青木理のレビュー一覧
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本棚に『闇の奥』を見つけたとき、ジョセフ・コンラッドの同名小説とつながりがあるのかと思い手に取った。ジョセフ・コンラッドの著書は地理的な奥地に作り上げられた王国の闇を描いていたが、本書は日本の権力機構に構成された王国を点描している。そこに一筋の光明を感じたいという著者の希望が、現状を闇の奥と表現しているに過ぎない。
すでに報道された事実をもとに書かれたこのコラムを読むと、暗澹たる気持ちになる。書かれたものは2020年あたりから2025年までのことだが、状況は悪くなるばかりでやはり暗澹たる気持ちが上書きされるばかりだ。 第51回衆議院議員選挙を目前に、権力の中枢である与党の振舞いは見るに堪えない。順法と尊厳を持ち、ことにあたってほしいものだ。 -
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考え方や意見は常に対立する事でバランスが取れている。人間が生まれつき本能の様に考えを持って生まれるわけではないのだから、誰しも教育環境や家族の影響など、外部の作用で考え方が確立する。
政教分離の原則は守られるのは当然だが、様々な考え方の人が集まって国家を形成するのだから、意見対立は当然だし、何かしらの宗教に心酔する方々も国民だ。宗教とまで言わずとも、同じ考えや意思を持つ個人が固い信念の下に集まれば、ある意味、熱気や熱狂は宗教染みて見られても仕方ない。団結したり熱い議論を交わす事で、生き甲斐や仲間意識を求める人もいるだろう。
またその様な熱気を集団の力として利用しようとする政治家も合理的と言えばそれまでだ(心底信仰心を持っている人が果たしてどれくらい居るだろうか)。
結局、原則があったとしても必ずしも守られない状況に陥る事も当然想定されている。
右への力が働けば、左に戻す力が強くなり、その逆も然り。政治に限らず会社の中にだって存在する。
本書は日本会議の成り立ちや考え・主張を時系列に見ていくには丁度良い。かなり否定的な目線で語られてはいるものの、読み方によっては双方の考えに納得できる部分が多くある。政党もそうだが意見が100%全員同じなんてほぼあり得ない。だから誰しも集団を自己の利益に利用する部分はあるだろう。本書をある集団の形成過程を見るより、書かれた年度の戦後70年の時代の流れを読み取る参考書としてみると面白い。意外?にも外交の話は多くないので、戦前・戦後、団塊世代と素の日本人が外部(国外ではなく、あくまで国内の社会・教育・家族)影響でどの様な考えを持ってきたか追う事ができる。
読み進めると、考え全てに賛同できないと前置きした上で言うなら、寧ろ日本会議並みの行動力や強い信念を政治家が個人の考え・意見として持ちながら活動した方が良いのではないかとさえ感じる。
ついでに言うなら、どこの国でも愛国心教育やその国の確固たる歴史観ぐらいは持っていて良い。国旗がどうとか国歌がこれとか決まってなければ愛国心が育たないなら決めれば良い。けれどそれって本当にそうなのか、なければなし崩し的に愛国心が失われるのか。WBC優勝に感動し、テレビに釘付けになって応援してたじゃないか。 -
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作者青木氏は、サンデーモーニングのコメンティーター。
あの暗殺事件の記憶も新しい安倍晋三と
父、安倍晋太郎、そして晋太郎が敬愛してやまない祖父、安倍寛。
この3代にわたる人物リポルタージュ。
暗殺事件後一般人が口に出していう印象「感じがよかった、フランクだった」
ニュースで出ていたが、私は何か腑に落ちなかった。
その祖父「安倍寛」
平和を希求し、国民の生活を問題視していた
選挙活動時、家には官憲が何人もいて、いつもプレッシャーを感じていた
そんな父を尊敬し、同じように平和を希求し、
毎日新聞に務めた経験からグローバルな視点を持ち
人種を超えて誰からも話が聞ける「安倍寛」の一人息子晋太郎。
その逸話は、青木氏も興奮を覚えるほど魅力ある人物で
人々が手弁当で応援したくなる人物だった。
安倍晋三は多くの人々から聞き取りをしても
