【感想・ネタバレ】川は静かに流れのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

さすがジョン・ハート。期待通りの人間小説、家族小説だった。この作品もやっぱりブルース・スプリングスティーンがBGMにぴったりくる。アメリカ白人文化の根底に澱む灰汁のようなものを、少し甘く切なさと苦さ多めに味付けした傑作。

【すごいネタばらしです注意】
主人公目線で物語が進むので、感情移入は主人公にしてしまうのだが、俺らの歳になると気になるのが、主人公の父親。腕っぷしが強くて、経営者としてそれなりに辣腕で、家族と友情を大切にするガンコ者…。でもなぁ、この男とてつもなく駄目なおっさんなんよなぁ。ミステリーとしての犯人は違うのだが、ようはこのおっさんが、もうちょっとシャンとしてたら、すべての事件は起こってないし、いざこざももうちょっと違う形になってたはずで…。

でも、この駄目な父親がすごく良く分かる、主人公以上に感情移入できてしまう。「うわっ情けな、うわっヒデー男…でも、そうする気持ちは分かるで」…俺も駄目なおっさんである以上、駄目なおっさんにシンパシー抱いてしまうのである。

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2019年08月05日

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『ラスト・チャイルド』を読み、この作家の作品はすべて読もうと心に決めた(と言っても、邦訳はまだ4冊)。久しぶりに出会ったとても好きな作家だと思う。
身に覚えのない殺人事件の濡れ衣を故郷で着せられた主人公。しかも彼を犯人と名指ししたのは継母だった…。みんな、悪い人ではないのにそれぞれに短所があり、どうしてもねじれる家族関係。犯人にたどりつくまでの二転三転も、あざとさがない。
あちこちで取り上げられているが、著者の序文「家庭崩壊は豊かな文学を生む土壌である」という一文が、心に残る。

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2013年05月28日

Posted by ブクログ

すばらしい。巻置くあたわずとはまさにこのこと。謎が謎を呼び、一つなぞが解けたと思ったらそれが新しいなぞの始まりだったり、じつは完全な誤解だったり、関係ないところで関係ない解釈をされたり。それがすべて家族と地域の人々の愛憎劇の中で、違和感なく読めてしまうものだから、ページを繰る手が止まらない。オススメです。

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2012年08月14日

Posted by ブクログ

最初から最後までとても楽しく読めた

久しぶりに「続きが気になる」という本だった


描写が丁寧で、1つ1つのシーンが目の前に映し出されているようだった

多くでてくるキャラクターも、しっかりと個性が際立っていて、無駄な登場人物がいなかった



農場ののどかな風景と、静かな川の流れ、渦巻く悪意

読んでいくうちに、全員が怪しく思えてしまう

誰が嘘をついているのか、わからない

おそらく登場人物も同じ気持ちだったと思う

是非人に薦めたくなる一冊だった

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2012年02月10日

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ネタバレ

ジョン・ハート初読。
一時期(10年前くらい?)凄いプッシュされていたタイミングで購入し積読。
やっと読めた。

川の情景、過去を知る住民、別れた恋人、父親との久しぶりの対面など、入りとしてはすごく盛り上がるのだけど、起きていることの割には冗長だった。

正直、辛い過去があった主人公アダムが、父親や家族との確執を乗り越え再生へと至るストーリー。。。が描かれることを期待して読んでいた。が、実際にはもうどうしようもないところまでバラバラになってしまうラストに唖然。
え、あんなにこだわってた故郷捨てるの?とか。
色々あったのはわかるけど、父親はじめ家族みんな酷すぎるだろう、とか。
心温まるラストを期待しすぎたのが悪かったんだけど、これじゃない感があった。いや、話自体は面白いのだけど。。。

最後に。主人公モテすぎだろ。。。

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2022年12月31日

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積読になってて読むの億劫になってたが、とりあえず開いてみたらまぁ面白いこと!ミステリー要素多くて良かったです。
モテる主人公ってのもプラス。

