アーサー・C・クラークのレビュー一覧
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月の表面にある「渇きの海」。それは、あまりの細かさ故に液体のような特性を示すミクロの砂が海のように広がる月有数の絶景地である。観光客を乗せてこの「渇きの海」を遊覧する船が、突然の事故で「渇きの海」の底深くに埋もれてしまう。軽量のダストスキーしか近づけない「渇きの海」のただ中で、砂に埋もれた観光客と遊覧船スタッフを救い出すために、果たしてどんな作戦が取られたのか?救出作戦の顛末は?
クラークがこの作品を執筆した当時、月表面には「渇きの海」のようなエリアが実在すると考えられていたそうです(実際には観測されていません)。この作品の真骨頂は、執筆時点における最先端の科学理論を前提として広げ得る想像力の範囲内で100%物語を構築している、つまり「その時点での嘘は一切ついていない」ということ。まるでドキュメンタリーを読むかのような筆致、まさに未来の「プロジェクトX」。ハードSFの代名詞・クラークの面目躍如たる佳作です。
ただし、あくまでも月面の一エリアでの出来事の描写に終始するストーリーですから、スケール感はかなりこじんまりしてます。また、いかにもクラークらしく、キャラクターの人物造形はステロタイプで深みはありません。それでも面白い、と思えるのは、ひとえにこの作品がジャンルSFだからだと鴨は思います。SF初心者にこそ読んで欲しい作品ですね。 -
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2061年、それはハレー彗星が地球に最接近する年。医学の進歩により100歳を過ぎてなお矍鑠としたヘイウッド・フロイド博士は、ハレー彗星に着陸調査する宇宙船に賓客として招待され、未知の世界を楽しんでいた。しかし、そんな楽しい旅の途中で彼が接したのは、孫に当たるフロイド宇宙飛行士が搭乗する宇宙船が「禁断の星」エウロパに不時着したという知らせだった。自力でエウロパから脱出する術をもたない宇宙船を救うために、フロイド博士が採った奇策とは?
あの歴史的名作「2001年宇宙の旅」、その続編「2010年宇宙の旅」に繋がる"Space Odessey"シリーズの1作。シリーズのお約束として、モノリスもボーマン船長もHAL9000もばっちり登場します。
が、これ、別に"Space Odessey"シリーズに位置付けなくとも良いのでは。
SFとしては、普通に面白いです。でも、たぶん執筆当時のクラークとしては「ハレー彗星がらみで何か書きたい」ってだけだったんじゃないかなー、という思いがちょっとします。100歳越えた高齢のフロイド博士を無理に主人公に据える理由はないし、ボーマン船長(であったもの)が登場する理由もないし・・・繰り返しになりますが、SFとしては、普通に面白いんですよ。だから、独立した作品として書けばそれで済むのになー。看板を背負わせたがために、不当に評価が下がってしまう作品だとしたら、ちょっともったいない気がします。 -
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西暦2109年、アマチュア天文学者により発見された天体は、観測の結果、わずか8カ月後に地球に衝突することが判明する。
宇宙船ゴライアスの艦長ロバート・シンは天体の軌道を逸らすため、迫りくる死と破壊の女神-その天体の名はカーリーのもとへ向かうが…
最近では、惑星ニビルが何かと話題にあがってたり、過去にもツングースカ大爆発やスイフト・タットル彗星など、小惑星の衝突は決して絵空事ではない。事実、地球に衝突する恐れのあるスペースデブリを観測する機構は実在する。その名称は「スペースガード」、当著でも登場し「宇宙のランデヴー」で初出した同名の計画に因んでいるのだ。
隕石衝突というモチーフは、その窮地に立たされた時に人間はどうするのか、その行動と心理に迫り人間の本質を探る作品になりやすいと思う。
もちろん当著でもその傾向は多少なりとも感じられたが、このモチーフを取り扱う他の作品-例えば「アルマゲドン」や「ディープインパクト」、「終末のフール」に比べると圧倒的にドラマ性がない。人間を描こうという気概はさらさら感じられなかった。
そう、これまでの著者の作品を読んできて感じることに、氏が描くのは人間ではなく、ただ宇宙の茫漠さであるということ。
