徳永圭のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
深夜の真っ暗な部屋で泣き止まない赤ん坊、頼りにならない夫、監視し責め立てる義母。
冒頭のシーンは、諒子の心情を想像すると胸が詰まるようだった。
泣き続ける我が子をただボーッと眺めてしまう無気力な気持ちを久しぶりに思い出した。どうして泣き止んでくれないの?と、こちらが泣きたくなる気持ちも。
たった一度叩いてしまっただけで娘と引き裂かれるなんて厳しすぎる……。
その後司書の職を得た諒子サイドと、3歳の子を育てる美咲サイドのストーリーが交互に綴られていきます。
途中でかんたんに気づいてしまうけど叙述トリックのような構成になっていました。
正直ご都合主義が目立ったけど、まぁそこは小説ということで。読み -
Posted by ブクログ
『片桐酒店の副業』
徳永圭 著
舞台は岐阜県の地元に根ざした商店街に佇むとある酒屋。
昔ながらの個人商店の店構えには似合わない、ダークスーツに白シャツ。およそ客商売に向かない仏頂面な店主。
酒屋の副業に法を犯さぬ範囲の運び屋。その名も「困ったときのまごころ便」
全5章のさらりとした爽やかさすら感じる筆致だが、その実、潜む主題は不条理と自責の念。
誰しも、大なり小なり、世に対して不条理だと感じたり、自責の念にかられたりしたことはあろう。
淡々と物語は進んでゆくが、誰しもが折り合いをつけながら生きてゆく、その無常感が心地好い。深みが増したら、より良い一冊になるであろう作品でした。
こういう作 -
Posted by ブクログ
短編集。
「困ったときのまごころ便」
すべてに絶望し、生きる気力もないままに日々を過ごしていたときに父が死んだ。
稼業である酒店と配達業も引き継いだ片桐は、徐々に持ち込まれる件数が増えていくワケあり荷物と格闘する毎日だ。
過去に何があったとしても、どんなに悔やもうとも、起きてしまったことを変えることは出来ない。
ではどうしたらいいのか?
生きるしかない。辛くても生きていくしかない。
そんな中、8年前に引き受けた荷物の依頼人と再会した片桐。
過去を越えて生きていくことができるのか・・・。
物語を貫いているのはワケあり荷物に込められた人間模様。
淡々と静かに進むストーリーは劇的ではないけれど面白