水野祐のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「死」を学際的に検討する過程で、よりよい「生」とは何かについて考えされさせられた。死とは生物学的な個体の絶命という意味を超えた観念であると感じた。死者を弔うのは他者であるが、その死者の存命中はもちろん、死後に至っても相互作用の中で誰かの自己と社会が形成されていく。そのような「分人」的観点で捉えると、「死」は自己完結するものではない。また、「弔う」ことの本質は儀式という表層的なものではなく、生成変化を伴う生者と死者の社会的な共生だと思った。
一方で、テクノロジーによって新たに生じる死者の権利、死後労働の観点は非常に悩ましい。生命はその有限性によってこそ輝くが、死後も残り続ける SNS 上の情報や -
Posted by ブクログ
豊かで健全な文化の発展のために、法律がどう関わるか、非常に多面的に考察している。
創造性を生むには、既存のものがオープンで利用しやすい状況が良いという、ローレンツ・レッシグさんとも共通した見解。必然的に著作権の話題が充実しているが、それに限らず、宿泊施設や政治参加といった問題も扱っている。
冷静で真面目な口調だが、わかり易く、言い回しも豊かで読み心地が良い。
一章は総合的な話をして、2章はアート、ゲーム、ファッションなど分野別に言及し、それぞれ多視点的に述べている。
個人的には、ついつい2015年の五輪エンブレム問題に触れたところが痛快だった。
「五輪エンブレム問題は、法律が設けている -
Posted by ブクログ
情報技術の進化で、既存の枠組みや概念では捉えきれなくなった事象に対し、創作意欲を阻害する事なく社会をより良い方向に導くためには、どういった法制度を設計するべきかを考える本。自分が理解する企業法務とは、会社の取り巻く法制度や商慣習などを踏まえてリスク評価とビジネスを進めるための対処策を考えること(時に予防法務としてビジネスを止める機能も持つ)。その前提には常に法的リスクの回避がある。ところが、Google Street View, Uber, Airbnbなどの米国企業は、法的課題に晒されるがらも、法解釈や法自体が時代とともに変化しうる事を前提にした上で、自分たちのビジョンを貫くためのロジックを
-
Posted by ブクログ
ネタバレルールがあることで、多くの人が安心して、自由に生きることが可能となっている。
ルールは問題から生まれ、ひとつのルールを実行することが他人の利益や欲望と矛盾したり、さらに別の問題が表れてしまったりする。だから、ルールを事項することで刻々と変化する状況を常に観測しながらアップデートすることを前提とする必要がある。
ルールリテラシーとは「ルールの理解度を上げようと自ら勉強したり、教育や啓蒙の重要性を説いたりするアプローチ」を指す。一方、ルールコンピテンシーとは「ルールについて対話し、意見を言うなど行動し、参加・関与していくという主体性や行動特性」を指す。このうち、ルールを自分事としてとらえる視点 -
Posted by ブクログ
ネタバレルールが増えて生きやすくなっている時代である一方で、それによって手に届きにくくなったものも多くあるのではないかと思っていたところ、改めてそれらを捉え直せるのではないかと期待してこの本を手に取ってみました。
著者にデザイナーが関わっていたのでもしかしたらデザインに関する内容を期待していたのですが、思ったよりもそれに関する内容が少ない印象だった。
どちらかと言うと、法律などの公共的なルールに関する話が多かった。
この展示に関連するWEB記事も多くあり、そちらの方が個人の生活に落とせるような内容も記載されているので、とても参考になりました。
特にクリエイティブに関わる仕事をしているにとって、見直 -
Posted by ブクログ
弁護士として、インターネットに関する法的問題を専門とする著者の問題意識は極めて明確であり、重要なものである。それは端的に「イノベーションや創造性の阻害要因として法を捉えるのではなく、むしろドライブさせるものとして新たな法をデザインすることができないのか?」というものだ。
インターネットと法律に関する現代の基本理論は、言うまでもなくローレンス・レッシグが「CODE」で明らかにした4つのルールの有り方であろう。そこでは、我々の社会のルールを形成する要因として、「法」、「市場」、「規範」、「アーキテクチャ」があるとされ、特にレッシグはCode/Codingに基づく「アーキテクチャ」が知らず知らずに