ルトガー・ブレグマンのレビュー一覧
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上巻からの続きです。上巻の際には過去に実際にあった実験の結果などを詳細に検証して、例えば捏造や恣意的なものを被験者に前もって伝えるなどで本来の実験があるべき条件で実施されていないために結論は無効である、つまりその試験は結論を導く以前に成立すらしていないと書いていた章がかなりありました。それらが世の中を席巻しているため性悪説が基本となっていると。
下巻ではどのように人は考えて行動すればよりよい世界になっていくのかということが、捏造なき試験や史実とともに考察されていきます。より良い世界とは私が下巻を通じてふわっと感じた感覚であって、実際に具体的に「良い世界」の定義は個人間で違うでしょうが。
16章 -
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表紙カバー裏にある「現代の社会が性悪説で設計されていることに疑念をもち、世界中を飛び回り、関係者に話を聞き、証拠を集め」た結果、巷に流布された性悪説に次々と否を唱えています。
で、各章で実際に人に信じられている「性悪説として事実とされている事象」がホントにそうなのか?を腕利きの刑事もしくは探偵さながら情報を集めまくって否を導き出してるのです。学者っていう人種の真実を知りたいという熱量(しつこさ)が感じられてそこがかなり面白い。深堀感半端ない。本質じゃないけど、よくそこまで探せたなという感嘆と、え?それ完全なる捏造という研究者がイッチャンやってはいけないことでは?が多くて私たち市民を簡単に騙して -
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人間は元来は平和を好む友好的な生き物であり、通常、対立構造に置かれそうになっても、平和的手段で解決をしようと試みる。
ただ、そうした友好的な性質が故に、集団に対して抵抗するということがやや苦手であり、時として多元的無知と呼ばれる、誤った方向への暴走が見られる。
こうした暴走は、私有財産に端を発した階級社会の登場により、社会構造が歪められたことで発生しやすくなったと筆者は主張する。
これに対する対策として、共有地の設定があるが、長らくこの共有地は、共有地の悲劇と呼ばれ、全くうまくいかないという意見が当たり前であったが、その意見すらも、人は生来的に悪であるという思想からくるものであり、現実社 -
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「人の本質は善である」との観点から、これからの社会について、希望を与えてくれる本です。
確かに、ある集団に対して偏見や嫌悪感を抱いていたとしても、実際に接したことがある人に対しては親愛の情を抱くのが人間の本質であることは、経験則上、理解できるところです。
個人的には、主として北欧の国で実施されている刑務所の改善と、南アフリカのネルソン・マンデラ大統領誕生に際しての双子の物語に感銘を受けました。
犯罪をする人は、社会に対する疎外感等でやり場のない怒りを抱えているケースが多いと思います。そのような人には、刑務所内での交流による人から尊重された経験が、更生に繋がる大いなる可能性を感じました。
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金銭的インセンティブはモチベーションを下げる、マネジメントしないマネージャーなど、内なるモチベーションの力の章は興味深かった。たしかに、一文も得にならないこと、疲れるだけのことを、自ら望んで継続的にやってますからね。
ナチスの軍人は洗脳されていたわけではなく、戦闘に駆り立てていたのは友情だった。憎しみ、不正、偏見を防ぐ最善策は、アイデンティティを持ち、交流すること。ロシア軍の前線がウクライナの人々が隣人である事を再認識して、自らの過ち、それを指導する体制の過ちに気づき、遠く離れたクレムリンまで逆流する事で、悲劇に終止符が打たれるという歴史が作られれば、この本の主張の正しさが証明される事になると -
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「ベーシックインカムなんて幻想だ!」という幻想をどうやって私たちが抱かされてきたのか、という幻想解体新書として面白く読んだ。筆者のポジティブさには玄田侑士さん『希望のつくり方』に通じるものがある。できるかどうか、ではなく、どうやって実現させるか、そこが問題だと。
なるほど。
では、ベーシックインカムの金額はどう決めるんだろう?国境をなくすことが前提だから、全世界一律?
ベーシックインカムを導入したとして、解決されない介護、保育のニーズの問題は?
1日3時間労働に絶対ならないエッセンシャルワーカーの存在はどう考えるの?