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2022年08月23日

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「キングの死」と同じ作者だったので。

読み始めてすぐ、
また情ない男の話がうだうだ続くのか、と心配になった。
殺人の容疑者、父親との葛藤、守るべき妹、よく似ている。

でも、「キングの死」とは違って、
早めに事態が動き出して新しい死体が見つかり、
犯人探しへと進む主人公。

主人公が故郷を追われ、いや逃げだした原因である過去の殺人も
解決して良かった。

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2019年07月03日

購入済み

面白い

この著者の作品は、読みやすくて面白いと思います

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2019年03月26日

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ネタバレ

前作同様、家族が中心に進むお話。
テンポも展開もよく一気に読んだけれども、事件そのものがすっきり解決するわけでなく、家族や人間の赦しというものがメインにきている気がする。
アダムもロビンも心が広過ぎ…。

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2017年05月27日

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アダム・チェイスは殺人の容疑で拘留されるが、結果として証拠不十分として無実となる。が、狭いコミュニティの中で立場を回復する事は叶わず、失意のうちにニューヨークで新たな生活を送っていた。
それから5年後故郷に居る親友のダニーから連絡有り、苦境を救うために帰って来て欲しいと言うのだった。その場では断るものの、アダムの頭の中には故郷の事で一杯になる。
故郷に戻った彼を待っていたのは、5年前の殺人の現場を見たと嘘の証言をした継母、勘当し和解されていない父、彼に置き去りにされ、警官の仕事に没頭する元恋人のロビン、妹のように大事にしてきた隣家の少女グレイスへの犯人不明の暴行、そして新たな殺人・・・・。
複雑に絡み合う「血」の絆と淀んだ時間の中にどんな真実を見出せばいいのか。果たして真実など存在するのか・・・・。

何しろ濃い濃い。僕がアダムなら向う30年は連絡もせず音信不通になる事必至だと思う。
血縁と顔見知りだけで構成されている人間関係は、いい関係でいられる時には比べる事も出来ないくらいのパワーになるけれども、一度こじれると何十年にも渡って禍根を残すことになる。
アダムが幼い頃、彼の目の前で拳銃自殺した最愛の母、彼にとってはそれ以降とそれ以前では人生の意味合いが全く違っている。父と息子の禍根はここに端を発しているが。その原因はそれ以前から・・・これ以上は言えない・・・。

さて、この本の骨子はまさに「血」
綿々と受け継がれていた歴史としての「血」
象徴として登場する川。それは時間の流れと共に流れる血液の流れではないだろうか。
僕は前回読んだ「ラストチャイルド」の個人への感情移入に対してこの本では、特にこれと言って感情移入をすることなく読んだ。
何故かと考えたときにこの主人公「アダム」には顔が無いと感じた。憤り、怒り、悲しみ、愛し、色々な感情が渦巻いていたが、案外とあっさりとしたキャラクター作りだと思った。
これは僕独自の解釈だけれども、作者の意図として主人公は人物ではなく、この家族およびコミュニティーの「血」の歴史ではなかったのか、と感じた。
むしろ父や、グレイスの育ての父ドルフにこそ感情移入しやすい位だった。彼らは前述した「血」の体現者だから。
アダムはこの滔々と流れる歴史の語り部なのではないだろうかと感じた。

とても力作で筆圧を感じる作品で、読むに足る本だと思う。

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2015年09月21日

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殺人の疑いをかけられ無実になったものの、追われるように故郷を捨てたアダムが5年ぶりに戻った。故郷は原発誘致で二つに分かれ、父のジェイコブは農場を売却しないことから嫌がらせを受けていた。自身嫌がらせを受ける中、兄弟のように育った、農場監督の娘グレイスが暴行を受けた。やがて、その犯人と目される、アダムの親友で帰郷の原因となったダニーが死体で発見される。

