アーサー・C・クラークのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
アーサー・C・クラークの想像力に圧倒される作品でした。
2130年、太陽系に突然現れた未知の超巨大飛行物体、通称“ラーマ”に挑む宇宙飛行士たちと人類を描いた長編SF小説です。
こう書いてしまうのもなんだけど、読んでいてけっこう序盤で情景が分からなくなってしまった。
重力がこうなって、宇宙飛行士たちの体がこうなって……、みたいな最序盤のラーマへの潜入シーンはなんとなく想像しながら読めましたが、ラーマの船内、さらに船の中に広がる海や都市の話になると、もう想像が追いつかなくなってしまいました。
これを書いたクラークと、文章だけで情景がパッと想像できる人は、もう人類を辞めているのでは……などと思ったり。
ラーマ内の探検の様子も、抑えめの筆勢で淡々と書かれていく印象が強いです。けっこうなイベントが起こっているので、いくらでも盛り上げられそうなものなのに。
そう考えるとこの作品は、読者の理解や単純なエンタメ要素を差し置いてでも、描きたかったものがあるのだろうと思います。
これだけの書き込みと作品世界の作り込み。想像力の極地の果てに訪れる人類と超文明の相克の結末。クラークならではの情緒というか、人間の小ささに対する視点と、宇宙の壮大さに不思議な趣を感じる作品でした。 -
Posted by ブクログ
★だが、そのうち思いつくだろう。(p.321)
読んでよかったようなよくなかったような。映画は十回くらいは観てるので読んだ気になっていたが未読だったことに気づいたので読んでみました。映画ほどではないがドライでクールな印象。旧きよきSFで尖ったところがなく読みやすいです。映画版の、混乱をもたらす終盤が小説版ではあるていど理解できるかたちになっています。でもじつのところこれが正解ともいえないのでしょう。謎は謎のまま置いときましょう。
▼簡単なメモ
【一行目】干魃はもう一千万年もつづき、恐竜の治世はとうに終わっていた。
【アリエス1B型月シャトル】宇宙ステーションと月を往還する。三十人乗り。
【移動研究所】月面で活動できる移動基地と呼べるもの。八つのフレックス車輪を擁し少しなら飛ぶことも可能。
【宇宙】《宇宙ではこわい思いはしても、悩むことはない》p.91
【宇宙ステーション1号】三百二十キロの高度にありいまだ地球の重力圏内。直径三百メートル。円盤部は人工重力をつくりだすために回転しておりその中央部は逆回転して見かけ上は静止している。
【クラビウス基地】直径二百三十五キロメートルで月の表側では二番目に大きなクレーター、クラビウス内に作られた基地。男性千百人、女性六百人の研究者や技術者が暮らしている。非常時には百パーセント自給自足可能。
【高傾斜角探測機21号】黄道面からゆっくり高みにのぼる。
【ジミトリ・モイセーウィチ】ヘイウッドの親友。ソ連科学アカデミー所属。五十五歳。
【周回衛星M15号】火星を一日にニ周する。
【深宇宙モニター79号】火星から一億五千万キロ、小惑星帯を漂うモニター装置。
【人工彗星5号】冥王星の彼方をさらに進んでいる。
【新聞】「ニュースパッド」で読むことができる。《コミュニケーション手段が発達するにつれ、その中身がますますくだらなく、けばけばしく、陰惨に見えてくる》p.95。もっとも、フロイドはそれを悪いこととは思っていない。《ユートピアの新聞はおそろしく退屈なものにちがいないからだ。》p.95
【スペースポッド】ディスカバリー号に三機搭載されている球形の船外活動ユニット。直径二・七メートル。操縦席の前には展望のよい窓がある。飛行姿勢制御ノズルで舵取りを行う。ウォルドーと呼ばれる二対の腕があり一方は重労働用、もう一方は微妙な作業用。各種工具を揃えた伸縮自在のタレット台もある。三機の愛称はそれぞれアナ、ベティ、クララ。大活躍します。
【世界情勢】世界人口六十億、三分の一は中国。飢餓の危機にある。
【ダイアナ】ラルフの娘。宇宙生まれの人類の第一世代。
【大温室】クラビウス基地の地下深くに埋設され空気の浄化と副産物として食料のいくばくかを生産する。
【月を見るもの】直立石(モノリス)に選ばれたヒトザルのひとり。
【ディスカバリー号】宇宙船。全長百二十メートル近いがクルーが占有するのは先端にある直径十二メートルの与圧球体の中。その球体には赤道部に回転する鼓輪が設けられており月程度の人工重力を生成しそこに生活空間が置かれている。まず木星に向かいスイングバイにより土星にたどり着き観測し五年後にやってくるディスカバリー2号が乗員を回収する予定。乗員は五名で必要ないときは人工冬眠で眠っている。
【デイビッド・ボーマン】ディスカバリー号の首席キャプテン。応用天文学とサイバネティックスと宇宙推進システムの専門家といってよい能力を持ちながらひとつことにのめりこめない性格からまだまだ学び続けている。
【TMA・1】ティコ磁気異常1号。月面で観測された磁場の異常。クラビウス基地から3百キロの地点で発見された。黒いモノリスが原因でかつそのものを指す。
【ティコ】平原生成後の月面クレーター。直径八十六キロ。
【HAL9000】ディスカバリー号のコンピュータ、というより人工知能。Heuristically programmed ALgorithmic computer(発見的プログラミングをされたアルゴリズム的コンピュータ)の略。一文字ずつ前にずらせばIBMになるというのは有名な話。ほんとか偶然かは知らないが。人工知能が自動的に脳になるための学習方法をミンスキーとグッドが発見しそれにより成長している。地球にも同型機が二機ありディスカバリー号のHALと答え合わせをしたりしている。
【標識のコレクション】地球上各地から集められ月面のクラビウス基地の広間に展示されている。懐かしむためだろう。
【フリンク・プール】ディスカバリー号の乗組員。宇宙生物学方面ではなんでも専門家と言えるレベル。全人類の中で土星に一番乗りしたかも?