うーん。
解除しなければならないバリアはいっぱいあるらしい。けれど、富の -
大野和基 / ポール・クルーグマン / トーマス・フリードマン / デヴィッド・グレーバー / トーマス・セドラチェク / タイラー・コーエン / ルトガー・ブレグマン / ビクター・マイヤー=ショーンベルガー3.4 (10)
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色んな視点があって面白い。
現代社会を憂えている点では一緒。
個人的には、フリードマン、グレーバー、ブレグマン、ショーンベルガーの思想にかなり共感を覚えた。それぞれの著書を読んで、より詳しく勉強しようと思う。
以下、個人的なメモ(ネタバレ?)
ポール・クルーグマン
富の集中は防がなければならない。
資本主義による経済不平等をどこまで是正するか。政治の話。
トーマス・フリードマン
「Average is Over」格差拡大で、平均的では不十分で、常に平均以上になることを志向しなければならない。
「creativity,collaboration,comunity,coding」が必須スキル -
大野和基 / ポール・クルーグマン / トーマス・フリードマン / デヴィッド・グレーバー / トーマス・セドラチェク / タイラー・コーエン / ルトガー・ブレグマン / ビクター・マイヤー=ショーンベルガー3.4 (10)
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オランダの若き歴史家ルトガー・ブルグマンがベーシックインカムと国境の廃止によるユートピアの実現を論じる。
すべての福祉を廃止し、国民全員一律にベーシックインカムとして年間約150万円の金額を支給しそれで生活させる。さらにすべての国境を廃止し、人、物、金が世界中に自由に行き来することができるようにする。これにより、世界の富が再配分され、ユートピアが訪れると説く。
本書は非常に説得力があり、読みやすい。もし、これが実現すれば本当に楽園が訪れるかもしれない。
筆者も現状ではこのような話は夢物語であるとは言っているが、200年前には奴隷制廃止や女性への参政権の付与などを論じれば狂人だと思われていた、 -
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ベーシックインカムは、「一定水準の所得に満たない人には、政府が「無条件で」一定金額を支給する」という政策です。仕事をしていようがしていまいが、病気であろうがなかろうが所得が少なければお金をあげる。
日本の主な貧困対策に生活保護があります。でも生活保護は非効率だと言われています。車を持っちゃいけないとか、(裁判にもなったけど)エアコン持っちゃいけないとか、資力調査を受けなきゃいけない。あいつ生活保護もらってるんだぜって後ろ指を指されるスティグマの問題もある。これを維持する行政コストもバカになりません。
でもベーシックインカムって現実的じゃないでしょ?一定金額をどう設定するのか、7万円?10万 -
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現代人はどうしたらもっと働かなくなるのか。
最近本気で考えていることです。
そんなときにちょうど積読されていた本書を開き、著者の力強いストレートな文章を読んで、ひたすらうなづくことばかりでした。
個人的にベーシックインカムはあった方が良いと思ってますが、受け取る側の意識の変化も大切だと感じます。
ただ「お金がもらえるラッキー」と思うだけでは世の中は変わらない。
デヴィット・グレーバーが言う「クソどうでもいい仕事(ブルシットジョブ)」が、なかなか無くならない現実。
これ以上働き続けたら、地球がもたないというのに。
それに加担している自分も自分。
そんな世の中で、「とんでもない存在」は何 -
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この下巻では、上巻で、人間が本来性善であるという証明を試みたものを、今の社会が利己的・性悪説に立ったシステムの中で、本来的な性善を取り戻し社会に拡めるにはどうしたらよいか書いている。
同じ主観をもつ共感よりも、私の主観的な視点からの思いやりを持とう。
対立には、会話、質問による交流が時間がかかるが一番効果的。
遊びこそ自由への希求と自由を利他として使えるようになる行動。
権力者は利己的でないとなれないか、権力を持った途端利己的になる。そのための権力の譲渡が必要。
この本で学んだことは、
・シニカルな見方ではなく、性善説に立ったうえでの理性と現実直視からなる思考と行動をせよ。
→シニカルな -
Posted by ブクログ
上巻に続き、ヒトの良い面についての耳障りが良く信じたくなるお話。根拠はないがこれまでの経験則として耳障り良い話の後はヤバい未来が待っていることが多い。著者が求めるバキバキリベラルで社会保障天国な世界を作る目的から逆算された主張に読者を誘導してるようにも見える。
いっぽうで日々の生活の中で、コンビニの外国人店員、通勤電車で隣に座ってる人などよく知らないという理由でうっすら怖いと思ってしまうが、実はみんないいヤツと思うことにするだけで世の中が少し良くなりそう。体制やビジネスの仕組みはこのままでも普段接触の少ない人にも思いやりを持って接する必要があると感じた。