アダムに故郷を捨てさせた事件を含め2件の殺人共に細かい描写がされるわけでなく、話はタイトルの川のごとく淡々と進んでいく。しかし、その淡々とした空気の中に人間の憤怒が渦巻いており、そこかしこに垣間見える。犯人の予想はおおよそ見当が付いていたが、その動機は予想外だった。

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2014年04月08日

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チェイス家の人々 という純文学?舞台がロシアだったら、チェイスの兄弟?もう少しスピード感があったらと思うけど、一気に読めた。

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2013年06月13日

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殺人容疑で無罪になった後、故郷を追われていた主人公が舞い戻ってきた際におこる様々な事件の話。読後感はラストチャイルドに近く、ミステリーを読んだというよりは家族の物語を読んだという感じ。前半からぐいぐいつかんでくる。後半は若干失速する。原書で理解できればもうすこし評価が上がったと思う。

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2013年02月15日

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近年注目を浴びる気鋭の米ミステリ作家:ジョン・ハート。
本格推理というより、人間模様に重きを置いたサスペンスという意味では、名匠:ロス・マクドナルドの系譜上に位置するかもしれない。
ロス・マクの境地に到達するにはまだ早い(だって1965年生まれだもん)けれど、まだまだたった4作。これからの熟成に期待したい。
今作も、その期待に違わない重厚な仕上がりで、『サイレント・ジョー』のT・ジェファーソン・パーカーあたりが好きな人には大満足の1冊。
ポール・ハギスあたりが映画化したら、いいのが出来そうだ。
文体がシンプルなので、代表作『The Last Child』は原書にてスタンバイ中。

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2013年02月05日

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アダムは5年前、継母の証言により殺人事件の犯人として起訴された。無罪となったものの、町の人達の目は冷たく、家族との縁を切ってNYへと去った。しかし、今、嘗ての親友の電話が彼を故郷へと呼び寄せた。しかし、そこで再び殺人事件が起き、周囲は彼に疑いの目を向け始める…。
いや、分厚い作品ですが、一気に読ませます。

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2012年12月10日

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久しぶりに正統派なミステリーを読んだなと。
故郷を追われた主人公が、時を経て生まれ育った町に帰る。そこで事件にまきこまれるのだが。
故郷には昔からの人間関係が良くも悪くも存在し、場所を離れてもそれまで築いた関係は自分の中に残っている。それが自分にとっての故郷なのだと再認しました。家族、友人・・大切だよね。

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2012年11月15日

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読者をグイグイ引き込む筆力があります。但し、謎解きとしては意外性なし。家族の愛想を描いたドラマとしては素晴らしいです。読んで損なし。

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2012年09月27日

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先月の「ラスト・チャイルド」に続いてジョン・ハートの作品。前作同様に親子の絆や友情などが幾重にも連なり、冒頭で著者自ら語っているように、ミステリーの範疇に入ってはいるが、家族をめぐる物語ともいえる内容。書評にあるとおりの読み応えがありました。

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2012年07月28日

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「その川は、思い出せるかぎりもっとも古い記憶だ」
最初の1行目から引き込まれる。

殺人の濡れ衣を着せられ、孤立無援で故郷を飛び出したアダム。
5年ぶりに帰ってきた彼を待ち受けていたのは、新たな殺人事件…
なんて、、、なんて運の悪い(笑)

本格ミステリかと思って読み始めたのですが、
これは「ラスト・チャイルド」と同じ、家族再生の物語ですね!

アダムの幼い頃の記憶を交えながら、
徐々に事件の真相に辿りつく過程は見事です。

ストーリーは終始重く暗澹たる気持ちにさせられますが、
最後には何かから解き放たれたような清々しさがありました。

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2012年06月26日

Posted by ブクログ

処女作同様、家族間の確執を絡めた長編ミステリ。新たな真実と次に沸き起こる疑問のバランスが気持ち良く、一気に読み通せる内容でした。

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2012年04月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

