ジョン ル カレのレビュー一覧
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購入済み
スパイ小説の金字塔
ル・カレの世界を堪能させていただきました!
荒木飛呂彦風にいうならば、男が泣ける、男の悲哀を感じさせるサスペンス、というところでしょうか。★5つでは足りません!
実は、紙の本で積ん読数年。その間に新訳が出て、電子化されて、やっと読みました!何でもっと早く読まなかったんだろう?
まあ、確かに本をパラパラっとめくった時に感じる重苦しいオーラに、つい本棚に戻してしまう、ということを繰り返していました。
電子書籍にはその拒絶感がありませんね(笑)。
内容に関しては随所で語り尽くされていますが、とにかく暗く,重く、緻密でスリリング。
組織に潜む2重スパイを捜し出すことを命じられた、老いた -
Posted by ブクログ
ジョージ・スマイリーは、元英国情報部の現地指揮官。冷戦時には有能なスパイとして情報部を指揮していたが、世界情勢は緊張緩和(デタント)へと舵を切り、顔ぶれを一新したホワイト・ホールは情報戦も英米協調をうたい、かつてのような英国独自のスパイ網の必要性を認めなくなった。自前で情報をさぐるよりアメリカのいとこ(カズンズ)から聞けばいい。そのほうが安上がりだ。大幅な予算削減の結果、現地協力者は解雇。「首狩人」や「点燈屋」といった特殊な分野を受けもつ工作員グループも解散してしまっては、その指揮を執るスマイリーに出番はなかった。早い話がリストラである。
電話がかかってきたのは深夜だった。亡命エストニア人グ -
Posted by ブクログ
二度読んだ。結果から言えば、ここは、と思わせる部分がないこともないが、全体的にはさほど読みづらさは感じなかった。読みづらさを感じる原因は、フラッシュバックを駆使した回想視点の導入による時制の交錯や、複数の視点人物の瞬時の転換といった原作者の文章にあるのではないか。しかし、一度目は多少苦労しても再読時は、主人公スマイリーの独白の沈鬱さを紛らわそうとするかのように絶妙のタイミングで挿入される情景描写の巧みさや、込み入った伏線を多用した構成の妙味にうならされるはず。旧訳や原文とつき合わせていないので、訳の巧拙についてはひとまず置く。ただ、それを理由に読まないですますのはもったいない。そう思わせる作品
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過去に一度会ったきりの仇敵カーラとの決着ついに!英国とソ連の情報部を背負い、暗躍し、追い詰めあった二人が互いの目に見るものは…
ここから先は激しくネタバレですね。でもきっと、わかったようでわかっていないんです。もうちょっと年を重ねたら、また読もうと思います。
後半からじわじわ情報を固めカーラに迫っていく辺りがゾクゾクです。
常に冷静な描写で淡々と書かれるため表面上はどこか調書を読むよう。でも行間から現場工作員の息遣いや緊張感、スマイリーの震えるくらいの慎重な気遣いがにじみ出てるようでした。
ラストシーンはスマイリーの内と外の描写が印象的。雪降る夜の痛いほどの緊張と静寂、内面で吹き荒れる衝動、 -
Posted by ブクログ
老練スパイ、ジョージ・スマイリーの終わりかけの人生に始まった大事件。
静かに壊れていくlife(生活ほど世俗的でなく人生ほど重たくないニュアンスの言葉が見つからない…)とか、何気ない狂気を帯びた日常とか、危うげな人たちが危うげにすれ違う感じというか。
そういうのが一番のスリルだし、サスペンス。
あと、文章が軽快。難しくて長い話には必ずいいタイミングで、窓の外になにかが見えたり、スマイリーが集中力切らしたり、腰を折らない程度の横やりが入る。これは技術だなあと。
「自然なことをいかにも自然に見せる」スパイの技術って本文中に出てきたけど…これのことだろうか。 -
Posted by ブクログ
冷戦時代、主人公である英国情報部のリーマスはベルリンに赴任していたが、東へ送り込んでいた配下のスパイが殺害されるなど作戦失敗が重なり、ロンドンに呼び戻されて閑職に左遷された挙げ句にクビになってしまうが、そこに東側から謝礼と見返りに情報提供をするよう誘いを受ける…というスパイ小説。
その誘いにリーマスが乗って東側へ寝返るというのが、東ドイツ情報部のムント副長官を失脚させるための英国情報部の策略だったのだが(と裏表紙の粗筋紹介に書いてある)、なんせスパイの諜報戦なもので、一筋縄ではいかないというもの。
「国の大義名分のためには個人など駒にすぎない」という東側の主義は、西欧には到底受け入れられないも -
Posted by ブクログ
「うん。そうだな、そうかもしれない」
英国諜報部の生ける伝説ジョージ・スマイリーとソ連諜報部の工作指揮官カーラの冷戦下での対決を描いたスマイリー三部作の最終決戦です
いやー、なんていうか情景描写過多
やり過ぎだと思うが、まぁこれがジョン・ル・カレなのだからしょうがない
そして「小説のジレンマ」ね
冷戦なんてものはない方が良い
それはとりあえずそうだと思う
まぁ、色々問題は残っていたり、新たな問題が起きたりはしているわけだけど
とりあえず核弾頭の数は減ったし、経済のグローバル化も進んだし、東欧諸国の人たちがそれなりの自由ってやつを手に入れたわけだからね
東西のスパイたちが頭脳戦を繰り広 -
Posted by ブクログ
「あれはどこかべつの土地、まったくべつの宇宙での出来事だった。彼はここでは場違いな人間だった。けれども、彼もまたこの悲劇にどこかで加担してきたのだ。」
スパイ小説には悲劇が似合う
ソ連の伝説的スパイ”カーラ”によって被った壊滅的打撃からの復活を目指す新生英国諜報部
率いるのは我らがジョージ・スマイリーだ
スマイリーは”カーラ”に反撃すべく、ソ連からの金の流れを追う
たどり着いたのは香港に住まう中国人富豪ドレイク・コウ
送り込まれたのはスマイリーを師と仰ぐ新聞記者で工作員ジェリー・ウェスタビー
ジェリーの活躍もあり、中国諜報機関中枢にいるコウの弟ネルソンが”カーラ”のスパイであることが -
Posted by ブクログ
英国情報部〈サーカス〉の中枢に潜むソ連の二重スパイを探せ。引退生活から呼び戻された元情報部員スマイリーは、困難な任務を託された。二重スパイはかつての仇敵、ソ連情報部のカーラが操っているという。スマイリーは膨大な記録を調べ、関係者の証言を集めて核心に迫る。やがて明かされる裏切者の正体は?スマイリーとカーラの宿命の対決を描き、スパイ小説の頂点を極めた三部作の第一弾。
辰巳四郎の表紙が印象的な菊池光訳の文庫を読んだのが1986年だから、38年前である。映画は公開されてすぐと、一昨年リバイバル公開の際に観た。アナログの世界に生きるスパイたちの暗闘。翻訳の良し悪しは分からないが、小説として一級品である