子供時代から政界に入るまで、政治的指向もはっきりせず、
なおさらそんな発言は皆無。
成績も全て可もなく不可もなくで過ごす。
人々の印象も影が薄く素直ないい子どまり。
3期にわたり、国民を戦争の危険に向かわせている主張は後天的に、
付き合う人々によって培われたものであったという。
国会答弁に関してもど素人の私がみても、
ただ時間を浪費し論点の軸を遠回りに無関係な文章をつらつらと述べるあの姿。
信念や相手を敬う心もない空虚な言葉のつらなり。
故郷山口に帰省する父親や母親との接点は少なく、
周りの大人にはただ素直でいい子の印象。
祖父岸信介には猫可愛がりされて育つ。
そして、東大、早慶などの入学は、はなから諦め、
成蹊で小学から大学まで過ごし、
政治、憲法の第一人者を持つ成蹊大の教授陣は、ほぼ印象がない。
それどころか「何を勉強したのか?私たちの言葉は届かなかった」と嘆いている。
こんな、政治家が長期政権を持つ日本の政治の仕組みは
きっと間違っているのだろう。
国民は既に危険な道程のトロッコに乗せられているのだ。 -
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副題が示すとおり、「日本の司法を考える会」というワークショップで、検察の横暴によって散々な目にあった人たちが講演したり話し合ったりしたものの記録。
検察のずさんな捜査や真実を操作しての横暴、勝手にストーリーをでっち上げて無理やり当てはめて物事を片づけていこうとするさまについては最近ときどき見聞きするけれど、本当に恐ろしい。この本で語っている人たち(ワークショップの講演者)って一門の人だったり一クセも二クセもありそうな人たちなのに、その人たちですら揺らぐほどの扱いを受けるらしい。人権侵害レベルともいえそうな。しかも、どうせ嘘をつくならもっとうまい嘘をつけとでも言いたくなるような、一つことに固執するあまりの稚拙な所業。検察がこれでは何を信じたらいいのかわからなくなってしまいそう。
しかも問題は検察だけでなく、検察の言うがままの裁判所もだし、報じようとしない新聞などのメディアもだし、幾重にも分厚く濃い霧が立ち込めているのが現代日本社会。 -
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ネタバレ「日本会議の正体」というタイトルに対し、ジャーナリストとしてこれまでの軌跡と経緯、関係者へのインタビューを含め分かりやすく、そして読みやすくまとまっている。但し、筆者は明らかに懐疑的で批判的な目線をもって日本会議と向き合っている。
一方で、全共闘時代において活躍した「日本を守る会」、「日本を守る国民会議」が闘う相手を失った後、日本のあるべき姿を追求するという方向性のもと、結成した日本会議も、自主憲法制定を党是とする自民党を正す役割を担ってきたのも事実。
中立的な目線を養うのであれば、批判的な目線である本書に加え、他の書籍も読むべきと感じた。
・日本を守る会、日本を守る国民会議、2つの右派団体が結成し出来た団体だが、組織の中枢を担っているのはかつての新興宗教団体「生長の家」出生者であり、宗教右派の政治思想をもつ団体である。
・日本最大の右派団体ではあるが、その内実は大同小異であり、憲法論においても現行憲法を認めない立場から、現行憲法改正派まで幅広く、お賽銭を投げる感覚で参加している議員も多い。
・日本会議の最大目標
①憲法調査委員会の早期設置と憲法臨調の設置
②世界各国と同等の「防衛省」の設置
③北朝鮮による日本人拉致疑惑の解明と救済
④反日的・自虐的教科書の是正推進
⑤夫婦別姓制度の導入反対
⑥国籍条項の堅持再確認 -
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第1章は書下ろし、第3章、第5章は2016年4月から2019年7月までの毎日新聞大阪本社版のコラム、第2章、第4章は2018年、2019年はその他新聞・雑誌掲載の文章群。
森友・加計問題、沖縄基地問題、韓国との外交問題、追い続けている日本の司法後進性の問題など改めて考えさせられることが多い。持論の死刑廃止、元号・天皇制の廃止論など反発を恐れぬ提言は現状においては希少であり耳を傾けなければいけない。