故郷を追い出され逃げるようにニューヨークで暮らしてきたアダム。突然の旧友ダニーからの電話で助けを求められ、5年ぶりに故郷に帰ってきた。淡い期待と怒りを胸に。だが彼が直面したのは自分を人殺しとして扱う人々の冷たい視線、頑なな父、敵視する継母、機嫌の悪い恋人や幼馴染。さらに、アダムが再会した直後に幼馴染が何者かに暴行され、やがて殺人事件まで起きてしまう。そして彼を呼び出した当の友人は行方不明なままで…。年末年始にかけて良い作品に当たったなぁというのが読み終わった直後の感想。ストレートな感情表現がアメリカらしく、家族や恋人たちとの絆が中心に描かれている。「アメリカ探偵作家クラブ賞」受賞作品とのことだが、あまりミステリらしい謎解きは前面に出てこない。5年前から未解決なままの事件、ある人物の出生の秘密、母の自殺、いま新たに起こった殺人事件の真相など、解明すべき謎は数え上げるとたくさんあるのだが、いずれもが関係する人々の心の内面に深く起因しているため、人間模様を解きほぐしながら次第にわかっていくというスタイル。読みやすく解り易い話の展開で読者への間口を広いが、一方でミステリ色が薄いような若干肩すかしをくらうかもしれない。いずれにしても、徐々に解き明かされる真相、人間関係にいつの間にか物語に引き込まれる良作だ。【以下ネタバレ含むため未読の方はご注意】5年前、アダムに何が起こったのかは過去の回想とともに次第に判明してくる。アダムの父が経営するレッドウォーター農場で少年が殺害されているのが発見され、継母がアダムの犯行だと法廷で主張した。殺人の濡れ衣を着せられた無実のアダム。判決は無罪となったが人々の疑惑は拭えず、アダムはこれ以上この土地に居た堪れない状況に追い込まれたのだった。この過去の事件をはじめ、幼馴染で妹的な存在のグレイスを襲った暴行事件、アダムを故郷に呼び戻したダニーの殺害を、警察の反感を買いながらも半ば自棄になって追いかけるアダムがこの作品の探偵役と言えよう。自分の目の前で母親に自殺されたトラウマを抱え、過去の事件では自分の無実より継母の証言を信じた父親に対して怒りと憎しみを抱きつつも、痛みを堪え少しずつ乗り越えていこうとする姿が印象的だ。子供が親を慕う気持ち、親が子を思う気持ちは一方で、少しよじれると縺れ歪み、嫉妬や憎悪、敵愾心の感情をもたらし、不幸を生んでしまう。暴行、殺人は決して許されることではないが、結末で明かされる意外な真犯人(たち)もこうした不幸の被害者といえるのかもしれない。諸悪の根源は父親ジェイコブの過去の過ちにあり、流産を何度も経験し心身ともに疲れ果てた母親へのダメージを思うと本当に同情するばかりで、幼いアダムの負った傷も痛々しいのだが、ジェイコブのために犠牲的行動をとった親友ドルフの堅い友情、刑事としての難しい立場ながらアダムを思いやる恋人ロビン、アダムの無実を信じ続けたダニーの友情など、心温まるところの多さが救いとなっている。惜しむらくは、現在のレッドウォーター農場が原子力発電所建設を巡る土地の買収に拒否を示しているため地域住民の反感を買っているという設定を、うまく事件に絡められたらよかったかも。

