ジョン ル カレのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ映画『裏切りのサーカス』を観て、これは是非とも原作も読まなくては!と思い読み始めましたが…やはり前半は難しい…というか現在と過去が行ったり来たりする場面が多いから気を抜いてると「え?今なんの話?」となる。
人物も多く、専門用語も多いから何が何やら…となる人が多いというのもうなずける。
私は先に映画を二回観ていたのでストーリー展開とかはある程度わかっていたからなんとかついていけたけど、観てなかったら投げ出してた気がしてならない。
といいつつも、真ん中あたりまでは読むのが辛く感じるとこもあり300ページくらいまでは放置したりまた読み始めたりで何ヶ月かかかった。
しかし、300ページからは1日半で読めた。
映画を観るきっかけは正直ギラム目当てのとこもあったけど、映画でも小説でも個人的に一番印象に残ったのはなんだかんだでジム・プリドーとビル・ヘイドンの関係だったりする。
映画とは若干違う最後だけど、どっちも切なすぎる。
今後のシリーズではもう彼らの出番は無いんだなと思うとちょっと寂しい。
結果としてはやはり最後まで読んでよかった!と思うから三部作全部読んでいきたい。
時間は…かかりそうだけど。 -
Posted by ブクログ
ネタバレル・カレは二度読め。一度目は話(ストーリー)の筋を追うために。二度目は話を存分に楽しむために。ストーリーを展開してゆく上で提供される人名、地名、所属庁名等々の情報量が尋常でなく、一度読んだだけでは、それを追うのに必死で、なかなか物語を味わうところまで行かないからだ。ただ、作者も歳をとったせいか、小説の構成自体は以前と比べるとシンプルになってきている。時間の流れが前後するにしても小幅だし、視点の交代も限られている。素直に読んでゆけばサスペンスフルな展開を楽しむことができるように書かれている。もし、ル・カレを読むという特別な期待を持たないのなら。
スパイ小説の名手、ジョン・ル・カレも八十歳をすぎた。おまけに冷戦が消滅してからというもの、東西の対立という絶好の舞台設定が喪われ、エスピオナージュというジャンル自体が成立し難い状況になっている。代表作であるスマイリー三部作のほかにも傑作が目白押しの大家が、そのような状況下、いまだ現役で活躍していることだけでもすごい話ではないか。しかも、書く題材はいくらでもあるといきまいているというからなおさらだ。今回の舞台はスマイリー物の舞台にもなった国際的な港町ハンブルク。チェチェン出身のムスリム青年を取り巻く9.11以後の世界を描いた意欲作である。
冒頭に印象的な人物が登場して今後の展開を期待させる仕掛けはル・カレのよく用いる手。今回もボクシング、ヘビー級チャンピオンで大男のトルコ人青年メリクがイントロの役割を引き受けている。ある日、物乞い同然の身なりの若者が泊めてくれとメリクの家の戸口に立つ。メリクは拒否するが母親のレイラは家に入れてやる。青年の名はイッサ。身体には拷問の痕があり、言葉はロシア語だ。
スコットランド出身の銀行家トミー・ブルーは、少年聖歌隊の声をもつ若い女性弁護士アナベルから電話を受ける。依頼人がブルーの助けを求めているという。電話の主が口にした「リピッツァナー」という言葉には覚えがあった。父が晩年、何の思惑があってか引き受けた秘密口座の名前だ。生まれた時は真っ黒だが、成長すると白くなるという特質を持つ馬を指すことから、マネー・ロンダリングを仄めかしている。ソヴィエト崩壊時、カルポフという赤軍大佐が汚い金の隠し場所にブルー・フレール銀行を選んだ。イッサはカルポフがチェチェン人の少女を強姦して産ませた子だった。無垢な息子が実の父の悪事に悩み傷つくというのは、ル・カレ自身の経歴に基づく因縁のモチーフだが、今回はイッサとトミー二人ともが、父の犯した罪がもたらす財産を放棄するために力の限りをつくす。
ドイツ連邦憲法擁護庁外資買収課課長ギュンター・バッハマンは、各国から逃亡犯として指名手配されているイッサを利用して、権力争いの覇権を握ろうと画策する。テロ組織に協力している疑惑のあるイスラム学者アブドゥラを協力者に引き込むため、父の残した汚れた金をアブドゥラが行っている人道的な事業に提供するよう、アナベルを通じてイッサに働きかける。
「テロとの闘い」という言葉は、9.11以後世界中を席巻している。特にアメリカはイスラムを敵視し、過剰なまでに報復を果たそうとした。強硬的な英米とは異なり、敗戦国でもあり、ユダヤ人問題もあってドイツは微妙な立場にある。おまけにネット情報が独り歩きをし、以前のようにエージェントを使ったスパイ活動が難しくなっている。昔気質のスパイであるバッハマンのような男にはやりづらい時代なのだ。相手の情報をつかむには、疑惑のある人物を逮捕せず、泳がせながら協力者に引き込むのが有効なのだが、CIAの圧力がかかって、思うようにならない。
イッサをめぐる、アナベル、トミー、バッハマンの三人の立場から、スパイ活動に巻き込まれてゆく良心的な人物の葛藤を描いている。ベジタリアンでミネラル・ウォーターしか飲まない若い女性アナベル。六十歳の誕生日を迎えたばかりの銀行家トミー。現場主義のスパイ、バッハマン。三者三様の心理戦が視点の交代によって手にとるように読者に迫る。そのあたりの手際は熟練のル・カレ。さすがに読ませる。個人的には、還暦を過ぎたブルーが、娘と同じ年頃の女性に寄せる思いや、夫がありながら他の男との交際を続ける妻に対する思いに感慨を持つが、読者によって感情移入できる人物が異なることを計算に入れた複数の視点人物の導入は成功しているのではないか。
結末は、ル・カレならでは。この味がたまらないという向きには満足のいく仕上がりになっている。 -
Posted by ブクログ
映画「裏切りのサーカス」の原作。著者がもと英国情報部なリアルスパイ小説。
表面上はかなり淡々としていて盛り上がりに欠けるような…と思いつつ読み進め、これは淡々としてるんじゃなくてキンキンの緊張状態が常態化してるんじゃ!と思い至った。中盤のギラムのミッションや終盤あたりはちゃんと?盛り上がってて止まらなくなる風。
膨大な日常情報に紛れた細かな矛盾や綻びを見つけては組み立て、ストーリーを想像で補う作業は読んでいて肩がこりそう。
全体的に映画の方がかなりスッキリまとまっていて分かりやすいけれど、(といって映画が理解できたわけではありませんが…)原作は原作で、情報の海を自力で掻き分けてる感があって読みごたえがありました。
また映画みたくなったなぁ~ -
Posted by ブクログ
ネタバレ20数年ぶりの再読! ある意味“苦行”と言われたスマイリー三部作のフィナーレにして、スマイリーシリーズの最高傑作!
とにかく、メリハリ、サプライズ、そしてカタルシスがないのに、物語を読み進める内にじわじわと滋味が溢れてくる。それは淡々ではなく粛々という印象。
読書の魅力は、年を経て再読するとそれまでの印象がガラッと変わるところ。だが、この作品は意外なほど変わらない印象。それは、私が未熟なだけか……。
カタルシスはないと書いたが、ラストの雪のベルリンのシーンは、過去に読んだ全てのスパイ小説の中で最も美しく胸を打つ場面だった。暫く目を閉じずにはいられなかった。