ルトガー・ブレグマンのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
上巻では、人間の本性は善であると結論づけた。ではなぜ人間は、戦争やテロを起こしたり、ガス室を作ったり、虐殺を行ったりするのだろうか。筆者は「共感が目を塞ぐ」と表現する。共感は、仲間意識や困っている人を助けよう、全なるものを見た時に理解できたり、自分もそうなろうとする原動力にもなるが、一方、狭いコミュニティや同種の者に対する贔屓をも誘発する。これが嵩じるとナショナリズムやヘイトにつながるわけで、この説明は納得。ではどうすべきかについて、「対話」であるとする。第一次世界大戦のクリスマスの逸話、ネルソン・マンデラの改革を後押しした全く正反対の立場に立った双子の話など、いくつかの興味深い事例を挙げてい
-
Posted by ブクログ
人は生まれながらにして善であるということを説明している一冊。これに反する実験や論文、歴史的事実は多く、反論は簡単なのだが、実は各種の実験がいい加減だったり、歪曲だという証拠を見つけて覆す。スタンフォード監獄実験、ミルグラム実験、ナチス大幹部のアイヒマンの例など。確かに、元々悪であるなら納得できることが多い一方、善であるとするならば、それを証明することはなかなか難しい。世の中の報道も、「今日も1日平和でした」ではニュースにならない。戦争や殺人で亡くなる人は100年単位で見れば確実に減っていることはわかるが、実感と理性が食い違う代表的な事例なんだろうな。
-
Posted by ブクログ
「AI」「ベーシックインカム」という単語ばかりが横行していて、労働時間は減るどころか増えているのは何も日本だけではなく、むしろアメリカをはじめとする"上流階級"の人々が感情的に受け入れられないからこそ未だにベーシックインカムは施行されず、「くだらない仕事」がはびこっている。
私は最近日本では底辺職と呼ばれる仕事から転職したが、PCの各企業のソフトウェアを「操作」しているだけで、何も生み出しているわけではない。もしAIが代行するようになれば、一瞬でクビである。まあ、「ワークシェアリング」であり「週20時間」であるから、悪くはない仕事であり、業種としては当分無くなることはないの -
Posted by ブクログ
ー 良いことをすると、気分が良くなる。世界に生きていると言うのは、素晴らしいことだ。私たちは食べ物を好むのは、それがなければ飢えるからだ。セックスを好むのは、それをしなければ絶滅するからだ。人助けが好きなのは、他者がいないと自分もいなくなるからだ。良いことをすると気分が良くなるのは、それが良いことだからだ。
これが本書の主張の全てだろうなと思う。最強の説得力。生まれながらに「気持ち良く」感じる行為は、本来人間に期待され備わった性質なのだから、良いことした後の爽快感は、性善説の証明になるという事。
著者は「スタンフォード監獄実験」や「ミルグラムの電気ショック実験」など、人間が服従により悪意を -
Posted by ブクログ
本著を読んでユヴァルノアハラリが価値観を変えたという位だから、新たな視点が得られるのだろうと期待して読み始めたが、期待通り。乱暴に言うと、人間の「性善説」的な本質を証明しようという試みの本。戦争の歴史を歩む利己的な存在という価値観を一変させる。
ー 人間は本質的に利己的で攻撃的で、すぐパニックを起こすと言う根強い神話。薄いベニヤのような道徳性ということから、ベニヤ説と呼ばれもするが、真実は逆。災難が降りかかった時、爆弾が落ちてきたり、船が沈みそうになったりしたときに、人は最高の自分になる。
『蝿の王』という小説があり、私も読んだ。しかしあれはフィクションであり、無人島で人間は憎しみ合い傷つ -
Posted by ブクログ
高揚する本だった。
世界は大いなる善意で回っている。
ドイツ軍の人間ばなれした戦闘を可能にしたものは「友情」
テロリストにさえ当てはまる
自由を与え、あらゆる年代と能力の子どもが入り混じったコミュニティの中で、コーチやプレイ・リーダーが支援すれば、子どもは最もよく学ぶ
大人は、子どもに自由を与える勇気を持っているかどうかだ
ベネズエラの自治体トレス、とある候補者が、当選したら権力を住民に譲り渡すとして、本当に当選して、わたした。
そこから急速に発達していった。
次にブラジルのポスト・アレグレで起きて、今は世界中に広がっている
ノルウェーの刑務所システムは再犯率が世界最低
割れ窓理論 -
Posted by ブクログ
有名な「スタンフォード監獄実験」や「ミルグラムの電気ショック実験」が提示するセンセーショナルな性悪説は、実は捏造されていたという衝撃。
人間の本質は善であることを筆者の独自調査で個別テーマを介して明らかにしていく手法で語られる上巻。これはこれで結論ありきで話を自分勝手に色眼鏡通して捉えているし可能性ないか?と疑ってしまうほど通説と真逆の結論を突きつけられる。この爽快感は、なるほど魅力的な。
題材が有名なものであり、語り口が肩肘張ってないのでスルスルと読み進められる。かといって過不足ない進行で飽きるともなく、文章力の高さも本書の惹きつける魅力の一つだなと。下巻は著者の主張が強調されているよう