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2012年03月05日

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 わかりやすいなあ。ストレートに面白い。先日、ニコラス・ケイジとメグ・ライアンの競演による儚いラブ・ストーリー映画「シティ・オブ・エンジェル」を観て、つくづくそう思った。というのは、この映画がフランス、西ドイツ合作映画「ベルリン・天使の詩」のリメイクでありながら、わかりやすさの点でははるかに「ベルリン……」を凌いでいたからだ。「アメリカ流」の優れたところを見せられた。それで、本書。やはり、わかりやすく、シンプルでストレートなストーリー。ジャンルとしては、ミステリというよりはハードボイルド寄り。主人公の本能にまかせた行動は、たやすく気持ちを昂らせてくれた。大雑把な表現でだが、「アメリカ流」を実感した。ときに、悪い意味で使われることもあるが、本書に対しては、かなりの「褒め言葉」のつもりである。本書のストーリーは、これでもかこれでもかと重荷を背負い込んでいく主人公アダム・チェイスが、はたして事件を解決し、背負い込んだ重荷を降ろすことができるのか、という超ド定番の長篇のサスペンス・ミステリ。幼いときに目の前で母親に死なれたことがトラウマとなっているアダム。5年前には、ある殺人の罪を負いそうになる。裁判で無罪になったものの、田舎の町の人々のこと、誰も彼を信じない。大地主の息子だから無罪を金で買ったのだ、と言ってはばからないのだ。それにもまして、継母が目撃を主張する。彼が殺人現場の方から帰って来て、手には血が付いていたという証言を引っ込めない。そして、父親までもがアダムを信じずに、その妻の証言を信じたことが、アダムを暗い闇の底に突き落とす決定的な原因となった。こうして、アダムは町を出た。そして5年後、悪友から、頼み事があるから帰ってきてくれとの懇願の連絡が入る。骨太で、どっしりとした安定感あるストーリーだ。ストーリー・ラインは、家族の物語と、事件の真相を追う物語の二つ。この二つの線がきつく絡み合い、錯綜して綴られていく。家族円満、幸せいっぱいの読者ならば、どう感じるだろう? 余計な心配が頭を過ぎった。それほどに壊れた家族関係が描かれている。ただ、本書は著者ジョン・ハートのまだ2作目の作品。正直なところ、粗さも目立つ。もう少し練り上げ、磨きをかければ、と思うところもないわけではない。それでも、そんなマイナス面をも忘れてしまうほどの、テンポの良い展開があり、深みある心理描写がある。すばらしいと思う。縺れた家族の絆に心を掻き乱されながらも、元恋人との再会に心穏やかにいられない。そんな苦悩の中主人公アダム・チェイスは真相を追い続ける。彼は、いかにして事件の真相に辿り着くのか? 家族や元恋人との関係は修復できるのか?もちろんそこは本書の読みどころだが、しかしそれだけではない。読みどころは他にもたくさんある。暗い情念であったり、精神の内奥を抉るところなどが、随所に鏤められているのだ。本書はしっかりとした読み応えのある、哀しく切なくやるせなく、そして希望ある作品だ。ただし、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作品ということで、巧緻なミステリを期待すると、がっかりすることになるかもしれない。アメリカン・ハードボイルド小説好きならいいかもしれない。人間の内奥なんてどうでもいいという方や、青春小説好きには向かないだろう。

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2011年09月30日

Posted by ブクログ

アメリカの作家「ジョン・ハート」の長篇ミステリ作品『川は静かに流れ(原題:Down River)』を読みました。
「エラリー・クイーン」、「ヘンリー・スレッサー」の作品に続き、アメリカのミステリ作品です… 「ジョン・ハート」の作品は3年近く前に読んだ『キングの死』以来ですね。

-----story-------------
「僕という人間を形作った出来事はすべてその川の近くで起こった。
 川が見える場所で母を失い、川のほとりで恋に落ちた。
 父に家から追い出された日の、川のにおいすら覚えている」殺人の濡れ衣を着せられ故郷を追われた「アダム」。
苦境に陥った親友のために数年ぶりに川辺の町に戻ったが、待ち受けていたのは自分を勘当した父、不機嫌な昔の恋人、そして新たなる殺人事件だった。
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
解説:「北上次郎」。
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2007年(平成19年)に発表された「ジョン・ハート」の第2作で、同年のアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀長篇賞を受賞した作品です。