当著では、徹底した第三者視点-まさに神の視点が貫かれている。ただ淡々と物語が進行していく様に、まるで他人事のような印象を受けた。
そしてその描き方でやはり感じられてしまうのは、人間が宇宙の茫漠さに対しては、甚だ無力だということだ。 -
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良かった。これこそ、クラーク作品だと思う。実はこれを読むのは2回目なんだけれど、それでも良かった。2001年宇宙の旅、2010年宇宙の旅と続いているシリーズもののような作品群なんだが、3つの中では特に2061年がよい。
クラークが好きであるところの、人類より高い知性を持った異星人がテーマとなっているんだが、この高次の知性を「遥かなる地球の歌」でみられるような哲学&宗教的な「神」とするのでもないし、「宇宙のランデヴー」のように隠しきってしまうわけでもない。高次の知性を、もっと人間くさく描いているという感じだ。
高次の知性に憧れるのはよく理解できる。これを第二の神としてあがめる気持ちも理解できる。不老不死ではないけれど、未来の人類と高次の知性というのはけっこう同一視される場合が多いのだが(キングギドラがはじめて登場したときに宇宙人はガンを直す薬で人類を釣った)、未来の人類が地球ベースであるのに対し、高次に知性は常に宇宙スケールだ。
2010年で木星を爆発させて新しい太陽を作ったその後が2061年の出だしであるわけなんだが(同時にこの新しい太陽が消えるのが2061年のおわりである)、その木星に存在する生命体を描く感じはアシモフを思わせるのがユニーク。
今回の2061年で、とにかく目新しいのは、人間は死ぬがその魂は別の次元で生き続ける(こんな言葉ではないがわかりやすいように私が翻訳した)という古来から有る概念だ。この概念を用いて、人類とそれより高い知性体、低い知性体を描いている。で、私が思ったのは、これってクラーク自身じゃないかなってこと。クラーク自身が、今より1秒でも先を見たいだろうに、寿命には限界がある。だから、魂はより高いところから未来を見ているんだと信じたいってな感じかなぁ。
他にも新しいのは、愛よりも正義や真実が大事であるという概念ね。これって好きだなぁ。愛が全てと言うような映画や本は私は苦手だから。
とにかく次の「3001年宇宙の旅」が楽しみだ。 -
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こりゃぁ、良かった。続編が有るんだが、読んでみたいという欲望にかられる。あまり信じないにせよ、SFの世界では有名はヒューゴー賞とネビュラ賞を授賞した作品と言うことで期待したが、その期待通りだった。
出だしは、「神の鉄槌」。全く一緒の背景から始まる。しかし、展開はまったく異なる。むしろリングワールドのノリ。彗星だと思っていたのは人工の飛行船だったって話。途中であらかた結末は読めたものの、それでもなお、この飛行船の中での物語は熱中させるに足る内容だ。
ラストも意味不明でしり切れとんぼではなく(これは連続して先に「神の鉄槌」「グランド・バンクスの幻影」という2作品を読んだ直後だからかな?)、けっこうすっきりと終わっている。グランド・・の方がキレの良い終わり方であることは認めるものの、こっちも満足。続編を読みたくなるね。 -
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「神の鉄槌」では幻滅したが、こっちは良かったなぁ。1990年の作品だが、とても良かった。
筋書きは、タイタニック号を引き揚げるという近未来のSF。もちろん、これにまつわるさまざまなドラマが展開される。私には無駄と思える登場人物も沢山いるが、それはそれなりにクラークがいいたいことを代弁させる役割として許してしまえる感じ。
中身は非常にハード。ハードSFと言う言葉が一斉を風靡した頃の流れがここにある。日本では(今はどうしているんだろうか)堀晃氏等がハードSFをよく書いており、私も好きだ。ハードSFって明確な定義は知らないが、要するにひとつふたつの虚構(仮定)を除けば、かなり理論的な展開が存在することだと思う。
この作品ではマンデルブロー集合の話がある。数学に詳しくなくても、その魅力はパソコンなりでよく見る形だけに一般に知られているだろう(だから私も知っている)。タイタニック号の引き揚げという目でこれを見るとあまり面白くない(お決まりの結末)。
