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Posted by ブクログ
日本軍「慰安婦」問題に関する「吉田証言」記事、および原発事故に関する「吉田調書」報道をとらえた、メディア総がかりの朝日新聞バッシングに対し懸念を抱くまっとうなセンスの持ち主ならば、青木理氏のごくごく真っ当なメディア批判に、解毒剤をあたえられたようにほっとするだろう。まことに「メディアの総転向」と呼ぶしかない、異常な状況である。
前半の青木氏の冷静かつ明快なメディア批判に対し、本書の後半では、攻撃の矢面に立たされている植村隆氏をはじめ、朝日内部の人たちへのインタビューが掲載されているが、こちらはとてもすっきり、とはいかない。若宮啓文や市川速水は、「リベラルと言われていてこれか」と思う程度の歴史認識・政治認識しか示していないし、「権力に膝を屈したわけではない」と繰り返し述べているが、青木氏も指摘するように、本気だとしたら状況分析が甘すぎる。ましてやこの後、朝日新聞が設置した「第三者委員会」は顔ぶれからして、最初から権力者に腹を見せて取り入るための茶番だったとしか思えないからだ。本書発行のタイミングが合わなかったのだろうが、ほんとうはぜひ第三者委員会の顛末まで見届けてからの取材、分析が欲しいところだった。
もう一点、メディアを巻き込んだ政権の朝日攻撃において、「女性国際戦犯法廷」NHK番組改編問題に関する朝日の報道とその後の顛末は、避けて通れない一幕であったはずだ。インタビューの中で触れられてはいるが、青木氏の分析において踏まえられていないのが残念。
いずれにしても、「リベラル派」であった朝日の瓦解は、「メディア総転向」の引き金を引く歴史的事件として、「戦前史」に残る出来事となるだろう。より長期的、包括的な視点からの分析が必ず必要となるはずだ。
最後に、タイトルの「抵抗の拠点」とはどこを指しているのだろう。本書からそれを見出すことは、私には難しかった。悲しく残念なことであるが。
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