アメリカ・ノースカロライナ州… 「アダム・チェイス」は5年ぶりに故郷に戻ってきた、、、

「アダム」が故郷から出た理由は、5年前に発生した殺人事件の犯人として告訴され裁判の結果無罪(濡衣だが)となったものの、目撃証言をしたのが自分の継母「ジャニス」であり、継母の証言を信じた父親「ジェイコブ」との間にも溝ができたことが原因だった… 親友「ダニー・フェイス」からの助けを乞う電話で故郷に帰るが、原子力発電所の建設計画から土地が高騰し、建設推進派と反対派で町は緊迫している。

大農園主である「アダム」の父「ジェイコブ」は土地を売ろうとしないため様々な嫌がらせや事件が起こっていた… そんな中、ついに殺人事件が、、、

父親・継母・双子の義弟妹「ジェイミー」と「ミリアム」、兄妹同然に育った「グレイス」、5年前故郷を去る時に分かれた元恋人「ロビン・アレグザンダー」、親友「ダニー」… 犯人は誰なのか、警察の捜査とは別に「アダム」は動く。

しかし、事件は意外な方向に展開する… 愛情、友情、信頼、裏切り、嘘、憎しみ、信頼、赦し、、、

5年の歳月を経て次々と直面する複雑な人間関係… 「アダム」は事件を解決に導くことはできるのか、そして家族を守ることはできるのか……。


殺人事件の謎を追うミステリなのですが… 事件とあわせて「グレイス」の出生の謎も解きながら、家族の在り方や絆を問いかけてくるヒューマンドラマでもありましたね、、、

結局、血を分けた者同士しか理解し合えないのかなぁ… 考えさせられましたね。

主人公の性格にはやや感情移入し難い部分もありましたが… 翻訳も良いのか、600ページ近いボリュームにしては読みやすかったです。

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2024年01月04日

Posted by ブクログ

あ~、やっぱりジェームズ・ディーンだ~。
頭の中で、主人公アダムが「エデンの東」「ジャイアント」などのジェームズ・ディーンとして映像化されてしまう。

神の存在を問うような運命、大土地所有に絡む名家と住民の根暗な物語は、アメリカ人がホント好きそう。

家族への疑心暗鬼と、青春の苛立ち、煮え切らない、カッコつけ
金持ちの坊ちゃんの中途半端な自暴自棄
人の話を聞かない、人にうまく伝えられない頑固で弱い父
ネガティブで暗い後妻とその子供たち
金と名誉とやっかみの入り混じる住民たち

川を題名とした小説はどうしてこうも暗いのか
「ミスティックリバー」デニス・ルヘイン
「クリムゾン・リバー」ジャン・クリフトフ・グランデ
「深い河」遠藤周作

後半は打って変わってアダムが探偵役として活躍するが、相変わらず危なっかしい。
不必要とも思えてしまうほど込み入った人間関係が徐々に明らかになっていき、最後の最後に悲劇とともにくっつく。
アダムが最初から知ってることを刑事に話していたら……物語にならないか。
一人称の小説たけど、ちょっと主人公の言ってること疑ってたし。

やっぱり、この人の小説は、最後まで読んで初めて報われるな~。
……気合、要るよ。

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2022年02月17日

Posted by ブクログ

良くも悪くも、ザ・アメリカ小説と云う感じ。
主人公=ヒーロー。モテる。強い。色々持っている。そして正義の人。悪意無く事件に巻き込まれ(大体容疑者)身の潔白を証明する為に、そして愛する人と家族を救う為に戦う。
500頁超の長編ですので、こういうのが苦手だけど苦行したいという方にはうってつけ。

実はワタシには最後まで犯人が解らなかったので、その為にダラダラ読み続けてしまった…。
うん、でも面白かったです。最後の一文もとても印象的でした。前作も読んでみようかな。

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2017年06月17日

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親友のダニーからの電話でアダム・チェイスは故郷に帰ることにした。五年前、妹の誕生パーティの夜、男が殺され、継母によってアダムの仕業だと証言された。判決は無罪だったが、父は再婚相手の言葉を信じ、アダムに家を出るよう命じた。五年ぶりに帰った故郷は原発誘致の騒ぎの渦中にあった。賛成派と反対派とは敵対し、農場を売ろうとしないアダムの父は賛成派の恨みを買っていた。ダニーのモーテルを訪ねたアダムは、誘致を迫るダニーの父にからまれ、大けがを負う。