【ヘイウッド・フロイド】アメリカ宇宙飛行学会議議長。月に向かう。本来は惑星生成の研究をしていた。
【直立石/モノリス】透明で大きな石。食べることはできそうになかった。映画とは異なり触れただけで知恵がつくわけではなかった。精神をこじ開け学習させる夜毎の儀式を必要とした。
【ラルフ・ハルボーセン】月面の南部地方の行政官。
【ロイ・マイクルズ】月に駐在する科学部長。ハルボーセンとは常に意見を異にするが特に仲はわるくなさそうなのであえてそうしていると思われる。ディベートみたいなものか。 -
Posted by ブクログ
映画でカットされたナレーション部分が補足されてて、頭の中のハテナが解消された。
特に第一部の猿人類がモノリスによって人類へと進化した過程は、1章丸々割いてくれてる。「現在だけしか知覚しない動物とは異なり、ヒトは過去を手に入れた。そして未来へと手探りをはじめた。」という文章が象徴するように、進化前の猿人類は出来事をすぐに忘れる。米印のように、この記述は今の私たちの感覚であって、彼らは覚えてすらない...という内容の文章がちょこちょこ挟まっているのが、面白かった。
HALが暴走した動機も書かれていたので、映画に比べてHALへの憎らしさは少ない。同情できる分、最期のシーンは切なかった。「チャンドラ博士...今日の...最初の...授業を...はじめて...ください...」が最期のセリフなのは健気すぎる。
想像できないから、想像したことの無いような感覚がいくつも表現されていて新鮮だった。低重力下の基地では、心と体がゆったりした状態になる。宇宙空間で生まれた子供は、転ぶと怪我をするからという理由で地球に行くことを嫌がる。HALは眠ったことがなく、また目覚めが来ることを知らないので、接続を切られることを異様に恐れる。海洋船は沈没するが、宇宙船は沈没できない...など。
訳者の伊藤典夫の解説が興味深かった。映画の色調の話で、白=骨の色、死の色であり、赤=血の色、生の色という考察だ。HALのレンズ、脳中枢が赤いのは物語の中で1番人間らしいからだという解説には興奮した。また、ボーマンはHALを殺すことでしか人間性を回復できなかったとあるが、これは猿人類が人間性を獲得した段階でも同じことが言えるのではないかと思った。道具の導入=進化が前面に出されているが、人類史上では、殺人も、二次的に進化と深く結びついている。実際今でも、道具を使わない、人間以外の動物は、同族を殺すことが無い。殺しこそ人間的な行為であると言える。
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Posted by ブクログ
宇宙エレベーター建設をめぐるハードSFでありながらも、宗教や異星人とのファーストコンタクト、架空歴史ものの要素も盛り込まれた作品。
宇宙エレベーターの建設への理想的な場所が、3000年の歴史を持つ寺院が建つ霊山の山頂。ここで描かれる宗教と科学の対立。思索的な部分や抽象的な話が多くて、前半はかなり苦戦しました。なんとなく読み進めていたらいつの間にか、具体的な建設の話に移ってしまっていた印象で、自分の読み込みが追い付けなかったのがもったいない……
一方で宇宙エレベーターの描写や、異星人とのファーストコンタクトの歴史が語られる場面の壮大さがよかった。人間の技術では測れない異星人との出会いが人類にもたらした、宇宙への夢や憧れ、そして野望。また超技術を持った異星人が存在するとわかった時、人は宗教を、そして神をどうとらえ直すのか。壮大な思考実験を小説という形で、読者である自分にも突きつけられるような気がします。
そして徐々に実現が近づいてくる宇宙エレベーター。しかし、完成直前に大きなトラブルが起こり……
科学が進んだ世界での宗教の立ち位置や在り方が前半のテーマなら、後半は打って変わって極限の困難に挑む、科学とそして人間の可能性を信じるドラマの部分がより強く打ち出されます。ここも理論がしっかりとしていたり、宇宙エレベーターを頭に描くSF的な想像力は必要とされますが、老齢の技術者がたった一人で困難に挑む姿と、宇宙の描写は分からないながらも壮大かつ、心躍らせ胸熱くするものがありました。
そしてエピローグで物語はさらなる時代を、宇宙を超えて紡がれる。科学と宗教、そして宇宙エレベーターという壮大なテーマを締めくくる、しみじみと残るものでした。
自分の理解が足りず読み逃しているポイントも多々あるとは思うのですが、それを補ってあまりある魅力のある作品だったと思います。 -
Posted by ブクログ
【由来】
・もちろん、出た時から知ってるし宇宙エレベーターだし。ハヤカワの電子書籍50%オフと、それで購入したSF2000レビュー本がトリガー。
【期待したもの】
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【要約】
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【ノート】
・面白かった。大体が一人の男が宇宙エレベーターをつくるのに打ち込むストーリーだが、最後が想像されるような大団円じゃない。ある意味、それを上回る未来讃歌。
・宇宙エレベーターは銀河英雄伝説だったり最近はGのレコンギスタ辺りで出てくるが、SFとしては本書が最初。しかも実際は宇宙工学や物理学の世界で最初のアイディアは提唱されたらしい。それを自分のものにして、ここまでのストーリーをつくる。しかも、細部のディテールは時代を感じさせないどころか、今の時代に読んで、ますます説得力を増しているってのはすごい。