あらすじ
「僕という人間を形作った出来事はすべてその川の近くで起こった。川が見える場所で母を失い、川のほとりで恋に落ちた。父に家から追い出された日の、川のにおいすら覚えている」殺人の濡れ衣を着せられ故郷を追われたアダム。苦境に陥った親友のために数年ぶりに川辺の町に戻ったが、待ち受けていたのは自分を勘当した父、不機嫌な昔の恋人、そして新たなる殺人事件だった。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
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Posted by ブクログ
さすがジョン・ハート。期待通りの人間小説、家族小説だった。この作品もやっぱりブルース・スプリングスティーンがBGMにぴったりくる。アメリカ白人文化の根底に澱む灰汁のようなものを、少し甘く切なさと苦さ多めに味付けした傑作。
【すごいネタばらしです注意】
主人公目線で物語が進むので、感情移入は主人公にしてしまうのだが、俺らの歳になると気になるのが、主人公の父親。腕っぷしが強くて、経営者としてそれなりに辣腕で、家族と友情を大切にするガンコ者…。でもなぁ、この男とてつもなく駄目なおっさんなんよなぁ。ミステリーとしての犯人は違うのだが、ようはこのおっさんが、もうちょっとシャンとしてたら、すべての事件は起こってないし、いざこざももうちょっと違う形になってたはずで…。
でも、この駄目な父親がすごく良く分かる、主人公以上に感情移入できてしまう。「うわっ情けな、うわっヒデー男…でも、そうする気持ちは分かるで」…俺も駄目なおっさんである以上、駄目なおっさんにシンパシー抱いてしまうのである。
Posted by ブクログ
ジョン・ハート初読。
一時期(10年前くらい?)凄いプッシュされていたタイミングで購入し積読。
やっと読めた。
川の情景、過去を知る住民、別れた恋人、父親との久しぶりの対面など、入りとしてはすごく盛り上がるのだけど、起きていることの割には冗長だった。
正直、辛い過去があった主人公アダムが、父親や家族との確執を乗り越え再生へと至るストーリー。。。が描かれることを期待して読んでいた。が、実際にはもうどうしようもないところまでバラバラになってしまうラストに唖然。
え、あんなにこだわってた故郷捨てるの?とか。
色々あったのはわかるけど、父親はじめ家族みんな酷すぎるだろう、とか。
心温まるラストを期待しすぎたのが悪かったんだけど、これじゃない感があった。いや、話自体は面白いのだけど。。。
最後に。主人公モテすぎだろ。。。
Posted by ブクログ
前作同様、家族が中心に進むお話。
テンポも展開もよく一気に読んだけれども、事件そのものがすっきり解決するわけでなく、家族や人間の赦しというものがメインにきている気がする。
アダムもロビンも心が広過ぎ…。
Posted by ブクログ
故郷を追い出され逃げるようにニューヨークで暮らしてきたアダム。突然の旧友ダニーからの電話で助けを求められ、5年ぶりに故郷に帰ってきた。淡い期待と怒りを胸に。だが彼が直面したのは自分を人殺しとして扱う人々の冷たい視線、頑なな父、敵視する継母、機嫌の悪い恋人や幼馴染。さらに、アダムが再会した直後に幼馴染が何者かに暴行され、やがて殺人事件まで起きてしまう。そして彼を呼び出した当の友人は行方不明なままで…。年末年始にかけて良い作品に当たったなぁというのが読み終わった直後の感想。ストレートな感情表現がアメリカらしく、家族や恋人たちとの絆が中心に描かれている。「アメリカ探偵作家クラブ賞」受賞作品とのことだが、あまりミステリらしい謎解きは前面に出てこない。5年前から未解決なままの事件、ある人物の出生の秘密、母の自殺、いま新たに起こった殺人事件の真相など、解明すべき謎は数え上げるとたくさんあるのだが、いずれもが関係する人々の心の内面に深く起因しているため、人間模様を解きほぐしながら次第にわかっていくというスタイル。読みやすく解り易い話の展開で読者への間口を広いが、一方でミステリ色が薄いような若干肩すかしをくらうかもしれない。いずれにしても、徐々に解き明かされる真相、人間関係にいつの間にか物語に引き込まれる良作だ。【以下ネタバレ含むため未読の方はご注意】5年前、アダムに何が起こったのかは過去の回想とともに次第に判明してくる。アダムの父が経営するレッドウォーター農場で少年が殺害されているのが発見され、継母がアダムの犯行だと法廷で主張した。殺人の濡れ衣を着せられた無実のアダム。判決は無罪となったが人々の疑惑は拭えず、アダムはこれ以上この土地に居た堪れない状況に追い込まれたのだった。この過去の事件をはじめ、幼馴染で妹的な存在のグレイスを襲った暴行事件、アダムを故郷に呼び戻したダニーの殺害を、警察の反感を買いながらも半ば自棄になって追いかけるアダムがこの作品の探偵役と言えよう。自分の目の前で母親に自殺されたトラウマを抱え、過去の事件では自分の無実より継母の証言を信じた父親に対して怒りと憎しみを抱きつつも、痛みを堪え少しずつ乗り越えていこうとする姿が印象的だ。子供が親を慕う気持ち、親が子を思う気持ちは一方で、少しよじれると縺れ歪み、嫉妬や憎悪、敵愾心の感情をもたらし、不幸を生んでしまう。暴行、殺人は決して許されることではないが、結末で明かされる意外な真犯人(たち)もこうした不幸の被害者といえるのかもしれない。諸悪の根源は父親ジェイコブの過去の過ちにあり、流産を何度も経験し心身ともに疲れ果てた母親へのダメージを思うと本当に同情するばかりで、幼いアダムの負った傷も痛々しいのだが、ジェイコブのために犠牲的行動をとった親友ドルフの堅い友情、刑事としての難しい立場ながらアダムを思いやる恋人ロビン、アダムの無実を信じ続けたダニーの友情など、心温まるところの多さが救いとなっている。惜しむらくは、現在のレッドウォーター農場が原子力発電所建設を巡る土地の買収に拒否を示しているため地域住民の反感を買っているという設定を、うまく事件に絡められたらよかったかも。