町中から総スカンにあっている男が久しぶりに帰郷すると、待っていたのは電話をしてきた親友の死体。ただ一人無罪を信じてくれた昔の恋人ロビンは刑事に昇進していた。そんな時、妹のようにかわいがっていたグレイスがアダムとの再会後、何者かによって暴行される。事件を担当する刑事は、当然のようにアダムを疑い、その元恋人ロビンと対立する。

最新作『終わりなき道』と限りなく似た構図だ。もちろん、こちらの方がもとで、新作がその焼き直し。それにしてもよく似たシチュエーションを何度も使うものだ。アメリカ探偵作家クラブ賞を受賞したこの作品のファンなら、新作を読んで、既視感を抱くにちがいない。結果的には、よく似た設定ながら『川は静かに流れ』の方がすぐれている。家族の歴史に隠された秘密に触れた伏線が、ストーリー展開の中で自然に回収されていて無理がない。

息子の自分より、再婚した妻を信用されたら、実の息子としてはたまったもんじゃない。ただ、それより前に息子と父は問題を抱えていた。アダムが五歳の時、母は自殺をしている。しかも、コーヒーを運んで行った息子がドアを開けると同時に自分の頭に向けた銃の弾きがねを引いたのだ。良い子だったアダムはそれ以後変わった。ダニーとつるんで喧嘩三昧に明け暮れ、成績は下落。父は息子を見放していた。

継母のジャニスにはジェイミーとミリアムという双子の連れ子がおり、母を忘れられないアダムとの間はうまくいっていなかった。一方、家の近くに父の右腕を務めるドルフが孫のグレイスと住んでいた。グレイスはアダムを慕っていたが、五年前に黙って家を出たことを今でも怒っている。二十歳になったグレイスは今ではローワン郡一の美人に育ち、男たちの注目を集めていた。

ダニーが自分を呼び戻した理由は何だったのか。なぜ殺されねばならなかったのか。ダニーの死は三週間前にさかのぼるが、その当時、アダムは仕事をやめ家に引き籠もっていてアリバイがない。アダムの視点で一貫しているので、読者は無実を知っているだけにやきもきするが、刑事でないアダムには捜査権はないので、場当たり式に事件を追うしかない。少しずつ隠されてい事情が明らかになり、アダムが疑われた殺人事件とダニーを殺害した犯人にたどり着く。派手などんでん返しはないが、犯罪に至る動機の説明は納得がいく。

作者自身もいうように、これはミステリであるとともに家族の物語である。問題を含んだ家族の在り方に、歪みが生じ、ひいては人の命にかかわる事件へと発展してゆく。すべては過去に起因していて、時は何の解決にもならない。南部という国柄のせいか家族というものに対する比重のかけ方がかなり重い。これで、ジョン・ハートは二作目だが、個人的に相性が悪いのか、今一つ好印象が持てない。それでいて、けっこう読まされるから力量は感じている。あと一作読んでみて評価を定めたい。

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2016年10月19日

Posted by ブクログ

立て続けに読んだ北欧ミステリーも家庭崩壊が著しく、しかも何とも共感しにくい描かれ方ばかり(同じような崩壊状況とその理由)。でも、この家族の物語は、単純そうでいて複雑な関係がかなり綿密に描かれていて読み応えがある。途中で挫折しなければ…。

長いうえにかなりの忍耐を必要とした。『ラストチャイルド』も忍耐を要したけど、本書は主人公の短気ぶりにも苛立たされる。5年前の事件があるからこその同情や共感ではなく、5年前の事件があるからこそ、もっと上手く立ち回ればいいのに、と何度も思わされた。そんな調子で長々と続くものだから、途中がちょっと辛い。おまけに途中があれだけ長いのに、最後がかなりあっさりしていて、主人公の社会的な名誉回復もなされぬまま、真犯人と共犯者の立場も守られたままってどうなの?と正直不満。そのうやむやさが、新たな関係の破綻を招いているのに(新たな事件にさえなりかねない)。