でも、それが大きな背景となっており、その背景の中でいろんなドラマなり論理的な楽しさがあるというのがクラークの雰囲気かな。地球から一気に宇宙空間に飛ぶエピローグのキレもいいと思うし、クラーク自身による25ページに及ぶ謝辞や資料、講演会記録なども読みごたえがある。
物語の中で引用するにもっともふさわしいところを私の言葉で少し書いてみる。
問題1:
2つの正四面体がある。この2つを放して置くとき、面の数は合計いくつか。
答え1:
8。(当たり前)
問題2:
2つの四面体のひとつの面をくっつけて1つの立体を作る。新しくできた立体の面の数はいくつか。
答え2:
6。(互いにくっついた面がひとつずつ消えるから、これも簡単)
問題3:
正四面体とピラミッドがある。この2つを放して置くとき、面の数は合計いくつか。
(正四面体の全面の三角形とピラミッドの側面の三角形は等大とする)
答え3:
9。
問題4:
正四面体とピラミッドのひとつの面(三角形)をくっつけて1つの立体を作る。
新しくできた立体の面の数はいくつか。
答え4:
7。
さて、答えの1~4の中に間違いがある。もちろん、トンチではない。これが頭の中で解る人がいれば私は感動する。私は絵を書いてようやく理解できた。とても面白いのでこの立体を作ろうかと思うほどだ。作品には直接関係ないが、面白い問題だったもので。 -
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副題:PRELUDE TO SPACE
著者:アーサー・C・クラーク/山高昭訳
出版:早川書房
価格:480
初版:1992-3-31
クラークの近未来小説。月への人類初の旅について語る処女長編。1947年に書かれた作品。
歴史学者であるダークの目からみた、はじめての月旅行までの道のりが題材。ストーリー性から言えば、同じアーサーのヘイリーなら、もっとうまく小説にしただろうと思われる部分(最後に反対派が破壊工作に来る部分など)が非常に多くあるが、初期のクラークの作品という事で
許してしまおう。最後のエピローグでは、ダーク(これはどうしてもダーク・サイド・オブ・ザ・ムーンを連想してしまうが)の回想という形で、その後の事が書かれているが、この部分がもっともクラークらしい部分である。近未来のテーマは、少なくとも私はあまり好きではない。海底牧場もまたしかりである。 -
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SF好きと称しながら、クラークしか読んでいないのは偏食というもの、だけど彼を読み尽くすだけで人生おわっちゃう、ってくらいたくさん本がある。
「2001年宇宙の旅」「幼年期の終わり」は、あまりにも有名。どちらも大学時代に読んで哲学書とみまごうほどに、(そういえば、大学のインド哲学通論の教授が、ウパニシャドを研究するなら「幼年期」を読めとおっしゃっていました) 内容が華麗だったので以来手に取って、読めるものは読む。長そうなら断念。
月に塵のような小さな粒子で出来た湖があり、そこを観光船が遊覧している道中、予想もつかなかった出来事が起こる。
その塵をとりまく、人間の攻防や心理状況がリアルに描写されており、わくわく感でいっぱいになる。 -
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ヒューゴー賞、ネビュラ賞受賞ということだけど、
私は★3で。
えーっと、良さは頭では理解できている、と、思う。
だけど私的にはもう少し小説的面白さが欲しかったかなあと。
一つの物語というよりは、
記録の集積のような感じで盛り上がりに欠ける。
安易に宇宙人とコンタクトするようなドラマよりは、
未知の物体だけとの邂逅や結局解き明かしきれなかった高度な科学など
ずっとあり得そうな設定が好感を持つし
そこが私がクラークを好きな理由の一つなんだけど、
それは逆を言えば
物理的法則に留まらずあくまで現実に起こりえる可能性に則していて欲しいということで
若干ストーリー展開にご都合主義が感じられたんだよねえ。
未来の社会の設定はそれでいいの? 的な感じは
わりといつものことだから見逃すけれど。
あと前半にある「ラーマはもう充分に警告を出してした。今こそ立ち去る時だった」という文句が
読み終えた今となってはどうも空脅しにしか思えない。
本当に理系の人にはいいかもです。