだけなら凡百のアクション小説に終わりかねないところ、ジョン・ハートはさらなる仕掛けを用意して、作品世界に暗い奥行を与えてくれる。それは殺し屋の弟の存在である。弟は、兄とともにアイアン・ハウスという奇妙で曰くありげな施設に育ち、そこで過酷な暴力に苛まれ精神を病んでしまった。兄は弟を守るが、守り切れない。そこに現れたのが、里子を求めて訪ねてくる美貌の女性である。
彼女は、兄を求めるが、兄は弟を彼女の救いの掌の上に差し出すのだ。そんな過去を背負った殺し屋は、弟の周囲で連続殺人が起こっていることを知る。精神をやんだ弟が、シリアル・キラーとして失踪したのではないか? そんな状況が彼を捉え、なおかつ殺し屋の兄は追われ続け、愛する人を守らねばならない。これぞ四面楚歌の出口なし。
あまりのスピーディな展開と派手なアクションの末、抱えてきた過去の暗闇の深みに見えるゴシック世界のサイコ風味、劇画的との謗りを受けかけないほどサービス精神に富んだノンストップ娯楽小説世界がここに確実にあることを請け合おう。これがジョン・ハートという作家の入口とは言えないまでも、この作家のエンターテイナーぶりに酔って頂きたい掛け値なしの一篇である。 -
Posted by ブクログ
2003年、『ボストン、沈黙の街』。2007年、『ボストン・シャドウ』。そして2012年、本作。元地区検事補であるランディの本は10年間でたったの3作である。いずれも邦訳され、いずれも好評を期してきた作家であるが、法律家でありながら、そのことを匂わせる作家ではなかったランディのこれまでの二作は、純粋なミステリであり、警察小説であった。と同時に家族の愛情や葛藤を題材にしたヒューマンな小説であったように思う。
本書は、ようやく作家の本来の職業であった法律家の側面を前面に出したリーガル・サスペンスである。しかし携帯やジャンルがどうあれ、この作家が、家族小説、さらに煎じ詰めて言うならば父と息子の物語であるところに徹底してこだわった作品作りに終始してきたことにいい加減ぼくも気づかざるを得なくなった。
本作は息子であるジェイコブにかかった疑いを晴らすことに全力を尽くしたいが、事件からは血縁者であるゆえに遠ざけられてしまった元主席検事の命懸けのあがきを描いたものである。なぜか、権力に飢えた後輩検察官に主人公が取られている尋問調書で物語はスタートする。主たる物語の後に、この尋問がなされていることは明らかになるものの、どのような結末を迎えるものかは、当然ながらわからない。ただその異質な尋問調書によって、物語がどの方向に向かうのか、いろいろ想像の翼を羽ばたかせることはできる。ウイリアム・ランディの作品には丁寧な書きっぷりと、地道ながらも独特な作家の才というものを感じるので、忘れがたい印象を持っているのだが、この伏線の張り方などは、実に印象的である。
ある少年が公園で殺害されたことから、物語は始まり、やがて捜査の手が息子に伸びてゆく。寡黙で何を考えているかわからない息子に、妻は動揺するが、父である自分は息子を信じて譲らない。自らの疑いとともに信念を育みつつも、未来への不安に怯え、孤立して破壊されてゆく生活そのものに打ちのめされる。妻の変化は激しく、夫婦間には極度な隔たりが生まれてゆく。ミステリというよりも事件がもたらした家族の物語としての色が強いが、犯罪そのものは一家の住む街で、毒々しい存在感を示し続ける。
最初から疑いを持っていた前科持ちの小児性愛者の存在が気になる中、主人公の検事補にも実は秘密がある。彼はいわゆる殺人者の家系に生まれた突然変異的な法律家であったのだ。祖父や曽祖父が殺人者であり、父が今獄中にいるという環境の中で、殺人者の血の遺伝を疑う妻と、否定する自分との間の心理的葛藤が凄まじい。本作品の骨格を成すのがこの殺人遺伝子というテーマなのだが、遺伝子科学と、父が息子に向ける全面的信頼という情感の部分との、痛いまでの葛藤が全編をよぎる、重厚な一作である。
ヒューマンでありながら容赦ない展開と、暗い予感、その向こうに見えてくるのは、光か影か、最後の最後のツイストぶりが見事に決まるところ、ランディという作家の健在ぶりに呻きたくなる一冊であった。