いつの時代を想定しているのか定かではないが、5年前の雑な捜査(目撃証言以外殆ど物的証拠なし)に戦後すぐ?なんて思ったら、驚いたことに携帯電話が出てきた。大都市以外の州は、あんな杜撰な捜査をして起訴まで持ち込むのかとびっくり。長い割には5年前の事件の顛末があまり語られていないが、街の大半の人達に疑われ憎まれているのに、なぜ裁判で無罪になったんだろう?

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2015年04月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どうしてもミリアムに同情しちゃう。目の前で愛する人が他の人を愛しているのを見せつけられるのって拷問だ。恋人より父親の方が傷つけていたんだろう。ジャニスが偽証したのって、ちょっと考えれば、愛する者を守るためってのは気づけた筈。アダムも父親もその可能性考えなかったのかな。嘘を吐きながら、アダムにあんな態度を取れるなんて、怖い女だ、ジャニスは。

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2015年04月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この人の書く話(というか人物造形)は、よくも悪くもワンパターン。
それがツボにはまるとすごく好きなんだけど、いまいち入り込めない話だと、そのワンパターンが鼻についてしまう。

主人公は弟妹思いの最強お兄ちゃん。
威圧的な父親、心を病んだ母(または主人公に近しい女性)。一方的な暴力を受ける少女がいる一方で、凛として強い精神を持つナチュラリストの女がいる。あと、主人公の足を引っ張るけど、切り捨てることのできない悪友。

「頑張るお兄ちゃん」自体は好きなので、そのパターンはむしろ歓迎。何本でも読みたいんだけど、だからこそ、脇役のバリエーションが欲しくなってきたかな。

「愛おしい骨」に似てるというレビューをどこかで見かけた。設定には少し共通するものがあるかもしれない。
ヒロインはあれほどバイオレンスじゃないけど(笑)

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2013年05月04日

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アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞(エドガー賞)受賞作。ふるさとの川のほとりの家。自分のすべてを形作った場所。数年前に殺人の濡れ衣を着せられて故郷を追われた主人公は、親友が助けを求める電話でまた戻ってくる。しかしそこに待っていたのは、家族との不協和音、警官となった昔の恋人との再開、新たな殺人事件だった。

筆者自身が、「自分の作品はミステリーに分類されるのだろうが、自分としては『家族』の物語を書いている」、と述べているとおり、これは謎解きのおもしろさを味わうというよりも、親と子・兄弟姉妹・恋人同士といった、人と人との関係、心の襞を描くことを主眼としている。ノースカロライナの自然と併せて叙情たっぷりに描かれているが、読後は、これほど多くの人が死ぬほどの大事件の一端を一方が担い、そして一方がそれを知ってしまって尚、家族の絆がそれに勝るのか、違和感が残った。

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2011年10月03日

Posted by ブクログ

「僕という人間を形作った出来事は、すべてその川の近くで起こった。川が見える場所で母を失い、川のほとりで恋に落ちた。父に家から追い出された日の、川のにおいすら覚えている」殺人の濡れ衣を着せられ故郷を追われたアダム。苦境に陥った親友のために数年ぶりに川辺の町に戻ったが、待ち受けていたのは自分を勘当した父、不機嫌な昔の恋人、そして新たなる殺人事件だった。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。(裏表紙あらすじ) 帯に出ている北上次郎氏の「期待は絶対に裏切られない」の文といい、雰囲気が感じられる表紙のデザインといい、「これは傑作かも」と、読み始めました。ミステリとしての完成度はそれほど高くないと思います。ある人物の目撃証言で、主人公が殺人犯にされてしまうのか疑問。 家族というものを改めて考えさせる物語と言えそうです。

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2011年09月12日

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