ただ、残念ながらこの著者も「国の借金」とやらを気にしている。政府が何かをやろうとすれば、必ずお金が必要となる。財政問題を正しく理解していなければ、どんな批判や提言にも身動きがとれないという言い訳を正当化する。
「円は使っても日本からは消えない」「国の借金は民間の債権」「政府に必要なのは財政健全化ではなく国の供給力確保」
少し考えればわかりそうなことをいつまでも理解しないのは頑固さ所以の宿命なのか。「ネットの反応は一切気にしない」「保守の意見は聞くに値しない」という態度が若干垣間見えるのこの著者は少し心配である。 -
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『安倍三代』(青木理)【レビュー】
私も安倍晋三氏の表情や発言から、首相としてはあって欲しくない軽薄さを多々感じることがある。だから、個人的には好きではない。
そんな私がどうやって安倍晋三が造られてきたのかを知ろうと考えるきっかけになればと、メディアでよく目にし、耳にしてきた青木理氏の著作を初めて手にしたわけだが、青木理氏の安倍晋三批判の姿勢が前面に出ているために、ちょっとひいて読むことになったのが残念でならない。
時代的にも、環境的にも、安倍晋三が育った道程は豊かさというところを除けば、多くの戦後世代の育った道程の典型だった様にも思える。もちろんそれが、政治家を目指し、一国の首相になった結果に照らし合わせると、そんな奴に国の運営を任せなくても、いくらでももう少しマシな適任者がいるということには私も同意する。
安倍晋三の肩を持とうなんて気持ちは毛頭ないが、あの家庭環境に生まれて、凡庸なまでに、そのまま『敷かれている線路を進んできただけのボクの何処が悪いんだ!。もっとまともな奴がいるなら、そいつを首相に選べばいいじゃないか、ボクが首相に選ばれたんだから、ボクのお祖父さんの理想をボクなりに解釈して実現するのが僕の使命だ』と彼は思って決意しているように見える。
私も、安倍晋三氏みたいには豊かな家庭環境ではないが、それなりに大学を卒業して企業に勤めているが、学生時代の自分の周囲に青木氏の語るような、政治的信念を持っている奴はいなかったし、理想社会への熱意を語る奴もいなかった。いなかったけど、社会に出てから、現実に触れ考え方を新たにする者、仕事をしながら猛烈に勉強してそれを補って地域に貢献している者はいる。
学生時代の姿で全てを決めようとする本書のスタンスは、安倍晋三の軽さに劣らず好ましくない。
そんなスタンスの著書だが、意外だったのは安倍晋三の妻昭恵の夫を見つめる視線とそこに映し出されている姿を語っている部分。
青木氏は「天のはかり」、「天命」「使命」とスピリチュアル、オカルト的と片付けているが、これは妻としてもっとも身近にいる人の意見を求めているのだから、そういった視点でいいのだと思う。そんな昭恵の言葉に『主人は安倍晋三という日本国の総理大臣を、ある意味では演じているところがあるのかなと思っています』
というのがあって、そうやってテレビ画面に映し出される安倍晋三をしばらく眺めていたら、その感覚が見事に伝わってきた。
この感覚は、私にもある。あるからわかるのどけれど、脚本がしっかりしていないと演じきれないのだ。安倍晋三が軽く見えるのは、その脚本を自分で書いていないところにあるのではないだろうか。頼りになるお祖父さんや、周囲を支えてくれる仲間たちが書いた脚本に縋っているところが、その演技の台詞に観客(国民)を魅了する力がないのだ。ーーだがそれはある意味最悪な結果を招いていないともいえる。ヒットラーの様に人の心を鷲掴みにする安倍晋三だったら青木氏を含め日本国民を陥れることはもっと容易かもしれないから。
そしてもうひとつ良かったのが、安倍晋三と同じ成蹊大学の法学部出身、宇野重昭ゼミの3年先輩の桐野夏生の言葉、これは本書の主旨とは少し外れているが、桐野と安倍晋三の見つめているものの深さを対比するには良い材料だと思うのであえて書いておくことにする『個がなければ公への認識が生まれない。公への奉仕が強制的に求められるとしたら、ファシズムです。日本の現状ではむしろ、もっと個を強くしていくべきじゃないですか。どんどん「私」を主張すればいい。しっかりした個の土台の上に、ほんものの公共は生まれていくと思います』